表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

451/743

451:猪蟹屋四号店(央都拠点)、家宝勝負観戦会場

 対魔王結界(たいまおうけっかい)縁取(ふちど)蹂躙(じゅうりん)していた、狐火(きつねび)月輪(がちりん)が――ぽひゅぽわぁん♪

 気の抜けた(おと)(とも)に、霧散(むさん)した。


 リカルルの魔力(まりょく)が尽きると、狐火(きつねび)維持(いじ)できなくなるのは当然(とうぜん)だ。

 だが、今彼女(いまかのじょ)蘇生薬(エリクサー)使(つか)った直後(ちょくご)のように――

 無傷(むきず)状態(じょうたい)で、そこに居る。

 神力(しんりょく)(もと)(もど)らんようだが、〝狐火・(ウィルオーウィス)仙花(プ・レーザー)〟も〝狐火(きつねび)月輪(がちりん)〟も撃ち放題(ほうだい)だ。


「(なぁ、さっきの(ひかり)の輪に(ひめ)さんが、〝狐火(きつねび)月輪(がちりん)〟って名付(なづ)けたんだが――)」

 ふぉん♪

『イオノ>狐火・かちりん?

     なんか、かわいいわねん♪』


「(〝月輪(がちりん)〟な。(つき)みたいな(まる)(かたち)のことだ。それで、〝ウィルオーウィスプ・レーザー〟みたいな(あざな)は有るか?)」

 (へこ)んだ金網(かなあみ)を――ヴッ、ゴゴンメキメキャ!

 ざっと(なお)しながら、聞いてみた。


 ふぉん♪

『イオノ>それって、迅雷が振ったルビでしょ?

     閉じた光の輪っかなら、さしずめ、

     〝クローズドサーキット・レーザー〟ってとこかしらん?』


「(そいつぁ、どんな意味(いみ)があんだ?)」

 ウィルオーウィスプ・レーザーは〝鬼火(おにび)怪光線(かいこうせん)〟だろ。


 ふぉふぉん♪

『イオノ>妙に食いつくわね?

     粒子加速器だと〝リニアコライダー〟になっちゃうし、

     封鎖怪光輪?』


『ヒント>クローズドサーキット/競技を行うための閉じられた周回路のこと』

 わからん。「(めし)を食わせろ」と言い出さねぇように、気をそらす(はなし)を振ってみたが。


「〝封鎖(ふうさ)怪光輪(かいこうりん)〟……あんまり格好良(かっこうよ)くねぇなー」

 ヴヴヴッ――――ゴゴンガガンドゴドゴォン!

 (あか)りの魔法具(まほうぐ)(こわ)れて薄暗(うす)ぇから、足場(あしば)(した)沢山設置(たくさんせっち)した


 パパパパァァァァッ――――!

 よし、(あか)るくなった。

 赤い狐(リカルル)天狗役(ジンライ)も、なんか(ねら)ってやがる。

 洞窟(ドーム)中央寄(ちゅうおうよ)り、対峙(たいじ)したまま微動(びどう)だにしなくなった。


 これだけ大暴(おおあば)れしたんだしさ――

 もう良いよね? 終わりにしよぅよ?

「――ぐっきゅりゅるるっぅ?――」

 女神(いおのはら)(はら)(むし)も、そう言っている。

 けど余計(よけい)なことをして、噛みつかれるのは避けたいわけで。

 もうすこし、見守(みまも)ろう。


「カァッ――――――――!」

 天狗役(てんぐやく)の、(なん)変哲(へんてつ)もない――(いち)(かま)え。

 (ねら)いへ打込(うちこ)み、(もと)(もど)る。

 基本(きほん)(なか)基本(きほん)だが、あと数回当(すうかいあ)てるだけなら(わる)くはない。



「すぅぅぅぅうっぅっ――――――」

 (きつね)中腰(ちゅうごし)(おお)きく(いき)を吸っている。

 手は一本(いっぽん)だけ、地につけてる。


 天狗(てんぐ)は、もうすぐミノタウ装備一式(そうびいっしき)奥の手(・・・)使(つか)えるが――

 向こうも奥の手(・・・)を、(ねら)ってる。

 差し(ちが)える覚悟(かくご)があるなら、(さき)に打ち込む(ほう)有利(ゆうり)だ。


「ココォォォォン、ココォォォォン、ココォォォォォォォッォォォォォォォォォッォンッ――――――――!!!」

 (さき)に手を出されたが、また三度(さんど)遠吠(とおぼ)えだった。

 (みっ)つの光輪(こうりん)が飛び出し、三つ(どもえ)の――――やべぇっ!?


