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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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358/744

358:龍脈の回廊、会食の準備

2023/07/02 16:41

レイダが合流する描写に改変

「うむむ、この(いそが)しいときに、あたし(・・・)だけサボってるわけにはいかないわよねぇー?」

 目のまえにはギルド会館(かいかん)

 五叉路(ごさろ)に生えた、りっぱな立木(たちき)

 ベンチでひとりたたずむのは――

 (つの)(なが)さを(もと)(もど)した、鬼の娘(オルコトリア)


「かといってギルド(ちょう)には今日明日(きょうあす)は、(よる)会食時以外(かいしょくじいがい)は「(ちか)づくな」なんて厳命(げんめい)されてるし」

 (ちか)くの(みせ)で買った、(かた)くて(あま)いお菓子(かし)を――ばりぼりと(むさぼ)る。


 ドレス姿(すがた)大股開(おおまたびら)き。

 しかも彼女(かのじょ)(つよ)理知的(りちてき)で、(かお)も良い。

 大柄(おおがら)(からだ)つきも、グラマラスと言えなくもなかった。


 ただ、ジリジリと近寄(ちかよ)(わか)男性(だんせい)たちは、その(つの)をみるや――

 きびすを(かえ)して逃げ出した(・・・・・)り、あからさまに(かた)を落として通り過ぎる(・・・・・)のだ。


「こりゃ! (わか)(むすめ)がそんな格好(かっこう)で、(あし)を広げるもんじゃないよ!」

 とつぜん(つえ)(ひざ)を、(たた)かれた。


「んなっ――んだ、本店(ほんてん)お向かいの、おばあちゃんじゃないの。(おど)かさないでよ」

 持ちあげた(つの)を、ふたたびがくりと落とす、(おに)(わか)(むすめ)


「じゃから、(あし)を閉じろというとるんじゃ!」

 こんどは(あたま)(なぐ)られた。


 (つの)(はし)雷光(らいこう)


「おっ? やんのかい? あたしゃぁこう見えても(むかし)は、ガムラン小町(こまち)だなんて言われてたもんさね!」

 くるくるくるるるるっ、ぱしん♪

 その(つえ)さばきは、なかなか(どう)()ったもので――


「あら、やるわね。けど年寄(としより)りの冷や(みず)って知ってるぅぅぅぅ?」

 ご老人(ろうじん)(いたわ)りつつも売られたケンカは買うのが、冒険者(ぼうけんしゃ)(まち)ガムラン(りゅう)だ。


 ちなみに、こうしたことわざや慣用句(かんようく)は、この世界(せかい)多数存在(たすうそんざい)している。

 その理由(りゆう)はいろいろあるが、(おも)なものとしては――

 某女神曰(ぼうめがみいわく)く、「あたくしさまが(もと)いた世界(せかい)(もと)に、この世界(せかい)(つく)られているからぁ」らしい。


(つえ)よぉ――!」

 それは無詠唱(むえいしょう)(はな)たれる最速(さいそく)の――


 こつん――――ごきりっ!?

「んなっ!? (わたし)(こぶし)より(はや)い!?」

 そのまま撃ち合えば――

 ただの木の(つえ)なんて、(おに)怪力(かいりき)で、木っ端微塵(ぱみじん)だ。


 だがそこはガムラン(りゅう)

「はいはい、まいったわ! 降参降参(こうさんこうさん)!」

 ふしゅるると、二の(うで)に溜めた血を開放(かいほう)した。


 (ひら)いていた(ひざ)を閉じ、(にぎ)った(こぶし)(ひら)いてみせる。


「ふぅ、(わか)(むすめ)(しと)やかに(わら)ってるのが一番(いちばん)さね――(つよ)ければなお良し、ひゃっひゃっひゃ♪」

 ガムラン小町(こまち)は、颯爽(さっそう)と去って行き――(とお)りの向こうで。


「やい、ばばぁ。店番(みせばん)サボってドコほっついてやがった!? あぁぁん?」

「なんだい、やろうってのかい? ちょっと猪蟹屋(ししがにや)にオヤツを買いに行ってただけじゃろが! (やす)みだったけどねぇ!」

 対峙(たいじ)する老夫婦(ろうふうふ)

