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408/743

408:初等魔導学院、特待生制度と飛び級制度と見習い先生

「はいはい、(せき)についてくださーい。今日(きょう)は、あたらしいお友達(ともだち)紹介(しょうかい)しまーす」

 青年(せいねん)(すこ)し過ぎたくらいの年齢(とし)

 やけに(せん)(ほそ)指南役(しなんやく)が、そんな宣言(せんげん)をした。


「では自己紹介(じこしょうかい)をどーぞ。できるかな?」

 指南役(そいつ)が、物怖(ものお)じする彼女(かのじょ)(わら)いかける。


「は、はい。わ、(わたし)は〝タター〟です。ただのタターです。生活魔法(せいかつまほう)なら一通(ひととお)使(つか)えます。よろしくおねがいします!」

 壇上(だんじょう)へ上がった、給仕服(メイドふく)外套姿(ローブすがた)

 背中(せなか)に、やけに折れ曲がった魔法杖(まほうつえ)背負(せお)少女(しょうじょ)が――

 (かお)を真っ赤にして、(こえ)を張りあげた。


「タターさんはガムラン辺境伯領(へんきょうはくりょう)ではたらきながら、なんとラプトル第一王女(だいいちおうじょ)殿下(でんか)のお仕事(しごと)手伝(てつだう)才女(さいじょ)でありまーす」

 レイダくらいの(とし)童相手(わらしあいて)に、まるで大人相手(おとなあいて)言葉(ことば)(はな)指南役(しなんやく)

 レイダの父上(ちちうえ)と、(おな)じくらいの(とし)背格好(せかっこう)か。


 がやがやがやがやや。

 ざわつく(おお)きな部屋(へや)

 壇上(だんじょう)を取り(かこ)むように、(だん)になった長机(ながつくえ)

 そこへ腰掛(こしか)けているのは、門下生(もんかせい)である子供(こども)たちだ。

 がやがやがやがやや。

 タターさんだっ♪


「みなさんお(しず)かに、では拍手(はくしゅ)ー」

 わー。タターさぁん♪

 レイダの(こえ)が、よく聞こえた。


「それでは(つぎ)ー。自己紹介(じこしょうかい)できるかな?」

 はかやろーう。おれぁ前世(ぜんせ)僧侶(ぼうず)生業(なりわい)にしてた(おとこ)だぜ。

 説法(せっぽう)まがいの小商(こあきな)いで、いつも道端(みちばた)(ひと)(あつ)めたもんだ――

 っ――(わらし)どもめ、一斉(いっせい)に見るんじゃねぇやい!


「お、おれぁ――!?」

 ここしばらく、ニゲル語もしゃらあしゃらしたのも、やってなかったから――{>Logon__rpon__Connect>対話型セッション開始 ⚡ 龍脈言語server01.net}

 おれはクルリと、身をひるがえす。


(わたくし)は、カヤノヒメ……では無く、こほん――」

 おれは(・・・)咳払(せきばら)いをし、背筋(せすじ)をのばした。


(わたくし)はガムラン辺境伯領(へんきょうはくりょう)にて商店(しょうてん)(いとな)む、シガミーともうしますわ。若輩者(じゃくはいもの)ではございますが、みなさまどうぞよしなに、くすくす♪」

 くそう、なるほどだぜ!

 (ほほ)片手(かたて)を当てて、そういう(ふう)に言やぁ良かったのか。

 ココに居る童共(わらしども)は、ほとんどが大名(だいみょう)……お貴族(きぞく)さまだ。

 読み書きや礼儀作法(れいぎさほう)は、すでに仕込(しこ)まれてるらしい。


「はーい、彼女(かのじょ)はみんなより二歳(にさい)ほど年下(としした)ですが、なんと先日(せんじつ)のマナキャンセラー緊急(きんきゅう)作動中(さどうちゅう)に、炎魔法(ほのおまほう)発現(はつげん)させた天才(てんさい)でーす」

 指南役(しなんやく)(ほそ)(おとこ)背中(せなか)には魔法杖(まほうつえ)が、三本(さんぼん)くらい背負(せお)われていて――

 がらんがららんと、うるさかった。


 がやがやがやががややや?

「はーい、(しず)かに。拍手(はくしゅ)ー」

 わー。「「シガミー」」

 レイダとヴィヴィーの声が、よく聞こえる。


 くるりと身をひるがえすと、{Disconnect>対話型セッション終了}

 おれは(からだ)自由(じゆう)を、取りもどした。


 魔法道場(ここ)(おさ)である学院長(がくいんちょう)に、にじり寄られてから一週間(いっしゅうかん)

 おれは……おれたちは(・・・・・)、まだ央都(おうと)に居た。

 新米(しんまい)メイド・タターまで、大荷物(おおにもつ)背負(せお)ってやってくるし――

 まったく、なんでこんなことに。


 (つづ)いて壇上(だんじょう)に上がったのは――


「みなさま、ごきげんよう。〝リオレイニア・サキラテ〟です。今日(きょう)から、いっしょに勉強(べんきょう)させて(いただ)くことになりました。よろしくおねがいいたしますね♪」

