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430/743

430:初級魔法とシガミー、猪蟹屋四号店深夜一日目

「えーっと。茅の姫(ほしがみ)におにぎりに、迅雷(ジンライ)(てん)ぷら(ごう)……」

 五百乃大角(いおのはら)は、どこ行きやがった?

 要らんときにばかり、(つら)をだす(くせ)に――


 現在(げんざい)深夜(しんや)0:15。

 対魔王結界(たいまおうけっかい)へ降りる、階段(かいだん)途中(とちゅう)

 かなり(ひろ)展望台(てんぼうだい)があって、ドーム(ない)一望(いちぼう)できる。

 照明魔法具(しょうめいまほうぐ)(ちか)くだから、いささか(まぶ)しい。


「そういえば、本日(ほんじつ)食事(しょくじ)催促(さいそく)をされていませ()

 ヴォヴォゥン?

 空飛ぶ棒(ジンライ)が、首を傾げる(ななめに)


「は? そんなわけねぇだろう。あの飯神(めしがみ)さまが、(めし)催促(さいそく)をしないってことは――」

 この世の終わり(・・・・・・・)(って)同義(いみ)だぜ。


「あのう――イオノファラーさまでしたら、昨日(きのう)から台座(クレイドル)へ刺しっぱなしでは()

 茅の姫(かやのひめ)の目が笑ってねぇ。


   §


マジ(・・)(わる)かった! 今後(こんご)、こんなことがねぇように気をつけるぜ」

「はイ、本日(ほンじつ)ヨり三日間(ミっかかん)ハ、イオフォファラーの好キな(モの)献立(こンだて)にしマしょ()

 御神体(いおのはら)平伏(へいふく)する、おれたち。


「ぷすぷすぷすす――――ホントのこと言うとさぁ。台座(あれ)に載せられてる(あいだ)さぁ、時間(じかん)がすぎるのをさぁー、まるで(かん)じなかったのよぉねぇーん()

 うしろ(あたま)から(けむり)が出てるが……平気(へいき)か?


 茅の姫(かやのひめ)が手に載せた御神体(いおのはら)を、うやうやしく――

 手近(てぢか)なぞうきんで、キュキュキュと拭く。


「たマたま偶然(ぐうゼん)でスが……ひそひそ……女神像(めがミぞう)OS(オーエス)定期(ていキ)アップデートが(かサ)なったよウで()

(れい)によってわからんが……ひそひそ……女神像(めがみぞう)さまさまってことだな」

 おれたちはこっそりと(かお)見合(みあ)わせ、(むね)をなで下ろす。


「で・す・の・でぇー、今回(こんかい)わぁ~不問(ふもん)としますけどぉ~。(つぎ)わぁ~ないからねぇ~~~~()

 くるりと、おれたちを振りかえる御神体(いおのはら)が、目をつり上げた。


「おう、(きも)(めい)じるぜ! な、迅雷(ジンライ)!?」

「ハい。オ(なカ)が空いタのではありませんか? (なン)でもオ(つク)りしマすよ。シガミーガ()

 おれは相棒(ジンライ)を持ち、くるりと(まわ)す。


「じゃぁさぁ、あたくしさまわぁ――つめったぁい、お菓子(かし)がぁ食べたいわねぇー()

 (つめ)てぇ菓子(かし)……()えた饅頭(まんじゅう)か?

 そろそろ夏が来(あつくな)るらしいから、猪蟹屋(みせ)新商品(しんしょうひん)になるかもだが――

 うまいのか、それぁ?


(こおり)(こおり)。カブキーフェスタで女将(おかみ)さんと(たたか)ったでしょ、氷菓子勝負(こおりがししょうぶ)でっ()

 肩幅(かたはば)にそろえた手刀(しゅとう)を、上下(じょうげ)に振り(まわ)してる。


「あれか、氷柱(こおりばしら)(まわ)して(かたな)(けず)りゃ――いや、おにぎりお(まえ)……女将(おかみ)さんのとこで雪を降らす(・・・・・)魔法(まほう)修行(しゅぎょう)してきたんじゃなかったか?」

 (おも)い出したぜ。


「にゃみゃぎゃぁー♪」

 夏毛(なつげ)胸元(むなもと)を、とんと叩く猫の魔物(おにぎり)


 央都(おうと)で生きていくのに必要(ひつよう)道具(どうぐ)や、四号店(みせ)使(つか)家具(かぐ)なんかを(つく)ろうかと――

 夜中(よなか)にこうして、こっそりと(あつ)まったんだが。

 まずは、五百乃大角(いおのはら)がご所望(しょもう)の――(つめ)てぇ菓子(かし)(つく)ってやろう。


 ふぉふぉん♪

『おにぎり>雪を降らせるなら、魔導指示器が必要だもの』

 魔導指示機(まどうしじき)だぁ?

