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440/743

440:烏天狗(ホシガミー)、胆力とは

「ソレでは伯爵(はくしゃく)さま。子細(しさい)につきましては、リオレイニアさんを(とお)して(いただ)けますでしょうか()

 錫杖(しゃくじょう)から降りる、烏天狗(おれ)

 ガムラン(ちょう)烏天狗(からすてんぐ)天狗(てんぐ)が受けた大工仕事(だいくしごと)なんかは、報酬(ほうしゅう)から手直(てなお)しの手配(てはい)(いた)るまで、彼女(リオ)任せにしちまった。

 (もう)(わけ)ないとは(おも)うが、(ほか)適任(てきにん)が居ない。


「そうじゃなー、彼女(かのじょ)(まか)せておけば……問題(もんだい)はあるまいが」

 そう言って伯爵(とのさん)が、(ふところ)から取りだしたのは横長(よこなが)(はこ)

 それに付いた出っ張りを、ポコポコポコンと押していく、ラウラル伯爵(はくしゃく)


大隊(だいたい)がだいたいコレくらいで、総兵力(そうへいりょく)単純計算(たんじゅんけいさん)でコレくらい……」

 時折(ときおり)計算結果(けいさんけっか)をこっちに見せながら――

 わりと的確(てきかく)強化修繕(きょうかしゅうぜん)費用(ひよう)を、見積(みつ)もってきた。


 ふぉん♪

『ホシガミー>シガミーさん』

『シガミー>どうした?』

『ホシガミー>例の計算機、算木代わりになる薄型の魔法具を、

       伯爵さま、ならびに参謀の方へ進呈しても?』

『シガミー>そりゃ良いな。迅雷(ジンライ)、すぐ作れるか?』

『>ふむ、造作も無いわい』

 薄板(うすいた)二枚(にまい)、取り出す天狗(ジンライ)


「リオレイニアさーん! お手伝(てつだ)いして欲しいことがー、あるんだけどー()

 (さけ)ぶおれ。あわてて、駆け下りてくる給仕服(リオ)

 おい。いつも苦労(くろう)をさせちまってるんだぜ。

 これ以上(いじょう)彼女(かのじょ)仕事(しごと)を増やしてくれるなよ?


 ふぉん♪

『ホシガミー>大丈夫です。むしろ、いろいろと改革していく上での、

       第一歩はここからです。くすくす?』

 一行文字(ティッカー)だってのに、(わら)ってねぇのがわかる。

 (わる)さをするわけじゃねーんだが、時折(ときおり)本当(ほんとう)時折(ちきおり)星神(ほしがみ)さまは(ひと)……(かみ)悪い(・・)ときがあるからなぁ。


 隊列(たいれつ)(あいだ)を縫うように――カカカン、カカカン、カカン!

 靴音(くつおと)(ひび)かせ、(ちか)づく(しろ)(かげ)


「ラウラルさま、ご無沙汰(ごぶさた)しておりました」

 やや遠閒(とおま)まで駆けよった給仕服(きゅうじふく)が、(ひざ)をつき(こうべ)(ふか)()れた。


「ふむ、ひさしいな。リオレイニア♪」

 伯爵(とのさま)声音(こわね)忠臣(ちゅうしん)へと言うよりも、家族(かぞく)への(あたた)かい言葉(ことば)に聞こえる。


「それで(よう)とは(なん)でしょうか、カラテェー(くん)?」

 やや不安(ふあん)げな眼差(まなざ)しを、こっちへ向けてくる。


伯爵(はくしゃく)さまと参謀(さんぼう)(かた)に、これの使い方を(・・・・・・・)説明(せつめい)してほしいんだけど? お(ねが)いできるかな()

 自分(じぶん)(ふところ)から取りだした計算魔法具(けいさんまほうぐ)を、リオレイニアへ手渡(てわた)烏天狗(おれ)

 (こえ)を変える顔布(かおぬの)ごしとはいえ、(おとこ)(わらし)(こえ)にしか聞こえねぇ。


「カカッ――――つきましては、お(やかた)さま。こちらを献上(けんじょう)させて(いただ)きたく、(ぞん)じますじ()

 (ひざ)をつき、両手(りょうて)(いた)を差し出す天狗(てんぐ)

 日の(もと)天狗(てんぐ)はたとえ殿(との)さま相手(あいて)でも、絶対(ぜったい)(こうべ)を垂れたりはしない。


「はてこれは、どういった(もの)なのかな?」

 受け取った(いた)を、(ちか)くに居た参謀(さんぼう)とやらに手渡(てわた)伯爵(はくしゃく)


