４１５：初等魔導学院、家名と魔術の才能
「（おい、名前とスキルが駄目らしいぞ――どうする!?）」
轟雷を出すか!?
子供どもには、リオが付いてる。
建物の瓦礫に埋もれても、すり傷ひとつ付けさせんだろ。
「（はい。彼女には、ＭＡＧＩＣ・ＳＨＩＥＬＤがありますので）」
あの魔術には、実はすこし興味がある。
「――、――聞いていますか、シガミー君？」
「ははい。何だで、ごぜぇますわぜ？」
いけねぇ、聞いてなかった。
「「ゴゼーマスワゼ」……それが、家名ですか？」
ジッとおれを見下ろす、ギルド職員。
「はぁ？ まてまて、何の話だぜ？」
カウンターによじ登る。
「何って、もちろん指名クエストを受ける際に必要な、〝家名〟の話ですが？」
カウンターに置かれた〝クエスト依頼書〟を、トンと指で叩くおっさん。
どうやらこの支部出張所には、彼ひとりしか職員はいないらしい。
「家名ってなぁ、名字のことだろ？ ねぇぞそんなもん」
肘で体を支え、両足をブラブラさせる。
「個人やパーティーが、名指しで依頼を受ける際、書類上の重複を防ぐために家名や二つ名が必要になります。かならず記入してください」
依頼書をクルリと回し――トン♪
『ガムラン町東大通り 猪蟹屋御中』の横を叩く。
「だから家名はねぇし、二つ名ってなぁ字のこったろ？ てめぇで名乗るもんじゃねぇだろがっ」
今すぐ作れと、言われてもな。
学院長は何も、言ってなかったしよぅ。
「――〝猪蟹屋〟か〝シガミー御一行様〟じゃ、駄目なのか？」
おれは両肘をついたまま、指先で依頼書を引き寄せる。
よく見れば横線が引かれてて、名前を書くようになってた。
「〝猪蟹屋〟は店舗の屋号であり、〝シガミー御一行様〟はパーティー名になります。君個人のファミリーネームを、作成してください」
なんだか面倒なことになったな。
ふぉん♪
『ヒント＞ファミリーネーム／名字、家名』
迅雷ィ、オマエが作ってくれや。
ふぉん♪
『＞惑星ヒースにおけるシガミーの今世を、
左右しかねない重要案件につき出来かねますが、
迅雷や轟雷を従える〝鳴神〟や、天空を司る〝蒼天〟と、
名乗りを上げては？』
ふぉん♪
『斧原イオノ＞ばかね迅雷、シガミーはうちの子なんですからね！
シガミー・オノハラに決まってるでしょ♪』
鳴神に蒼天に斧原だぁ？
どれもしっくりこねぇ、それなら――
ふぉふぉん♪
『シガミー＞妙竹林山朧月寺虎鶫衆弐番隊隊長。
前世の名乗りの方がマシだぜ』
ふふぉん♪
『イオノ＞長いね』
『＞長いですね』
「では手続きの都合もありますので、パーティーの現拠点である〝ガムラン〟を冠し、〝シガミー・ガムラン〟ではいかがでしょうか？」
はぁ――？
「おい、それっ良いじゃねぇか♪」
長くもねぇしな！
「そうですか？ ではそのように家名登録申請届も、一緒に出しておきます」
迅雷と根菜が『素っ気ない』と、ひとこと言ってきたが――文句は言わせねぇ。
わかりやすくて中々良いと、おれが思ったんだからな。
「ソレではもう一つの問題も、解決しましょうか」
ゴトリ。
重厚な音を立てて、カウンター下から取り出されたのは――
厚みのある木の板……「魔法具か？」
小さなカウンターは、手狭になり――
おれは後ろに、飛びおりた。
「はい、生涯最大ＭＰ測定魔法具です」
ＭＰてのは、生活魔法を使うと１減る数字だろ？
いまも、迅雷や五百乃大角の、一言のそばに見えてる。
緑色の棒と紫色の棒は、迅雷が見せる画面とは別に、映し出されている。
ヴォゥ――♪
『ＨＰ／■■■■■■■■■■４３６４
ＭＰ／■■３２』
よく見りゃ、ＨＰとＭＰって書いてあるな。
横のが総数か。普段はまるで気にしねぇけど――
「（体力と比べてＭＰの値が、少なすぎる可能性があります）」
「むぅ、少ないとどうなる？」
おれは腕を組み、緑色とくらべるとやたらと短ぇ紫色を睨みつける。