 これもガムラン(りゅう)なのだろう。


「ケンカの相手(あいて)が居るって言うのも、(わる)くないかも知れないわねぇー」

 などと、そんな面白そうなこと(・・・・・・・・・・)を、つぶやいてしまったことが――

 彼女(かのじょ)、ガムラン名物(めいぶつ)受付嬢(うけつけじょう)、〝いつもギルドを(こわ)してる(ほう)〟の――

 (うん)の尽きだった。


「オルコトリアちゃーん♪ いま、お(ひま)ぁー?」

 それは町娘姿(まちむすめすがた)の、辺境伯名代(コントゥルみょうだい)であった。


 背後(はいご)には、荷物持(にもつも)ちをさせられている――

 狐耳(きつねみみ)少年(しょうねん)と、猫耳(ねこみみ)女性(じょせい)

 二人(ふたり)のうしろには、なぜかギルド椅子(いす)が置かれていた。


   §


「まったく、あの兵六玉(ひょーろくだま)ときたらっ!」

 憤慨(ふんがい)する令嬢(リカルル)


「どうだったのぉん? 全部(ぜんぶ)ニゲルが、やっつけちゃったのぉん()

 テーブル(じょう)でくつろぐ御神体(ごしんたい)

「いーえ! なんでも(とり)(うし)(いのしし)が出て、そのうちの二体(にたい)(たお)したそうですわっ!」

 ああもう、こんなことなら魔王城(まおうじょう)で斬り捨てておくべきだったかしらっ!

 などと物騒(ぶっそう)なことを言うリカルルだが――


 〝(くや)しい〟の(おも)要因(よういん)は、ひとえに「(わたくし)(ぶん)得物(えもの)を、どうして(のこ)しておかないのかしら――気の利かない」であるようで。

 そんな本音(ほんね)がぶつぶつと、聞こえてくる。


「お(じょう)さま、そんなことよりそろそろ、お着替(きが)えを――」

 ペントハウス付きのメイドが、(おと)もなく(しの)び寄る。


「えっ!? もうそんな時間(じかん)!?」

 まだまだ日は(たか)い。

 会食(かいしょく)主催者(しゅさいしゃ)というものは、それが女性(じょせい)ならば――

 (むら)がるメイドたちに、連れて行かれるガムラン最凶(さいきょう)


「お(じょう)さまわぁ、たぁいへんねぇーん()

 他人事(たにんごと)の、美の女神(いおのふぁらー)御神体(ごしんたい)


(ひと)ごとではありません。イオノファラーさまも、お着替(きが)えを」

 メイドの矛先(ほこさき)が、女神(メガミ)へ飛び火した。


「え? 生身(なまみ)(からだ)でもないあたくしさまがぁ、着飾(きかざ)りぃようもぉーなぁいでぇしょぉう()

 ぎょっとする御神体(イオノファラー)全長十数(ぜんちょうじゅうすう)センチ)。


「イオノファラーさまにも、替えのお洋服(・・・・・・)があるじゃ有りませんか――」

 人差(ひとさ)(ゆび)を立て、御神体(ごしんたい)(あゆ)み寄るメイド。


「ちょっと……ひそひそ……〝替えのお洋服(ようふく)〟って(なん)だろ()

 挙動不審(きょどうふしん)な、美の女神(めがみ)

「さァ……ひソひそ……情報(じょウほう)不足(ふソく)していマ()

 飛ぶ独古杵(どっこしょ)迅雷(ジンライ)女神(メガミ)に寄り添う。


(そら)を飛ぶ(たま)のことです。アレを使(つか)えば、等身大(とうしんだい)のイオノファラーさまのお姿(すがた)を、ご来賓(らいひん)皆様方(みなさまがた)にも見て(いただ)けますので」

 コトリ――スッと貴金属(ききんぞく)のように、うやうやしく持ち上げられる御神体(メガミ)

 その所作(しょさ)は、元侍女長(もとじじょちょう)であるリオレイニア・サキラテに瓜二(うりふた)つ。


「えぇー、アレさぁー――食べるときさぁ、面倒(めんどう)なのよねーぇ()

 白手袋(しろてぶくろ)細指(ほそゆび)に、イヤイヤと抵抗(ていこう)を見せる。

「そうデすね。プロジェクションボットの配置(はいチ)ハ、映像(えいゾう)頭部(とうブ)ダイレクトに(・・・・・・)食事(しょクじ)をスるわけにはいきません()


迅雷(ジンライ)さまにも、お着替(きが)えを御用意(ごようい)して御座(ござ)います」

 それは、いつだかギルド(ちょう)正装(せいそう)した(さい)に身につけていた、オレンジ(いろ)の垂れ(ぬの)


