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435/743

435:神域惑星へようこそ、BBQ奉行とアイスクリーム

「「どうぞ、イオノファラーさま」――くすくす()

 (りょう)どなりに(ひか)える給仕服(きゅうじふく)

 リオレイニア先生(せんせい)と、神域(しんいき)(ぬし)(かや)(ひめ)

 左右(さゆう)から焼いた(にく)なんかを、(くち)(はこ)んでもらっている――

 根菜(いおのはら)だか、丸茸(いおのはら)だか。


「ぴゃぁぁぁぁっ――――お・い・ち・いぃぃー()

 (こう)ばしいタレをからめた、焼いた(にく)

 ほかほかの(こめ)に、ときどき汁物(しるもの)

 それらをペロリと(たい)らげ――


「そこぉっ、折角(せっかく)のぉやーらかいお(にく)なんだからぁ、焼きすぎないように注意(ちゅうい)してねぇ! 迅雷(ジンライ)、もっとお肉持(にくも)ってきてー()

 まさに飯の神(くいどうらく)ならではの、この采配(さいはい)


(たの)しくやってるようで、(なに)よりだが――」

 おい、この輪になった(・・・・・)(かまど)は、お(まえ)(つく)ったのか?


 ふぉん♪

『>はい。構造はシガミーが用意した物よりも、簡素ですが』

 焜炉(コンロ)魔法具(まほうぐ)

 ひのたまを(はな)つだけで、あとは魔道具(まどうぐ)火力(かりょく)一定(いってい)(たも)ってくれる(すぐ)れものだ。

 しかも石板(せきばん)同心円(いくえも)(みぞ)を掘るだけで(つく)れる。

 綺麗(きれい)(えん)(ひと)の手で掘るなら大変(たいへん)だが、迅雷(ジンライ)なら最初(さいしょ)から出来(でき)状態(じょうたい)石版(せきばん)を出せる。


 そして、おれが建てた(すみ)使(つか)(やつ)には――「にゃみゃがぁ♪」


 ぱったぱたぱたぱったぱたぱた――♪

 『猪蟹屋』という屋号(やごう)と、(ねこ)(うま)の絵が(えが)かれた団扇(うちわ)

 ソレで炭火(すみび)を、せわしなく(あお)ぐ――猫の魔物(おにぎり)がいた。


「おにぎりは(さかな)を、焼いててくれたのか――(たす)かる」

「にゃみゃがぁ♪」

 どうも、蒲焼(かばやき)きを食った(やつ)から、焼き(にく)(せき)にまざる仕来(きした)りらしい。

 蒲焼き(おにぎり)(なら)最後尾(さいこうび)には、(せん)(ほそ)男性教師(だんせいきょうし)

「どうしたぁ、(しぶ)(つら)ぁしてぇ? おれも手伝(てつだ)えばスグだから、もう(すこ)し待ってくれ」

「あー、いやー、そう言うことでもないんですがー」

 歯切(はぎ)れが(わる)いが――その目が、汁物(しるもの)(わん)や飲み(もの)(はい)った(さかづき)に向けられているのを見て、わかった。


「ははぁん、(さけ)か?」

「いや、いやいやいや、仕事中(しごとちゅう)(さけ)なんて……学院長(がくいんちょう)にバレたら」

 気持(きも)ちはわかる。

 こんなうまそうな(さかな)をまえに、酒飲(さけの)みが我慢(がまん)できるわけもねぇ。


「そうだなー。今日(きょう)(ところ)我慢(がまん)してくれ。今度(こんど)、ガムランでも有名(ゆうめい)な澄んだ……透明(とうめい)(さけ)をご馳走(ちそう)するからよ」

 おにぎりの(となり)へ、どかりと(すわり)り――ヴッ♪

 団扇(うちわ)を取りだした。


「ほほぉーう? それは興味深(きょうみぶか)いなぁー。ふっふっふふふふふ♪」

五百乃大角(いおのはら)もそういうわけだからー、今日(きょう)(さけ)はおあずけだからなー?」

 ぱったぱたぱたぱったぱたぱた――♪

 ぱったぱたぱたぱったぱたぱた――♪

 おにぎりの真似(まね)をする。

 これなら焼具合(やきぐあい)も、(おな)じくなるだろ。


「えー? まぁ、そこまで酒飲(さけの)みじゃないからぁ……もぐもぎゅ……良いけど――そこっ、まだ(はや)い! あと10秒焼(びょうや)いてぇー()

