表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
396/743

396:美の女神の料理番(シガミー)、レイド村再建開始

「おーい、おにぎりー! その丸太(まるた)わぁ、こっちだぁー!」

 「にゃがぁー?」――ぐるりーん。

 巨大(きょだい)丸太(まるた)(かつ)いだ、黄緑色(おにぎり)が振りかえる。


「「「「「「あっぶねぇだぁ!」」」」」」

 レイド(むら)(わか)(しゅう)が、丸太(それ)必死(ひっし)に避ける。


「ばかやろぅ、おにぎりっ! (ひと)に当たったら、どーすんだぁ!」

 気ぃつけろってんでぇい!

 まあ、万一(まんいち)(とき)には、大量(ちりょう)に持ち込まれた蘇生薬(エリクサー)もあるが、(しか)りつけておく。


「みゃにゃにゃぁー♪」

 たぶん「ごめんにゃさい」と元気(げんき)よく(こうべ)を垂れる、おにぎり!

 とうぜん丸太(まるた)が――ゴゴドゴズムン!


「「「「「「わひゃぁ――ぃ!?」」」」」」

 地面(じめん)直撃(ちょくげき)する衝撃(しょうげき)に、ピョンと跳ねる(わか)(しゅう)たち。


「だから(あぶ)ねぇーって、言ってんだ――――ばかまてっ、丸太(まるた)を振りかぶるんじゃねぇやい!」

 おにぎりの野郎(やろう)


 ふぉん♪

『>まだ口頭で作業内容の是非を、プロンプト入力してやる必要があるようですね』

 指示(しじ)さえちゃんと出してやりゃ、脇目(わきめ)も振らずに仕事(しごと)をしてくれるんだがなぁ。


「まったく、むさ(くる)しいにも(ほど)がないのではなくって?」

(むら)女性(じょせいが)が、おひとりも居ませんらぁん?」

 うしろの(ほう)から聞きなれた高貴(こうき)な、お(こえ)が聞こえて来やがる。


 トッカータ大陸全土(たいりくぜんど)被害状況(ひがいじょうきょう)を照らしあわせた(ところ)、ここレイド(むら)一番酷(いちばんひど)状況(じょうきょう)らしい。

 そういうわけでガムラン(ちょう)連中(れんちゅう)も、レイド(むら)(あつ)まってきている。

 それでもあたりには、たしかに男衆(おとこしゅう)ばっかりだ。


 (おんな)(ひと)なぁ。小うるさい神官(しんかん)が居たが――五百乃大角(いおのはら)にひっ付いて、女神像(めがみぞう)まわりの仕事(しごと)にまわってる。


今日中(きょうじゅう)には避難先(ひなんさき)から(もど)る手はずになっておりますじゃ、リカルルさま」

 振り向けば、うやうやしく(こうべ)を垂れる髭老人(そんちょう)が目に(はい)った。


「かしずく必要(ひつよう)は無くってよ。ナッツバー村長(そんちょう)

 踏んぞり(かえ)る、ご令嬢(れいじょう)

 彼女(かのじょ)たちが陣取(じんど)ってるのは、ギルド支部跡地(しぶあとち)のすぐ(まえ)


 仮設(かせつ)の掘っ建て小屋(ごや)椅子(いす)とテーブルと、(おお)きめの(だい)がひとつ。

 (そこ)に置かれているのは――

 (ちい)さな背のう(バックパック)が、ひとつきり。


 小屋(こや)(はしら)に打ち付けた看板(かんばん)には、『救援物資配布所』の文字(もじ)

 近寄(ちかよ)(もの)は居ない。

 大方(おおかた)、〝ご令嬢(れいじょう)(かん)えた(ほどこ)し〟程度(ていど)に、見られているのだろう。


 あの背のう(バックパック)(なか)には、膨大(ぼうだい)物資(ぶっし)格納(かくのう)されているが――

 (そと)からじゃ、わからんからなぁ。

 けど、あの背のう(バックパック)、たしか――


 ふぉん♪

『>はい。収納魔法具箱が三つ入れられており、

  その対応規模はガムラン町基準で、

  約三ヶ月分のはずです』

 (はこ)ひとつでレイド(むら)の25(ばい)くらい、まかなえるだろ。

 まるごと(みっ)つ持ってきてたら、(ひろ)げただけで――


 ふぉん♪

『>はい。レイド村が物資で壊滅します』

 やめろ、縁起(えんぎ)でもねぇ。


「そうですわね……ではシガミー! (わたくし)個人(こじん)からクエストの依頼(いらい)をいたしますわ♪」

 ちっ、目が合っちまった。いきなり、なんか言い出したぞ?


