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422:初等魔導学院、詠唱魔法具と拠点その5

(むず)しい(はなし)は、お夜食(やしょく)のあとにしましょぉ、ウケケケッケッ♪」

 食卓(テーブル)に解き(はな)たれた五百乃大角(いおのはら)が、一目散(いちもくさん)に駆けていく。


「そーだなぁー、子供(がき)どもは寝ちまったことだし――♪」

 さりげなく手を伸ばした、つもりだったが――


「いけませんシガミー。お(さけ)成人(せいじん)の儀を過ぎてからです」

 仮面(かめん)美女(びじょ)が、おれから酒瓶(さかびん)(とお)ざける。


「ちっ、しゃぁねーな。やい五百乃大角(いおのはら)、その(とり)おれにも寄こせや」

 (とり)丸焼(まるや)きに添えられた根菜(いおのはら)に向かって、手をのばす。

 ぺちり――生意気な根菜(びのめがみ)が、おれの(ゆび)(たた)きやがった。


「よぉし、(さら)から降りろやぁ!」

 ヴッ――――じゃっりぃぃん♪


「あの、リオレイニアさん?」

「なんでしょうか、学院長(がくいんちょう)?」

 酒瓶(さかびん)をテーブルの(はし)へ置く、給仕服姿(メイドすがた)


大変聞(たいへんき)きづらいのですが……シガミーさんのマナーについて(・・・・・・・)、どのようにお(かんが)えですか?」

 そんな問いかけに(かた)(ふる)わせる、美の化身(リオレイニア)


「い、一度(いちど)年相応(としそうおう)の……(おとこ)の子のような(はなし)(かた)をさせてみたのですが、この(ところ)変異種(バリアント)つづきで荒事(あらごと)が増えて――」

 彼女的(かのじょてき)痛い所(・・・)を突かれたようで――

 ほそい(あご)を、冷や(あせ)がつたう。


「くすくす、すっかり(もど)ってしまいましたわ()

 大人(おとな)たちへ小振りの杯(ショットグラス)(くば)ってまわる、カヤノヒメ。


「あなたはカヤノヒメさんと、(おっしゃ)いましたね。シガミーさんは、天涯孤独(てんがいこどく)と聞いていたのですが……」

 矛先(ほこさき)はつぎに、謎の縁者(カヤノヒメ)へ向いた。


「ええまぁ、そのはずだったのですが……(くだん)変異種騒動(へんいしゅそうどう)で、色々(いろいろ)ありまして、くすくす()

 酒瓶(さかびん)のフタをきゅぽんと開け、「おひとつどうぞ()


   §


「それは……ひっく……イオノファラーさまに(かん)する、内密(ないみつ)なお(はなし)しですかぁ?」

 (ほほ)(あか)みが差した様子(ようす)の、学院長(かのじょ)のまえには――

 (さかずき)と言うには、巨大(きょだい)丼鉢(どんぶりばち)


外観(がいかん)から算出(さんしゅつ)した内容量(ないようりょう)が、誤差(ごさ)範囲(はんい)を超えています」

 (いぶか)しげな(かお)をした顧問秘書(こもんひしょ)酒瓶(さかびん)(かたむけ)け、学院長(がくいんちょう)(しゃく)をする。

収納魔法(しゅうのうまほう)というより、まるでこの(なか)酒造(しゅぞう)されているようニャ♪」

 真剣(しんけん)猫顔(ねこがお)開発部顧問(かいはつぶこもん)が、手帳(てちょう)にメモ書きをしている。


「くわしぃお(はなし)しわぁー、我々人類(われわれじんるい)にわぁー……ひっく……()しはかれないのです――ららぁん♪」

 王女殿下(おうじょでんか)(さかずき)よりは(おお)きな小鉢(こばち)を、手にしている。


「ふぅ、キリがありませんね。迅雷(ジンライ)あとは、お(まか)せしてもよろしいでしょうか?」

 串焼(くしや)きの(くし)だけになった(さら)をかさね、丸い盆(トレー)にのせる。

 やや(つか)れた様子(ようす)給仕(きゅうじ)が、戦線離脱(せんせんりだつ)宣言(せんげん)した。


 ヴォヴォォォォンッ――(うな)神力(しんりょく)

