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450/743

450:コントゥル家家宝(ジンライ)、状態異常〝♡〟のひみつ

「(カチンときたらしいぞ?)」

 天狗役(ジンライ)(あお)りを受けた、四つ足の獣(リカルル)が――

 (かべ)をものすごい(いきお)いで(はし)りだした。


 ガチャガシャガチャガシャ――――バギバガン、ゴロン、ゴドン、バララララッ!!

 当然(とうぜん)鉤爪(かぎづめ)を突きたてられた(かべ)という(かべ)は割れ、剥がれ落ちる。


「――ガムラン最強(さいきょう)だけのことは、有るわねぇぇ()――」

 ガムラン代表(だいひょう)にして、名物(めいぶつ)受付嬢(うけつけじょう)片割(かたわ)れ。

 四つ(あし)(かべ)(はし)る、ご令嬢(れいじょう)は――相当(そうとう)面白(おもしろ)い。

 その矛先(ほこさき)が、こっちに向いていなければだが。


 兜頭(かお)(リカルル)から(はな)さない、天狗(ジンライ)

 拳程度(こぶしていど)(ひづめ)(うえ)

 立てたロッド先端(せんたん)に立つ修験者(しゅげんじゃ)


 それを(ねら)(きつね)のつま(さき)が――ゴッバァァァァァッ!!

 (かべ)(おお)きく割り、力強(ちからづよ)く踏み抜いた。


 視線(しせん)(とお)らず(くび)反対側(はんたいがわ)(まわ)天狗(てんぐ)、その刹那(せつな)


 ィィィィィィィィィィンッ――――――――!!!!

 ドッゴゴゴゴォォォォォォォンッ!

 死角(しかく)から飛びこむ(きつね)


「カァァァァッ――――二の(かま)()

 ()(かた)尖端(せんたん)(わざ)遠方(えんぽう)への打突(だとつ)一点集中(いってんしゅうちゅう)穿(うが)ちを体現(たいげん)する。

 錫杖(しゃくじょう)鉄輪(てつわ)(こん)(さき)を持って突き出し、(うで)から(かた)背骨せなかから(こし)(ひざ)までを一直線(いっちょくせん)に。

 自身(じしん)(ほね)(あし)で押し出し、錫杖(しゃくじょう)正確(せいかく)最速(さいそく)で突き出す(わざ)だ。


 (しん)で当てるのに、向いちゃぁいるが――

「(おまえ、石床(ゆか)を撃つ気か? 背中(せなか)から(ひめ)さんが跳びかってんぞ?)」


「はぁぁぁぁっ――――()

 ズドゴォ――――ゴバッキャッ!!

 地を割り、瓦礫(がれき)が飛び散る!

 まさかその石礫(つぶて)で、(ひめ)さんを落とそうってのか?


 ギャギギィィン――――駄目(だめ)だぜ。

 上体(じょうたい)を起こし、瓦礫(がれき)(けん)(はら)う。

 そのまま、突き出された(けん)が――天狗(てんぐ)大鎧(おおよろい)(むね)(つらぬ)いた。


 ガガァァンッ――――火縄(ひなわ)のような(おと)

 それは二の(かた)反動(はずみ)で、天井(てんじょう)に降りたった修験者(しゅげんじゃ)が――

 天井(ゆか)を踏みしめた(おと)

 いままさに、眼下(がんか)(とお)り過ぎる(あか)(きつね)剣士(けんし)を――

 打ち下ろすための――足の力(にのかまえ)


 赤い狐(リカルル)背中(せなか)

 (なが)一対(いっつい)尻尾(しっぽ)が、生え(はじ)める(あた)り。

 そこへ的確(てきかく)命中(めいちゅう)する――伝説の獣(ミノタウロース)(のこ)した(ひづめ)


 ヒュゴォォウ♪

 (すさ)まじい突風(とっぷう)が巻き起こり、仄暗い炎(きつねび)を揺らす。


 どっどむ――♪

 それは大太鼓(おおだいこ)のような。

 ヴォン♪

 狐面(きつねめん)のちょっと(うえ)

 (あらわ)れる――『♡』。


「――あらかわいい()――」

 どうやらあれが、状態異常(じょうたいいじょう)(かたばみ)〟らしい。

「((いま)まで、どんな状態異常(じょうたいいじょう)になっても、あんな(しるし)が出たことはねぇぞ?)」


 ゴゴォォォン――――バキャゴッ!

