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431:初級魔法とシガミー、生活魔法のきほんと神域惑星へのとびら

「いまから、生活魔法(せいかつまほう)についての(むずか)しい(はなし)をしていきますが――(つえ)よ」

 (せん)(ほそ)男性教師(だんせいきょうし)が、背中(せなか)背負(せお)った(つえ)一本(いっぽん)を取り出した。

 (かたむ)けず、まっすぐ立てたまま手を(はな)す。


 ふわりと浮いた(つえ)は――フォォォォンッ♪

 教室(きょうしつ)一番(いちばん)うしろ、(たか)いところに立つ見習(みなら)教師(きょうし)のもとへ。


 目のまえに飛んで来た魔法杖(それ)を、ぱしりと受け取る研修生(リオレイニア)


「これは?」

 やや冷ややかな(こえ)


生活魔法(せいかつまほう)根源(こんげん)とは(なに)かね――リオレイニア先生(せんせい)?」

 問いかける担任教師(たんにんきょうし)、えっと?

 ふぉん♪

『人物DB>ヤーベルト・トング

      初等魔導学院1年A組担任教師』

 そうだ。担任(たんにん)のヤーベルトだ。


魔術構文(まじゅつこうぶん)(えが)かずに、(じゅつ)行使(こうし)することでしょうか?」

 答える見習い教師(リオレイニア)


「はーい。(いま)リオレイニア先生(せんせい)は――(じゅつ)行使(こうし)すること――と言いましたが、それでは50(てん)でーす♪」

 その(こえ)に「はーやれやれ。(きみ)もまだまだですね」という感情(かんじょう)が込められている。

「んなっ――!?」

 押しつけられた魔法杖(まほうつえ)を振りあげる、生活魔法(せいかつまほう)天才(てんさい)

 おいそれ、振り下ろすなよ(・・・・・・・)


生活魔法(せいかつまほう)(じゅつ)ではありませーん。あくまで手足(てあし)一部(いちぶ)です。先生(せんせい)、その(つえ)を持ったまま「ひのたま」と(とな)えてみて(くだ)さーい」

 手のひらを研修生(リオレイニア)へ向ける、正教員(ヤーベルト)


「ひ……ひのたまぁ?」

 太枝(ふとえだ)のような魔法杖(まほうつえ)(かま)えた彼女(かのじょ)(うで)には、『見習い』の腕章(わんしょう)


 ぷすん――ぼごふぁん♪

 ぼわんと、黒煙(こくえん)(はな)(つえ)先端(せんたん)


「きゃぁぁっ!?」

 ぐわらららぁぁん!

 (つえ)を落とす研修生(みならい)


「じつはその魔法杖(まほうつえ)には、〝魔術禁止(まじゅつきんし)(のろ)い〟が掛けられていました……あー、ちょっと待つんだリオレイニア(くん)。だからぁ(きみ)わぁ、〝魔人(まじん)再来(さいらい)〟とか言われ――――!?」


   §


生活魔法(せいかつまほう)魔術(まじゅつ)ではありません。それなのにリオレイニア先生(せんせい)(はな)った生活魔法(せいかつまほう)発動(はつどう)しませんでした。それは何故(なぜ)でしょうか?」

 (あたま)の毛をチリチリに焦がした、(せん)(ほそ)男性教師(ヤーベルト)が――


「ではシガミー(くん)

 おれを指差(ゆびさ)した。


「は、へい。リオレイニアがま、魔術(まじゅつ)使(つか)えなかったのわ――」

 へっ、このおれを名指(なざ)しするたぁ、良い度胸(どきょう)じゃねーかよ、へへへっ!?

「(シガミー、バイタルサインに異常(いじょう)が見られます。威勢(いせい)が良いのは、心中(しんちゅう)だけなのですか())」

 やかましぃ!

 なんかなっ、このご立派(りっぱ)教室(きょうしつ)で、(おな)制服(ふく)に身を(つつ)んだ――

 しゃらあしゃらした連中(れんちゅう)一緒(いっしょ)に、(すわ)ってるとだなぁ――


「(調度品(ちょうどひん)(ちが)いはあれど以前聞(いぜんき)いた〝お(やま)での座学(ざがく)〟の風景(ふうけい)と、(なん)ら変わりは無いのではないでしょうか())」

 ばかやろう、こういうしゃらあしゃらのわなぁ――

 根っからの(おんな)じゃねぇーと、そうそううまくは出来(でき)ねぇんだよ。


「(ルコル少年(しょうねん)去年(さくねん)卒業(そつぎょう)したと聞いておりますが())」

 ばかやろう、お貴族(きぞく)さまと一緒(いっしょ)にするない!


