表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

349/744

349:龍脈の回廊、子馬包囲網

「そこの(うま)! 止まれぇーい!」

 威風堂々(いふうどうどう)とした声音(こわいろ)が、(しょう)ギルド会館(かいかん)6F廊下(ろうか)(ひび)(わた)った。

 ここは多少(たしょう)ひらけていて廊下(ろうか)片側(かたがわ)は、なかば道具置(どうぐお)き場のように使(つか)われている。


 シィ……ン――――ぽきゅぽきゅぽっきゅら♪

 張りつめた空気(くうき)をぶち(こわ)していく、間抜(まぬ)けた爪音(つまおと)


「えぇー? だぁれぇー?」

 なにせ、子馬(こうま)(くび)(ふと)い。

 レイダから正面(しょうめん)は見えない。


「よいしょ?」

 (うま)(くび)にしがみついたまま、上半身(じょうはんしん)(よこ)にずらし(まえ)を見る。


 点在(てんざい)する、要らない木箱(きばこ)分類前(ぶんるいまえ)(ほん)要修理(ようしゅうり)(こわ)れた道具(どうぐ)

 それらをかき(あつ)めて(つく)られた、バリケードまでの距離(きょり)数十(すうじゅう)メートル。


衛兵(えいへい)さんだっ! どうしよう、お(とう)さんに(おこ)られる!」

 (あお)(かお)子供(こども)は――ポケットから取りだした帽子(ぼうし)を、目深(まぶか)にかぶった。


 通路(つうろ)陣取(じんどり)り待ち(かま)える、衛兵(えいへい)たちの(かず)は10(めい)を超えている。

 すでに大事(おおごと)だ。


「レイダちゃぁん、とまってぇー!」

 悲痛(ひつう)(こえ)(ぬし)は、袖の留め具(カフスボタン)子馬(こうま)尻尾(しっぽ)に引っかけている。

 メイド・タター。ネネルド村出身(むらしゅっしん)新米(しんまい)メイドは、涙目(なみだめ)だった。


 帽子(ぼうし)首紐(くびひも)(あご)にかけながら、子供(レイダ)がうしろをみる。


「うん、そうだね! はやく止まらないとね……安全(あんぜん)(ところ)で!」

 はいやぁぁ――ぺちり!

 それは威力(いりょく)のない、子供(こども)平手(ひらて)

 それでも子馬(こうま)意思(いし)(つた)えるのには、十分(じゅうぶん)だった。


「ひひひひぃん? ひっひひひいひひひぃぃん!?」

 子馬(こうま)(いなな)き? 加速する(ぽきゅぽきゅら)


「こらっ、止まらないか!」

 (よこ)から(あみ)を投げてきた衛兵(えいへい)(たい)し――「ひひぃん?」

 ゴドガッ――「ぐわぁ!?」

 手前(てまえ)に置いてあった踏み(だい)蹴飛(けと)ばして、(あみ)(ふせ)いだ。


「「いまだっ――!」」

 ピンと張られたロープは――ぽっきゅらっ♪

 (なん)なくジャンプ!


「「突破(とっぱ)されたぞー!」」

 子馬(こうま)は見た目に(はん)して、とてもお利口(・・・)だった。

 ぽきゅらら、ぽっきゅらららららっ――――!

 子馬(こうま)(じつ)軽快(けいかい)(はし)り。


 コワァーン!

「あー、あー、コホン♪」

 カブキーフェスタの(もよお)しでも使(つか)われた、拡声(かくせい)魔法具(まほうぐ)

 その(こえ)は、子馬(こうま)のすすむ(さき)

 陣頭指揮(じんとうしき)をとる高貴(こうき)人影(ひとかげ)から、(はっ)せられている。


「こら〝レイダ〟ならびに〝てんぷーら(ごう)〟。とまりなさい! これ以上(いじょう)暴走(ぼうそう)は、この(わたくし)(ゆる)しませんよー!」

 派手(はで)甲冑姿(かっちゅうすがた)

 取りいそぎドレスを着替えず(・・・・)(うえ)から甲冑(かっちゅう)を身につけたのだろう。

 いつにも増して、派手(はで)さが際立(きわだ)っている。


「ぎゃっ――お(じょう)さま!? レイダちゃん、いますぐぅー止まってぇー!」

 お屋敷(やしき)(クビ)になったら、故郷(こきょう)(むら)路頭(ろよう)(まよ)いますぅー!