 おれは、金剛力(こんごうりき)ばりの全力(ぜんりょく)で――階段(かいだん)を跳びあがり、上階(ししがにや)への(ドア)(ひら)いた!


   §


「まさか、縦横に(・・・)光輪(ひかりのわ)(はな)つとは、(おも)いませんでしたわ、くすくす()

 おれを出迎(でむか)えたのは、前掛け姿(エプロンすがた)可憐(かれん)おれ(・・)

 星神(ほしがみ)・カヤノヒメだった。


 猪蟹屋(ししがやにや)店先(みせさき)になる予定(よてい)の、土間(エントランス)横壁(よこかべ)

 そこに(おお)きく(うつ)し出されているのは、(あか)(けもの)のような女性(じょせい)冒険者(ぼうけんしゃ)

 ぶつかり合うのは、墨色(すみいろ)大鎧(おおよろい)男性(だんせい)修験者(しゅげんじゃ)


「おまえら……いや、(きみ)たち、これは一体(いったい)?」

 呆気(あっけ)にとられるおれ、いや烏天狗(ぼく)


家宝(かほう)を受け取りに来て、家宝(かほう)(ひと)使(つか)っていては――はぁ」

「ですが血気盛(けっきさか)んな(たたか)いざまは、(へい)たちには良い息抜(いきぬ)きになったようですよ」

 伯爵(との)さんと参謀(さんぼう)(ひと)

 ふっかふかの長椅子(ソファー)(すわ)って、(みず)……いやありゃ、おれの澄み酒(・・・)じゃねぇか。


 うをおをおををををおをぉおぉぉぉっ――リカルルさまぁー!!!

 (みせ)(そと)からも大歓声(だいかんせい)(とどろ)いてるし、どういうことだい?


 パチパチパチイィ――――ジュワァァァッ♪

「にゃみゃがぁー()

 大量(たいりょう)串揚(くしあ)げを、大皿(おおざら)に盛り――

 手近(てぢか)(ぼん)へ載せる、強化服自律型一号(ねこのまもののような)おにぎり。


「もらっていきまぁーす♪」

 (ぼん)(かか)(そと)へ駆けていく、少女(しょうじょ)メイド・タター。

「ひっひひひぃぃぃぃんっ?」

「あっ、ちょっとまって!? ソッチじゃないでしょ?」

 きゃぁぁぁぁっ――――!?

 ぽっきゅららと、(とお)ざかる爪音(てんぷらごう)

 あれ(・・)はいつものことだ。(たす)けるのは後回(あとまわ)しで良いか。


 現場責任者(げんばせきにんしゃ)の、「リオレイニアさんはどこかな?」

「くすくす♪ 猪蟹屋(ししがにや)倉庫(そうこ)として借り受けた、お向かいへ(・・・・・)行っていますわ()

 ごった(がえ)店先(みせさき)(ある)(あいだ)にも、茅の姫(かやのひめ)は空いた食器(しょっき)片付(かたづ)け――

 (とお)りの通行状況(つうこうじょうきょう)確認(かくにん)し、高貴(こうき)なお歴々(れきれき)顔色(かおいろ)をうかがい――

 仕込(しこ)んであったらしい大量(たいりょう)串肉(くしにく)を、鍋番(なべばん)のおにぎりに(わた)したりしている。


 この状況(じょうきょう)は――フェスタの出し物(・・・)みたいなこれは――お(まえ)さんが用意(ようい)したのか?