「ではここからはリオレイニアに変わり、(わたし)がお(こた)え――」

 飛ぶ(ぼう)が、クルリと回転(かいてん)――


「いいえ、迅雷(ジンライ)さん。ここは(ほし)……いえシガミーさんの血縁である(・・・・・)(わたくし)()――」

 (おと)もなく立ちふさがり眷属棒(ジンライ)(むか)え撃つ、猫耳(ねこみみ)メイド・カヤノヒメ。

 その指先(ゆびさき)に――――パリパリッ♪

 神力(しんりょく)がきらめいた。


敵対行動(てきたいこうドう)とミなします。プロダクトアーム接続部(せつぞくブ)ニ、フライバックトランス回路(かいロ)形成(けいセい)神力(しンりょく)ヲ15mA(ミリアンペア)昇圧(しょうアつ)放電(ほうデん)しマ()

 キュキュン――――ヴァリッ♪

 無数(むすう)黒腕(かいな)を生やし、先端(せんたん)神力(しんりょく)(みなぎ)らせる、女神の眷属(そらとぶぼう)


(つえ)使(つか)わず、生活魔法以外(せいかつまほういがい)魔術(まじゅつ)行使(こうし)できるのは――鬼族(オーガ)か、女神(めがみ)眷属(けんぞく)くらいのものだニャァ♪」

 (たの)しそうに小競(こぜ)り合いを見つめる、ギ(じゅつ)開発部顧問(かいはつぶこもん)


 猫耳メイド(カヤノヒメ)が、(おお)きく(ひら)いた(てのひら)(あいだ)を――――ヴァリヴァリリィッ!

 幾重(いくえ)もの雷光(スパーク)が、(ほとばし)った。


 (あたま)から木の枝(・・・)を生やしてはいるが、シガミーは鬼族(オーガ)ではない。

 その事実(じじつ)(すく)なくとも、カヤノヒメとの血縁関係(けつえんかんけい)成立(せいりつ)しないことを物語(ものがた)っている。


「も、もうっ! これ以上(いじょう)、どうっ説明(せつめい)したら良いのですかっ――!?」

 トレーを(かか)えた仮面(かめん)(した)(かお)が、青ざめた(・・・・)


「リオレイニアさんは……ひっく……魔術以外(まじゅついがい)は、まだまだ(・・・・)ですねぇ」

 立ちあがり、ふらつく足取(あしど)りで――

 給仕服(リオレイニア)近寄(ちかよ)学院長(ロサロナ)

 ぽんと(あたま)に乗せられた指先(ゆびさき)が――

 やさしく左右(さゆう)に揺れうごく。


「が、学院長(がくいんちょう)!? わ、(わたくし)はもう子供(こども)では――」

 ふらつく学院長(がくいんちょう)を突き(はな)すことは出来(でき)ないのか――

 硬直(こうちょく)するメイド姿(すがた)


「カヤノヒメさんの魔術(まじゅつ)淵源(えんげん)や、シガミーさんとの血縁関係(けつえんかんけい)……ましてやシガミーさん本人(ほんにん)資質(ししつ)気質(きしつ)などは……ひっく……まったく気にしておりませんよ、かわいい、かわいい♡」

 (あたま)に乗せられた指先(ゆびさき)が――

 やや強めに左右(さゆう)に揺れうごく。


「ええっ!? そ、それでは(なに)を、心配(しんぱい)されているのですか!? こんな対魔王結界(たいまおうけっかい)まで持ち出してっ――?」

 驚愕(きょうがく)猜疑(さいぎ)にまみれた仮面(かお)が、巨大(きょだい)空間(くうかん)(あお)いだ。


単刀直入(たんとうちょくにゅう)に、お(はな)しするならば……ひっく……あのじゃじゃ(うま)――じゃなくって、跳ねっ(かえ)り――でもなくて……こほん♪」

 元教(もとおし)え子の見習(みなら)教師(きょうし)から手を(はな)し、姿勢(しせい)(ただ)す酔っぱらい。


「コントゥル家の令嬢(れいじょう)立派(りっぱ)、とは言いがたいですが……ひっく……(すく)なくとも淑女(しゅくじょ)へと(そだ)て上げた、あなたのお(ちから)をお借りしたいのです……ひっく、うい♪」

「あぶないっ――!」

 ガチャラランッ!

