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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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348/744

348:龍脈の回廊、化け猫のしくみ

 だるい。そして生暖(なまあたた)かい。

 化け(ねこ)(なか)は、(うつ)し出される文字(もじ)(あか)りで――

 (かす)かに(あか)るい。


 けどソレも、じっとしてたらだんだん(よわ)くなり――

 やがてうっすらと見えるだけになった。


 起きてるのか寝てるのかわからない、微睡(まどろみ)

 ふかい暗闇(くらやみ)(なか)(いろ)が見えた。


 (むら)のような、些細(ささい)濃淡(のうたん)

 そこへ意識(いしき)を向けると――

 それは、化け(ねこ)みたいな(かたち)になった。

 これは……おれか?


 もうひとつ、色斑(いろむら)がみえた。

 暗闇(くらやみ)(なか)にある(くろ)

 茶色(ちゃいろ)がかったそれは――(ひと)(かたち)

 ぼんやりと(ひか)(なが)(ぼう)は――手にした(つるぎ)のようにもみえる。


 なんだこりゃぁ、(ゆめ)かぁ? (ゆめ)だな。

 なんか、ずっと(とお)くの(ほう)には――(はし)(うま)みたいな(むら)も、見えるしな。


 すやぁすやぁ――――なんて心地(ここち)の良いことか。

 ずっと、いくさ場に身を置いていた身としては、(なまくら)にも(かん)じる。

 けどそれが良い。


 ぽぎゅるん♪

「うわ、うるせぇ!?」

 なんだぁい――!?

 妖怪(ようかい)の鳴き(ごえ)みてぇなので、起こされた!


 (くら)くなっていた目のまえの文字(もじ)が、(ひかり)を取りもどす。

 ふぉふぉん♪

『FATSシステムメッセージ>目の前に 表示される文章を 声に出さずに 頭の中で 音読してください』


「はぁ? どういう意味(いみ)だぁ」

 (からだ)を起こし(あた)りを見るも、その文字(もじ)のほかには――

 (すみ)(ちい)さくなった、地図(ちず)しか見えない。


 ふぉん♪

『ヒント>一冊の本があると想起してください』


(ほん)だぁ? どこにある?」

 もう一度(いちど)、あたりを見わたすも、やっぱり(なに)も無い。


 かたん。

 ふりむくと、簡素(かんそ)(だい)が置かれていた。

 なんだ? この暗闇(くらやみ)で、なんではっきりと見える?


「よっこらせ」

 立ちあがると、地面(じめん)(たい)らだった。

 閉じ込められたのは、足場(あしば)(わり)階段(かいだん)のはずだ。


 ぽっきゅぽぎゅと、(だい)に駆けよる。


「こりゃぁ、(おれ)がお(やま)使(つか)ってた文机(ふみづくえ)みてぇな(かたち)だな」

 ひとつ(かど)が欠けてて、木枠(きわく)(あし)がひび割れてる。

「……いやまて、こりゃ本当(ほんとう)(あれ)使(つか)ってたやつじゃんか!」

 ひっくり(かえ)してみたら、(うら)に『猪蟹(なまえ)』が書いてあった。


「どーなってやがる?」

 化け(ねこ)、つまり(おれ)(つくえ)のまえに(すわ)ると――

 ひとりでに、すぅーと引き出しが()いた。

 自分(じぶん)たちで(つく)った簡素(かんそ)(つくえ)の引き出しが、こんなになめらかに(ひら)くことはない。


 (なか)には巻物(まきもの)ひとつ。

 マジック・スクロールとは(ちが)う、太巻(ふとま)きの文書(もんじょ)(はい)ってた。


外題(おだい)がねぇぞ、密書(みっしょ)かぁ? いやちがうな、(ふう)がされてねぇ」

 (ひも)をほどいて、しゅるりと引っ張り、(なか)を見た。


『一膳の机 引き出しには 一本の巻物 その中には こう書かれている』

 どう書かれてやがるってんだ?


