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436/743

436:女神の眷属(ジンライ)、猫と馬を家にとどける

「カヤノヒメさま、ごちそうさまでした♪」

 給仕服(きゅうじふく)のスカートを(かる)くつまみ上げ、うつむき(かが)んで片足(かたあし)を引く。

 見習い教師(リオレイニア)の、一礼(いちれい)


「「「「「「「「「「「「「「「ごちそーさまでした♪」」」」」」」」」」」」」」」

 担任教師(ヤーベルト)生徒(せいと)たちも、一礼(いちれい)

 少年(しょうねん)たちは、(はら)に手をあて(かる)くうつむき。

 少女(しょうじょ)たちは、見習い教師(リオレイニア)真似(まね)をする。


(よろ)んでいただけて、なによりですわ。またぜひいらして(くだ)さいね、くすくす()

 給仕服(きゅうじふく)のスカートを片手(・・)(よこ)(おお)きくつまみ上げ、やはり片足(かたあし)を引く。

 その礼式(れいしき)は、見習(みなら)教師(きょうし)とは(べつ)(もの)

 それでも所作(しょさ)は、(どう)()った(もの)で――

「まったねぇぇぇぇん――()

 平手(ひらて)に乗せられた御神体様(イオノファラー)が、(ちい)さな手を振った。


 ゴドン――ガチャガチャガチャガチャチャチャチャチャッ♪

 黒板横(こくばんよこ)の、ちいさめの(ドア)が閉じられる。


「ふぅー。どーなることかと(おも)ったが、どーにかなったなー」

 五百乃大角(いおのはら)癇癪(かんしゃく)を起こしたときは、(きも)を冷やしたけど――

「(はい。シガ()ー)」

 ヴォヴォォン♪

 うなる相棒(ジンライ)も、定格稼働中(いつもどおり)


「((かや)(ひめ)のアレは、どうなったんだろうな?)」

「(アレとは())」

 アレはアレだぜ、猪蟹屋(みせ)で出す飲み(もん)(はなし)――。

「にゃみゃがぁ()

 ぽきゅ♪

「ひひぃぃん?」

 ぽきゅら?


「やい、貴様(きさま)ら。正直(しょうじき)邪魔(じゃま)だぜ」

 おれの(よこ)階段(かいだん)をふさぐ、やや大柄(おおがら)(ねこ)(うま)魔物(まもの)

「にゃみゃがぁ()

 目鼻口(めはなくち)がなくても、すっとぼけた内面(なかみ)は見て取れる。

「ひひぃぃん?」

 つぶらな(レンズ)からは、気が(つよ)いのか(よわ)いのかわからん。


 コイツらだけで猪蟹屋(いえ)(かえ)らせるのも……なんか心配(しんぱい)だな。


「えーと、迅雷(ジンライ)

(なン)でシょうか、シガミー()

「おまえコイツら、猪蟹屋(ししがにや)まで(おく)(とど)けちゃくれねぇか?」

(わタし)がデすか()

 そうだ。


「リオレイニアに(たノ)むわケには、いきませンか()

 彼女(リオ)魔術(まじゅつ)実演(じつえん)とかで、授業(ざがく)にかり出される。

(いそ)しい(ところ)に、(たの)むのも(わり)ぃだろ」

 ここから(とお)くはねぇけど、ソレでも10(ぷん)くらいはかかるだろうし。


 うーん。そもそも馬猫ども(コイツら)五百乃大角(いおのはら)一緒(いっしょ)に、神域惑星(むこう)に居てくれりゃ――?


「ひょっとしておまえら、神域惑星(しんいき)地図作(ちずづく)りの手伝(てつだ)いをするのに飽きてたのか?」

「にゃみゃがぁ()

「ひひぃぃん?」

 聞いてみたが、いまいちわからん。


「(では(わたし)裏天狗(うらてんぐ)使用(しよう)を、許可(きょか)して(いただ)けますか())」

 ふぉふぉん♪

『>汎用強化服二号でも構いませんが』

 そうだな、(ぼう)の身ひとつじゃ不便(ふべん)だろうし。


「(わかった。轟雷以外(ゴウライいがい)は、なんでも好きに使(つか)え)」

 たしかに辺境(ガムラン)(ちが)って、(だれ)でも顔見知(かおみし)りって(わけ)じゃねーから――

 (だれ)かが付いてねーと「魔物(まもの)だ」ってなって、央都(ここ)衛兵(えいへい)たちと一戦交(いっせんまじ)えかねねぇ。


「(了解(りょうかい)しました。ですが出来(でき)るだけお(はや)いお(かえ)りを、お待ちしていま())」

 どーした。気の(よわ)いことを言って。

「(じゃぁ、今日(きょう)授業(じゅぎょう)が終わったら、どーにかしてリオレイニアの(しつけ)勉強(べんきょう)を抜け出すから、ソレまで(たの)んだぜ)」

 もし(あば)れ出すようなら、地下(しか)対魔王結界(たいまおうけっかい)にでも閉じ込めとけ。


「はイ。それデは行きまスよ。おにギりに、(てン)ぷラ()

