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461:央都猪蟹屋プレオープン、おかわりと青い壁

 ズザムッ――――!

 一糸乱(いっしみだ)れぬ統率(とうそつ)――(こえ)ぇ!

 思慮深(しりょぶか)大食(おおぐ)らいのおっちゃんまでもが、(ひざ)をつき組んだ手を(はな)に押し当ててやがる――(こえ)ぇ。


「シガミー、受け取ってへぇーっ()

 素っ頓狂(とんきょう)(こえ)に見あげりゃ――ふわさぁり!

 なんだこりゃ。

 さっきおれが出した、ただの紫色(むらさきいろ)(おび)じゃんかよ。


「それで(かみ)(しば)ってぇー、さっきの(やつ)おぉーもう一回(いっかい)やって()

 檜舞台(ひのきぶたい)(ゆび)さす御神体(いおのはら)

「はぁ、お(まえ)さまは、この大変(たいへん)なときになに言って?」


いいからはやく((いいからはやく))()

 ふぉん♪

『イオノ>いいから{pnputil /restart-device ”#44Ga3”}はやく!』

 おれはクルリと、身をひるがえす。


「わかったよわぜ」

 言われるがままに、おれは(かみ)(しば)りあげる。

 フッサフサの尻尾(しっぽ)みたいに、うしろに垂らした。

 これなら料理(りょうり)をするのに、邪魔(じゃま)にならん。


 余分(よぶん)用意(ようい)してくれたのか、(のこ)ってた四角(しかく)(うつわ)40個を(なら)べる。

 黄色(きいろ)(しる)(なが)し入れ――

 フォン♪

『イオノ>冷やしたら今度は、多めにお砂糖をかけてね♪』

 面倒(めんどう)だったから、山盛(やまも)りにして――

 ヴッ――ザッギィィィン!

 小太刀(こだち)余分(よぶん)砂糖(さとう)を、斬り捨てた(・・・・・)

 サァァァッ――パタタタタッタッ♪

 最後(さいご)に、(あま)(かお)りの(つよ)(さけ)をかけ入れる。


 檜舞台(ぶたい)からふたたび、四方(しほう)(ふく)れあがった――――(さけ)(かお)り。

 ふぉん♪

『イオノ>さっきと同じ魔法を使って、

     ただし、唱えるごとに首を大きく回して、見得を切ってね♪』


「ひのたま」

 まずひとつ――見得(みえ)っちゃぁなんだぜ?

 ひとまず(くび)をブォォォォンッと、(おお)きく(まわ)しとく。


「ひのたまひのたま」

 こんどは同時(どうじ)にふたつ。

 (くび)をブォォォォンッと(まわ)して――


「ひひののたたまま」

 さらによっつ。

 (くび)をブォォォォンッと――


「ひまのひたのまた」

 さらに――ブォォォォンッ♪

 まるで獅子舞(ししまい)じゃぁねーか!


 くそう(くび)が、かなり(つれ)ぇ――――!!

 おい、いつまでやりゃいーんだ?

 なんとか言えや、馬鹿神(ばかがみ)めっ!


「ひののひたたまひひたまぁやぁ――――!」

 もう知るか――ブォォォォンッ♪

 渾身(こんしん)の舞い。

 そして火の(たま)をきっかり40個、(はな)ってやったぜ!


 ばっしゅじゅじゅぅぅぅぅっ――――♪

 燃えろ燃えろ、みんな燃えちまえやぁぁ――――ぁ?

 ぼぼぼぅわぁぁっ――――♪

 (ちい)さな種火(ひのたま)が、(おど)るように。

 ちりちりと――――空中(ちゅう)(はし)って、消えていく。

 あれ? 今度(こんど)は、燃え(ひろ)がりやがらねぇぞ?

 おれはリオと、(かお)見合(みあ)わせた。


 わきあがる大歓声(だいかんせい)

 うるせえ、子供たち(がきども)め!

 おにぎりどもは(はし)(まわ)るな、(あぶ)ねぇから!


