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403/743

403:魔法使いシガミー、レイダが通う学校の下見につきあう

「な、なんでこんなことになったんだっけ?」

 やい、ジンライ返事(へんじ)をしろい!


 (みじか)くなっちまった独古杵(ジンライ)を、振って(たた)いて引っぱってみたが――

 ウンともスンとも言いやがらねぇ。

 (ため)しに神力棒(モバイルバッテリー)(つな)いでも、(なに)も変わらなかったから――

 神力不足(しんりょくぶそく)(おちい)ったわけじゃない。


 スタタタスッタァァン――――!

 切りたつような屋根(やね)(うえ)を、金剛力(パワーアシスト)なしで(はし)る。

 (ホシガミ)SP(スキルポイント)使用(しよう)して習得(しゅうとく)した、別枠の(・・・)身体能力(しんたいのうりょく)が無かったら――

 本当(ほんとう)にやばかった。星神様々(ほしがみさまさま)だぜ。


 鉄梃(かなてこ)(たた)くような――――キキンコカカカンコワワァン♪

 うるせぇ!

 あの警報(サイレン)が止まねぇ(かぎ)り、おれたちは(・・・・・)逃げ切れてねぇって証拠(しょうこ)だ。


「あなたも央都(おうと)(ほこ)初等(しょとう)魔導学院(まどうがくいん)への、入学試験(にゅうがくしけん)を受けに来たの?」

 おれの耳元(みみもと)から、(はかな)げな(こえ)が聞こえる。

「あーいや、おれ……(わたし)はレイダの……年上(としうえ)(わらし)……友人(ゆうじん)の付き添いってやつだですわ」

 「ぼくぁぼくぁ」(しゃべ)るニゲル語はマスターしたんだが、いかんせん覇気(はき)が無くて使(つか)う気がしねぇ。


「くすくすくす。あなたはそんなにカワイらしい見た目なのに、言葉(ことば)づかいがまるでなってないのね♪」

 仕方(しかた)がねぇだろうが、日の(もと)じゃお武家(ぶけ)さまでも――

 しゃらあしゃらした言葉(ことば)なんぞ、滅多(めった)使(つか)わねぇ。


 ふぉん♪

『ヒント>諸説あります』

 やかましい。

 おれの(かんが)えや問いに返答(へんとう)する、一行文字(ティッカー)がでた。


 迅雷(ジンライ)が居なくても画面表示(モニタひょうじ)は、ちゃんと使(つか)えてるな。

 これは片耳に付けた耳栓(ヘッドセット)(はっ)した赤光(せっこう)が、おれだけに(・・・・・)見せているものだ。


行儀(ぎょうぎ)(わる)いって、しょっちゅう言われてらぁ!」

 「クスクス♪」と(わら)う揺れが、背中(せなか)から(つた)わる。

 (からだ)(おお)きさは、おれとレイダの(あいだ)くらいか。


 まるで非力(ひりき)で、魔法杖(まほうつえ)すら一人(てめえ)じゃ持てなさそうなコイツ(・・・)を――

 (ほう)り出すわけにもいかねぇから、背負(せお)ってやっている。


「跳ぶぞ――おちるなよっと!」

 タタタァァン――――(となり)(むね)へ飛び(うつ)る!

「きゃっ――!?」

 しかしコイツ……(かる)すぎて、(めし)をちゃんと食ってんのか心配(しんぱい)になるな。


 スタタタッタッ――――トトォォンッ!

 このまま屋根伝(やねづた)いに城下町(じょうかまち)まで下れりゃぁ(・・・・・)――雑踏(ざっとう)にまぎれ込める。


 キキンコカカカンコワワァン♪

 ちっ、追手(おって)だ!

 キキンコカカカンコワワァン♪

 其処彼処(そこかしこ)から、やかましいぜ!


 おれたちがこんな屋根(やね)(うえ)を、逃げているのには――

 当然(とうぜん)だが(わけ)がある。


   §


 レイド(むら)復興(ふっこう)完全(かんぜん)にすんで、一ヶ月(いっかげつ)が過ぎた。


 レイダが央都(おうと)学校(がっこう)の、下見(したみ)だか試験(しけん)だかに行くって言うんで――

 護衛(ごえい)後学(こうがく)のために、付いてきたは良いが。

 レイダの学校(がっこう)用事(ようじ)が済むまで、どうしたって(ひま)で。

 (まち)をぶらついていたら、王女(おうじょ)工房(こうぼう)文様(もんよう)とおなじ(はた)を見つけた。

 それが、すべての発端(ほったん)だ。


 ちかくの屋根(やね)にのぼってみたら、(はた)が立つ尖塔(せんとう)城壁(じょうへき)を越えてすぐそばに建っていて――「飛び(うつ)れそうじゃね?」

 なんて(かる)気持(きも)ちで、のぼったのがいけなかった。


 ギュギャギュギギギギギッ――――――――!!

 まったく、(しん)(ぞう)が止まるかと(おも)ったぜ。

 (かべ)中腹(ちゅうふく)。目と(くち)(とんが)ったヤツが湧いて出た。


 そう、王女(おうじょ)の〝旧型(きゅうがた)ゴーレム〟と、鉢合(はちあ)わせしちまったのだ。

 ガッギュ――――ボッゴガァァァンッ!!!

 一匹目(いっぴきめ)迅雷(ジンライ)で、(たた)き落としたまでは良かった。

 あとで(あやま)るついでに、〝広角レンズ(めだま)〟を(つく)って取りかえてやろうなんて(おも)ったそのとき――


「(シガミー、上空(じょうくう)から来())――――ッブツン!」

 ふぉふぉん♪

▼▼▼(ピピピッ)――――♪』


 (むか)え撃とうとしたが迅雷(ぼう)は、すっかり(みじか)くなっちまってて――

 どうしたぁ、独古杵(ジンライ)!?