期限(きげん)夕刻(ゆうこく)まで、達成条件(たっせいじょうけん)全家屋(ぜんかおく)修繕(しゅうぜん)ならびに、温泉施設(おんせんしせつ)設置(せっち)――出来(でき)るかしら?」

 これだから(ひま)を持てあました、ご令嬢(れいじょう)ってぇやつぁ――!?


温泉施設(おんせんしせつ)だぁ? やい、そりゃ聞いてねぇぞ!?」

 もう日も(かたむ)(はじ)める午後三時(ごごさんじ)

 日没(にちぼつ)まで、せいぜい三時間(さんじかん)

 (むら)規模(きぼ)(ちい)せぇが、歌舞伎祭り(カブキーフェスタ)んときよか――

 タイトな(ひでえ)工数(こうすう)になる。


「そぉうだぁよぉぉう? いまからじゃぁ、ギルド支部(しぶ)建物(たてもの)がぁギリギリよぉう?」

 そのギルド支部(しぶ)建物(たてもの)(こわ)した張本人(ちょうほんにん)が――

 『私がギルドを壊しました』の(たすき)袈裟懸(けさがけ)けにしている。


 その(あたま)には、(まる)くて(かる)鉢金(ヘルメット)

 上下(じょうげ)(つな)がった作業服(ツナギ)に、手にはツルハシ。

 どうしたって、伯爵夫人(はくしゃくふじん)には見えねぇ。


「ではシガミー? 期限(きげん)夕刻(ゆうこく)まで、達成条件(たっせいじょうけん)全家屋(ぜんかおく)修繕(しゅうぜん)ならびに、温泉施設(おんせんしせつ)設置(せっち)――出来(でき)るかしら?」

 いつもの仁王立(におうだ)ち。クエスト内容(ないよう)一言一句(いちごんいっく)、変わらない。

 だらだらだらだら――冷や(あせ)(きも)を冷やしているのは、おれと伯爵夫人(ルリーロ)だけじゃねぇ。


 倒壊現場(とうかいげんば)に居あわせた、ニゲルとタターとおにぎりも一緒(いっしょ)だ。

 みんな(あたま)丸い鉢金(ヘルメット)を、載せられている。

 子馬(こうま)(てん)ぷら(ごう)〟と子供(こども)レイダ、そして神官女性(うるせぇおんな)だけは、その(せき)から(はず)されたが。


 問題(もんだい)は――カヤノヒメだった。

 (いま)は、左手(ひだりて)刃が無ぇ鑿(ドライバー)(つく)り出し――ドガシャン♪

 右手(みぎて)(なが)(ふと)いネジ切りがついた(ボルト)を――ガチャガチャガチャチャン♪

 嬉々(きき)として村再建(むらさいけん)使(つか)う、鉄金具(てつかなぐ)工具(どうぐ)生産(せいさん)しているが――


 天変地異(てんぺんちい)を起こしたのが、星神(ほしがみ)カヤノヒメであることは明白(めいはく)

 だがそれは、おれを生きかえらせるために必要(ひつよう)なことで。

 しかも(ちか)いウチに出現(しゅつげん)するはずだった変異種(バリアント)を、何体(なんたい)先行(せんこう)して討伐(とうばつ)鉄鎧鬼(おれ)(ふく)む)できた。

 膨大(ぼうだい)(かず)にのぼる損害(そんがい)も、人的損害(じんてきそんがい)はマイナスになり――

 (まち)(むら)(つな)街道(かいどう)整地(せいち)されたように、真っ(たい)らになって(おさ)まった。

 それでも、本人(ほんにん)は「三途(さんず)(かわ)(わた)る」と言って聞かない。


 そこへ――ゴゴガァァンッと、倒壊(とうかい)したギルド支部(しぶ)粉砕(ふんさい)し、地下から現れた(・・・・・・・)リカルルに「この場は(わたくし)が、(あず)かりますわ」と押し切られ――