 石床(ゆか)(たた)きつけられ――――ガリガリガリギャギィィィ!

 (けず)れる石床(いしゆか)

 ごろりと転がり、(つめ)を立て――ドガッシャン!

 さすがは家宝(かほう)だけのことはあるようで、四つ(あし)(こわ)れた様子(ようす)はない。


「ぐぅわぉぅるるるるぅ――――!!!」

 岩場(いわば)火吐(ひは)(おおかみ)みたいな、(うな)(ごえ)を上げるご令嬢(じょう)

 これもニゲルにゃ、見せられねぇ。

 そろそろ、終わりにしようぜ。


 ふぉん♪

『天狗 LV57

 HP:■■□□□□□□□□705/3067

 MP:■■□□□□□517/1794

 神力:■□□□□□□□□□8%』

 ふぉん♪

『リカルル・リ・コントゥル LV53

 HP:■■■□□□□□□□684/2208

 MP:■■□□□□□□□□714/3401

 神力:■■□□□□□□□□22%』


 ジンライの(めし)が、(のこ)り5(パーセント)

 (ひめ)さんの(ほう)は、効いちゃいるが……なんで(しず)まねぇんだ?


「(この(さい)、負けてやれ。目的(もくてき)は果たせたし――おまえなら(かじ)られた(ところ)で、(いた)くもねぇしよ)」

 ふぉん♪

『>ソレは無理なようです』

「――なんでよ? あたくしさまも、お腹空(なかす)いてきちゃったからぁー、終わりにしましょお()――」


 ふぉん♪

『>リカルルからロックオンされています。強力な攻撃が来ます。

  天狗の四肢が粉砕され、体の中から私が転がり出たら――』

「――面倒(めんどう)なことになるわねぇん。シガミーなんとかしてっ()――」

 なんだと、まだ(おく)の手がありやがるのか?

 これだからコントゥル家の、お(やつ)らさまわぁよぉう!


「(なんとかしろったって、どーしろってんだぜ! だからさっき、代わってやるって言ったのによぉ!)」

 姫さん(てき)をよく見る。よーく見た。

 狐面(あたま)(うえ)の、状態異常(じょうたいいじょう)……(かたばみ)

 これ、すこし(かたち)(へん)じゃね?


「――(へん)って(なに)がぁ()――」

 お(まえ)さんたちが言う、かわいいハートてのは片喰(かたばみ)の葉の(かたち)をいうんだろ?

「――カタバミぃ()――」


 ふぉん♪

『ヒント>カタバミ科の多年草。雑草でハート型の葉を持ち、葉は夜閉じられる』

「(よーく見て見ろ。ハートの(よこ)がほんの(すこ)し欠けちまってるだろうが?)」


「――ほんとだぁ。(はぁと)3/4(よんぶんのさん)()――」

 ふぉん♪

『>この形状から類推するに、あと三回、的中させれば私の勝ちです』


 ぽこん♪

『亥の目シリーズ一式【片喰・蹄】

 伝説級の魔物を象った武器防具一式。

 攻撃力320。

 防御力3280。

 条件効果/【片喰】この鎧を攻撃した対象に、状態異常〝♡〟を付与。

      ♡状態となった対象への魔法攻撃は、一切通らなくなる。

 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、

      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』


 おれと五百乃大角(いおのはら)の目のまえ。

 画面(がめん)(なか)に貼りつけられたのは、ミノタウ装備(そうび)上級鑑定(じょうきゅうかんてい)結果(けっか)