「そうですね。このクエストの指名が、受けられなかったり――」
あ、また声に出してたか。
「――初等魔導学院への在籍がかなわず、王立騎士団訓練校への転校を余儀なくされる場合があります」
「そいつぁやべぇ、一大事じゃねぇーかっ！」
もしそんなことになったら、レイダにひっぱたかれるに決まってる。
おれは「伸びろ迅雷」――がこん♪
伸ばした相棒をカウンターに立てかけて、踏み台代わりにした。
カウンターの上に置かれた――
この何とか言う魔法具で――
おれの命運か、決まるらしい。
「お尋ねしても、よろしいでしょうか？」
ヴォォォン♪
踏み台が、職員に尋ねた。
「何なりと、お尋ねください」
見た目に反して、中身はしゃんとしてやがる。
しゃべる棒にも、動じねぇし。
「貴殿はシガミーの魔力量の上限を、どのようにして把握したのですか？」
分厚い木の板。
その真ん中には暗い色のビードロ……丸いガラスが埋め込まれている。
「そうだぜ、おれぁまだ魔法具に触ってもいねぇぞ？」
「単純な話です。冒険者カードの鑑定結果から、魔力関連スキルの不足を危ぶみました」
どーいう？
「（シガミーはＭＰ上限に有効なスキルを、持ち合わせていないようです）」
おれのスキル一覧出せ！
ふぉふぉん♪
『シガミー ＬＶ：３９
薬草師★★★★★ ／状態異常無効／生産数最大／女神に加護／七天抜刀根術免許皆伝
追加スキル／遅延回収／自動回収／自動回復／体力増強／上級鑑定／自爆耐性／解析指南／超料理術
――所属：シガミー御一行様』
その偽物じゃなくて、本物を出せっ！
ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉぉぉん♪
『シガミー ＬＶ：１００ ☆：８
薬草師★★★★★ ／状態異常無効／生産数最大／女神に加護／七天抜刀根術免許皆伝／星間陸路開拓者
追加スキル ／遅延回収／自動回収／即死回避／自動回復／体力増強／上級鑑定／自爆耐性／上級解体／スキル隠蔽／ＬＶ詐称
／人名詐称／石窟加工／炸薬生成／初級造形／木工彫刻／石礫破砕／防具修復／高速修復／上級修復／頭部防具強化
／防具筋力強化付与／防具体力強化付与／防具攻撃力強化付与／防具知恵強化付与／防具防御力付与／幸運効果付与／幸運効果永続／幸運効果増大／幸運倍化／幸運リミットブレイク
／強運行使／防具幸運強化付与／耐性強化付与／耐性強化永続／耐性強化／耐性倍化／伝説の職人／不壊付与／不壊永続／植物図鑑
／武器修復／研ぎ師／切れ味持続／自動修復（小）付与／収穫量倍化／基礎工学／基礎光学／金属加工／合金錬成／天衣無縫
／初級位相幾何学／女神像機能解放／女神像機能呼出／先端工学概論／先端光学概論／撮像転写制限解除／システム猶予／投げ縄／ロープワーク／捕縛術
／水泳上達／体温維持／遠泳術／肺活量上昇／潜水術／食物転化／分離倍化／急速熟成／超抽出／高速調理
／さじ加減／基礎化学／有機化学／医食同源／かくはん王／生活の知恵／試薬調合／分析術／解析指南／超味覚
／サバイバルＬＶ３／生存確率上昇／濾過術／分離術／高速結晶化／状態変化（大）／調理術／アイテム名偽装／女神像システムフォルダ開放／女神像Ｐフォント
／風使い／滞空ＬＶ２／航空力学／羅針盤／体幹／羽ばたき／滑空ＬＶ３／魔法具操作術／魔法具自動操作／超感覚
／星間空路補正／星間陸路補正／早撃ち／酔い止め／宇宙工学概論／システム補佐／血流強化／スタミナ増強／サブシステム使用許諾／サブシステムオフライン切替
／ジャイロマスター呼出／サブシステム用言語使用許諾／体感強化／作業量倍化／落下術／脳波補正／滅モード／鷲の脚爪／大蝙蝠の毒針／亀の甲羅
／狼の火弾／
――所属：シガミー御一行様』
長ぇ！ まえが見えんだろが！
多すぎてさっぱり読めんし、意味もわからん。
どーにかしろい！
