表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

337/744

337:龍脈の回廊、新ギルド会館とオルコトリア

「こりゃぁ、フェスタ(ちゅう)より(おお)がかりなんじゃねぇかぁー!?」

本当(ほんとう)だぜな、工房長(こうぼうちょう)


 (はち)の巣を(つつ)いたような有様(ありさま)の、(しん)ギルド会館(かいかん)

 階段(かいだん)には上下(じょうげ)動線(どうせん)効率化(こうりつか)するため、選任(せんにん)人員(じんいん)配置(はいち)

 魔法杖(まほうつえ)に乗って荷物(にもつ)運搬(うんぱん)する(もの)のために、大窓(おおまど)(とびら)開放(かいほう)され――

 じつに(おお)がかりだった。


今回(こんかい)のお食事会(おしょくじかい)規模(きぼ)は、そこまで(おお)きくねぇはずだがなぁ」

「じゃあ、まえと(なに)が違うんだぁ?」

 一階(いっかい)エントランス、鉄塊(てっかい)(かつ)小柄(こがら)職人(しょくにん)たち。


「さぁなぁ、さっぱりわかりゃしねぇが――」

「――しいて言やぁ」

「「「しいて言やぁ?」」」

「シガミーの行儀(ぎょうぎ)が、良くなったな!」

「「「ちげぇねぇや! がははははっははははっ♪」」」

 大爆笑(だいばくしょう)鍛冶工房一同(かじこうぼういちどう)


鍛冶工房(かじこうぼう)(みな)さまぁー、正門入(せいもんい)(ぐち)にぃー荷物(にもつ)をぉー置ーかーれーるーぅとぉー、こまるぅんでぇすよねぇー!?」

 イライラした様子(ようす)一本角が(・・・・)巨大(きょだい)木箱(きばこ)をメキメキミシリと片手(かたて)でつかみ上げた。


 (かお)だけを見れば、まさに麗人(れいじん)だか――

 左右(さゆう)(うで)(ふと)さがちがう、その姿(すがた)は――

 怪力自慢(かいりきじまん)鍛冶方(かじかた)でさえ、おののくほど異質(いしつ)で――


「わ、わりぃわりぃ、いま(はじ)める(ところ)だぜ!」

「ひぃっ、おっかねぇー! まるで(おに)だぜ、ありゃ」

(なに)か言ったぁー!?」

 ごきりっ――ガキバキ、メキメキミシミシミシッ!

 (ほそ)かった(ほう)の二の(うで)も、(ばい)(ふく)れ上がった。

 大柄(おおがら)体躯(たいく)が、ひょいと持ち上げた木箱(きばこ)(ふた)つ。


 おなじ木箱(きばこ)鍛冶方(かじかた)(にん)で、(はこ)んでいる(ところ)を見ると――

 怪力(かいりき)鍛冶方(かじかた)()人分(にんぶん)を、一人(ひとり)で持ち上げていることになる。


「ぬぅ、さすがは鬼族(オーガ)だぜぇ――ぬおらぁ!」

 がしり――ミシミシミシメキメキッ!

 ひとつだけだが、なんなく(かつ)ぎ上げる工房長(こうぼうちょう)ノヴァド。

 (かれ)普段(ふだん)から持ち(ある)いている、鉄塊(かなづち)(きた)えられているからか――

 怪力(かいりき)さが、(あたま)ひとつ抜けているようだ。


 お(たが)いに木箱(きばこ)を、(たか)く持ち上げてみせるが――

 (おな)怪力(かいりき)でも、身長(しんちょう)(ばい)ほどちがえば、威圧感(いあつかん)もひとしおだ。

 オルコトリアのまわりから、職人(しょくにん)たちが(とお)ざかる。


「おぉーい、こっちに(はこ)んでくれやぁー!」

 クエスト掲示板(けいじばん)自動発券(じどうはっけん)魔法具(まほうぐ)も、(なに)もない一画(いっかく)で――

 図面(ずめん)を手にした鍛冶方(かじかた)一人(ひとり)が、こっちに来いと指図(さしず)する。


「ふぐわっ、うごらっ、ぐぎわっ、らごらっ――――!!」

 (おに)物置小屋(ものおきごや)程度(ていど)木箱(きばこ)を、ふたつ(かつ)いで(ある)き出す。

 ズドゴシィーン、ゴガガシィーン!