 全開(ぜんかい)の泣き(ごと)が、通路(つうろ)木霊(こだま)する。


「ありゃりゃ、もう(わたし)だってバレてたのか……けど、〝テンプーラゴウ〟ってなんだろ?」

 小首(こくび)をかしげる子供(こども)

 おなじく大首(おおくび)をかしげた子馬(こうま)が、軽快(けいかい)(だい)ジャンプ――――ぽっきゅむぽぽぉぉん♪


「ぎゃぁぁぁあ! レイダちゃん! か、(かべ)走る所(・・・)じゃ、ありませぇんよぉう――――!?」

 ガムラン最凶(さいきょう)と、その他大勢(たおおぜい)(おお)きく迂回(うかい)し――

 バリケードを突破(とっぱ)した。


 ぽきゅらら、ぽっきゅらららららっ――――!

 (じつ)軽快(けいかい)(はし)り。

 子馬(こうま)にまたがる子供(こども)と――引きずられるメイド。


「レーニア! あの子のカフス(・・・・・・・)は……特別製(とくべつせい)なんですの?」

 メイド見習(みなら)い、少女(しょうじょ)タター。

 彼女(かのじょ)以前(いぜん)にも、やはり給仕服(きゅうじふく)留め具(カフスボタン)が引っかかり――

 おにぎり一号(いちごう)爆走(ばくそう)に、巻き込まれた(・・・・・・)ことがある。


「いいえ、数種類(しゅうしゅるい)(デザイン)から(えら)べますが――(わたし)が付けている(もの)と変わりはありません」

 (とり)仮面(かめん)元侍女長(リオレイニア)が――

 (おお)きな太杖(ふとづえ)をポケットから取りだし――

 ヴォヴォヴォヴォォォン!


 子馬(こうま)へ向かって、力一杯投(ちからいっぱいな)げた!


 一直線(いっちょくせん)に飛んで行く――魔法杖(まほうつえ)

 手をはなれた(それ)一瞬(いっしゅん)速度(そくど)をゆるめる。

 その(すき)に駆け(あし)(ちか)より、持ち手のあたりをつかみ(なお)す――

 ガムラン(いち)の((かく)れ)モテ(おんな)


 彼女(かのじょ)、リオレイニアの持って生まれた、その美貌(びぼう)

 仮面(かめん)なしに出歩(である)こうものなら、ありとあらゆる異性(いせい)彼女(かのじょ)恋をするのだ(・・・・・)

 いや、日頃(ひごろ)のリカルル(じょう)言動(げんどう)から、美貌(それ)同性にも(・・・・)作用している(・・・・・・)ようで。

 (げん)にパーティーメンバーである、シガミー(行儀(ぎょうぎ)(わる)(ほう))、レイダの両名(りょうめい)も、彼女(かのじょ)素顔(すがお)(こころ)(うば)われたことがあるし――

 美の女神(イオノファラー)も、彼女(かのじょ)一目(ひとめ)見初(みそ)めた。


 才女(さいじょ)にして、生活魔法並(せいかつまほうなら)びに高位(こうい)魔術使(まじゅつつか)い。

 その本性(ほんしょう)は――性別問(せいべつと)わず、女神(めがみ)をも魅了(みりょう)する素顔(すがお)の持ち(ぬし)だ。


「レ、レーニアァ――――!?」

 悲痛(ひつう)(こえ)に振りかえるレーニア。

 その(ひとみ)に、甲冑ドレス(リカルル)姿(すがた)(うつ)った。


「お、お(じょう)さまっ!? あ、(あぶ)ない――――(つえ)よ!」

 ヴォヴヴォヴヴォォォォォンッ!!!

