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458:央都猪蟹屋プレオープン、タウリンと洞窟カフェ

先日(せんジつ)ハ、シガミーガ大切(たイせつ)測定魔道具(そくてイまほうぐ)破損(はそン)してシまい、(もウ)(わケ)ありませんでシ()

 ヴォォォォンッ――♪


 換気口(かんきこう)から、迅雷(ジンライ)(もど)ってきた。

 おれは(うしろ)(がみ)独古杵(どっこしょ)を、収納魔法(しゅうのうまほう)へ――すぽん♪

 こっそりと、普通(ふつう)(かんざし)と取りかえておく。


「まだ原因(わけ)もよくわかっちゃいねぇが、ありゃぁ一方的(いっぽうてき)におれが(わる)かった。堪忍(かんにん)してくれやぁー」

 (ふと)ももに両手(りょうて)を置き、へへぇと(くか)(こうべ)を垂れた。


「いえいえ。それほど高価(こうか)魔法具(まほうぐ)ではありませんし」

 そう言ってくれるのは、ありがたいが。


「あとで詫びをいれに行くつもりだったんだがぁ、どうにも(いそ)しくてなっ――」

 央都(おうと)にギルド支部(しぶ)何カ所(なんかしょ)か有る。

 大女神像(だいめがみぞう)があるイオノフ教大神殿(きょうだいしんでん)の向かいに、ギルド本部(・・・・・)建物(たてもの)があるのも知ってる。

 ギルド本部(・・)はギルド職員(しょくいん)のための施設(しせつ)で――

 (なか)がどうなってるのか、冒険者(おれたち)はよく知らん。


本当(ほんとう)におかまいなく。(わたし)査定(さてい)にも影響(えいきょう)はないので気にする必要(ひつよう)はありません」

 このおっちゃんは五百乃大角(いおのはら)みてぇな(はら)をしてる(わり)に、言動(げんどう)にそつがねぇ。

 仕事(しごと)出来(でき)(やつ)は、(ちか)くに居るだけで(なに)かしらの(たす)けになる。

 おれが前世(ぜんせ)(つち)った、生き抜くための指南(ヒント)(のっと)り――


「じゃぁ、今日(きょう)はどんな用事(ようじ)だい? 猪蟹屋(うち)にあるもんなら、(なん)でも好きに持ってってくれ!」

 ぱんと景気(けいき)よく手を(たた)き、土間(どま)に詰まれた自慢(じまん)品々(しなじな)をまえに――

 諸手(もろて)を挙げてみせる。


「いいえ、そういうわけには(まい)りません。本日(ほんじつ)うかがったのは別件(べっけん)です」

 そう言って(かばん)から取り出されたのは――

 一冊(いっさつ)冊子(さっし)


『小型女神像/取扱説明書』

 女神像(めがみぞう)の絵が描いてあるぞ?


「リオレイニア非常勤(ひじょうきん)教員(きょういん)から、使(つか)(かた)(おし)えて欲しいという依頼(いらい)がありましたので、こうして参上(さんじょう)した次第(しだい)です」

 ふぉん♪

『>カウンター横の、イオノファラーを置くための台座。

  その使い方についての話と、思われます』


「あー、うーん。(まい)ったぜ、これから子供(がきども)が押しよせて来やがるってのに……おっちゃんは今日(きょう)時間(じかん)はあるのかい?」

 「(ひま)かい?」と、目を見る。


本日午後(ほんじつごご)学院(がくいん)がお(やす)みですし、もう仕事(しごと)所用(しょよう)もありませんが」

 「(ひま)ですね」と、目を見返(みかえ)された。


「なら、ちいと待ってちゃくれねぇか? (いま)から(つく)菓子(かし)を、是非食(ぜひく)ってもらいてぇんだ♪」

 おれは、土間(エントランス)から(つな)がる廊下(ろうか)へ駆け込み――

「おまえら手伝(てつだ)え! 地下(ちか)にフェスタのときみたいな、座席(ざせき)(つく)るぞ!」

 (なに)もない部屋(へや)

 行儀良(ぎょうぎよ)正座(せいざ)する、猫と馬(・・・)号令(ごうれい)を掛けた。


「ぐーすやぁ……みゃにゃがぁー()

