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414:初等魔導学院、ギルド支部出張所

「おれぁ〝薬草師(くさし)〟だ。本当(ほんとう)は〝薬師(くすし)〟だと(おも)って、(えら)んじまったんだがぁ――こうして(なん)とか、冒険者(ぼうけんしゃ)をやれてる。気負(きお)うことはねぇぞ」

 おい、女神像(めがみぞう)のそばにはリオが、付いててくれるんだろ?


「(はい。ここは彼女(かのじょ)一任(いちにん)しましょ())」

 おれは五百乃大角(いおのはら)から、迅雷(ジンライ)っていう壊れない武器(・・・・・・)をもらった。

 そして、五百乃大角(いおのはら)クエストの報酬(ほうしゅう)でも(やま)のようにSP(スキルポイント)をもらった。


 本当(ほんとう)のところ、おれの職業(しょくぎょう)初期(しょき)スキルには、(たい)して意味(いみ)がねぇ。

 100個以上(こいじょう)追加(ついか)スキルを……取りまくった(・・・・・・)からな。


 しいて役立(やくだ)った(ところ)を言うなら……冒険者(ぼうけんしゃ)(はじ)めた当初(とうしょ)、〝生産数(せいさんすう)最大(さいだい)〟スキルでまとまった(かね)を手にできたくらいか。

 もっとも薬草(くさ)を刈りまくれたのも、特製(とくせい)(ふくろ)に詰めて(はこ)んだのも――迅雷(ジンライ)手柄(てがら)なんだけど。


「(アンタたちは、最初(さいしょ)から(てき)なし……でもなかったわねぇ。(つの)ウサギ一匹(いっぴき)にズタボロにされて、生意気(なまいき)ちゃんと一緒(いっしょ)に泣きながら(かえ)ってきたことあったしねぇー())」

 ちっ、おまえ見てたのか。

 (あたま)を振って、五百乃大角(いおのはら)御神体(からだ)を落っことす。

 ちなみに生意気(なまいき)ちゃんてのは、レイダのことだ。


「ぎゃわっ――!?()

 (さけ)御神体(ごしんたい)

「わわわぁっ!?」」

 あわててタターが、手のひらで受け取めた。

 そんなに大事(だいじ)(あつか)わなくても、そいつぁー基本的(きほんてき)には(こわ)れねぇ――

 なんせ、おにぎりの手刀(しゅとう)10回までなら(・・・・・・・)耐えられる。


「そいつぁ曲がりなりにも、(かみ)名乗(なの)ってるんだ。落っことしたくらいじゃ(こわ)れねぇぜ?」

 ふん。


「か、(かみ)さまだからっ――落っことしちゃ、いけないんでしょっ!!」

 (おこ)るタターの、手のひらの(うえ)


「「いぃーーーーっだっ()」」

 (くち)(はし)(おお)きく(ひろ)(きば)を剥く、美の女神(いおのはら)御神体(ごしんたい)


 梅干(うめぼ)しみたいな(意識(いしき)だけの)映し身(アイコン)も、同時(どうじ)(あやつ)ってやがる。


 ふぉん♪

『イオノ>いぃーーーーっだっ!』

 そして一行文字(ティッカー)にまで悪態(あくたい)をつく、余裕(よゆう)までありやがる。

 おれも鉄鎧の体(ゴウライ)になってたときは、(いろ)んなことを同時(どうじ)にやれてたけど――

 (いま)のコイツほどには、出来(でき)なかった。


 神々(かみがみ)はこういう、|同時に色んな事をするの《マルチタスク》が得意(とくい)だ。


「イオノファラーは()女神(めがミ)とイう自覚(じかク)ヲ、持ッた(ホう)が良いノでは()