 急停止(きゅうていし)する(つえ)――に、しがみ付いていたリカルル(じょう)が、すっぽ抜けた(・・・・・・)


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!?」

 彼女(かのじょ)リカルルは、抜けない聖剣(せいけん)(はら)いせに寸断(すんだん)する――

 異常(いよう)なまでの行動力(こうどうりょく)を、(そな)えている。


 以前(いぜん)は〝聖剣切りの閃光(ヴォルト・カッター)〟という高等魔術(こうとうまじゅつ)由来(ゆらい)魔眼(まがん)で――  

 現在(げんざい)は生まれ持った日の本(ヒーノモトー)稲荷(イナリィ)由来(ゆらい)の〝狐火・(ウィルオーウィス)仙花(プ・レーザー)〟で――

 圧倒的(あっとうてき)攻撃力(ATK)(ゆう)している――が。


 その無限(むげん)(ちか)攻撃(こうげき)レンジは――光学的(こうがくてき)だ。

 彼女自身(かのじょじしん)が持つ先制攻撃(イカサマ)スキルをもってしても――物理的(ぶつりてき)間合(まあ)いは精々(せいぜい)豪剣士(ごうけんし)数倍(すうばい)


「レーニアァ――――コォン!?」

 ぼぼぼぉ――――ぼわっ♪

 (くち)から目から(はな)からも――仄暗(ほのぐら)狐火(ひとだま)をまき散らす。

 つまるところ、ガムラン最凶(さいきょう)だって肉体的(にくたいてき)には常人(じょうじん)数倍(すうばい)


 それを越える慣性(かんせい)(あらが)うことは出来(でき)ないようで。

 じたばたと藻掻(もが)狐火(きつねび)まみれが、子馬(こうま)を追いこし飛んでいく。


 ここにニゲル青年(せいねん)が居たならば――物理現象(ぶつりげんしょう)ねじ曲げ(・・・・)(いのち)に替えても、その御身(おんみ)(まも)ったのだろうが。


 どがっしゃぁぁぁぁん――――――ぱりぱりぱりりぃぃぃん!

「お(じょう)さまっ!!! (つえ)よ――――!」

 ヴォヴォォォォ――――ヴヴヴヴヴゥン♪


 ふたたび(つえ)を飛ばし、駆けだす仮面美女(レーニア)

 こんどは手を(はな)さず――つまり全開(ぜんかい)(いきお)いに、引っぱられている!


「くくくぐっ――――!!!」

 (つえ)彼女(かのじょ)を、彼女(かのじょ)(つえ)を――――加速(かそく)する。

 その視線(しせん)一瞬(いっしゅん)だけ、(にぎ)った(つえ)を見た。


「きゃぁぁっ――リカルルさまぁ!」

 (つえ)の向かう(さき)から、子供(こども)(こえ)

「ひひぃぃん? ひひひぃぃん?」

 子馬(こうま)疑問(ぎもん)に満ちた(いなな)き。


 ぽっきゅらぽっきゅらぽ!

 割れた(まど)へ駆けよる――黄緑色の子馬(テンプーラゴウ)

 希代(きだい)生活魔法使(せいかつまほうつか)いにして、魔神(まじん)再来(さいらい)(うた)われる美女(びじょ)が――(かお)をあげた!


「――――きゃぁあっ!?」

 ヴォヴォヴォヴォォォォンッ――――ぎゅぷばが!

 急発進(きゅうはっしん)からの急制動(きゅうせいどう)――からの急加速(きゅうかそく)

 制御不能(せいぎょふのう)(おちい)った(つえ)が、子馬(こうま)(しり)激突(げきとつ)した!


 子馬(こうま)(はじ)き飛ばされ、レイダもろとも――割れた(まど)から飛びだした!


「「「きゃぁぁぁぁぁぁっ――――ひひぃぃっぃん!?」」」

 落ちていく諸共(もろとも)

 いまココに、女神関係者(めがみかんけいしゃ)シガミーが居たならば――

 この状況(じょうきょう)でも――最適(さいてき)なムーブで、切り抜けたことだろう。


 だが、彼女(かのじょ)たちの真下(ました)に居たのは、しょぼくれた様子(ようす)鬼娘(おにむすめ)だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