「さぁ――レーニアちゃん♪ これなら文句(もんく)ないでしょ? そのおリボンは、本当(ほんとう)にただの(ぬの)よん。威力(いりょく)が出たのは、単純(たんじゅん)にシガミーの詠唱力(えいしょうりょく)のせいってわっけ()

 がしりと四角(しかく)(うつわ)にしがみ付く、根菜(こんさい)のような御神体(ごしんたい)

 その御神体(からだ)がプスプスと、焦げ(はじ)める。

 それまだ、(あつ)いぞ?


詠唱法(えいしょうほう)? いまの見事(みごと)魔法(まほう)は、ひょっとして……ひそひそ……生活大魔法(せいかつだいまほう)ですか?」

 (こえ)をひそめる給仕服(きゅうじふく)


「うん? 〝生活大魔法(せいかつだいまほう)〟って……ひそひそ……なんだったっけ()

 つられて根菜(いおのはら)まで、(こえ)をひそめた。


天狗(テェーング)さま考案(こうあん)の、日の本生(ヒーノモトーう)まれの修行者(しゅぎょうしゃ)のみが使(つか)える詠唱法(えいしょうほう)なのでは?」

 あ、いつだかリオに、〝魔法(まほう)(かさ)ね掛け〟を(ため)してもらったときに――

 そう言う(はなし)をしたな……烏天狗(ぼく)が。


「そう! そうわのよっ! で、燃える媒体(もの)を散らせばぁ加減(かげん)もできるからぁーさぁー、今日(きょう)(ところ)わぁ、あたくしさまに(めん)じてぇ、(ゆる)してくれなぁいぃー――――じゅるるり()

 めずらしく、おれの(たす)けに(はい)った美の女神(いおのはら)

 その目が、出来(でき)たばかりの菓子(プリン)おかわり(・・・・)へと(そそ)がれている。


「ふぅ、わかりました。詠唱法(えいしょうほう)(かん)しては、いろいろ(ため)してみましょう。それまでは普通(ふつう)生活魔法(せいかつまほう)使(つか)ってください。良いですね?」

 ふぅ。いつもの小言(こごと)くらいに、落ちついてくれたぞ。


「((たす)かったけど、お(まえ)さまよ。(じつ)は、こいつ(・・・)を食いたかっただけだろ?」

 ふぉん♪

『イオノ>そんなことないのよ。食べて良いでしょ♪』

 わかった。冷えたら、食って良いぞ。


 そして気づけば――――

「なぁにこれぇ? すっごく綺麗(きれい)青色(あおいろ)!」

 ビビビーの(こえ)

 ふたたびの大歓声(だいかんせい)

 うるせえ、子供たち(がきども)め!

 おい、ソッチは(なに)した、迅雷(ジンライ)


「きれいでしょぉ? シガミーのリボンと(おな)(いろ)で、焦げちゃった(ところ)を塗ってみたんだよ♪」

 レイダがおれの相棒(ジンライ)を振りまわして、はしゃいでやがる。


「(カーボンナノテクタイト構造(こうぞう)発現(はつげん)により、炭化(たんか)した木材(もくざい)表面強度(ひょうめんきょうど)が、モース硬度(こうど)5・9へ到達(とうたつ)しました)」

 うるせえ。わからん。

 わからんが――木で組んだ(やぐら)(ほとん)どが。

 闇夜(やみよ)を切り取ったかのような、鮮烈せんれつ(あお)で塗り替えられていた。


「うっわ、これおいしい♪」

 あれ? 子供たち(がきども)(きゅう)に、食い(はじ)めたぞ。

 そういや、木が燃えたにおいがなくなってるな。


「やっぱり、お砂糖多(さとうおお)めで大正解(だいせいかい)っ♪ こっちの(あたら)しいのも、食べ(くら)べてみてぇー()

 はしゃぐ根菜(こんさい)

 舞台(ぶたい)(むら)がる、子供(こども)たち。


 ふぉん♪

『>カーボンナノテクタイト構造には、

  強力な消臭効果もあるようです。

  建材としてのポテンシャルは、計り知れません』


「よーし。その(あお)(かべ)わぁ――レイダが(つく)ったから、〝レイダ(ざい)〟と名付けるぞ!」

 せいぜい、お(まえ)さまも猪蟹屋製品(ししがにやせいひん)に名を(つら)ねとけや。

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