「(ひとまず回答(かいとう)を。生徒(せいと)たちの視線(しせん)が、余計(よけい)(あつ)まりますよ())」

 ちっ、あとで(おぼ)えとけよ、迅雷(ジンライ)


「――そ、それが、魔術(まじゅつ)(おな)手順(てじゅん)で、つ、使(つか)われてるから――で、こ、ごせぇますわぜ?」

「ござるっ♪」

 レイダがうるせぇ。


「ほぅほぅ、魔力量(まりょくりょう)関係(かんけい)(きみ)資質(ししつ)(うたが)(もの)も居たのだが――どうやらその心配(しんぱい)は要らないようですね。なんという慧眼(けいがん)、すばらしーい♪」

 じっと見てやがる。おれには衆道(そっち)趣味(しゅみ)はねぇ。


「よ、世は(すべ)(くう)なりだ。おれぁ(くさ)っても坊主(ぼうず)だぜ?」

 とにかく、ここは虚勢(きょせい)を張っとく。


「なるほど、神官(しんかん)としての見識(けんしき)もお持ちなのですねー。イオノフ(きょう)祭神(さいじん)で有らせられるイオノファラーさまとも、懇意(こんい)間柄(あいだがら)のようですし」

「はぁ? おれぁイオノフ教徒(きょうと)じゃねぇし、(たん)なる(くさ)(えん)だぜ。しいて言うならアイツの料理番(りょうりばん)をしてらぁ」

 猪蟹屋(ししがにや)五百乃大角(いおのはら)(めし)を食わせるために、(つく)った(もの)だからな。

 料理番(りょうりばん)ってのは、本当(ほんとう)のことだ。


「喚・ん・だぁ――♪」

 ぽこ――こぉん♪

 かるい処理落(しょりお)ち。


 てちり――おれの(あたま)(うえ)に降りたつ、御神体(いおのはら)

 よんでねぇ、よんでねぇ!

 料理(りょうり)って単語(たんご)が、召喚呪文(しょうかんじゅもん)になっちまった。


「リオ――レーニア先生(せんせい)よぉ! こいつ、(あず)かっといてくれやぁ!」

 顕現(けんげん)した根菜(ごしんたい)をひっつかんで、リオレイニア先生(せんせい)を呼びつけた。


「ふぅ、イオノファラーさま。それでは昼食(ちゅうしょく)時間(じかん)まで、(わたくし)一緒(いっしょ)授業(じゅぎょう)見学(けんがく)なさいますか?」

 太枝(ふとえだ)みたいな魔法杖(まほうつえ)(つくえ)に立てかけ、根菜(いおのはら)を受けとる見習い先生(リオレイニア)


「ふーん、そーわねー♪ じゃぁお言葉(ことば)(あま)えて、この世界(せかい)魔法水準(まほうすいじゅん)って(やつ)見学(けんがく)させて(いただ)こーかしらぁ♪」

 おやつは、おやつはでるのぉん?

 階段(かいだん)をのぼり、最後列(さいこうれつ)へ行ってしまう二人(ふたり)


「――というように生活魔法(せいかつまほう)は、(つえ)がなくても手足(てあし)のように(あつか)える、(すさ)まじく基本的(きほんてき)魔術(まじゅつ)であるといえまーす。わかりましたかぁー♪」

 授業(じゅぎょう)再開(さいかい)する、男性教師(ヤーベルト)


「「「「「「「「「「「「「「「「ははーい♪」」」」」」」」」」」」」」」」

 元気(げんき)よく返事(へんじ)をする生徒たち(がきども)

 けどおい、この(はなし)随分(ずいぶん)とややこしくねぇか?


「((かれ)の言わんとしていることはわかります。生活魔法(せいかつまほう)魔術(まじゅつ)とは分けて(・・・)(かんが)えられていますが、(じゅつ)行使(こうし)(つえ)必要(ひつよう)ないだけで、根源(こんげん)魔術(まじゅつ)(なん)ら変わらないことを説明(せつめい)したかったのだと(おも)われま())」

 うーん、つまりは鬼族(オルコトリア)(はな)(ところ)の、高等魔術(こうとうまじゅつ)が――おれたちにとっての生活魔法(せいかつまほう)みたいなモンなんだろう?


「(それは、また語弊(ごへい)のある理解(りかい)をしましたね。では、鬼族(オーガ)王族(おうぞく)にとっての生活魔法(せいかつまほう)とは、どういったものと(とら)えられますか())」

 うーぬ、金剛力(こんごうりき)とか夜眼(よめ)とか、勇者(ゆうしゃ)ニゲルを召喚(しょうかん)出来(でき)血筋(ちすじ)とかか?


「(あながち間違(まちが)いとは言い切れませんね……人的(じんてき)特異点説(とくいてんせつ)再浮上(さいふじょう)(きざ)())」

 わからんが、それ……良い意味(いみ)じゃねぇのはわかってるからな。


   §


「きゃっほぉぉぉぉぉぉぉいっ――――♪」

 ねぇねぇ、ご(はん)なんでしょ!?

 落ち着け、根菜(こんさい)

 リオの(かた)(うえ)で、はしゃぐんじゃねぇやい。


「せっかくだから、お(まえ)さまも食堂(しょくどう)へ行くぞ」

 一人分用意(ひとりぶんようい)してもらって、足りねぇときは――

「(はい。(かまど)だけ借りて、(なに)(つく)りましょ())」


 ゴドン――ガチャチャリ♪

 そのとき壇上奥(だんじょうおく)(ちい)さめの(ドア)が、ひとりでに(ひら)いた。


「あら、みなさまお(そろ)いで。くすくすす()

 (なか)から(あら)れたのは――おれそっくりな猫耳(ねこみみ)メイドだった。

 一斉(いっせい)に見つめられても、(どう)じない胆力(たんりょく)は――

 さすがは、(かみ)なのかもしれない。


「また、来たのか?」

「はい本日(ほんじつ)は、神域惑星(わがや)へお(さそ)いに来ました。うふふ♪」

 そういや、きょうこそ、食材(しょくざい)見繕(みつくろ)いに行かねぇとな。

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