僭越(せんえつ)ながら、ご説明(せつめい)させて(いただ)きます」

 おずおずと(あゆ)みでる、リオレイニア。

 その所作(しょさ)(かお)簡易魔眼殺し(サングラス)装着(そうちゃく))も、美の権化(ごんげ)でしかない。


 歩み寄られた兵士(へいし)たちが、ズザザッと飛び退いた。


   §


「これは素晴(ばら)らしい! のうシュトレンよ♪」

 もともと(むず)しい(もの)でもないので、5分程度(ふんていど)でレクチャーは

終了(しゅうりょう)

「はいラウラルさま。じつに理にかなった、魔法具(まほうぐ)です」

 はしゃぐ伯爵(ラウラル)と、参謀氏(シュトレン)


「ではカラテェー。この(あと)は、どうしたらよいでしょうか?」

 リオレイニアが、そのまま場を取り仕切(しき)ってくれるようだ。

 すっげー(たす)かる。


 (みじか)く生えた(ひげ)に、手をのばす殿様(とのさま)

 計算魔法具(けいさんまほうぐ)手帳(てちょう)に、(はさ)んだりしてる参謀氏(さんぼうし)

 錫杖(しゃくじょう)を手に立ちあがる、烏天狗(おれ)


 そのまま錫杖(しゃくじょう)(うえ)に飛び乗り、(あたま)ひとつ(たか)(ところ)から――

 師である天狗(てんぐ)(おな)じ、一つ目(<◎>)が書かれた顔布(かお)周囲(しゅうい)を見わたす。


「そうですね……アーティファクトじゃなくて、希少(レア)素材(そざい)使(つか)ってない装備品(そうびひん)は――この場で(・・・・)修繕(しゅうぜん)強化(きょうか)をしちゃった(ほう)(はや)いか()

 星神(おれ)が、そんなことを言う。


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ええーーーーっ!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 一斉(いっせい)に向けられる、兜面(かお)

 それでも星神(おれ)は、(ひる)むことなく――「クカカカッ♪(わらってやがる)

 星神(ほしがみ)さまの胆力(たんりょく)は……リカルル並みじゃね?


「えっと、レア度が(たか)装備(そうび)をまとめて修理(しゅうり)するなら、職人(しょくにん)としてどこかに所属(しょぞく)してないと駄目(だめ)なんだよね? 確認(かくにん)してもらえるかい、リオレイニアさん()

 すぽん♪

 錫杖(しゃくじょう)仕舞(しま)い、スタンと落ちた。


 すっとメイド(リオ)へ差し出されたのは、木製(もくせい)薄板(うすいた)


『カラステング LV:14

 防具鍛冶職人★★★★ /上級修復/体力増強/上級鑑定

       追加スキル/上級解体/伝説の職人/薬草採取/収穫量倍化/植物図鑑

 ――所属:カフェノーナノルン』

 それは、おれの冒険者(ぼうけんしゃ)カード(烏天狗仕様(カラテェーしよう))だった。


「あら、ルコラコルさまの喫茶店(きっさてん)? そういえばカラテェー(くん)は、ルコラコルさまたちと仲良(なかよ)くしていましたねーぇ?」

 冒険者(ぼうけんしゃ)カードをしげしげと見つめる、メイドの眼鏡(グラサン)(ひか)った。


 「そういうことは(さき)に言って欲しかったですね、うふふふ?」

 そんな(こえ)が聞こえてくるようだ。

 魔眼殺し(グラサン)(した)の目を見なくても、ソレくらいはわかる。


「はい。ちゃんと城塞都市(じょうさいとし)オルァグラムに、臨時鍛冶職人(りんじかじしょくにん)として(とど)けは出してある()

 よくもまぁ、(つぎ)から(つぎ)へと(どう)じねぇもんだぜ。

 (うそ)を付いてるわけじゃねぇとは言え、やっぱりこの胆力(たんりょく)普通(ふつう)じゃない。


「ふぅ。ここ猪蟹屋予定地(ししがにやよていち)私有地(しゆうち)ですので、届け出は厳密(げんみつ)には必要(ひつよう)ありませんが、ルコラコルさまへは(わたくし)後日(ごじつ)(はなし)(とお)しておきましょう」

 すっと薄板(カード)を、(かえ)してくれる。


「はい、ありがとうございま()――」

 それで、一体(いったい)どうするんだ!?

 安物(やすもん)(けん)甲冑(かっちゅう)を、この場で(なお)すったって――そう簡単(かんたん)にいくかよ!


「つきましては、コレを使(つか)いま()

 (かや)(ひめ)は、おれの(からだ)(かい)して――ヴッ♪


 (ちい)さな(はこ)を――ぽこん♪

 なんだぜ、この(はこ)

 見覚(みおぼ)えがあるような、無いような?


