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453/743

453:猪蟹屋四号店(央都拠点)、納品そして

随分(ずいぶん)立派(りっぱ)な、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)ですのね?」

 猪蟹屋(ししがにや)四号店(よんごうてん)予定(よてい))の一室(いっしつ)

 (つくえ)(なら)べたのは、二本(にほん)(かわ)ベルト。

 ネジ止めされた(いた)(こし)に巻き付けやすくするため、かすかに曲げてある。


 (ひと)つはリカルル専用(せんよう)、まえに(つく)って置いたんだが――

 (わた)すのを、すっかり(わす)れてた。


 そしてもう(ひと)つは、さっき(つく)ったミノタウ装備一式用(そうびいっしきよう)のだ。

 どちらも豪奢(ごうしゃ)(こしら)えでネジ……螺旋(らせん)(みぞ)(きざ)んだ(くぎ)で、取り付けられている。


「うん。(あか)いのが(ひめ)さんの甲冑一式(かっちゅういっしき)が入れられる。(くろ)いのがミノタウ装備一式(そうびいっしき)が入れられるようになってる」

 収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)と言えば猪蟹屋(ししがにや)猪蟹屋(ししがにや)と言えば、おれシガミーの出番(でばん)だぜ。

 近頃(ちかごろ)じゃ商人連中(しょうにんれんちゅう)が、猪蟹屋(うち)収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)荷物運(にもつはこび)びに使(つか)い出してる。

 (なに)(はい)ってない収納魔法具だけ(・・・・・・・)でも売れるんじゃねぇかって、リオと(はな)してるくらいだ。


(コわ)レた甲冑(かっチゅう)にかざシて、(あか)りの収納魔法具(しゅウのうまほうぐ)使(ツか)ってみテくださ()

 使(つか)(かた)迅雷(ジンライ)説明(せつめい)するが、魔法具(まほうぐ)使(つか)(かた)全部同(ぜんぶおな)じ。

 (とく)指示(しじ)ない場合(・・・・)は、灯りの魔法(ひかりのたま)ひとつで発動(はつどう)する。


「はぁ? (こわ)れた家宝(かほう)一体(いったい)、どうするって言うのかしら?」

 大分(だいぶ)(いぶか)しまれてるぞ?


 破片(はへん)ひとつ(のこ)さず(ひろ)ってきた、姫さん(リカルル)赤い甲冑(よつあし)

 (きつね)(めん)は、かろうじて原形(かたち)(たも)っているけど――

 (しと)(とり)仮面(かめん)とかは、ひび割れて折れ曲がってしまっているし。


 たしかに(きつね)(みみ)(さき)から、機械(きかい)の尾の(さき)まで。

 バッキバキのズタボロだからなぁ。


 おれは(くろ)(すみ)のような(いろ)の、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)を見つめる。

「(おい、ミノタウ装備(そうび)片喰(かたばみ)(ひづめ)】は、やばくねぇか?)」

 ふぉん♪

『>そうですね。完全フル装備のリカルル相手に、

  四度の会心で、ほぼ無力化する装備は、

  とうてい普段使いには、向きません』


 ヴッ――――スポン♪

 姫さん(リカルル)がしぶしぶと、割れた甲冑(かっちゅう)格納(かくのう)する。

「ではもういチど、(アか)りノ収納魔法具(しゅウのうまほうぐ)使(ツか)ってみテくださ()

「んぅにゅ――?」

 (くび)をかしげながらも、言うことを聞いてくれる。

 高貴(こうき)彼女(かのじょ)の、こういう(ところ)立派(りっぱ)だと(おも)う。


 ガシャガシャゴトン♪

 展開(てんかい)され(あら)れた甲冑(かっちゅう)には、当然(とうぜん)ヒビなど(はい)っていない。


「「「「うぎゃっ!?」」」」

 (ひめ)さんにリオに、伯爵(はくしゃく)さまに参謀(さんぼう)(ひと)

 そこまで(おどろ)かんでも、良いだろうが。


 全部(ぜんぶ)分解(ばら)して完璧(かんぺき)調整(ちょうせい)をするなら、時間(じかん)も掛かるが――

 (こわ)れた欠片(かけら)(もと)どおりに(つな)ぐだけなら、上等(じょうとう)(つく)りの収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)ひとつでこと足りる。


「カラテェー(くん)早業(はやわざ)にも(おどろ)きましたが――これはっ!?」

 リオレイニアの(かお)(あお)ざめている。


(わたシ)かイオノファラーガ同席(どウせき)するナらシガミーにモ、修復(しゅうフく)スキル同等(どうトう)装備(そウび)メンテナンスガ可能(かノう)()

 わざわざ言うことでもないだろ?

 それにおれひとりでも、出来(でき)るだろうがよ?