 (とり)仮面(かめん)も、(こし)を落とし片足(かたあし)を引く所作(しょさ)も――

 いつもの(たたず)まい。

 し――ぃん。


「あ、あのあの、先生(せんせい)?」

 リオレイニアから目をはなぜなくなった、指南役(しなんやく)へ――

 タターが声を掛けた。


「――あ、相変(あいか)わらず、うつくしいな。だれだ、〝魔人(まじん)再来(さいらい)〟だなんて言ったのは――まるで〝美の女神(めがみ)〟じゃないか」

 あんな根菜(こんさい)とリオを、一緒(いっしょ)にするんじゃねぇやい。

 とち(くる)指南役(しなんやく)に――

「やい、指南役(しなんやく)?」

 こんどはおれが、(こえ)を掛けた。


失礼(しつれい)彼女(かのじょ)当学院(とうがくいん)卒業(そつぎょう)したのち、かの高名(こうめい)な〝聖剣切り(ヴォルト)の閃光(カッター)〟へ所属(しょぞく)。とうとう魔王(まおう)殲滅(せんめつ)せしめた凄腕(すごうで)冒険者(ぼうけんしゃ)です。みんなとは七歳(ななさい)ほど(とし)(はな)れていますが、仲良(なかよ)くしてあげてくださーい」

 こいつ(みょう)に、滑舌(かつぜつ)が良いな。


「ちょっと、ヤーベルト先生(せんせい)? 年齢(ねんれい)関係(かんけい)ないんじゃ、有りませんくわっ?」

 ローブから(のぞ)給仕服(メイドふく)

 その前掛け(エプロン)から、取り出されたのは――

 四本(よんほん)の、(ちい)さな魔法杖(まほうつえ)


(つえ)よ――!」

 ぼっごぅわっ――♪

 しゅわわわわぁっ――♪

 ごどごどごどごどぉっ――♪

 ヴァチィばりばりばりばりぃぃぃっ――♪


 (ほのお)の……いや「ひのたま」か?

 それと「みずのたま」に――

 「こいしのまほう」に――

 伝家(でんか)宝刀(ほうとう)、「かみなりまほう」だ。


 左右(さゆう)の手で二本(にほん)ずつ。まるで(はし)使(つか)うように、(なに)もない空中(ちゅう)をつかみ――

 引っ張って、(はな)す――――すぽん、すぽん、ヒュルルル♪

 ゆらゆらと飛んで行く、各種(かくしゅ)魔法(まほう)


「リ、リオレイニア(くん)――――(なん)だいコレ!? ゆーっくり追っかけてくる魔術(まじゅつ)なんて、教師生活(きょうしせいかつ)20年目(ねんめ)だけど、き、聞いたことないんだがぁぁぁぁッ!?」

 やたらと(せん)(ほそ)指南役(しなんやく)が――階段(かいだん)になってる部屋(へや)通路(つうろ)を、縦横無尽(じゅうおうむじん)に逃げまわる。


 (つづ)いてリオが、ポケットから取り出したのは――

『見習い』と書かれた腕章(わんしょう)

 颯爽(さっそう)(うで)に付け、壇上中央(だんじょうちゅうおう)へ。


 おれとタターは、(かお)見合(みあ)わせ――

 手前(てまえ)の空いた(せき)に、ならんで腰掛(こしか)けた。


(わたくし)は、かねてより(おも)っていました。魔術師(まじゅつし)はかくあるべきであると――」

「リ、リオレイニアくぅーん!?」

 逃げまどう(せん)(ほそ)教師(きょうし)

 追いかける多種多様(たしゅたよう)な、生活魔法(せいかつまほう)たち。


「はい、そこのあなた。お名前(なまえ)は?」

 (はし)教師(きょうし)(ねら)いを(さだ)めたまま、おれを見つめる仮面(かめん)


「はぁ、おれだぜ。シガミーだぜ?」

 おれは目をすがめて、見つめ(かえ)す。


「ふぅ、お(はなし)になりませんね。良いですかみなさん。魔術詠唱(まじゅつえいしょう)とは

すなわち、礼節(れいせつ)そのものです」

 (とり)仮面(かめん)のしたの(かお)(つめ)たくほほえむ口元(くちもと)


 キュ――!

 (なに)かを(はし)でつまみ上げ――すぽん♪

 こっちへ向かって、ぱっと(はな)す。


 あの箸使(はしづか)いは、おれが(おし)えてやったもんだ。

 まさか、こんな小技(こわざ)使(つか)うためだとは、(おも)いもよらなかったが。


会話(かいわ)のマナーがなっていませんね、シガミーさん? 〝おれ〟ではなく、〝わたくし〟です――さんはい♪」

「はぁ、なんだぜ? わたくしわぁ、シガミーだぜ?」

 となりでタターが、(くび)をよこに振ってる。


 キュ――、キュキュキュキュ――!

 (なに)かを何度(なんど)(はし)でつまみ上げ――すぽん、すぽん、すぽん♪

 こっちへ向かって、何度(なんど)も解き(はな)った。


 「(おい、茅の姫(ホシガミ)。なんかリオレイニアがマジ(・・)なんだが、また代わってくれ)」

 ふぉふぉん♪

『ホシガミー>現在接客中につき、リモートコントロールに出られません』


 ぼっごぅわっ――♪

 しゅわわわわぁっ――♪

 ごどごどごどごどぉっ――♪

 ヴァチィばりばりばりばりぃぃぃっ――♪

 (たば)をなす生活魔法(せいかつまほう)が、おれめがけて(かじ)を切った。

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