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411:初等魔導学院、冒険者カード

「ではみなさん、冒険者(ぼうけんしゃ)カードを出してくださーい。まだ持っていない(ひと)は、手を挙げてくださーい」

 (せん)(ほそ)すぎる男性教師(だんせいきょうし)が、片手(かたて)を挙げてみせる。


 がやがやがやややっ。

 あわてて(せき)(もど)子供(こども)たち。


 長机(ながつくえ)ひとつに、座席(ざせき)(みっ)つ。

 長机(ながつくえ)教室(きょうしつ)に、全部(ぜんぶ)で12。

 (せき)はところどころ抜けていて、この教室(へや)に居る生徒(こども)は30(めい)


 手を挙げたのは、そのうちの半数程度(はんすうていど)

 (となり)(すわ)るタターも、手を挙げている。


 ぱたぱたぱたたた。

 手を挙げなかった子供(こども)たちが、ちいさな(いた)を取り出す。

 それは木製(もくせい)で、すこし(あつ)みがあった。

 LV(レベル)が上がれば(いた)は割れ、(なか)から上位のカード(・・・・・・)(あらわ)れる構造(こうぞう)になっている。


「(レイダ以外(いがい)全員(ぜんいん)LV(れべる)1から3程度(ていど)。手を挙げたのは16(めい)())」

 ガムラン(ちょう)でもなければ、そうそう魔物(まもの)(たたか)うこともないんだとしても、LV(レベル)(ひく)いな。

 それに、大陸全土(たいりくぜんど)から(あつ)まってきたにしちゃ、子供(こども)(かず)(すく)ねくね?


「(同様(どうよう)教室(きょうしつ)が、全校合(ぜんこうあ)わせて17部屋(へや)。そのうち入学(にゅうがく)したばかりの生徒(せいと)は5部屋(へや)に振り分けられていま())」

 ふーん?


「(この教室(きょうしつ)には、ガムランからと央都(おうと)からの生徒(せいと)が、(あつ)められているようで())」

 ふふーん?


「(現在(げんざい)ガムラン(ちょう)に住む子供(こども)は、カヤノヒメを入れても総勢四名(ぞうぜいよんめい)です。空きのあったこの教室(きょうしつ)へと、全員(ぜんいん)が割り振られたのだと(おも)いま())」

 ふふふふぅーん?


 お偉方(えらがた)が手を(まわ)したから、おれとタターもレイダに付いてくることになった。

 本当(ほんとう)なら最長(さいちょう)四年(よねん)(べつ)土地(とち)で暮らすことになってたから、それは良かったけどよ。

 パーティーメンバーは出来(でき)ることなら、一緒(いっしょ)に居た(ほう)が良いからなー。


 リオレイニアはLV40越えで、カードの(いろ)金色(きんいろ)

 レイダはLV13で、まだ木製(もくせい)

 おれは、人類最高(じんるいさいこう)LVっぽい女将(おかみ)さんのLV60越えを、はるかに超越(ちょうえつ)した――

 LV100に到達(とうたつ)し、カードの(いろ)は真っ(くろ)だ。


 もちろん、ソレは見せられるわけがねぇーから――

「(シガミーの冒険者(ぼうけんしゃ)カードは、(つぎ)のように偽装(ぎそう)してあります。確認(かくにん)してくださ())」


 ふぉふぉん♪

『シガミー LV:39

 薬草師★★★★★ /状態異常無効/生産数最大/女神に加護/七天抜刀根術免許皆伝

     追加スキル/遅延回収/自動回収/自動回復/体力増強/上級鑑定/自爆耐性/解析指南/超料理術

 ――所属:シガミー御一行様』


 追加(ついか)スキルが、(おお)すぎやしねぇか?

 LVも大概(たいがい)だしよぅ……。


「(ですが人類(じんるい)(はじ)めてミノタウロースを、単独討伐(たんどくとうばつ)したことを知られていますし、公開済(こうかいずみ)のこのスキル情報(じょうほう)(いま)から改竄(かいざん)すると、要らぬ嫌疑(けんぎ)を掛けられる(おそ)れがありま())」

 ぐぅ、た、たしかに、そりゃそーなんだが。


「(せめて、ぎりぎりで銀色(ぎんいろ)のカードだったことを、良しとしましょ())」

 そーだな……壇上(だんじょう)に居るリオレイニアは、冒険者(ぼうけんしゃ)として到達点(とうたつてん)にいる。

 超一流(ちょういちりゅう)彼女(リオ)(きん)ピカのカードを持っているのは、当たりまえだ。


 ここで(おし)えを請うおれが、金色(それ)(なら)び立っていては、どうにも格好(かっこう)が付かねぇ(ところ)だった。


「ふぅ――」

 意を(けっ)し、(ふところ)から取り出すと――――わぁー!?