「ぶふひひぃん? ……ひひひぃぃぃん?」

 器用(きよう)にも狸寝入(たぬきねい)りをしていた、(ねこ)(うま)(くび)をもたげる。

 コイツらは寝る必要(ひつよう)がねぇから、無人工房(むじんこうぼう)仕事(しごと)が終わると――こうして時間(じかん)を持て(あま)す。


「ぶふひひひぃぃん?」

 寝ぼける猫の魔物(おにぎり)(うし)(くび)(くわ)えて――ぽっきゅらぽっきゅららと。

「ふぎゃみゃにゃがにゃ――!?()

 引きずられる猫の魔物(おにぎり)と、おっちゃんの目が合った(・・・・・)


「おや、これは(めずら)しいですね。ケットーシィと、見たことのない……子馬の魔物ですか(・・・・・・・・)?」

 すげぇ、おにぎりたちをみて(どう)じなかったのは――コントゥル家の騎馬隊隊長(きばたいたいちょう)に次いで二人目(ふたりめ)だ。


(かや)(ひめ)さまっ、お客人(きゃくじん)食堂(しょくどう)――応接室(おうせつしつ)へお(とお)ししてくれ。あと、おにぎりたちに、神域惑星(しんいき)使(つか)ってる、あの四角(しかく)小鉢(こばち)を40……いや、100個くらい持ってこさせてくれ――――どかばたん!」

 さぁ(いそ)しいぞ。

 猪蟹屋地下(ししがにやちか)耐爆耐熱耐魔法(フルレジスト)超多目的(ちょうたもくてき)対魔王結界(スペース)改装(かいそう)するべく――

 おれは、階下(かいか)への階段(かいだん)を駆け下りた。


   §


「あれ? 地下(ちか)洞窟(どうくつ)が、お(みせ)になってる♪」

 猪蟹屋従業員ししがにやじゅうぎょういんから、学友(がくゆう)たちを(まも)っているつもりなのか――

 生意気(なまいき)有名(ゆうめい)なレイダが、身を(かが)めつつおりてきた。


 うぞぞろうぞぞろ、がやがや、ややがやっ――「みゃにゃぎゃぁぁ――()


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うぎゃっつ!? (ねこ)魔物(まもの)だっ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 今日(きょう)は、いつものA組(クラス)だけじゃなく(ほか)教室(きょうしつ)(らつ)らも居る。

 初見(しょけん)は、こうして(おどろ)くのが普通(ふつう)だ。


「あの子は、だいじょうぶですわ。(つよ)(たた)いたりしなければ、やり(かえ)されることはありませんもの♪」

 ビビビーが説明(せつめい)を、かってでてくれる。


「「「「「「(つよ)(たた)くと……やり返すんだ(・・・・・・)?」」」」」」

 子供(こども)たちの(なか)でも冷静(れいせい)(やつ)らが、肝心(かんじん)(ところ)に気づいた。


「ひっひひひぃぃぃん? ひんひんひひぃぃん?」

 つぎは(てん)ぷら(ごう)(ばん)でしょ?

 ねぇ、(てん)ぷら(ごう)出番(でばん)はここでしょ?

 とでも言いたげな、大暴れ(はしゃぎよう)


 ぽきゅぽぽきゅぽぎゅらららっ――!

 手綱(たづな)をつかんでいた、(かや)(ひめ)が引きずられるが――

 まあ、放っとく。

 子馬(てんぷらごう)はおにぎりと(ちが)って、悪さ(・・)はしねぇからなぁ。


 子供(こども)たちとの距離(kとり)を詰めていく子馬(こうま)

 (ぎゃく)子馬(こうま)から距離(きょり)を取る、子供(こども)がひとり。

 (おお)きく遠回(とおまわ)りし、おれの背に(かく)れる給仕服姿(メイドすがた)子供(こども)