 おう、眷属(けんぞく)だからって遠慮(えんりょ)するこたぁねぇぞ。

 あとで(こま)るのは神さん(こいつ)だ。もっと言ってやれ。


基本的(きほんてき)にわぁーねぇー……ぺらぺら、ぺらり……冒険者(ぼうけんしゃ)パーティーに(はい)ればぁー、どうにかやっていけるはずよぉーねぇ()

 画面(がめん)(なか)無視(むし)を決めこむ梅干し(アイコン)


 この世の、ありとあらゆる出来事(できごと)が書かれた虎の巻(こうりゃくぼん)を、ぺらぺら、ぺらりとめくっている。


「そ、そうだな。全部(ぜんぶ)をうまくやろうとするなら、どうしたって足りない(ところ)が出てくるもんだぜ」

 正直(しょうじき)(ところ)、おれぁ一気(いっき)にLV100になっちまったから――

 生徒たち(ガキども)手本(てほん)にゃ、(ほど)とおい。


「そぉうねぇーん。でもぉシガミーのパーティーにわぁ、このあたくしさまが完備(かんび)してるんだからぁー。あんまり鵜呑(うの)みにしすぎてもぉ、()()ぇよぉぉう()


「「「「「「「「「「「「「「イオノファラーさまが、パーティーメンバー!?」」」」」」」」」」」」」」

 うるせぇ、やかましぃ! 耳元(みみもと)(さわ)ぐな、子供(ガキ)どもめっ。

 通路(つうろ)生徒(こども)で――埋め尽くされた。


「こらぁー。冒険者登録(ぼうけんしゃとうろく)が済んだ(ひと)わぁー、(すみ)やかに教室(きょうしつ)(もど)ってくださぁーい――あら、シガミーは(れつ)(なら)ばなくても、すぐに職員(しょくいん)(かた)手続きをして(・・・・・・)くれますよ?」

 もうひとりのパーティーメンバーも――通路(つうろ)(おく)から、仮面(かめん)(かお)を出した。


「よくわからんが、そうする。この場は(たの)むよ、リオレイニア」

 はいはい、はははいっと、ちょっくらごめんなすってよぉぅ♪

 おれより(すこ)し背が(たか)い、生徒(せいと)たちをかき分け――


 『ギルド支部出張所』へと、たどり着いた。


「ご用件(ようけん)は――?」

 ちいさな受付(うけつけ)カウンターに、(すわ)っていたのは――

 (はな)やかな受付嬢(うけつけじょう)ではなく――

 小太(こぶと)りの、おっさんだった。 


「えぇーっと? シガミーです。ただの、シガミーです」

 わからんままに、名乗(なの)った。

 カウンターの向こうに、学院長(がくいんちょう)姿(すがた)はない。


「「「「「「「「「「「「「「ええええぇぇええっーーーーっ、見習(みなら)先生(せんせい)も、パーティーメンバー!?」」」」」」」」」」」」」」

 やかましい、子供(ガキ)どもめっ。

 通路(そっち)を振りかえると、見習い教師(リオレイニア)生徒(せいと)たちに取り(かこ)まれていた。


「あー、はいはい。(きみ)がシガミーさんね――チーン♪」

 ついさっき学院長(がくいんちょう)が見せてくれた、〝クエスト依頼書(いらいしょ)〟とおれを見比(みくら)べている。

 (かね)(おと)が鳴ったってこたぁ――上級(じょうきゅう)鑑定持(かんていも)ちだ。

 おれの偽装(きぞう)スキル(〝スキル隠蔽(いんぺい)〟、〝LV詐称(レベルさしょう)〟、〝人名詐称(じんめいさしょう)〟)なら、見破(みやぶ)られねぇとは(おも)うが――

 ソレでもやっぱり、緊張(きんちょう)は……するぜ。


「おや? (きみ)名前(なまえ)とスキルに、不備(ふび)がありますね?」

 職員(しょくいん)のおっさんが、受付(うけつけ)カウンターに身を乗りだし――

 おれの(かお)をジッと、見下(みお)ろしてきた。

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