 ヴォヴォヴォォォォン――ばたん♪

「にゃみゃがぁ()

「ひひぃぃん?」

 (ドア)を開け、(ぼう)黄緑色(きみどりいろ)たちが教室(へや)を出て行った。


「シガミー。おにぎりたちを(さき)に、(かえ)したのですか?」

「おう、迅雷(ジンライ)(たの)んだから心配(しんぱい)はいらない」

「そうですか。ソレでは本日(ほんじつ)気兼(きが)ねなく、マナー講座(こうざ)拡大(かくだい)して開催(かいさい)しますので、そのおつもりで♪」

 あー、やっぱり、そういうつもりだったのか。

 神域惑星(しんいき)で、みょうに小言(こごと)(すく)ないとは(おも)ってたんだよなー。


 黒板(こくばん)(すみ)削れる棒土(チョーク)で書かれた、『本日開催/紳士淑女の社交儀礼講座』。

 その(した)に、『特別拡大版』なんて文字(もじ)が付け足された。


   §


「デは、こノ(へン)デ良いでシょう()――」

 (だれ)もいない通路(つうろ)木箱(きばこ)が詰まれた(かげ)

 浮かんでいた(ぼう)が、(みじか)くなり――シュカカッ。


 ヴッ――ガッシャッ♪

 突然姿(とつぜんすがた)をあらわした黒装束(くろしょうぞく)小柄(こがら)人物(じんぶつ)に、ガチャリと(にぎ)られた。

 小柄な人物(くろづくめ)は、(それ)(ふところ)にしまい――


「さて、おぬしら。(わし)らだけで(ある)くのは(はじ)めてじゃが、(おく)することはない()

 派手(はで)(いろ)(うま)の、手綱(たづな)を手にする。


「では、(まい)ろうかぬぅぉおおぉぉお――――っ!?()

 (かれ)(あた)りを見わたしたときには、そこに(ねこ)魔物(まもの)姿(すがた)はなく――


「ひひひぃぃぃぃぃんっ?」

 (いなな)き、(くび)(かし)げる(うま)

「どっ、どこに行きおったっ!?」

 ふたりは(かお)を、見合(みあ)わせる。


 スタタタタッ――ぽっきゅらぽっきゅら♪

 やがて小柄と一匹(かれら)は、(ちい)さな通路(つうろ)をのぞき込んだ。

「そこに居ったか!?」

 それは三叉路(さんさろ)に分かれた、メイン通路(つうろ)ではない。


「みゃんぎゃぁー()

 軽快(けいかい)足取(あしど)りで、ぽきゅぽきゅぽきゅと(ある)いて行く猫の魔物(はでなねこ)


 ぽっぎゅみちっ――――「ふっぎゃ!?()

 通路(つうろ)に置いてあった(はこ)(ほん)(やま)に、はさまる魔物(ねこ)


「まったく、(なに)をしておるのじゃ。まっすぐ(いえ)(かえ)ろうぞ」

 手綱(たづな)(はな)し、(ねこ)の手を引いて通路(そこ)から抜け出したと(おも)ったら――


「みゃにゃんやぎゃー()

 (くび)(かし)げる(ねこ)

「ぬぅ、どうした――()

 振り向く(くろ)づくめ。そこには雄猫(かれ)もしくは、雌猫(かのじょ)以外(いがい)黄緑色(はでないろ)はなく――


「(ひひひひぃぃぃんっ――――ぎゃぁーっ、(うま)魔物(まもの)だぁぁぁぁっ!?)」

 どこか(とお)くから間抜(まぬ)けた(うま)(いなな)き?と、市民(しみん)(さけ)びが聞こえてくる。


 ここは1年A組(ねんえーぐみ)教室(きょうしつ)から――わずか50メートル(ほぢ)しか(はな)れていない。

 小柄(こがら)(くろ)づくめ。その顔布(かおぬの)(えが)かれた『<◎>(めだま)』の模様(もよう)が――苦悩(くのう)(ゆが)む。


「おにぎりよ、拙僧(せっそう)について(まい)()

 スタタタッ――――(かべ)を走り、吹き抜けた(たか)位置(いち)にある(まど)から、(そと)へ飛び出した。

 着地(ちゃくち)し、目を凝らし、黄緑色(はでないろ)市民(しみん)(かげ)(とら)えるやいなや――

 矢のように加速(かそく)する――修験者(しゅげんじゃ)と呼ばれる人物(じんぶつ)


 スタタッタトォォン――――――♪。

 (おと)がしたときにはもう、(はる)(さき)を行く――

 その(はし)りは、人知(じんち)を超えたもので――

 修験者(かれ)(つか)える少女(しょうじょ)の、足さばき(・・・・)真似(まね)たものでる。


「これ(うま)(てん)ぷら(ごう)よ。どこへ行こうというのか、フォッフォッフォ()

