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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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357/744

357:龍脈の回廊、セキュアと二体のシシガニャン

「いけね、口上(こうじょう)が――(おも)いだせねぇ」

 菫色(つきいろ)にたゆたう化け猫(おれ)は――


「まぁ良いやな、(めっ)せよ!」

 巻物(まきもの)に言われるがまま、(とな)えた。


 ぼっしゅぼしゅ、しゅしゅるるるるるるるるっ――――――――♪


 巻物(まきもの)(けむり)を吐いて――ばらばらと(ほど)けた!

 どん、ごろろろろおん!

 ぶわささささぁっ!


 その(いきおい)いに(はじ)かれた(おれ)が――ぽっぎゅっごむん♪

 跳ねあがる。


「うぉわぁぁぁぁ!?」

 回転(かいてん)する化け(ねこ)。まわる視界(しかい)


 シュルルル、シュルルルッ――――!

 シュルルル、シュルルルッ――――!


 無限(むげん)巻物(まきもの)が、無限(むげん)に吐き出されていく。

 すでに地は、巻物(まきもの)で埋め尽くされ――

 その(いきお)いが(やま)稜線(りょうせん)を、越え(・・)――

 その(さき)の――出かかる(つき)にまで(とど)いた。


「どれだけ(なげ)ぇんだ、巻物(オマエ)?」

 (あた)りが、(やみ)に呑まれていく。

 (くび)巨大(きょだい)な、満月(まんげつ)に向ける。

 あれだけ(つよ)(ひかり)(はな)っていたのが、見る(かげ)もない。


 (あお)(ほう)(つき)も、(すべ)巻物(まきもの)にまかれ――

 ふたたび(とばり)がおちる。


 世界(せかい)巻物(まきもの)(おお)われた。

 (つき)()化け猫(おれ)だけの世界(せかい)


 ぽっぎゅむん――ぽきゅぽきゅころろろろっ♪

 (おれ)が地に落ちると、(ちか)くで――がちん♪

 また(はし)まで伸びきったらしく、巻物(まきもの)鉄音(てつおと)(かな)でた。


 巻物(そいつ)は本当に、(なかみ)を出しきったらしく――

 すぽんと抜けて、足下(あしもと)まで(ころ)がってきた。


 この不気味(ぶきみ)(わら)う、巻物の軸(ぶつぞう)

 とんでもなく精巧(せいこう)(うつく)しい観音像(それ)を、(ひろ)いあげた。


 だがそれは仏像(ぶつぞう)ではなく――「(なげ)(ぼう)? こりゃぁ、そうだ独古杵(どっこしょ)だ」


   §


「じゃぁ、そっちは(まか)せたよ!」

 蹴り飛ばされた青年(ニゲル)を追って、(いのしし)のような変異種(バリアント)突進(とっしん)


「むあにゃごごふ、ぽきゅんにゃ♪」

 おなじく(うし)突進(とっしん)される、(ねこ)魔物(まもの)

 ふぉん♪

『おにぎり>どーんってきたらぽきゅーんだもの♪』


 遠目(とおめ)では、木板(きいた)文字(もじ)は読めない。

 それでも、身振(みぶり)りから(さっ)する(ところ)があったらしい。


「どーいう? まさかカウンターを(ねら)えってのか?」

 シュッドオドドドゴオゴゴゴォォォン!

 眼前(がんぜん)(いのしし)は、巨体(きょたい)(ふる)わせ、地を揺るわせ、接近(せっきん)してくる。


 たとえ両断(りょうだん)出来(でき)ても――

 あの(いきお)いの(すべ)てを(ころ)すか、(かわ)すかしなければ――


(ぼく)はおにぎりみたいに、頑丈(がんじょう)には出来(でき)てないよぉー!」


 超重量(ちょうじゅうりょう)聖剣(せいけん)使(つか)った――接敵専用(せってきせんよう)スキルとでもいうべき能力(のうりょく)

 ソレなくては(かれ)(あし)も、精々(せいぜい)十人並(じゅうにんな)みだ。

 いつか追いつかれる。


「ブモォォォォォブモォォォォォブモォォォォォ――――♪」

 (てき)(なに)かを唱えた(・・・)

「まずい、アレは喰らったら駄目(だめ)なヤツだ!」

 (かり)にも勇者(ゆうしゃ)として((りゃく))。


 青年(せいねん)(かたな)(さや)(おさ)め――下がるだけだった(あし)の向きを、転身した(・・・・)

 巨体(きょたい)突進(とっしん)

 その速度(はやさ)駆動力半径(くどうりょくはんけい)、つまり(あし)(なが)さに比例(ひれい)する。

 それに打ち勝つには、相当(そうとう)(なが)さの――直線(ちょくせん)必要(ひつよう)になる。


 そして(ニゲル)直線(それ)を――

 敵へ突進すること(・・・・・・・・)で、捻出(ねんしゅつ)した。


 (もり)木々(きぎ)をなぎ(たお)し、駆け抜ける巨体(きょたい)

 その背後(はいご)姿(すがた)(あらわす)す、制服姿(せいふくすがた)


 シュッドオドドドゴオゴゴゴォォォン!

 (ちい)さな(てき)見失(みうしな)いながらも、立ち止まることのない巨体(きょたい)

 ()速度(そくど)利用(りよう)した――接敵中(せってきちゅう)転身(てんしん)

 うぎぎぎぎぎぎぎぎぃっ――――――――!!!!!!!!

