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470/743

470:央都猪蟹屋壊滅、まさかのネネルド村

「しかし――この焦げ(くさ)さは、たまらんな。レイダ(わり)ぃけと、この辺一帯燃(へんいったいも)えたの全部(ぜんぶ)。レイダ(ざい)で塗り替えてくれるか?」

 そう(こえ)を掛けるなり、(ねこ)魔物(まもの)薄桜色(ピンクいろ))が駆けよってきた。


「「「みゃにゃが、にゃぁみゃにゃにゃん♪」」――()

 なんて言ってるかは、わかった。

 「(まか)せてよ、すぐに終わらせるにゃん♪」だ。


 ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪

 ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪

 ぽっきゅぽっきゅぽきゅきゅむ♪

 黒焦(くろこ)げの猪蟹屋(ししがにや)へ飛びこんでいく、(ねこ)魔物(まもの)たち。


 迅雷(ジンライ)黄緑色(おにぎり)と、ちぐはぐな(がら)強化服(ビビビー)も居るし、(まか)せといて良いだろ。

「ひっひひひぃぃぃんっ?」

 待て子馬(こうま)。おまえは図体(ずうたい)がでかいんだから、(そと)で待ってろ。

 手綱(たづな)をつかんたら、(すこ)し引きずられた。


「どうどう、どどう。それにしても一体(いったい)(なん)(たまご)だったんでしょうか?」

 おっちゃんが、(てん)ぷら(ごう)を押さえてくれた。

 エクレアが「そうですねー」と相槌(あいづち)を打ち、おっちゃんと一緒(いっしょ)子馬(こうま)相手(あいて)をしてくれる。


()魔物(まもの)っていったら、やっぱり火龍(かりゅう)でしょ♪」

 ルリーロの視線(しせん)にみんなが、(ひざ)(かか)えた少年(しょうねん)を見つめる。


魔界(マカイ)同種(ドウシュ)(リュウ)は居るが――魔王亡(マオウナ)きいま、こちら(ガワ)に来ているのは、ワレだけのハズだ」

 火龍(かりゅう)ゲートルブは、魔物境界線(ガムラン)付近(ふきん)魔物(まもの)統括(とうかつ)していたらしいから――

 その情報(はなし)は、信用(しんよう)して良いと(おも)う。


「ううむ。(そら)から落ちてきたってんならよ。(そら)(うえ)に棲んでる魔物(まもの)ってのは、どんな(やつ)が居るんでぇい?」

 おれは少年(ゲイル)のまえに(かが)みこんで、素直(すなお)に聞いた。


「ぬぅ、あの(タカ)さまで上がれる魔物(マモノ)は、魔王(マオウ)さまくらいだ」

 どうも居ないっぽい。


「じゃぁ、(だれ)かが地上(した)からゲイル目掛けて(・・・・・・・)卵をぶん投げた(・・・・・・・)ってことぉー()

 五百乃大角(いおのはら)馬鹿話(ばかばなし)におれたちは(わら)ったが、やがて(くち)を閉じた。

 どうも、それが一番(いちばん)正しいらしい(・・・・・・)


   §


「み゛ゃに゛ゃぁー♪ 緊急(きんきゅう)連絡網(れんらくもう)使(つか)った知らせ(・・・)を、央都全域(おうとぜんいき)へ出すまえで良かったニャァ!」

 ダミ(ごえ)で鳴く、顧問氏(ミャッド)


「ふぅ。(ねん)のため、火柱(ひばしら)が上がった現場(げんば)を見に来て……大正解(だいせいかい)でしたね」

 おれたちを(・・・・・)満遍(まんべん)なく見わたす、顧問秘書(ひしょのひと)


 ふぉん♪

『人物DB/ミャニラステッド・グリゴリー

      ラスクトール自治領王立魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部顧問技師』

 ふぉん♪

『人物DB>マルチヴィル・エリミネフ

      ラスクトール自治領ギ術部顧問秘書官』

 (なげ)ぇ、しばらく人物DB(そいつ)は切っとけ。


 深夜(しんや)猪蟹屋(ししがにや)

 開店前(かいてんまえ)にもかかわらず、店舗(てんぽ)は燃え落ち――

 王城(おうじょう)からの先遣隊(せんけんたい)魔導騎士団(まどうきしだん)、その他もろもろ――

 まさに満員御礼(まんいんおんれい)


(うま)魔物(まもの)がいるぞ?」

(うま)魔物(まもの)なんて、いないだろう?」

「だが(げん)に目のまえに、居る(・・)ではないか?」

 子馬の形(テンプーラゴウ)を見て王女(おうじょ)ゴーレム(・・・・)だと、気づく(やつ)はいない。


「っくしゅんっ()

 みんながみんな〝ひかりのたま〟で(あた)りを照らすもんだから――

 (まぶ)しくて仕方(しかた)がねぇや。

 (ふところ)御神体(いおのはら)仕舞(しま)ってやる。


「おれが、央都猪蟹屋(おうとししがにや)店主(てんしゅ)だ! みんなついてきてくれ!」

 ギルド支部長(しぶちょう)クラスの人員(じんいん)に取り(かこ)まれ――

 おれは倉庫(そうこ)二階(にかい)へ、場所(ばしょ)(うつ)した。



 ヴュパパパァァッ♪

 巨大(きょだい)なテーブルに王都周辺(おうとしゅうげん)地図(ちず)を、(うつ)しだした。

「「「「「うぉおおぉぉぉおおぉお!?」」」」」」

 神々(かみがみ)猪蟹屋(ししがにや)に慣れていない連中(れんちゅう)が、(おのの)く。


「ルードホルドで本気(ほんき)で飛ぶと、地面(した)(まち)から苦情(くじょうが)がぁ来るのぉ。だぁからぁ央都(おうと)への進入(にんにゅう)は、いつも(おお)きく(まわ)り込んで岩壁側(がんぺきがわ)からになるわぁ♪」