 知らん名前(なまえ)が出てきたぞ。


 ヴォォン♪

 小窓(ウィンドウ)表示(ひょうじ)されたのは、カブキーフェスタで女将(おかみ)さんたちが使(つか)った――

 (おお)きな台座(だいざ)と、(ちい)さな台座(だいざ)沢山(たくさん)


「あー、あれか。OOYGY(おわいじ)だな?」

 レイダが「オヤジ、オッヤージ♪」って(たの)しそうに、(さけ)んでたやつだ。


「よぉし。じゃぁ、必要(ひつよう)道具(どうぐ)をおれが(つく)るから、おにぎりと(かや)(ひめ)わぁ、(こおり)菓子(かし)段取り(・・・)をたのむぜ!」

 古代魔法(こだおまほう)だかの使(つか)(かた)は、わからねぇが――

 あの土台(どだい)(つく)りは、ただの(いた)龍脈(マナ)(とお)(みち)を付けただけの(もの)だ。

 5(ふん)も掛からずに、出来(でき)るぞ。


「わかりました、くすくす。つきましてはレシピの開示(かいじ)原材料(げんざいりょう)調達(ちょうたつ)を、お(ねが)いしたいのですが()

 原材料(げんざいりょう)

 (みず)果物(くだもの)砂糖(ざらめ)(ほか)に……なんか要るか?


「えー、アイスのレシピ? 迅雷(ジンライ)百科辞典(ひゃっかじてん)とぉライブラリ(ちゅう)のぉ専門辞書(せんもんじしょ)わぁ全部開示(ぜんぶかいじ)してあるからぁ、まずぅソッチでぇ(なん)とかしてみてくれなぁいぃー()

「アイスクリームでしタら、フェスタで作成(さくせい)したミルク(あじ)(もの)作成(さくせい)できま()

 烏天狗役(カラテェーやく)迅雷(こいつ)惨敗(ざんぱい)したっけな。

 あのときの(あま)くて(つめ)てぇ白味噌(しろみそ)は、たしかにうまかった。


「ミルク(あじ)!? 良いわねぇーん()

 (かや)(ひめ)の手のひらを、一回転(いっかいてん)する御神体(ごしんたい)


「なるほど……神域惑星(しんいき)に居る(うし)(ちち)砂糖(さとう)と、(かお)り付けのための香料(こうりょう)を混ぜ、均一(きんいつ)に冷やすだけで完成(かんせい)するようですわ、くすくす()

 おれの相棒(ジンライ)をつかんで(なに)かを、(よこ)から読んでいく星神茅(ほしがみかや)(ひめ)

 こういう(ところ)はアーティファクトっつーか、神々(かみがみ)しいっていうか。


神々(こうごう)しいの間違(まちが)いでわ♪ ですが、おにぎりさん……そうすると今回(こんかい)古代魔法(こだいまほう)必要(ひつよう)ありませんよ()

 ぽぎゅぽこぉぉん♪

 まるでこの世の終わりかのように、衝撃的(しょうげきてき)(くず)れ落ちる猫の魔物(おにぎり)


「けど牛乳(ぎゅうにゅう)在庫(ざいこ)なんて、あったっけ()

 ぽこん♪

 迅雷(ジンライ)――おれの画面(モニタ)視界(なか)に入り込んでくる、五百乃大角(いおのはら)分け身(アイコン)

神域惑星(しんいきわクせい)へ、狩りニ行けていナいので、在庫有(ざいこア)りマせ()

 (てつ)出来(でき)容器型(ようきがた)のフォルダに、『(ゼロ)』の数字(すうじ)が張りついている。


「どーせなら、バニラ(あじ)のアイスが食べたいのよねぇーん! というわけで、今日(きょう)(ところ)(つめ)たければ(なん)でも可ぁ――さぁ、(いま)すぐ(つく)ってちょうだっぁい()

 (つくれ)れというなら、(つく)るぞ。


 ふぉふぉふぉん♪

『ホシガミー>では後日、バニラビーンズの採取か、

       バニラエッセンスに類する、

       人工香料の開発をお願い致します』

 わからんが、今日(きょう)じゃなくて良いんだな。

 やること(TODO)リストに、入れといてくれ迅雷(ジンライ)