 仕事(しごと)出来(でき)るんだよな、五百乃大角(こいつさま)は。


「その代わり、(れい)(くさ)を取ってきたから――(つめ)てぇ菓子(かし)本式(ほんしき)を食わせてやるぞーぉ!」

「「(つめ)たい、お菓子(かし)!?」」

 (こえ)を張ってたら、蒲焼(かばやき)(どん)片手(かたて)に、レイダとビビビーが寄ってきた。

 行儀(ぎょうぎ)(わり)ぃな。


 椅子(いす)とテーブルを――ヴッ、どどどどどごとん♪

 (すわ)れとあごで指ししめす。


「えっ――期待(きたい)しないで待ってたんだけど、ソレほんとぉ……もぎゅもぎゅ……迅雷(ジンライ)()

「はイ、ストレージ(ナい)確認済(ずミ)でス。バニラビーンズの原種(げンしゅ)(チか)イ実を、相当量(そうトうりょう)確保(かくホ)しマし()

 ヴォヴォォン♪

 ビードロの(うつわ)からタレに漬け込んだ(にく)を、カチャカチャチョキチョキと。

 (こま)かく切って、(さら)に盛るアーティファクト。


「……もぐもぎゅ……ほふひふへははへぇー()

「おう、(てん)ぷら(ごう)がたまたま見つけてくれたのを、おれの薬草師(やくそうし)能力(ちから)確認(かくにん)出来(でき)たからなっ♪」

 最後尾(さいこうび)男性教師(せんせい)まで、あと(すこ)し。

 ふぉん♪

『人物DB>ヤーベルト・トング

      初等魔導学院1年A組担任教師』


 ぱったぱたぱたぱったぱたぱた――♪

 ぱったぱたぱたぱったぱたぱた――♪

 おにぎりとの(いき)も、ぴったりだぜ。


「「かわいくて、おいしくて、おもしろい♪」」

 レイダとビビビーの視線(しせん)が、まとわり付くけど気にしねぇ。


「よし、焼けたぞ! ヤーベルト先生(せんせい)、どうぞ食ってくれやっ!」

 蒲焼(かばや)きの(れつ)は、ひとまず終わり。

 (うま)(つな)いできた、タターの(ぶん)用意(ようい)した。

 焼き肉組(にくぐみ)も、リオと茅の姫(ほしがみ)(まか)せる。


 おれは迅雷(ジンライ)とふたり、星神神殿(ほしがみしんでん)調理場(ちょうりば)へ向かった。


   §


「で、できたか?」「にゃんみゃが()

 ついてきちまった、おにぎりと一緒(いっしょ)に。

 山積(やまづ)みの、(くろ)(しお)れた(さや)を――じっと見る。


 結論(けつろん)から言うと、熟成(じゅくせい)をスキルで手早(てばや)く済ませた。

 解析指南(かいせきしなん)に言われた(じゅん)に。

 食物転化(たべやすく)――蒸す。

 急速熟成(おいしく)――なじませる。

 状態変化(大)(あまみをひきだす)――干す。

 かんそうのまほう――さらに干す。


 その工程(こうてい)が、とんでもなく大雑把(おおざっぱ)で、何度(なんど)か――

「やい、解析指南(かいせきしなん)! その三ヶ月間掛(さんかげつかんか)けて乾燥(かんそう)させるってのは、どういう手順(てじゅん)なんだぜ!?」

 って怒鳴(どな)ってやったほどだ。


 実際(じっさい)には十五分(じゅうごふん)くらいか。

 実が(くろ)くなり、大分(だいぶ)しおれてカサカサになった(ころ)

 迅雷(ジンライ)機械腕(かいな)(さき)小刀(こがたな)で、スパリと切り裂いた。


 試薬調合(ととのえる)――チーン♪


 ふぉん♪

『バニラビーンズ/爽やで甘みのある香り付けに用いられる香辛料』

 よし。出来(でき)た。

 もっと、苦労(くろう)させられたあげく……この(くら)(もと)に、スキル(だの)みで(あたら)しく(つく)るまで(かんが)えてたんだが。

 普通(ふつう)生活魔法(せいかつまほう)使(つか)ったら、出来(でき)ちまった。


「おぉおぉお? こりゃたしかに、(あま)いような(かお)りがしやがるぜ?」

「にゃんやーみゃやー()

 イオノ(はら)ぁ――――!