 チカチカチカッ♪

 うん? なんか(ひか)ってる。

 こりゃ、アイテムID#(ばんごう)(ひか)えておける――ブックマーク記号(きごう)だな。


 ふぉふぉん――チカチカチカ♪

『双王の鎖箱【亡】☆:0/1

 詳細不明だが、希代の役立たず(アーティファクト)。

 装備条件/LV100』


 思い出したぞ、この(くさり)で巻かれた小箱(こばこ)

 これは、城塞都市(オルァグラム)でもらったゴミじゃなくて……使(つか)(みち)一切(いっさい)わからなないアーティファクトだ。

 LV(レベル)100つまり、カンストしないと使(つか)えない無用の長物(なぞのはこ)


「これは、ぼくたちが使(つか)修験(しゅげん)(わざ)と、伝説(でんせつ)職人(しょくにん)スキルを一度(いちど)(あつ)うための――アーティファクトに御座(ござ)いま()

 え、初耳(はつみみ)なんだが?


「つきましては。貴人(きじん)であるあなた(がた)(おどろ)かせてしまうので、アーティファクトの遠距離感知(えんきょりかんち)可能(かのう)方々(かたがた)には――退席(たいせき)して(いただ)きたいのですが()

 ばかやろう。

 いきなり殿(との)さんや(ひめ)さんに、「出て行け(・・・・)」なんて言うやつがあるかぁ!


生意気(なまいき)ですわね、カラテェー?」

 ひぃ、背筋(せすじ)(こお)るかと(おも)ったぜ。

 姫さん(リカルル)がいつの間にか、烏天狗(おれ)天狗(ジンライ)(あいだ)に立ってやがる。


「もちろん我慢(がまん)してもらえるなら、見ていてもかまわないよ? リカルルさま(./)

 しかも、おれと(おな)(もの)を見て、(おな)気配(けはい)(かん)じていたはずの星神(カラテェー)には――

 お狐さま(リカルル)居場所(いばしょ)が、わかっていたらしいぜ。

 (こえ)を掛けられるよりもまえに、その(こし)に抱きついていたからな。


 なでなでなでなで――言葉(ことば)とは裏腹(うらはら)に、(ひめ)さんは可愛(かわい)らしい(もの)子供(こども)大好(だいす)きだ。

 やめろ(あつ)い!

 頭巾(あたまぬの)を撫でるんじゃねぇやい!


「うむ、(さき)ほどカラテェーが使(とか)おうとしたその小箱(こばこ)は、(ふる)時代(じだい)のアーティファクトなのじゃな?」

 伯爵(とのさん)は「では、(いた)方有(かたあ)るまい」と、(リカルル)を肩の(うえ)(すわ)らせ――

 何名(なんめい)かの将校(しょうこう)らしき人物(じんぶつ)(ともな)い、階段(かいだん)(のぼ)っていってしまった。


 くるりと身をひるがえすと、{Disconnect>対話型セッション終了}

 おれは(からだ)自由(じゆう)を、取りもどした。

 ふぉふぉん♪

『シガミー>ば、ばかやろう!

      もっと言い方を考えろ、生きた心地がしなかったぞ!』


 しかし、どうする?

 見わたす(かぎ)りの甲冑(かっちゅう)(たて)(やり)(けん)(ゆみ)

 おれはLV100(カンスト)だが、そんな〝無用の長物(ごみ)〟の使(つか)(かた)なんぞ、さっぱりわからんぞ?


 ふぉん♪

『ホシガミー>心配いりません。

       あの箱は使いません。

       私も使い方などわかりませんし』

 はぁ!? 大嘘(おおうし)じゃねーか!

 じゃぁ、この大軍勢(だいぐんぜい)相手(あいて)一体(いったい)どう落としまえを、付けようってぇんだぁ?

 身が(すく)むぞ、こらぁ! どーすんだ、(かや)(ひめ)よぉう!?


「(やることはかんたんですわ、くすくすくすす())」

 (あたま)(なか)(とど)念話(こえ)

 お(まえ)さま、どこに居やがる?

 五百乃大角(いおのはら)中継(ちゅうけい)しなけりゃ、念話(ねんわ)は目が(とど)範囲(はんい)でしか使(つか)えねぇはず。


 ズザザザッ――(みち)を空けてくれた兵卒(へいそつ)に、会釈(えしゃく)をして(あらわ)れたのは――

 シガミーの姿(すがた)瓜二(うりふた)つ、もちろん星神(ほしがみ)さまだった。


 さっき、伯爵(とのさん)たちに計算機(まほうぐ)(わた)して時間稼(じかんかぜ)ぎをしていたのは――

 こうして直接(ちょくせつ)こっちへ、来るつもりだったからか。

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