 スタタタットトォォン――――ガッシャタタタタッ――――ココォォォンッ♪

 天狗(てんぐ)のまわりを跳ねながら、(なみ)かを(ねら)狐耳(きつねみみ)

 時折(ときおり)二本足(にほんあし)で((けん)使(つか)うぞと)牽制(けんせい)することも(わす)れてねぇ。

 一発食(いっぱつ)らわせたら、6000越えの攻撃力(こうげきりょく)(たた)き出すはずのミノタウ武器(ぶき)

 それに耐える、(ひめ)さんも(ひめ)さんだが――


 この『文様を完成させることで、対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』ってのは(なん)だぜ?


 ぽここん♪

『蹄のロッド【全属性・片喰】

 伝説級の魔物を象ったロッド。

 常軌を逸した魔導伝導率を誇り、

 芯で当てると無詠唱で魔術(小)が発生。

 攻撃力1300/追加攻撃力100/追加魔法攻撃力3200。

 条件効果/【片喰】芯で当てた場合は状態異常〝♡〟を進行させる。

 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、

      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』

 装備条件/なし』

 もう一枚表示(いちまいひょうじ)される、上級鑑定(じょうきゅうかんてい)結果(けっか)


 どっどむ♪

 ふたたびの、大太鼓(おおだいこ)のような(おと)

 交差(こうさ)する、四つ足(リカルル)修験者(ジンライ)

 (ひめ)さんの(すき)を突いて、迅雷(ジンライ)二発目(にはつめ)的中(・・)させたらしい。


「あっ――!?」

 狐面(きつねめん)の少し上。

『♡୧』

 酢漿草(ハート)の葉は、一枚(いちまい)半分(はんぶん)

「(『文様(もんよう)』てのは、こいつ(・・・)のことで間違(まちが)いなさそうだな)」


「ぎゃふんっ――!!」

 (くず)れ落ちる(ひめ)さん。


 『対象の残存HPに応じた一撃』てのを、当てるまでもなかったか。

 蘇生薬(エリクサー)使(つか)って、(なお)してやらねぇと――ヴッ♪

 おれが蘇生薬(エリクサー)を、取り出したとき――


 カチャカチャカチャッ――――ん?

 機械(きかい)尻尾(しっぽ)(うご)いてる?

 カシャーンッ!

 尾の(さき)が振りおろされ、甲冑(かっちゅう)首元(くびもと)を薙いだ。


 ブッシャァァァァッ――――!

 吹きあがる血――――ォォォォッ、ブツン。

 (なに)かが、断ち切られるような(おと)

 シュバァァァッ――――♪

 緑色(みどりいろ)(ひかり)(あわ)のように(あらわ)れて、赤い獣(リカルル)(からだ)(もぐ)り込む。

 ツォァッ、タパタタタッ。

 血がふたたび空中(ちゅう)を跳び、首元(くびもと)(もど)っていく。


「こほこほけほん、ここぉん?」

 跳びおき、(いき)(ととの)える(ひめ)さん。


 ふぉん♪

『リカルル・リ・コントゥル LV53

 HP:■■■■■■■■■■2208/2208

 MP:■■■■■■■■■■3401/3401

 神力:■■□□□□□□□□22%』


 生きててくれて、たすかったが――全部(ぜんぶ)(もと)(もど)りやがったぜ。

 あれか――コントゥル家の、また(べつ)家宝(かほう)

 おれの(くび)にも掛かってる(おれにはなぜか、効かなかったが)――


 ふぉぉん♪

『追憶の結び紐【消費アイテム】

 身につけた者の命を一度だけ保護する』

 そんな表示(ひょうじ)が出た。


「(だから、お貴族(きぞく)さまは(こえ)えんだ)」

 蘇生薬(エリクサー)の持ち合わせくらい、有っただろうによ。


 (からだ)(うご)かねぇまま、負けるのが(いや)だからって――

 こんな(ため)し斬りで、手前(てめぇ)(くび)を落とすなってんだぜ。

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