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407/743

407:初等魔導学院、リオレイニアと学院長

『<請求書>詠唱暗室装置修繕費 

 リオレイニア・サキラテ様

 請求金額 41,628パケタ

 支払期日 光陣暦131年△月○日

 中央都市ラスクトール自治領王立初等魔導学院学院長』


 (くち)(はし)をゆがめたリオレイニアが、そんな(かみ)ぺらを差し出した。


 どうやら顔見知(かおみし)りらしい学園長(がくえんちょう)直々(じきじき)に、小言(こごと)を言われ――

 この請求書(せいきゅうしょ)手渡(てわた)されたらしい。


「こりゃ結構(けっこう)(がく)だが――(いま)までの(たくわ)えが有るだろ?」

 (たず)ねると身をすくませる、給仕姿(メイドすがた)のパーティーメンバー。

 こんなバツの(わる)そうな仕草(しぐさ)、はじめて見たぞ。

 美の女神(笑)(いおのはら)辺境令嬢(リカルル)なら、慣れっこだが。


 浪費(ろうひ)を良しとしない彼女(かのじょ)が、いきなり全財産(ぜんざいさん)使(つか)い込むはずがない。

 そもそも、こんな不測(ふそく)事態(じたい)(おちい)ること自体(じたい)おかしい。

 なんか面白い物を(・・・・・)見てしまって(・・・・・・)小一時間(こいちじかん)(はら)(かか)えて(いき)も絶え絶えなんてことは、ときどきあったけど。


「レイド(むら)でシガミーに賭けて……ぜーんぶ、スっちゃったんだよ……ぅんむぐむぅ?」

「レ、レイダッ――!?」

 子供(こども)(くち)をふさぐが、もう(おそ)い。(はなし)は聞いちまった。

「スっただぁ――!?」

 この(がく)(はら)えないってんなら、相当(そうとう)突っ込んだっだろぉ!?


 迅雷(ジンライ)内訳見(うちわけみ)せろや。

「(はい。賭けの首謀者(しゅぼうしゃ)……主催者(しゅさいしゃ)はイオノファラー、胴元(どうもと)女神像(めがみぞう)ネットワーク。ニゲルに賭けたイオノファラーには、1キーヌも入金(にゅうきん)されていませ())」

 よし、っていうかあん野郎(にゃろう)、まだつかまらねぇのか?


 ふぉん♪

『>呼び出しています

 >呼び出しています

 >呼び出しています』

 ちっ、出るまで呼び出しかけとけ。


 ふぉふぉふぉぉん――ガチャガチャガチャチャチャチャッ、ガチィン♪

『レイド村近郊バウト/掛け金総額:301,700パケタ

 ハズレ>シガミー:4・6倍

 払い戻し:なし』


「(こちらが、リオレイニアの掛け(きん)())」

 元高(もとこう)ランク冒険者(ぼうけんしゃ)だとしても、とんでもねぇ金額(きんがく)だぞ。

 なんでまた、慎重(しんちょう)なリオが全財産(ぜんざいさん)を賭けたりしたんだ?


「(類推(るいすい)になりますが……顕現(けんげん)したシガミーの(あたら)しい(からだ)轟雷(ゴウライ)と知ったショックで、前後不覚(ぜんごふかく)(おちい)っての行動(こうどう)ではないか())」

 そういうことか、ありえるなぁー。

 じゃあ結局(けっきょく)(ところ)一切合切(いっさいがっさい)おれのせいじゃんか?


「(そのようで())」

 くそう、おれぁ子供(ガキ)だな!

 まるで、うまくやれてねぇぞ!


 ちなみに迅雷(ジンライ)との内緒話中(ないしょばなしちゅう)は、ほかの(やつ)らが(おそ)くなる。

 戸惑(とまど)いを(かく)せない彼女(リオ)仮面(かめん)(した)(かお)も、(こお)りついたように(うご)かない。


「オカシイじゃねぇーか! あの勝負(しょうぶ)、勝ったのはニゲルなんだろ?」

 なんでニゲルに賭けたイオノファラーにも、入金(にゅうきん)されてねぇんだぜ?


 ふぉふぉふぉぉん――ガチャガチャガチャチャチャチャッ、ガチィン♪

『レイド村近郊バウト/掛け金総額:3パケタ

 的中>子馬ゴーレム:223倍

 払い戻し:669

 ※払い戻しは各地のギルド支部女神像、

  または自動発券魔法具にて行えます。

 ※有効期限は勝敗成立後、90日です。

  お早めに払い戻ししてください。』


「いやまて(なん)だこの、『的中(てきちゅう)子馬(こうま)ゴーレム』ってのわぁ?」

 空中(ちゅう)に手を伸ばして、画面(ウインドウ)をひっつかんだ。

 レイダやリオはおれが、目のまえの画面(がめん)(とお)して――

 五百乃大角(いおのはら)迅雷(ジンライ)と、やり取りしてることは知ってる。


「すごいでしょっ!? タターさんが一人勝ち(・・・・)だったんだって♪」

 はしゃぐ子供(レイダ)