 風圧(ふうあつ)にゆがむ(かお)


「つぅぉっりゃぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!!」

 回数(かいすう)にして数回(すうかい)(かれ)(はや)さはそれだけで――

 (てき)六倍(ろくばい)(たっ)した!


 ッキュドッゴォォォォンッ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!

 聖剣セキュア(・・・・・・)誕生(たんじょう)の、瞬間(しゅんかん)である。


 剣速(けんそく)音速(おんそく)を超え、(てき)(てき)(きば)(てき)毛皮(けがわ)(てき)(ほね)(てき)(たましい)をセキュア刀身(とうしん)の錆び(過剰(かじょう)自己修復(じこしゅうふく)状態(じょうたい))を使(つか)い手を――――

 太刀筋(たちすじ)存在(そんざい)した(すべ)てを、両断(りょうだん)した。







 ♪

  ♪

   ♪


「ふみゃにゃごぉー、みゃにゃごにゃや――♪」

「……なんだいその、(うた)みたいなの」

 蘇生薬(エリクサー)空瓶(からびん)散乱(さんらん)し――


「にゃみゃぁごー♪」

 ふぉん♪

『おにぎり>おきたもの♪』

 膝枕(ひざまくら)をしていた、おにぎりが立ちあがる。


「いてっ!」

 投げ出される青年(ニゲル)(あたま)

 その(とき)――――


「デェーンデデェンデェンデェーン♪」

 たとえるなら、ボス(せん)まえの――(いな)なイントロ。


「うげ、なにこの着信(ちゃくしん)?」

 プッ――♪

「はい、もしもし? 西計(にしかず)ですけどぉ――――?」

 通話(つうわ)の向こうから、聞こえてきたのは――


「――もしもしって、なんですの?」

 内耳(ないじ)をくすぐる、(かろ)やかで横柄(おうへい)(つや)やかさ。


「もしもしって言ったら、(かめ)――んぅ? この(こえ)、り、リリリリリリリリリリ、リカルルさまぁー!?」

 跳ね起きる西計(にしかず)三十六(みとむ)(17)、(また)の名を(もと)スーパールーキー・ニゲル。


「――〝リ〟が(おお)くってよ? それより、また出たんですの(かめ)が!?」

「あー、〝(かめ)〟っていったのは言葉(ことば)(あや)でさ、出たのはえーっと〝(とり)〟、〝(うし)〟、〝(いのしし)〟だよ」

 身振(みぶ)手振(てぶ)りをまじえ、言葉(ことば)をつむぐ青年(ニゲル)


「――さ、三匹(さんびき)も出たんですのっ!? まさか、それを全部(ぜんぶ)アナタひとりで(たお)したなんてことは、あーり-まーせーんーわーよーねぇー」

 庶民(しょみん)には非搭載(ひとうさい)の、ドスのきいた(こえ)


「もちろんそうだけど……よくわかったね♪」

 散乱(さんらん)する、かつて(いのしし)構成(こうせい)していた(もの)

 (はら)(あた)りでスッパリと断ち切られた、自分(じぶん)上着(うわぎ)

 そんな(もの)をしげしげと見わたしながら、青年(かれ)(たの)しげに会話(はなし)(つづ)ける。


「――そーでしょう、そーでしょうとも。それでこそ〝万年(まんねん)ルーキー〟、〝ガムランの(おおかみ)〟、〝メンテナンスフリー〟、〝LV不詳事(レベルふしょうじ)〟のニゲルですわ♪」

 嬉々(きき)とした、(あざけ)りと安堵(あんど)(ふく)(こえ)


「ソレ、最初(さいしょ)のやつしか聞いたことないけどさ、たぶんそれ……全部悪口(ぜんぶわるくち)だよね?」

 いつものことと、何処吹(どこふ)(かぜ)


「――おほほほほほほほほっ♪ そんなことはなくってよ」

 (こえ)敵意(てきい)はなく、わずかばかりの好意(こうい)(かん)じ取れる。


(とり)(いのしし)(ぼく)で、(うし)(たお)したのは、おにぎりだよ?」

 誠心誠意(せいしんせいい)真心(まごころ)をこめた報告(ほうこく)


「――んんあぁぁんでぇすってぇぇぇぇぇ――――!?」

 (こえ)好意(こうい)はなく、敵意(てきい)しか(かん)じ取れなかった。


「えぇー、ほとんど不眠不休(ふみんふきゅう)でおにぎりに張りついてるのに――お褒めの言葉(ことば)ひとつ無いのかい?」

 兵六玉(まぬけ)と言われる所以(ゆえん)の、やさしく覇気(はき)の無い(こえ)


「――ではニゲル。今回(こんかい)(けん)片付(かたづ)いて無事(ぶじ)にガムランまで帰還(きかん)せしめたなら――」

「せしめたならぁ?」


「――特別報奨金(バウンティ)支払(しはら)われますのでーえ、(わたくし)部屋(へや)まで取りにいらしてくださいなーあ!? ――ブツンッ!」

 吐き捨てられ、通話(つうわ)切断(せつだん)

 おおよそ、部下(ぶか)をねぎらう態度(たいど)ではない。


「ええぇえっ――――いまなんて言ったのっ!? (わたし)部屋(へや)って聞こえたんだけど――――!?」

 通話(つうわ)(すで)に切れている。


 (ちか)くの切り(かぶ)(こし)を下ろし、じっと青年(せいねん)を見ていたおにぎりが、小首(こくび)をかしげた。

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