「シガミー、お手伝(てつだ)いすることが有れば言って♪」

 (はな)れていく子馬(こうま)から目を(はな)さない、ネネルド(むら)のタター。

 どういうわけだか彼女(かのじょ)は、ラプトル王女(おうじょ)(つく)ったあの馬ゴーレム(てんぷらごう)に――

 毎度(まいど)袖口(カフス)を引っかけられ、引きずられるのだ。


 この対魔王結界(ちかどうくつ)王女謹製(おうじょきんせいの)巨大(きょだい)ゴーレムで――しかもその(はら)(なか)らしい。

 伯爵令嬢(はくしゃくれいじょう)天狗役(てんぐやく)熾烈(しれつ)試し斬り(・・・・)に耐えたことから――

 〝魔王(まおう)という生物(いきもの)(ふう)じ込めるために(つく)られた(もの)〟であることは間違(まちが)いないが――

 この洞窟(どうくつ)地中を歩く様(・・・・・・)というのは、いまいち想像(そうぞう)できない。


 そんな殺風景(さっぷうけい)場所(ばしょ)(いま)は、その様相(ようそう)変化(へんか)させ――

 とても地下洞窟(ちかどうくつ)や、対魔王結界(たいまおうけっかい)にはみえない。


「へぇー。ビオトープを(なが)められる、洞窟(どうくつ)カフェなんてぇ素敵(すてき)じゃないのよさぁー()

 女神(イオノファラー)御神体(ごしんたい)である五百乃大角(いおのはら)(うつ)し身(物理(ぶつり))が、歓声(かんせい)を上げる。


 檜舞台(ひのきぶたい)櫓組(やぐらぐ)みのテーブル(せき)

 茅の姫(ほしがみ)出してくれた(・・・・・・)木々(きぎ)が生い(しげ)る、(いま)の有り(よう)は――

 ふっふっふっ、とても洞窟(どうくつ)にはみえないだろうさ。


「良いわね、乗ってきたわぁ♪ さぁ、メニューを。メニューをお寄越(よこ)しなさぁい()

 ちっ、お(まえ)さまは、またガッツリ食う気か?

 子供たち(がきども)は喜んでくれてるが、(かみ)さんは櫓組(やぐらぐ)みの(かこ)いを一瞥(いちべつ)したきり――

 降りたったテーブルの(うえ)(なに)かを、(さが)(はじ)めた。


 ふぉん♪

『>ガムラン温泉街の仕事にも引けを取らない、

  良い仕事と自負しています。気落ちする必要はありません』

 だぜよなぁ。


 階段途中(かいだんとちゅう)(つく)った頑丈(がんじょう)な木の足場(あしば)

 そこへ石床(いしゆか)を敷き、可愛(かわい)らしい(つくえ)椅子(いす)(なら)べた。

 「(にわ)を出せる」と言うから茅の姫(ほしがみ)にまかせた〝(にわ)〟も、相当立派(そうとうりっぱ)だ。

 っていうか木々(きぎ)(まる)く刈り込んだありゃぁ……おにぎりや、でかい子馬(こうま)か?

 子供(こども)たちが、目を(かがや)かせる。


「どうぞ、メニューです♪」

 タターが、出せる料理の一覧(おしながき)――光る黒板(タブレット)をテーブルに置いてった。


「ふふーん♪ この(たて)だか(よこ)だかわからないほど肉厚(にくあつ)なお肉料理(にくりょうり)――ステキ♪」

 いつの間にか(せき)に着いていた、大食らいの子供(ビステッカ)


「あら、ほんとねぇん――ステキ♪ じゃぁ、あたくしさまも(おな)(もの)おぉー♡」

 五百乃大角(おまえさま)がたは、本当(ほんとう)にまた食う気か。


 ふぉん♪

『>喰らいつくビステッカ(じょう)を振り切り十数皿平らげてから、

  2時間49分しか経過していませんが?』

 ふぉん♪

『イオノ>うん。岩壁ツアーは良い腹ごなしになるわねぇん♪』

 だめだな。まるで(はなし)(つう)じてねぇ。


「では、(わたくし)(おな)(もの)をいただけますか? 規定(きてい)料金(りょうきん)は、お支払(しはら)いいたしますので」

 あれ? なんでか、この大食らい席(・・・・・)にもう一人(ひとり)(すわ)ってる(やつ)がいるぞ。

 それは食堂(しょくどう)……応接室(おうせつしつ)へお(とお)ししたはずの、ギルド支部職員(しぶしょくいん)のおっちゃんだった。

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