 ふぉん♪

『>それでは店主であるシガミーが、装備修復にかり出され、

  猪蟹屋の店舗業務や、学院生活に支障が出ます』

 そういうことか。わかった。

 それに、(おな)じことが出来(でき)ると知られりゃ――

 ふぉん♪

『>同一人物だと、勘ぐられる可能性が高まります』

 だな。


「えっ!? 折れた魔剣(まけん)イヤーイを立ち(どころ)(つな)いだのを、見たことはありましたけれど――」

 自分(じぶん)甲冑(かっちゅう)(ひろ)いあげ、その具合(ぐあい)(たし)かめるガムラン最凶(さいきょう)


烏天狗(カラテェー)(くん)(つづ)いてシガミーさんにまで、そんな特技(とくぎ)が……猪蟹屋(おみせ)営業内容(うりもの)が、どんどん増えていきますわ、くすくす()

 (ちゃ)(というか(れい)(つめ)たくて(あま)い飲み(もの))を(はこ)び、勝手(かって)同席(どうせき)した星神さま(かやのひめ)が――

 勝手(かって)なことを言いやがる。

 烏天狗(からすてんぐ)もおれも、全部(ぜんぶ)おれだろうが!


「ただおれや収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)だと欠けた部分を継ぐ(・・・・・・・・)のに限度(げんど)があるから、あとで(おり)を見て工房長(ノヴァド)なり烏天狗(カラテェー)なりに見てもらってくれよ」

 〝(ひづめ)のロッド〟による、壊され方が良かった(・・・・・・・・・)ってのもある。

 光輪(レーザー)みたいに(けず)り斬るような(こわ)(かた)だと、格納展開(しゅうり)しても装備(そうび)短くなっちまう(・・・・・・・)からな。


「まったく、ヒーノモトー国出身者(こくしゅっしんしゃ)はこれだから――ぱちぽちぺち♪」

 リオレイニアが、手にした計算機(まほうぐ)

 その使(つか)(かた)伯爵(はくしゃく)参謀(さんぼう)二人(ふたり)も、(おぼ)えたばかりだ。


「リオレイニア、これはリカルルの甲冑一式(かっちゅういっしき)の……修繕費用(しゅうぜんひよう)か?」

 (まゆ)をハの字にする伯爵(とのさん)

「はい。本来値段(ほんらいねだん)など付けられないほどのレア装備修繕費(そうびしゅうぜんひ)ですが、猪蟹屋(うち)相場(そうば)でしたらこれくらいになります」

 背後(はいご)(まわ)った男性二人(だんせいふたり)に、金額(それ)をよく見せる猪蟹屋(ししがにや)番頭株(ばんとうかぶ)


魔物境界線(ガムラン)ならいざ知らず、これでは央都(おうと)鍛冶(かじ)ギルドが(だま)ってないだろう。せめて(ばい)請求(せいきゅう)す――」

 どうもおかしい。

 彼女(リオ)提示(ていじ)した金額(きんがく)が、(たす)すぎたらしいぞ。


「いーやいやいや! これはこの収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)出来(でき)ることだ、(かね)なんか取れるかっ!」

 手をかざすだけで出来(でき)仕事(しごと)で、(かね)は取れん。

 スキルすら(ろく)に、使(つか)ってねぇー。


 おれは(あか)収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)をつかんで――ヴッ、すぽん♪

 甲冑一式(よつあしぜんぶ)を、収納魔法具(てつのいた)格納し(おさめ)た。


「それでな。この(かわ)ベルトを、(こし)に巻いてみてくれるか?」

 無理矢理(むりやり)(はなし)(すす)める。


「これで良いかしら?」

 (こし)にベルトを巻き、颯爽(さっそう)と立ちあがる伯爵令嬢(リカルル)

 派手(はで)(いろ)が、本当(ほんとう)に良く似合(にあ)いやがる。


 収納魔法具(てつのいた)には、刻印(こくいん)(きざ)んである。

(いた)(よこ)から(ちい)さな(つま)み……取っ手(レバー)を引っ張りだして、(つよ)めに下へ押して(・・・・・)みてくれ」

 これは裏天狗(うらてんぐ)強化服(シシガニャン)を、長く使った(・・・・・)ことで――

 出来(でき)るようになったらしいんだが、(なん)でかはわからん。


 文句(もんく)も言わず――カチリ、ヴォォン!

 (なに)も起きない――「もう一回(いっかい)、すこし(つよ)めに」

 この収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)機能(しくみ)使(つか)うには、アーティファクトの(めし)である神力(しんりょく)必要(ひつよう)だ。

 それを生み出すには、取っ手(レバー)(つよ)く押さないといけない。


 (くち)(とが)らせつつも――ヴォヴゥゥン!