 ふぉふぉん♪

『ホシガミー>いえ、それが。リオレイニアさんにシガミーの居場所(いばしょ)を聞かれたので――地下(した)様子(ようす)(ぬす)み見たら――』

 目線(めせん)(よこ)(ほう)り投げる、星神(しょうじょ)

 金糸(かみ)が揺れ、給仕服(メイドふく)がはためく。

 (じつ)に、しゃらあしゃらしてやがるな。

 おれが(そだ)った姿(すがた)とは、とても(おも)えん。


「((だれ)かに、見つかったのか?)」

 視線(めせん)を追うと、そこには。

 おにぎりの肩越(かたご)しに椅子(いす)に立ち、串揚(くしあ)げの手際(・・)釘付(くぎづ)けの――

 ふぉん♪

『ホシガミー>はい。ヴィヴィーさんにいつの間にか背後を取られていて』

 星神(ほしがみ)の目も(ぬす)むとは――サキラテ一家(いっか)一度(いちど)調(しら)べておくべきかもしれん。


「おおっ――天狗殿(てんぐどの)ぉ! (なん)という(はな)(わざ)かっ!!」

 伯爵さま(とのさん)が、はしゃいじゃってるじゃんか。

 せめてもの(すく)いは、この場にルリ(・・)……いや(かんが)えるな。

 (おも)うは縁起(えんぎ)(うつつ)(かわ)る。


 横壁(モニタ)を見たら、追い詰められた天狗(てんぐ)が――

 ロッドを袈裟懸(けさが)けに(かま)えてた。


 シュッゴオォォォォォォォォォォォッ――――ヴァチガチバチガチッ!


 ふぉん♪

『ヒント>魔導伝導効率1300%ということは、抵抗値が極端に少ないため、

     光輪のエネルギーに直接触れても、受け流すことが可能です』


 だからってなぁ。

 縦横(たてよこ)(おお)きくなったり(ちい)さくなったりして、切り刻もうとしてくる光輪(こうりん)を――

 ロッドの()()受け止めるか(・・・・・・)

 もう(しんりょく)がなくなるだろ、お(まえ)


 ふぉん♪

『>合成光/DCコンバーターの開発に成功しました。

  神力給電を開始します』

 わからん。

 けど、給電(きゅうでん)ってのは(きゅう)シガミー(てい)設置(せっち)した、神力台(しんりょくだい)の――

 〝賄屋礼巣(わいやれす)充電(じゅうでん)〟だろ?

 ってことは、(めし)を食いながら(たたか)える……無敵(むてき)じゃんか。


 ふぉん♪

『シガミー>姫さんに怪我をさせるなよ。みんなで見物してるぞ?』

 ふぉふぉん♪

『>了解しました』


 じゃぁ、こっちはどうするか。

 天狗役(てんぐやく)手前(てまえ)弟子(でし)である烏天狗(ぼく)が――

 シガミー姿(すがた)(もど)るわけにもいかんし。


「あっ、カラテェー(くん)だ! おいでよっ、王女(おうじょさま)さまも来てるよ!」

 レイダに見つかった。

 ゴーレムの(ひめ)さん……王女殿下(おうじょでんか)もいるのか。

 ますます、シガミーに(もど)れねぇ。


 おれが(もの)(つく)るときの、(くせ)みたいなのを全部見(ぜんぶみ)られてるから――

 烏天狗(からすてんぐ)のまま凝ったことをすると、シガミーとばれかねん。


「お(はつ)に、お目に掛かります。ラプトル王女(おうじょ)さま」

(はじ)めまして。お(うわさ)はぁ、聞いていますららぁん♪」

 (すす)められるまま、(せき)に着く。

 おれの裏天狗(うらてんぐ)は、迅雷(ジンライ)(わた)しちまったし――

 もう、シガミーはさぼってる体裁(ていさい)で、(はなし)(すす)める。


(ところ)で、シガミーちゃんは? 今日(きょう)は居ないのかい?」

 おれ、いやぼくは、厳密(げんみつ)には猪蟹屋(ししがにや)関係者(かんけいしゃ)ではないから、素直(すなお)に訊いてみた。


「それがねぇー。さっきまで居たんだけど、(あわ)ててどっか行っちゃってそれっきりなんだよ!」

 レイダが(おこ)っている。

 どうやら、(いそ)しいタターの代わりに、王女(おうじょ)のお世話(せわ)をしているらしいし。

 今日(きょう)のレイダは、(えら)いな。


 いたたまれなくなったおれは、姫さん(リカルル)好評(こうひょう)だったあれ(・・)(つく)ってやることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