 仕方(しかた)ねぇ、まずは(うえ)からの(てき)(むか)え撃つ。


 ヒュゴォォォォォッ――――――――!!!

 そいつ(・・・)一直線(いっちょくせん)に、真上(まうえ)から(おそ)ってきた!


「なんっだ……ぜ!?」

 魔法杖(まほうつえ)にしがみつき、落ちてきたのは子供(こども)だった。

「ふにゃるりれぇ――――!?」

 しかも気絶(きぜつ)してやがったから――


 おれがこうして(・・・・)背負(せお)ってやる羽目(はめ)になり――

 魔術師(まじゅつし)どもに追われ(つづ)けて、(いま)(いた)る。


「おいおまえ、魔法杖(つえ)があるなら自分(じぶん)で飛べ!」

無理(むり)、ここに来たら使(つか)えなくなった」

使(つか)えねぇだぁ!? あ、それでおまえ――落ちてきたのか!?」

 こくりと(うなず)気配(けはい)


 鉄梃(かなてこ)(たた)くような――――キキンコカカカンコワワァン♪

 うるせぇ!

 魔術師(まじゅつし)大人(おとな)たちが、先回(さきまわ)りしやがった。


 大人(おとな)たちは魔法杖(まほうつえ)ではなく、はしごや(なわ)(つた)って(あが)ってくる

 魔法杖(つえ)はやっぱり、使(つか)えねぇらしい。


「ふう、どーするかな? つかまったら、マズいことになるだろぅ?」

「うん、入学試験(にゅうがくしけん)を受けるまえに退学(たいがく)になっちゃうと(おも)う」

 そりゃ駄目(だめ)だ。おれのせいでレイダが、マズいこと(・・・・・)になるかも知れねぇ。

 じゃぁ、どうする?


 魔法(まほう)迅雷(ジンライ)駄目(だめ)なら小太刀(こだち)錫杖(しゃくじょう)、いや――

 斬りつけるわけにもいかねぇから、轟雷(ゴウライ)で飛んで逃げるか。


 腕輪(うでわ)をかざしかけ――「いや、絶対(ぜったい)(おこ)られる!」

 あわてて引っ込めた。

 鉄鎧鬼(あんなの)を出したら、この(あた)りの建物(たてもの)瓦礫(がれき)と化す。

 それにおれだって、一発(いっぱつ)でばれるだろうが!


「ぷふふふっ――さっき(うえ)から、ゴーレムを(こわ)したのを見たよ。破壊不可能(はかいふかのう)なはずのものを(こわ)しておいて……「(おこ)られる」って、ぷふふふっ♪」

 (わら)ってんじゃねぇやい。

 なーんかコイツ。どっかで会った気がしないでもねぇが、記憶(きおく)にはねぇ。


 三つ(また)建物(たてもの)に跳び(うつ)ると――キキンコカカカンコワワァン♪

 行く手を、どちらも(・・・・)(ふさ)がれた。

 うしろをふりかえると、やっぱり大人(おとな)が――キキンコカカカンコワワァン♪

 うるせぇ。なんなんだよ、その(おと)わぁ!


「ちっ仕方(しかた)ねぇ! (した)ぁ噛むから、(くち)を閉じとけぇよぉぉぉぉう!」

 (かる)いから片手(かたて)でも背負(せい)えた。

 レイダだったら、無理(むり)だったかもしれん。


 全方位(ぜんほうい)全法位(ぜんほうい)

 両手(りょうて)使(つか)えねぇが、このままいく。

 片手(かたて)でも、(いん)(むす)べる。


ON(おぉん)……!?」

 ちぃっ――!?

 此岸(しがん)(ことわり)も、彼岸(ひがん)(ことわり)も――

 土地神(とちがみ)の名も性格(せいかく)も、全部(ぜんぶ)わかってるのに――

 やっぱり〝真言(まんとら)〟が発火しねえ(・・・・・)


 親指(おやゆび)(くわ)え、糸切(いとき)り歯を突きたてる――ガリッ!

 自前の回廊(・・・・・)使(つか)えば、地獄(ここ)でも(じゅつ)使(つか)えることは実証済(じっしょうずみ)だ。


「いきはよいよい(かえ)りは(こわ)いってな」

 もう〝帰り(・・)〟の心配(しんぱい)無意味(・・・)だが、口上(こうじょう)ってものはそうそう変えられん。


 すぅうぅー――あかく染まった親指(ゆび)で、もういちど空中(ちゅう)真円()(えが)く。


 全方位(ぜんほうい)全法位(ぜんほうい)

 半径三丈(はんけいさんじょう)はムリでも、目くらましになりゃ良い!


ON(おぉん)

 ぎちり――――――――シュッボゥ!

 よし、発火し(つい)た!


「っきゃぁぁぁぁぁ、な、なんて(こと)してるの!」

 すぐ(ちか)くで(こえ)がした。

 ヴォウォォォォォォォンッ♪

 高魔力(こうまりょく)(うな)りも、聞こえる。


 (いえ)(はしら)みたいに、頑丈(がんじょう)そうな魔法杖(まほうつえ)

 その(うえ)に立つ、給仕服(・・・)


「リオレイニアッ!?」

「レーニアおばさん!?」

 おれたちは、同時(どうじ)(さけ)んだ!


「みずのたま!」

 レーニアおばさん(・・・・・・・・)は――どっぱぁぁん!

 すべてが使(つか)えない、この場所(ばしょ)で――

 (みず)生活魔法(せいかつまほう)を、軽々(かるがる)(はな)った。


 おれの片手()(おお)っていた(ほのお)が、消える。

 おれたちは、全身(ぜんしん)びしょ濡れになった。

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