音声入力(おんせいにゅうりょく)朱狐(しゅぎつね)シリーズ装着(そうちゃく)!」

 リカルルが取っ手(レバー)を押すと、リカルルの(こえ)がして――


 パァァァァッ――――カシャカシャしゅるるるっパチパチン♪

 派手(はで)なドレス姿(すがた)だったリカルルが――

 狐面の甲冑(しゅぎつねシリーズ)一式(いっしき)を、一瞬(いっしゅん)で身につけた。


「あら!? なにこれ、素敵(すてき)ですわね♪」

 元々(もともと)収納魔法(しゅうのうまほう)はある程度(ていど)(もの)展開する場所(だすばしょ)をうまい具合(ぐあい)(ととの)えてくれる。

 装備(そうび)仕舞(しま)うことや、(うえ)から羽織(はお)った状態(じょうたい)で取り出すことは、(いま)までも出来(でき)た。

 だがこの最新型(さいしんがた)は、いま身につけている(もの)入れ替える(・・・・・)

 そう、つまり一瞬(いっしゅん)着替えられる(・・・・・・)のだ。


 ふぉん♪

『イオノ>変身ヒーローか、魔法少女みたいねぇん♪』

 うるせぇ、わからん。


「へへっ、良いだろっ♪ 着替(きが)えるための仕掛(しか)けを(ほどこ)してある。使(つか)(かた)にコツが要るから、わからなかったらおれか迅雷(ジンライ)に聞いてくれ」


「はイ。収納(しゅうノう)さレた衣類(いルい)ニふたたび着替(きガ)えルときにも、(おナ)じよウに取っ手(レバー)ヲ押シ下げテください。まタ衣類(いるイ)(かン)しテも(つクろ)わレ洗濯(せんタく)されたヨうな状態(じょうタい)デ取り出されますノで便利(べンり)()

 (じつ)素材(そざい)として魔導伝導率(まどうでんどうりつ)(たか)いミノタウの(つの)を、ほんの(すこ)使(つか)ってるから特別製(とくべつせい)ではある。


「「「「はぁ!?」」」」

 また目を(まる)くされた。

「どうした? 家宝(かほう)仕舞(しま)収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)なら、これくらい便利(べんり)でも(ばlち)は当たらんだろうが?」

 それにあくまで登録(とうろく)した、ひとつの装備(そうび)(かん)してだけだぞ?


「ねえ、ちょっと……どーいうこと?」

「これは他言無用(たごんむよう)で……口外(こうがい)しないでください」

従者(じゅうしゃ)ギルドも、(だま)っていないでしょう」

「はははっ、これはもう(わら)うしかないのではないか?」

 どよどよどよ、わやわやわやわや?

 だめだな、うるせえ。(らち)があかん。


「とにかく、こっちの大鎧(おおよろい)。ミノタウロース装備一式入(そうびいっしきい)りの収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)を持って(かえ)ってくれ!」

 出来(でき)が良すぎて文句(もんく)を言われるとは、(おも)わなかった。


   §


(わたくし)このたび、央都猪蟹屋(おうとししがにや)店舗内(てんぽない)ギルド出張所(しゅっちょうじょ)受付嬢(うけつけじょう)として勤務(きんむ)することになりましたわ、うふふ♪」

 書類(しょるい)を手にガムラン(ちょう)から、蜻蛉返(とんぼがえ)りのリカルル。

 いつもの受付嬢(うけつけじょう)制服(せいふく)に、真っ赤な革ベルト(しゅうのうまほうぐ)

 太刀緒(たちお)……剣帯(けんたい)を革ベルトに(とお)し、豪奢(ごうしゃ)な〝まがい(もの)聖剣(せいけん)〟を帯剣(たいけん)している。


 納品(のうひん)したミノタウ装備(そうび)は、無事受(ぶじう)け取ってもらえたようで(なに)よりだが――

 書類(しょるい)をひったくる給仕服(リオレイニア)


「これ……週一(しゅういち)だけじゃないですか。(おど)かさないでください、お(じょう)さま!」

 ほんとだぜ、寿命(じゅみょう)(ちじ)まるかと(おも)ったぜ。

 ふぅ。(しゅう)一日(いちにち)くらいなら、なんとかなるんじゃね?

 そう(おも)っていたときが、おれにも有りました。

番頭株/やがて番頭になる地位にいる人。

変身ヒーロー/合理性を排除した、特殊能力を持つ正体へのモードチェンジを主体としたヒーロー。

魔法少女/合理性を排除した、特殊能力を持つ正体へのモードチェンジを主体としたヒロイン。

太刀緒/帯剣するため鞘を結ぶ組紐。

剣帯/帯剣するための金具や革帯。

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