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423/743

423:初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その6

「ふぅーふふうふっふふふふ――♪」

 なんだぜ、この(こえ)


 気づけば、まわりに子供(がき)どもが。

 とおくに、大人(おとな)どもが。


「きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――――――!?!?」

 (きぬ)を裂くような。

 美の権化(ごんげ)リオレイニアの。

 あられもない、(こころ)からの(さけ)び。


 学院長(がくいんちょう)秘書(ひしょ)(ひと)が――猫頭顧問(ミャッド)をひっぱたく。

 王女(おうじょ)がゴーレムに(また)がり――リオレイニアを引っぱっていく。


「(ミャッドが、(なん)かしたのか?)」

「(わかりませんが、敵性(てきせい)検出(けんしゅつ)されていませ())」


 ヴォヴォヴォヴォオヴォゥゥゥウンッ――――♪

 なんだぜ?

 大人(おとな)たちが、居たあたり。

 テーブルの(はし)に、何かが置いてある(・・・・・・・・)

 橙色の(・・・)革袋(かわぶくろ)


「逃げてくださいららぁぁん!」

「きぃやぁぁぁぁ――――!?!?」

 (とが)った目玉(めだま)のゴーレムが、おれの(よこ)(とお)り過ぎる。

 王女(おうじょ)はおれもつかもうと、手を伸ばしてきたが――

 おれはその手を避け、(ぎゃく)に踏み込む。


 なんかが居る。


 テーブルの(はし)

 (いす)子が(たお)れている。


「(迅雷(ジンライ)、こっちに集中(しゅうちゅう)しろ)」

 茅の姫(ほしがみさま)も、ヴァリバリすんの止めろ。

 御神体(いおのはら)子供(こども)らを、(たの)む――ぜっ!?


「――っ!?」

 テーブルも椅子(いす)も――

 (から)になった(さら)(さかずき)酒瓶(さかびん)も――

 まばたきをしたら全部(ぜんぶ)が――

 (まぶた)(うら)に、消えちまった。


 (なに)もねぇ場所(ところ)に、(かげ)が落ちている。

 (それ)呼吸(いき)をするように、脈動(みゃくどう)し――

 ウォウォォウォォォン♪

 揺れる(たび)に、その(かず)増やしていく(・・・・・・)


 あるものは、(かぜ)に吹かれた薄衣(うすぎぬ)のような――(おんな)姿(すがた)

 あるものは、野を駆ける(おおかみ)のような――(けもの)姿(すがた)

 あるものは、背びれを揺らし水底(みなそこ)(しず)む――(さかな)姿(すがた)

 あるものは、(つばさ)(ひろ)虚空(そら)へ溶ける――(とり)姿(すがた)

 あるものは、(きば)を剥き咆哮(ほうこう)する巨躯(きょく)――(おとこ)姿(すがた)

 あるものは――あるものは――あるものは。


 (すべ)てが(うつ)ろで――止め処がなく。

 尋常(じんじょう)ならざるものどもは――そこには居ない。


 ひたひたと、とたたたと、ごぼごぼと、ばさばさと、ごぉぉぉぉおと。

 ぞぉぞぉぞぉぉ、ずるるるぅ――――!


 それらは、一点(いってん)から遠ざかろうと(・・・・・・)――

 (ゆか)に落ちた革袋(かわぶくろ)から、逃れようとしていた(・・・・・・・・・)


 わからん。

「(迅雷(ジンライ)、ありゃ(なん)だ!?)」

「(あれとは())」

 ばかやろう、ふざけてる場合(ばあい)じゃねーぞ。


 ぎこちなかった、それらの動きが(・・・)――

 歩を(すす)めるごとに洗練(せんれん)され、加速(かそく)していく!


 その(なか)のひとつ――薄衣(うすぎぬ)(おんな)が、目のまえに(せま)る!

 くぼんだ双眸(そうぼう)(かお)はない。


 ヴッ――じゃりぃぃんっ♪

 錫杖(しゃくじょう)(つらぬ)く。


()ぁーーーーーーーーーーっ!!」

 (はつ)をくれてやったが――ひたひたひたっ。

 足音(あしおと)は止まらない――すぽん♪


 錫杖(しゃくじょう)仕舞(しま)い――「ひのたまぁー!」

 ぼぅわ――――ぷすん♪

 (おんな)薄衣(からだ)は、そよぎもせず。

 小さな火(ひのたま)が、かき消える。


 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ。

 足音(あしおと)がうるせぇ!