 カヤノヒメ以下六名(いかろくめい)突貫工事(とっかんこうじ)に、かり出されることになったわけで――


「さぁ(みな)(もの)、きりきりとお(はたら)きなさいな――ココォォン♪」

 月影(つきかげ)双眸(そうぼう)がゆらめき、仄暗(ほのぐら)(ほのお)が立ちのぼる。

「――らぁん♪」

 手にした魔法杖(しゃくし)工具(こうぐ)に化け、掛けた眼鏡(めがね)が――チュィン♪

 桜色(さくらいろ)(ひか)った。


   §


「ぐはぁぁっぁぁぁぁぁぁっ、つ、(つか)れたぞ!」

 必要(ひつよう)(はしら)をだいたい立てた(ところ)で、ひっくり(かえ)る。

 上下(じょうげ)(つな)がった(つく)だから、土塊(つちくれ)小石(こいし)(はい)ってこなくて良いやな。


「じゃぁー、おとすぞぉー!?」

 (はしら)(あいだ)(うえ)から(いた)をはめ込んでいく、レイド(むら)(わか)(しゅう)たち。

 あの(いた)は見た目より、ずっと(かる)い。

 しかも、ジンライ鋼製(こうせい)金網(かなあみ)断熱構造(・・・・)が、埋め込まれている。

 つまり超頑丈(ちょうがんじょう)で、並大抵(なみたいてい)のことじゃ(こわ)れない。


 もちろん、並大抵(なみたいてい)って言うのは。

 おれとかルリーロとか、ニゲルに姫さん(リカルル)に、おにぎり騎馬(きば)――以外(いがい)のことだ。


 ふつうの火炎魔法(かえんまほう)はおろか、火龍(ゲートルブ)(ブレス)ですら、いくら食らっても燃えやしない。

 〝(しろ)悪魔(あくま)〟もとい〝魔神(まじん)再来(さいらい)〟、あるいは〝岩壁姫(イワカベヒメ)〟などと(しょう)される――生活魔法(せいかつまほう)大家(たいか)〝リオレイニア・サキラテ〟。

 彼女(かのじょ)INT(インテリジェンス)タレット迅雷(ジンライ)を、魔法杖(まほうつえ)がわりに持たせなければの(はなし)だが。


「シガミー。形状(けいじょう)ちがいの壁材(かべザい)ヲ、あト264枚作成(まいさクせい)してくダさ()

 まったく人使(ひとづか)いの(あら)い。

 けどやらねぇと、リカルルに折檻(せっかん)されちまう。


 使(つか)い捨てシシガニャン〝おもち〟に使(つか)った――

 ふぉん♪

『ヒント>特殊合金による耐熱構造/代替五酸化アンチモン系』

 わかるか。

 いや、なんでか意味(いみ)はわかるが、おれが(つく)ったわけじゃねぇから――

 最初(さいしょ)一枚(いちまい)に、そこそこ苦労(くろう)させられる。


 全部(ぜんぶ)建物(たてもの)建具(てたぐ)全部(ぜんぶ)縦横(たてよこ)階層分(かいそうぶん)の、強度計算(きょうどけいさん)

 面倒(めんどう)(ところ)は、迅雷(ジンライ)解析指南任(かいせきしなんまか)せだ。

 それでも毎度毎度(まいどまいど)塗布(とふ)するための(てつ)の成り立ちなんかを、おれが理解(・・・・・)しねぇとならねぇから――


「はぁはぁ、出来(でき)たぞ」

 ――正直(しょうじき)、あまりやりたくねぇ。


 ただ、最初の一枚(それ)さえ、出来(でき)ちまえば、あとは。

 絵で板(エディタ)まかせで、(つか)れはしねぇのは(たす)かる。


 (だれ)もいない場所(ばしょ)を見つめ――――ズドドドドドドォォォォン♪

 できた壁材(かべざい)を積み上げた。


元気(げんき)の良い(じょう)ちゃん、お(つか)れだぁ! あとは、おいらたちに(まか)せてくれ!」

 ドガガガゴガガガァン♪

 (わか)(しゅう)たちの手際(てぎわ)は良く――山積(やまづ)みにした建材(けんざい)次々(つぎつぎ)と、建物(たてもの)(かたち)出来上(できあ)がっていく。


 ドガガガゴガガガァン♪

 ドガガガゴガガガァン♪

 ドガガガゴガガガァン♪

 はめ込まれていく、壁板(かべいた)床天井(ゆかてんじょう)


 コォォン――♪

 コココォォォォン――♪

 人魂(ひとだま)(はな)(こえ)二人分(ふたりぶん)、聞こえてくる。

 建て付けをよくするのに、〝狐火・(ウィルオーウィス)仙花(プ・レーザー)〟はうってつけだ。


 ギャギチ、ギャギチリッ♪

 ギャギチ、ギャギチリッ♪

 ギャギチ、ギャギチリッ♪

 太釘(ふとくぎ)をねじ込む、小気味(こきみ)よい(おと)


 ららぁぁん♪

 万能工具(まほうつえ)(あつか)いに長けた、王女殿下(ラプトル)(こえ)も聞こえてくる。

 (だれ)も来ない小屋(こや)で、ただ待っていることが出来(でき)なかったのだろう。


「しかし……だめだな全体的(ぜんたいてき)に。魔物境界線(ガムラン)基準(きじゅん)(もの)を作ると、キリがなさ過ぎらぁ」

 (つぎ)にまた変異種(へんいしゅ)伯爵夫人(ルリーロ)襲撃(しゅうげき)されても耐えられる、屈強(くっきょう)(まち)出来上(できあ)がっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