 落ち込む債務者(リオレイニア)開発部顧問(ミャニラステッド)

 ミャッド、おまえも賭けてたのか。


「なんで子馬(こうま)が、混ざった?」

女神像(めがミぞう)ネットワークガ配当率(オッズ)算出(さんシゅつ)するル過程(かてイ)デ、ダークホースでアる『子馬(こウま)ゴーレム/(てン)ぷら(ごウ)』ヲ賭けの対象(たいしょウ)追加(ツいか)しマし()


「ちっ、イカサマじゃねーなら、物言(ものい)いも付けられねぇ」

 くそう、子馬(てんぶらごう)に負けたってのが気に入らねぇが――

 おにぎりやニゲルに負けたんじゃねぇのが、せめてもの(すく)いだぜ。


「じゃぁ、おれが肩代(かたが)わりするぜ」

 請求書(せいきゅうしょ)をパンと(たた)いたら――

「いけません!」

 目にもとまらぬ(はや)さで、取り(かえ)された。


「なら猪蟹屋(ししがにや)として、従業員(じゅうぎょういん)不始末(ふしまつ)損失補填(そんしつほてん)をする」

 手を伸ばしたら――

「いけません!」

 請求書(それ)前掛け(エプロン)のポケットに、仕舞(しま)い込まれた。


「けどなっ! 騒動(そうどう)発端(ほったん)は、おれがゴーレムを(こわ)したことから(はじ)まってる。道理(どおり)(とお)らねぇぜ?」

 (ひざ)(ひじ)(たた)きつけ、ギロリと(にら)んでやる。

絶対(ぜったい)にいけません!」

 身を乗り出す彼女(リオ)の、きっぱりとした(かたく)なな口調(くちょう)

 あれ? なんか(へん)意固地(スイッチ)が入ってね?


 こつこつこつ。

「ふふふ、リオレイニアさん。アナタはアナタの正義(せいぎ)(いま)も、(つらぬ)いているのですね♪」

 なんだか女将(おかみ)さんみたいな、絢爛豪華(けんらんごうか)体つき(・・・)女性(じょせい)がやってきた。

 外套姿(ローブすがた)から魔術師(まじゅつし)だとわかるが――


「「「学院長(がくいんちょう)――!?」――さま!?」」

 (さけ)ぶリオレイニア。

 そしてレイダとヴィヴィとやらも、すでに会っているらしい。


鶚因鳥(がくいんちょう)だぁとぉ――?」

 するってぇとコイツがココの(おさ)で、親玉(・・)って(わけ)だな。

 迅雷(ジンライ)ィ――(まん)(いち)がねぇとは(かぎ)らねぇ。


 ふぉふぉん♪

『>はい。特撃型シシガニャン10号改、

  ならびに轟雷を、使用可能状態で待機させます』


 親玉(おやだま)がおれたちを見わたし、最後(さいご)(てん)(あお)ぎみた。

(さき)ほどお(わた)しした書面(しょめん)ですが、リオレイニアさんを正式(せいしき)職員(しょくいん)として(むか)え入れた場合(ばあい)返済期日(へんさいきじつ)無期限(むきげん)とすることが可能(かのう)ですよ」

 (しず)かで、(あたた)かみのある(こえ)に――ピクリと(かた)を揺らす、パーティー(リオレイニア)メンバー(・サキラテ)


「まてやぁ! (よこ)から出てきて、勝手(かって)なことを言うんじゃねぇやい!」

 おれは鶚因鳥(がくいんちょう)のまえに、立ちふさがる。


「あなたは?」

 (しず)かで、(あたた)かみのある(こえ)


「聞いて(おどろ)けやぁ――おれはガムラン(ちょう)のアイドル、シガミーさまだぜぇ!」

 迅雷(ジンライ)をつかみ、1シガミーの(なが)さに――シュッカァァン♪

 (せま)いから振りまわさず、水平(すいへい)(かま)えた。


「そうですか、アナタが――詠唱暗室装置(マナキャンセラー)作動中(さどうちゅう)にもかかわらず、(ほのお)魔法(まほう)使(つか)ったという(おんな)の子ですね?」

 (しず)かで、(あたた)かみのある(こえ)


「はぁ? そんなのはリオレイニアだってやったじゃねーか?」

 スゴイはスゴイがおれのわぁ、日の(もと)(ことわり)を日の本生(もとう)まれの血の流れ(・・・・)で、無理矢理起(むりやりお)こしたもんだぜ。

 リオレイニアの生活魔法(せいかつまほう)お化け(・・・)と、一緒(いっしょ)にされても後々面倒(あとあとめんどう)だ。


「リオレイニアさんの魔力操作(まりょくそうさ)は、(いま)(すた)れてしまった古代魔法(ピクトグラム)(もと)にした――彼女(かのじょ)一族(いちぞく)血筋(ちすじ)に因るものです。アナタは〝サキラテ〟に名を(つら)ねてはいないのでしょう?」

 (しず)かな(こえ)に、(ねつ)がこもる。


 あれ? なんだこの、()(かん)じ。

 レイダの父上(ちちうえ)どのに、にじり寄られたときに似てる。

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