 つうか……人工香料(じんこうこうりょう)

 食物転化(しょくもつてんか)分離倍化(ぶんりばいか)急速熟成(きゅうそくじゅくせい)超抽出(ちょうちゅうしゅつ)で――出来(でき)そうじゃね。


 (かお)りの原料(げんりょう)(ちか)組成(そせい)の、〝原種(げんしゅ)〟の木の()とかがありゃぁ――

 さじ加減(かげん)基礎化学(きそかがく)有機化学(ゆうきかがく)医食同源(いしょくどうげん)、あと試薬調合(しやくちょうごう)分析術(ぶんせきじゅつ)(つく)った(あじ)を――

 (ほか)ならぬ〝お味見役(いおのはら)〟にお(うかが)いを立てて、おれの超味覚(ちょうみかく)同定(どうてい)できるだろ。

 よし、あしたこそ神域惑星(しんいき)出向(でむ)いて、必要(ひつよう)食材(しょくざい)を取ってきてやる。

 ついでに、面白(おもしろ)そうだから(うみ)も見てこよう。


「よし、本式(ほんしき)のアイスとやらぁ明日(あした)にするぞ。今日(きょう)(ところ)は、氷菓子(こおりがし)我慢(がまん)してくれ」

(なん)でも良いわーん。もうなんでもぉ――ぐでり」

 随分(ずいぶん)と、だれてやがるなぁ。


「にゃぁご()

 (ぎゃく)に、氷菓子(こおりがし)と聞くやいなや、ムクリと起き上がる猫の魔物(おにぎり)


 いま居る、対魔王結界(たいまおうけっかい)へ降りる階段途中(かいだんとちゅう)足場(あしば)

 ここは(とく)に、(あつ)くも(さむ)くもない。


魔導指示機(まどうしじき)てのは、こんな(かんじ)じで良いのか?」

 おにぎりがフェスタで使(つか)ったのと、似た(かん)じ。

 大小(だいしょう)種類(しゅるい)台座(だい)を、(つく)ってやると――


「みゃにゃごぉ――――()

 おにぎりが舞い、その周囲(しゅうい)(てん)ぷら(ごう)が跳ね――

 るには、さすがに(せま)かったので――

 ドーム(じょう)対魔王結界(たいまおうけっかい)の、真ん(なか)あたりまで来た。


「みゃにゃごぉ――――()

 再開(さいかい)される演舞(えんぶ)

「ひひひひひひぃぃぃんっ――――()

 いろんな果汁(いろ)を、(ゆき)に変えていく。

 ちなみに古代魔法(こだいまほう)実質(じっしつ)(てん)ぷら(ごう)必要(ひつよう)ない。


 とても(たの)しそうに跳ねまわる、2(ひき)を見ていたら――

 色鮮(いろあざ)やかな(ゆき)のような菓子(かし)が、(ほど)なく完成(かんせい)した。


「くはぁー、アイスクリーム頭痛(ずつう)! (ちい)さい(ころ)わぁ、これ一度(いちど)もなったことなかったのにぃ――っくぅー()

「ははは、ちょっと(つめ)てぇ(もん)を食ったくれぇで、(なさ)けね――っくぅー!」

(つめ)たくて、おいしいですね――っくー()

「みゃにゃがぁ――っくぅー()

「ひひひぃぃぃぃんっ――っくひぃん!?()

 などと、そこそこ評判(ひょうばん)が良かった。

 色合(いろあ)いもお(あじ)も、さすがは女将(おかみ)さん直伝(じきでん)だったが――


「アナタたち、こんな真夜中(まよなか)(なに)をしているのですか?」

 深夜(しんや)(さわ)いでいたら。

 寝間着姿(ねまきすがた)彼女(かのじょ)に、見つかった。


「「「リ、リオレイニア!?」――ちゃん!?()」――さん!?()

「にゃみゃみゃがぁ――!?()

「ひひひひひぃぃぃぃいん――!?()

 つまるところ彼女(かのじょ)は、猪蟹屋四号(リオレイニア)店保護者(・サキラテ)だった。


「(おい(いま)、やっぱり動体(モーション)検知(・トラッカー)でなかったぞ!?())」

 このサキラテ一族(いちぞく)の、隠形術(おんぎょう)とやら。

 いつか解析(かいせき)しとかねぇと。

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