 辺境伯(へんきょうはく)名代(みょうだい)ルリーロが、(しろ)の絵の横辺(よこあた)りを指し(しめ)した。


「そのルートに(はい)った途中(とちゅう)で、(たまご)が飛んできたと?」

 タウリンが央都側(おうとはわ)から、(ゆび)を向ける。

 ビロロロッ♪

 ルリーロやゲイルが飛んできた(みち)なりに――(ふと)(せん)が引かれた。


 この巨大(きょだい)テーブルは、黒板(タブレット)(おな)じことができる。

 てちてちてちてち♪

 その(うえ)(ちい)さい(あし)で駆け抜ける、五百乃大角(いおのはら)御神体(ごしんたい)

「へー、ふぅーん、ほぉーぉ、それで()

 邪魔(じゃま)だが、敬虔(けいけん)なイオノフ教徒(きょうと)手前(てまえ)無下(むげ)(あつか)えん。


「うむ。魔法杖(まほうつえ)に振り落とされたのが、たぶんこの(あた)りで。火龍(かりゅう)姿(すがた)(もど)ったとたんに、あの(たまご)(あたま)にぶつかったのだ」

 (あたま)を押さえる子供(ゲイル)

 その(さま)はどこから見ても、いたいけな少年(しょうねん)にしか見えない。


(たまご)がぶつかったとき、地上(ちじょう)(なに)か見えませんでしたか?」

 リオレイニアが、ゲイルの(あたま)をさすってやる。


「そういえば物置小屋(モノオキゴヤ)のような(モノ)が、建ち(ナラ)んでいたな」

 物置小屋(ものおきごや)ってこたぁ、おれが最初(さいしょ)にもらったシガミー邸(おんぼろ)みたいなのか?


城壁側(じょうへきがわ)……北北東(ほくほくとう)小屋(こや)? 聞いたことがありませんが、(なん)でしょうか?」

 北方(ほっぽう)の生まれらしい、コントゥル騎馬隊隊長(きばたいたいちょう)(くび)(かし)げる。


小屋(こや)? その(ちか)くを、(かわ)(なが)れていませんでしたか?」

 地理(ちり)(くわ)しいのか、タターがそんなことを言いだした。

「ひひひぃん?」

 どうなの?

 とでも言いたげな(てん)ぷら(ごう)は、工房(こうぼう)に押し込んどこうとしたら――

 とんでもなく(あば)れやがったから、仕方(しかた)なくタターに手綱(たづな)を持たせ、(まか)せている。


「あったぞ。編み目のように、ものすごく沢山(タクサン)(ナガ)れていたな」

 編み目のような(かわ)

 そんな場所(ばしょ)に、(ひと)が住んでるのか?


「それは、たぶん……ネネルド(むら)です!」

 タターが出身地(しゅっしんち)を告げた。


   §


「ネネルド村上空(むらじょうくう)ですと、〝猪蟹屋(ししがにや)〟と〝(りゅう)の巣〟を(むす)んだ延長線上(えんちょうせんじょう)で、〝(たまご)〟と遭遇(そうぐう)したことになりますね」

 リオレイニアの(ゆび)が、(おお)きくテーブルを這う。

 ビロロロロロロォン♪

 〝猪蟹屋(ししがにや)〟の絵から、まっすぐに引かれた(せん)が――

 城壁向(じょうへきむ)こうの〝(りゅう)の巣〟の絵と、〝ネネルド(むら)〟の絵を(つな)いだ。


 (まど)から(そと)を見た。

 ふたたび人通(ひとどお)りがなくなった、深夜(しんや)猪蟹屋周辺(ししがにやしゅうへん)

 ほとんど吹き飛んだ、(みせ)三階部分(さんがいぶぶん)

 薄桜色(ピンクいろ)黄緑色(きみどりいろ)と、ちぐはぐな(がら)魔物(まもの)たちが――

 元気(げんき)(はし)(まわ)ってる。


 ひんやり。

 ほとんど(から)倉庫(そうこ)二階(にかい)を、(なが)れる冷気(れいき)

 振り向けばリオレイニアの(ちい)さな(つえ)が、くるん♪

 冷たい魔法(つめたいかぜ)が、みんなの(からだ)を冷やしてくれる。


(つめ)たい飲み(もの)をどうぞ、くすくす()

 全員(ぜんいん)(つめ)たい飲み(もの)(くば)り終え、レイダ材製(ざいせい)(トレー)小脇(こわき)(かか)える茅の姫(ホシガミー)

 まだ周囲(しゅうい)には(ねつ)が立ちこめており、甲冑姿(かっちゅうすがた)連中(れんちゅう)が飛びついた。

 味の評判は上々。


直線(ちょくせん)(むす)ばれる、(たまご)射出経路(しゃしゅつけいろ)……?」

(つめ)たいですな!」「とてもおいしい!」

投石器(カタパルト)のような攻城兵器(こうじょうへいき)でも、この遠距離(えんきょり)は……」

「む、(さけ)じゃねぇのにうまいじゃねーか! がはは♪」

 (ひざ)をつき合わせ、あーでもないこーでもないひひひぃん?と――

 議論(ぎろん)(かさ)ねた結果(けっか)


 あの(たまご)はやはり、(だれ)かが投げた(・・・)と言うことになった。

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