 ぽこ――こぉん♪

「もぎゅもぎゅ――喚・ん・だ・かしらぁ()

 どんぶり(めし)ごと、おれの頭上(ずじょう)顕現(けんげん)する美の女神(いおのはら)御神体(ごしんたい)


「お味見役(あじみやく)出番(でばん)だぜ――これで有ってるか?」

 迅雷(ジンライ)(さら)に、斬った(さや)と、(なか)(はい)っていた(つぶ)を載せた。


「ふんふんふん、ふすん……うー? すこぉし燻製(くんせい)っぽい(かお)りももするけど……でかしたわよ、たぶんこれよ()

 すぽ――ぽぉん♪

 (けむり)のように消える御神体(ごしんたい)

 ふぉふぉん♪

『イオノ>あたくしさまわぁ、お(にく)を焼かないといけないのでぇ、

     失礼(しつれい)するわ、アイス期待してますので♪』

 (そと)の焼き肉会場(にくかいじょう)へ、(もど)ったのだ。


 よしよーし、やっとここまで来たぞ。

 あとは迅雷(ジンライ)がフェスタで(つく)った、あの(あま)くて(しろ)(つめ)てぇ味噌(みそ)(つく)れば――!


   §


「ぎゃっ!?」

 最初(さいしょ)(さけ)(ごえ)を上げたのは、(やぐら)陣取(じんど)御神体(いおのはら)


 まあ、おれだって自分(じぶん)(つく)ったんじゃなけりゃ――

 こんなもの(・・・・・)到底食(とうていく)(もの)には見えん。


 それは、白煙(はくえん)(はっ)する――(てつ)だ。

 しかも焼けた(けむり)じゃなくて――

 ソイツ(そいつ)(ちか)づくと、ひんやり(・・・・)するのだ。


 おれはソイツの背中(せなか)に向かって、引き金を(・・・・)カチカチカチリ。


 (うし)(ちち)馬韮(ばにら)煮立(にた)てて、()す。

 (たまご)白身(しろみ)黄身(きみ)に分け、泡立(あわだ)て混ぜる。


 そうして出来(でき)(しろ)(みず)を、〝耐熱おもち(・・・・・)〟に(なが)し込み。

 生活魔法(つめてぇまほう)冷やしながら(・・・・・・)――歩かせている。


 〝おもち〟というのは(かみ)出来(でき)た、使(つか)い捨てシシガニャンのことで。

 〝耐熱(たいねつ)おもち〟というのはソレの、燃えない(やつ)だ。


 銃口(じゅうこう)背中(せなか)に向けて、カチカチカチカチリ♪

 この弾丸(たま)の出ない火縄銃(ひなわ)で、背中(せなか)(ねら)いつづけることで――

 〝おもち〟は自由(じゆう)(ある)かせられる。

 元々(もともと)はフェスタで、組み手の相手代(あいてが)わりにするために(つく)った。

 それを(かざん)山ダンジョン攻略(こうりゃく)のため、鉄を塗って(・・・・・)(つく)り替え――


 ぼっすん、ちゃぽん♪

 ぼっすんぼぼすすすっん、ばしゃん♪

 いまこうして〝かき混ぜながら、まんべんなく冷やす〟のに、使(つか)われている。


 中身(なかみ)がたっぷり詰まってると、そこそこ(おと)がするな。

 けどそれも10歩程度歩(ぽていどある)かせたら、ピクリともしなくなった。

 こわれたか?


「いエ、シガミー。完成(かんせい)()

 特大(とくざい)大皿(おおざら)用意(ようい)して、その(うえ)に立たせた。

 (よご)れないよう穿かせていた、透明(とうめい)(ふくろ)をはずす。


「チィェェェェイッ――――♪」

 (よこ)に5。(たて)に8。

 小太刀(こだち)でキッチリと、切りわけてやった。


 山積(やまづ)みになった白味噌(おかし)は、(すこ)しつぶれたが――

「ぎゃっ――――バニラアイスじゃんか()

 五百乃大角(いおのはら)注文(ちゅうもん)どおりの、(あじ)だったようだ。


 それだけ有れば、全員(ぜんいん)に行きわたる。

 けど、おれにもいますぐ、ひとつよこせ。

 四角(しかく)(びーどろ)に、かたくて(つめ)たい白味噌(それ)をひとつ盛った。


 (さじ)ですくって、(くち)へ入れる。

 それは(あじ)わう(ひま)もなく、溶けた。

 フェスタで迅雷(カラテェー)(つく)ったのと、おなじ(もの)だ。

 けどこれは、随分(ずいぶん)と、(あじ)がちがっている。


「こりゃうめぇな!」

 おにぎりと(おな)(かたち)の、鉄色(てついろ)人型(ひとがた)

 それを切りわけた、(つめ)たい菓子(かし)

 お貴族(きぞく)のお子さま(がた)の目には、さぞかし不気味(ぶきみ)に見えるんじゃねえかと(おも)ったが――


 耐熱型使(たいねつがたつか)い捨てシシガニャン――おもち一匹分(いっぴきぶん)(つめ)たい菓子(かし)は、一瞬(いっしゅん)でなくなった。

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