 周囲(しゅうい)から歓声(かんせい)が上がった。


 冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドにたむろする、どんな(いか)ついおっさんよりも――

 年端(としは)もいかねぇ子供(がき)の、おれのほうが(つえ)ぇってんだから――

 そりゃ、そうなるわなぁ。

 けど、これでも相当(そうとう)削って(・・・)るんだぜ。

 どうにかこれで勘弁(かんべん)してくれぇー。


「シガミーさんは、すでに冒険者(ぼうけんしゃ)として大活躍(だいかつやく)しています。みなさんは(おお)いに刺激(しげき)を受けてくださーい」

 おい、(ほそ)っこいの。勝手(かって)なことを言――


「「「「「「「「「「「「ははーい♪」」」」」」」」」」」」

 あれ? 意外(いがい)とかるい(かん)じで、(なが)されたぞ?

 (たす)かったが、どういうこった?

「(わかりません。いまは平静(へいせい)(よそお)いましょ())」

 うん、そうする。


「はい、それではー、冒険者(ぼうけんしゃ)カードがない(ひと)見習い教師(・・・・・)のリオレイニア(くん)に付いていってくださーい」

 (たた)いたらスグ折れそうな細腕(ほそうで)で、〝見習い教師(リオレイニア)〟を(ゆび)さす男性教師(だんせいきょうし)


 魔術師(まじゅつし)がどういう人生(じんせい)(あゆ)むものなのか、くわしい(ところ)はわからねぇが――

 その最高到達点(さいこうとうたつてん)である、金色の冒険者(リオレイニア)教室(きょうしつ)の入り(くち)(おお)きく(ひら)いた。


「はぁーい! いま手を挙げた(ひと)は、(わたくし)に付いてきてくださいねー♪」

 そんなやさしい(こえ)(うなが)されるまま、生徒(こども)たちが階段(かいだん)を駆けおりていく。

 (おお)きく手を振るその(うで)には『見習い』の腕章(わんしょう)がゆれている。


 その仮面(かめん)(した)の目が、ぎろりと男性教師(だんせいきょうし)(にら)みつけたのを――

 おれは見逃(みのが)さなかった。


「では、イオノファラーさまとシガミーさんは、(わたくし)に付いてきてください」

 学院長(がくいんちょう)壇上奥(だんじょうおく)(ドア)を、ガチャリと(ひら)いた。

 そうだったぜ。

 (れい)の立て(なお)し(?)の(けん)授業(じゅぎょう)が終わり次第(しだい)、くわしい(はなし)を聞くことになってる。


 ヴユヴォォォォォン♪

 活力(マナ)(うな)りが聞こえる。


 「ではお(さき)に」と学院長(かのじょ)は、スタスタと(ある)いて行ってしまった。

 (ドア)の向こうには、普通(ふつう)部屋(へや)がある。


 振り向くと生徒(こども)たちを廊下(ろうか)(なら)ばせるリオと、目が合った。

 仮面(かめん)(した)(かお)は、「心配(しんぱい)いりません」と言っている。


「あらぁ? ひょっとしてぇー、お茶会(ちゃかい)へのお(さそ)ぉぉいぃー♪」

 やい、呑気(のんき)だぜ。ウチの(かみ)さんはよぉ。

 浮かぶ独古杵(ジンライ)にしがみ付いた御神体(いおのはら)が、ひょろろりと飛んで行く。


「(よし、迅雷(ジンライ)――)」

 腕輪(うでわ)指輪(ゆびわ)具合(ぐあい)(たし)かめる。

 ふぉふぉん♪

『>特撃型シシガニャン10号改、ならびに轟雷。

  使用可能状態で待機中です』


「付いていって、やろうじゃねーか!」

 おれは(おそ)(おそ)(おく)部屋(へや)に、(あし)を踏み入れた。

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