「イや、(わタし)INT(インテリジェンス)タレット、形式(けいシき)ナンバーINT(アイエヌティー)TRTTティーアールティーティー01(ゼロワン)迅雷(ジンライ)デ――――!?()

 とち(くる)った女神(めがみ)眷属(けんぞく)が、なぜか自己紹介(じこしょうかい)をはじめ――

 メイドたちに取り押さえられた。


   §


「「やっと終わったぁー♪」――らぁん♪」

 ざっと片付(かたづ)けが済んだ大通路(おおつうろ)

 王女(おうじょ)とメイドが、ぱんぱんと手を(はた)く。

 おどろいた子馬(こうま)が、「ひひぃん?」と(ちい)さく鳴いた。


「ちょうど良いですらん。そろそろ、お着替(きが)えの時間(じかん)ですらぁん♪」

 そんな第一王女(だいいちおうじょ)言葉(ことば)に――


(わたくし)はこのままで良いですけど、レイダちゃんにはあの、取っておきのドレスを着させてあげたいですね」

 ネネルド(むら)のタターは(こた)える。


「取っておき? このまえ着ていた(もの)は、大変可愛(たいへんかわい)らしかったですけれど――」

 王女(おうじょ)(かお)が、(かす)かに(くも)る。


「あー、あのですね王女(おうじょ)さま。ココは(かり)にも魔物境界線(まものきょうかいせん)のガムラン(ちょう)です。町民(ちょうみん)がドレスを一着持(いっちゃくも)っているだけでも立派(りっぱ)なことなんです」

 掃除(そうじ)道具(どうぐ)片付(かたづ)(はじ)める、メイド姿(すがた)のメイド。


「そうなんですらん? (わたくし)世事(せじ)(うとく)くて――」

 眉根(まゆね)を寄せる、メイド姿(すがた)王女(おうじょ)


「いえ、ガムラン(ちょう)実情(じつじょう)なんて知らなくてあたりまえです。もっとも(わたし)(むら)裕福(ゆうふく)ではなかったので、ドレスなんて(わたし)も持っていませんけど――」

 (わら)って(はな)すメイドの故郷(こきょう)は、裕福(ゆうふく)ではないらしい。


 くわっ――ラプトル王女殿下(おうじょでんか)(メイド)の(ひとみ)見開(みひら)かれた!

 それは世事(せじ)(うと)彼女(かのじょ)(もっ)てしても――看過(かんか)できる(もの)ではなかったらしい。


   §


「ううん、(わたし)もこのままで!」

 鼻息荒(はないきあら)く、仁王立(におうだ)ちの子供(こども)


 トンテンカンテン、トンテンカンテン♪

 ここは猪蟹屋本店(ししがにやほんてん)勝手口(かってぐち)

 工房長(こうぼうちょう)(せわ)しなく修理(しゅうり)(いそ)しんでいる。


「だめだめ、(おんな)の子がこんな(とき)にオシャレしなくて、いつするの?」

 メイド少女(しょうじょ)タターに(とら)えられる、子供(こども)レイダ。

「だってドレスを着たら、この子に(・・・・)またがれないでしょう?」

 ぽむん♪

 子馬(こうま)をやさしく(たた)くレイダ。


本日(ほんじつ)夜会(やかい)にテンプーラゴウを、連れて行くおつもりですらぁん?」

 すこし(あき)(かお)のラプトル王女(おうじょ)

折角(せっかく)みんな(あつ)まるんだもん! はやく(まち)のみんなとも、打ち解けてほしいっ♪」


 ぽっきゅらぽっきゅら♪

「ひっひひひひいぃん?」

 子馬(こうま)のうしろには、(ちい)さな荷車(にぐるま)が引かれていた。


 一人乗(ひとりの)ったら(ほか)荷物(にもつ)が詰めないほど、(ちい)さなソレには――

 央都(おうと)ラスクトール自治領(じちりょう)王家(おうけ)紋章(もんしょう)が、(きざ)まれている。


「ちょっと、タター。なんですかあの、可愛(かわい)らしい荷車(にぐるま)は? ……カワイイ❤」

 (くぎ)工具(こうぐ)(はい)った木箱(きばこ)(かか)えた元侍女長(リオレイニア)。その口元(くちもと)(ほころ)んでいる。

 彼女(かのじょ)子馬(こうま)荷馬車(にばしゃ)一人用(ひとりよう))を大層(たいそう)、気に入ったようだった。

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