「(くそう、狐火(きつねび)なら燃やせたかもなぁ――――!?)」

 薄衣(おんな)がとうとう、おれの(からだ)を突き抜けた。


「(シガミーのバイタルに、異常(いじょう)検知(けんち)――何を見ている(・・・・・・)のですか!?())」

 いかん。こいつぁ――坊主(ぼうず)領分(りょうぶん)らしいぜ!


 おれを突き抜けた(おんな)を、振りかえった!

 居たのは、(ひかり)のない双眸(くぼみ)


 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ。

 足音(あしおと)が止まらず、そこに居て――

 おれを見てやがる。


 ぶちっ、ぐるぅん。

 (ゆび)(かじ)(したた)る血で、空中(ちゅう)(えん)(えが)く。

 ぎちり――――――――シュッボゥ!

ON(オォン)――キリキリバサラウンハッタ!」

 瀑布火炎(ばくふかえん)(じゅつ)(とな)えた。


 ぼごぅわぁっ――――(うで)に火が付いたが、(あつ)くねぇ。

 〝自爆耐性(じばくたいせい)〟スキルは、ちゃんと効いてる。


 ぼっごっごぉぉぉぉぉうっわぁぁぁぁぁ――――!

 おれが(えが)いた真円(しんえん)から、(なが)れ出る(ほのお)


 薄衣(おまえ)がどんなものでも――日輪(にちりん)(しず)めやぁ!


 ぼっごっごぉぉぉぉぉうっわぁぁぁぁぁ――――ぶすぶすぶすすすっ!

 脳裏(のうり)をよぎる、(ひかり)のない双眸(くぼみ)


 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!

 ひたひたひたっ、ひたひたひたっ――――ぶすぶすぶすすすっ!


 足音(あしおと)(かさ)なり、陽光(ほのお)が――(おんな)姿(すがた)に削られていく!


「(ちぃっ、どういうことだぁ!? おれの血で薄衣(おんな)(かお)を、切り取ってやったってのによぉ――!)」

 坊主(ぼうず)の血はソレだけで、外法(げほう)調伏(ちょうぶく)使(つか)えるはずだ。


 ふぉん♪

『イオノ>ちょっと、何してんの?』

 ふぉふぉん♪

『ホシガミー>楽しそうですね、くすくす?』

 そんな呑気(のんき)一行表示(ティッカー)をよこす、女神(メガミ)星神(かみ)


「(ばかやろう! おまえらには、見えてねぇのかぁ!?)」

 おれの(からだ)に、まとわり付き――

 おれから吹き出る(ほのお)を、かき消す――

 (かお)のない薄衣(おんな)がぁよぉう!?


 ふぉふぉん♪

『シガミー>おい、虎の巻出せっ!

      リオの〝ひかりのたて〟の使い方を教えろやぁ!』

 火龍(ゲール)が吐いた火弾(ブレス)すら、(ふせ)いだあれなら。

 必要(ひつよう)なスキルがあるなら、(いま)すぐ全部取(ぜんぶと)れぇ――――――――!!


 ふぉふぉん♪

『解析指南>シガミーの認識している対象は、この世界に存在していません』

 とうとう解析指南(かいせきしなん)まで、(さじ)を投げやがった。


 ひたひたひたっ、ひたっ――――ぶすんっ♪

 おれの(いのち)(かぎ)りにおいて、無尽(むじん)のはずの(ほのお)が尽きた!

 止まった足音(あしおと)を見たら、くぼんだ口元(くちもと)が――にたぁり♪

 (かす)かに(ゆが)んだ。


「やべぇ、死ぬ。死んじまう! なんかねぇかぁ!?」

 必死(ひっし)(ふところ)(さぐ)ると――

 それは入れっぱなしだった、〝魔力量(MP)を10だけ増やせる鉢巻き(リボン)〟。


「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!?」

 半狂乱(はんきょうらん)になり、それを投げ捨てると――

 (なに)(おも)ったか――シュルル、カチャカチャキャチャッ――きゅっ♪

 迅雷(ジンライ)野郎(やろう)がおれの(かみ)を、総髪(そうはつ)にくくりやがった。


 ひたひたひたっ、にたぁり♪

「ひぃぃぃぃぃいぃぃっ――――!?」

 為す(すべ)がなくなったおれは――


「シガミー()

 よってきた虚け者(ジンライ)を、ひっつかんだ!

総髪/男性の髪型。俗に言うポニーテール。オールバックも、こう呼ぶこともある。

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