 (おさ)(たけ)にくるくると巻き取りながら、(さき)をすすめるが――

「おい、(なに)も書かれてねぇじゃねぇか! まさか、あぶり出しか?」

 こんな(くら)くて(せめ)(ところ)で、火起こし(・・・・)なんぞ出来(でき)るかってんだ。


 仕方(しかた)がねぇから、もうすこし(さき)を読んでみる。


 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』。

 『(なに)も 書かれていない』と書いてあった。

馬鹿(ばか)にしてんのか?」

 シュルルル、シュルルルッ――――

 またしばらく文字(もじ)がなくなる。


 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』

「またあった」

 そっくり(おな)文面(ぶんめん)


 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』

 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』

 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』

 シュルルル、シュルルルッ――――『何も 書かれていない』

 かるく(しち)八回引(はちかいひ)き出すごとに、『(なに)も 書かれていない』と書いてある。


「まておかしいだろ、引いても引いても終わりがねぇぞ(・・・・・・・)――この巻物(まきもの)!」

 うぉらぁ――!

 おれは(はし)をつかんで、巻物(まきもの)をとおくへ(ほお)り投げた。

 投げてから暗闇(くらやみ)巻物(まきもの)(さが)すのは、大変(たいへん)かとも(おも)ったが。

 (きゅう)すれば(つう)ず――巻物(まきもの)暗闇(くらやみ)(まぎ)れることなく、灯火(ともしび)のように(みち)を照らしていく。


 暗闇(くらやみ)(たいら)らな地面(じめん)が、どこまでも(つづ)いている。

 その(いろ)は、(すみ)(なが)したような漆黒(しっこく)

 巻物(まきもの)(はな)(ひかり)漆黒(しっこく)に、化け猫(おれ)(かげ)を落とす。


 (おと)もなく(ころ)がり、どこまでも逃げていく無限(むげん)巻物(まきもの)

 必死(ひっし)にあとを追いかける。


「まてよ、こいつぁひょっとしたら……こういう種類(たぐい)地獄なんじゃ(・・・・・・)ぁ?」

 そう(おも)ったとき――がちん!


 巻物(まもの)(あし)が止まった。

 半時(はんとき)……いや小半時(こはんとき)くらいか。

 全力(ぜんりょく)(はし)(つづ)けて、ようやく一巻(ひとま)(ぶん)

 およそ(ひと)の世にあらざる(もの)だ。


 慎重(しんちょう)巻物(まきもの)(つか)んで、上下(じょうげ)に振ってみる。

 (なみ)が起きて、しゅるるるるると巻物(まきもの)最後(おわり)まで(とど)いた――がちん!

 随分(ずいぶん)と、かたい(じく)だな。


 ばっさばさっ――――しゅるしゅるるるるっ――がちん!

 やっぱり(じく)は、金属製(かなもの)らしい。

 何度(なんど)遠閒(とおま)から(ゆか)に、ぶち当ててみたけど――

 (べつ)(なに)も起こらねぇ。


 この暗闇(くらやみ)は、階段(かいだん)前後(ぜんご)(ふさ)がれた場所(ばしょ)ではない。

 何かが(・・・)何かの目的で(・・・・・・)用意(ようい)をした――はず。


 なら、手をこまねいてるのは、時間(じかん)無駄(むだ)でしかない。

 それにいまは、どうせ化け(ねこ)の身だ。

 無造作(むぞうさ)(ちか)より、()(ひろ)いあげる。


 それは、精巧(せいこう)(つく)られた――菩薩像(ぼさつぞう)か?

 ふくよかな(した)(ぱら)の、人外(じんがい)天女(てんじょ)

 (うつく)しい造形(すがた)手元(てもと)背中(せなか)に、(ちい)さな(はこ)をたくさん持ってる。


「こんな仏像(ぶつぞう)は、見たことねぇぞ?」

 (だれ)の手による(ぞう)だ?

 ひっくり(かえ)して菩薩(じく)(あし)を見るが、(なに)も書かれていない。


 巻物(まきもの)をすこし(もど)ってみると――


『ヒント>アナタのイメージ想起がカスなら、隆起出来ないってことよねん! ダイブオンすること、まかりならないわよ!』

 わけがわからん。

 結局(けっきょく)ここは、何地獄(なにじごく)だ?


失礼(しつれい)ねっ! ココは地獄(じごく)じゃないわよっ! ウケケケケケッケエケケケケケケケケケケケケケッ――――♪」

 とつぜん(くち)をきいた菩薩像(ぼさつぞう)が――

 けたたましい(わら)(ごえ)をあげた!

窮すれば通ず/困り果て事態が行き着くと、予想もしなかった活路がひらける事。

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