 (つと)めて冷静(れいせい)に、好々爺(こうこうや)(ごと)く振るまう――

 (くろ)づくめの、<◎>(めだま)怪人(かいじん)


「ひゃぁっ、だ、だれだぁ!?」

(うま)魔物(まもの)のつぎは――(ひと)魔物(まもの)が、(あらわ)れたわっ!?」

 がやがやがや。

 おそらくは(てんぷらごう)におどろき、尻餅(しりもち)をついた中年男性(ちゅうねんだんせい)

 その(むすめ)らしき女性(じょせい)が、大声(おおごえ)を張りあげている。


「ぅぬぅぅ――――!?()

 そこで(なに)かに気づき、背後(はいご)を振りかえる――修験者改(しゅげんじゃあらた)め、(ひと)魔物(まもの)

 (かれ)は、そこに居るはずの誰か(・・・・・・・)(さが)し、視線(しせん)をさまよわせ――

 やがて目のまえの、建物(たてもの)二階(にかい)

 その(まど)向こうに(・・・・)(たたず)黄緑色(きみどりいろ)の、まるで猫の魔物(・・・・)のような人影(ひとかげ)を見つけるなり――

 小柄(こがら)体躯(からだ)を、よろめかせた。


「クカカカカカカッ――!! まったく(ぬし)らは、大人(おとな)しく付いてくることも――出来(でき)ぬのかぁぁぁぁっ()

 その声量(せいりょう)はまさに、()天狗(てんぐ)と呼ばれる修験者(しゅげんじゃ)特性(・・)再現(さいげん)したものであり――

「「「「ひゃぁぁぁっ――!?」」」」

 (おどろ)き跳ねる、居あわせた市民(しみん)たち。


「ひひひひひぃぃぃぃんっ――――!?」

 (おどろ)き駆け出す、(うま)

「「「「「「う、(うま)魔物(まもの)だぁぁぁぁっ――――!?」」」」」」

 (おどろ)きの伝播(でんぱ)は、止まらない。

「「「「「「いやまてよ、(うま)魔物(まもの)なんていたっけぇ――――!?」」」」」」

 などと興味本位(きょうみほんい)(うま)を、追いかけ(まわ)連中(れんちゅう)まで(あらわ)れた。


 カシャラララッラカシャラララッララッ――――――――ゴドガッシャンッ!

 小柄(こがら)老人(ろうじん)(はっ)する(おと)としては、複雑(ふくざつ)金属質(きんぞくしつ)騒音(そうおん)

 それは(かれ)内包(ないほう)する――――

 無限の機械腕(プロダクト・アーム)(くびき)が――――

 解かれようとしている(こと)を、(しめ)していた。


 戦慄(わななく)く、小柄(こがら)体躯(たいく)

 怪音(かいおん)にギョッとする、居あわせた(もの)たち。


 アーティファクトである(かれ)迅雷(ジンライ)所属(しょぞく)する『シガミー御一行様』。

 その一団(いちだん)が、火山(かざん)ダンジョンに(はい)った時点(じてん)で、日本(にほん)(やく)1・5(ばい)(なが)さに(たっ)する(ほど)在庫(ざいこ)(ゆう)する――

 (かれ)通常兵装(つうじょうへいそう)にして、最大(さいだい)の切り(ふだ)


「ちょっと、テェーング(さま)じゃありませんか。しばらくお見かけしませんでしたら、央都(こちら)に来ていらしたのですね♪」

 背後(はいご)から、そう(こえ)を掛けられた老人(ろうじん)は――

 ヴッ――――じゃっりぃぃん♪


 鉄輪(てつわ)の付いた(てつ)(ぼう)を、空中(くうちゅう)から取りだした。

 老人(かれ)主人(マスター)とおなじ、足軸(さいそく)(うご)き――ギュキュッ!

 振り向いた(さき)に、居たのは――


「ひひひひひひぃぃぃぃんっ?」

 黄緑色(きみどりいろ)(うま)魔物(まもの)のような生物(いきもの)の、手綱(たづな)を引き――――


 「クスクスクスクス、ココォォン♪

  こんな町中で私と、立ち合って頂けるのですかぁぁぁぁっ!?」

 その口元(くちもと)宿(やど)る、そんな意思(いし)


 ――――ッィィィィィィイィィィィィィィンッ♪

 その両目(りょうめ)宿(やど)る、不思議(ふしぎ)虹彩(こうさい)


 使用者(マスター)である少女(しょうじょ)から、聞いてはいたものの――

 自身(じしん)認識下(にんしきか)において、聞こえないはずの声を聞き(・・・・)――

 見えないはずの(つめ)たい殺意(・・)を、目の当たりにした(・・・・・・・・)――

 INT(インテリジェンス)タレット迅雷(ジンライ)は――


「リ、リカルル・リ・コントゥル。あいや、(たす)かったわぃ()

 修験者(しゅげんじゃ)天狗(テェーング)(よそお)いつつも、素直(すなお)感謝(れい)(くち)にするのだった。

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