 トレーを(ほう)りだし、ふらつく女性(じょせい)(やや大柄(おおがら))を受け止める、仮面(かめん)女性(じょせい)(やや細身(ほそみ))。


「「「「むにゃん?」」」」

 まだ、うとうとしてた子供(こども)たちとメイドの一人(ひとり)が、むくりと起きた。


「そうだニャァ♪ このまま行けばシガミーは間違(まちが)いなく、ガムラン(ちょう)だけでなく――」

 ぱたんと手帳(てちょう)を閉じる、猫頭顧問(ねこあたまこもん)

「――央都(おうと)(まつりごと)へかり出されるに、決まってますからねぇー?」

 ぎゅきゅっと酒瓶(さかびん)に、フタをする秘書(ひしょ)


「ばっきゃろー! せめてこっちのうまそうな(さかな)くらい、半分(はんぶん)よこせやぁ!」

 そんな(こえ)のした(ほう)を、一斉(いっせい)に見つめる大人組(おとなぐみ)


「ひのたまぁ――()

 ぼぅわ。

「あっぶねーな! (めし)が燃えたら、どーするつもりでぇい!?」

 そんな(こえ)のした(ほう)を、一斉(いっせい)に見つめる子供組(こどもぐみ)


 「なんかやってるよ?」、「やってますね?」、「おもしろそう!」

 御神体(メガミ)料理番(シガミー)の、一騎討(いっきう)ち。

 完全(かんぜん)に目を覚ました子供(こども)たちと見習(みなら)いメイドが、魔法杖(つえ)を取りだし――

 食卓中央(だしもの)へ向かって、駆けていく。


「シガミーちゃんは、魔導工学(まどうこうがく)についての先見(せんけん)があります。マナーでしたら王家直属(おうけちょくぞく)指南役(しなんやく)に、お(まか)せくださいませらぁぁん!」

 取り出される杓子(しゃくし)万能工具(まほうつえ))。


「たしかに才能(さいのう)については、(うたが)いようもないニャァ♪」

 『魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部入団の手引き』

 そんな冊子(さっし)(けん)のように、(かか)げられる。


「はい。あの才能(さいのう)をひとり占めされたら、内乱(ないらん)が起きます」

 『魔導騎士団魔術研究所ギ術開発部入団届』

 そんな複写式(ふくしゃしき)書類(しょるい)羽根(はね)ペンが((りゃく))。


「えっ、なんで(きゅう)に、こんな本題(ほんだい)に切り込んでくるのですか!? 駄目(だめ)です、シガミーはうちの子です。冒険者(ぼうけんしゃ)として、ガムランの次代(じだい)(にな)って(いただ)くことになっていますので(キッパリ)!」

 カシャラララッ――エプロンのポケットから取り出されたのは、初心者用(しょしんしゃよう)魔法杖(まほうつえ)×6。


「ふぅ……ひっく……リオレイニアさんとリカルルさんが、入学(にゅうがく)してきたときのことを(おも)い出してしまいますね」

 よっこいしょと、(ちか)くの椅子(いす)(すわ)学院長(がくいんちょう)


「にゃははははっ♪ いまの状況(じょうきょう)は、〝魔神(まじん)再来(さいらい)〟にそっくりだ(・・・・・)ニャァ♪」

 猫頭顧問(ねこあたまこもん)(ふところ)から取りだしたのは、派手(はで)(いろ)革袋(かわぶくろ)


 ずざざざっ――大人組(おとなぐみ)一斉(いっせい)に、革袋(それ)から距離(きょり)を取った。

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