「うぉりゃ、どぉりゃ、うごりゃ、どごりゃ――――!」

 怪力自慢(かいりきじまん)のヒゲ自慢(じまん)も、巨大木箱(きょだいきばこ)をひとつ(かつ)いで(ある)き出した。

 ドゴゴォーン、ゴドズゴォーン!


 ふたりの歩調(ほちょう)に合わせ、グラグラ揺れる一階(いっかい)ロビー。

 右往左往(うおうさおう)していた人々(ひとびと)が〝(なに)ごとか!?〟と、立ち止まったのは、ほんの(すこ)しの(あいだ)だけ。

 それぞれ(いそ)ぎの仕事(しごと)を、(かか)えているのだろう。


「どっせぇぇぇぇいぃ――――!」

 とても女性(じょせい)とは(おも)えないような、(たくま)しい()(たけ)び。


 ドッズズズズズズウゥゥン――――!

 (ゆか)に置かれた木箱(きばこ)から――コロコココロロッ!

 ちいさな部品(ぶひん)のような(もの)が、落ちた。


「ふぅぅんっ!」

 ズズゥゥゥン――――!

 もうひとつの木箱(きばこ)も、(ゆか)に下ろされる。


「ふぅーい! 一気(いっき)(はこ)んでくれて(たす)かったが、気をつけてくれやぁ……ひそひそ……なんせ、こいつぁ――」

 (くち)に手を添え内緒話(ないしょばなし)

 (おに)が身を(かが)める。


行儀(ぎょうぎ)(わり)(ほう)のシガミーの……置き土産(・・・・)だからな」

「シガミーの!?」

 目を(まる)くする(おに)

 肥大(ひだい)した(からだ)が、シュルシュルとしぼんでいく。


「そうだぜ。なんでもなぁ、この図面通(ずめんどお)りに組み立てると――最上階(さいじょうかい)まで一瞬(いっしゅん)(のぼ)れるらしい」

一瞬(いっしゅん)で? (いま)だって順番待(じゅんばんま)ちがなければ、5(ふん)と掛からないでしょ?」

 あきれ(がお)の、名物(めいぶつ)受付嬢(うけつけじょう)


「そこがシガミーの、シガミーたる所以(ゆえん)だな、ガハハハ♪」

 バサリと(ひろ)げられた図面(ずめん)には、細長(ほそなが)(つつ)(えが)かれていて――

 その(なか)には、(まる)大球(おおだま)(えが)かれている。

 そして、その(なか)には――まるで猫の魔物のような(・・・・・・・・)


「これ、おにぎり? さっきどっかに(はし)ってったのを見たけど……」

 困惑(こんわく)する――名物(めいぶつ)受付嬢(うけつけじょう)の、理性的(りせいてき)な……いや(きゅう)ギルド会館(かいかん)粉々(こなごな)にした(ほう)


「どうも(ちが)くてな……なんて言ったか?」

「トークゲ木型(きがた)とか言いましたぜ、たしか」

 輪になって図面(ずめん)(なが)めていた鍛冶方(かじかた)のひとりが、(おぼ)えていたようだ。


「そう、そんな名前(なまえ)だったぜ!」

 (なに)もない(かべ)をゴンと(たた)くと――

 ギギィィィィッ――ゴパァ!

 (かべ)一部(いちぶ)が、ドアのように(ひら)いた。


「ッギャッ――――ま、魔物(まもの)っ!?」

 (こし)に下げた、包丁(ほうちょう)のような小型剣(こがたけん)に手が――

「まてまて、魔物(まもの)じゃねぇっ――よく見ろ!」

 (けん)が抜かれるまえに、工房長(こうぼうちょう)魔法具(まほうぐ)の明かりを付け、(なか)を照らす。


 ぬうっ――――!

 それは(ねこ)魔物(まもの)……ではない。


「おにぎりっ……じゃない!?」

 それは黄緑色(きみどりいろ)ではなく、ボーダー(がら)


迅雷(ジンライ)が来てな、「不足(ふそく)している資材(しざい)は有りますか?」なんて聞くもんだから、「アレ(・・)試運転(しうんてん)をするから、おにぎり(・・・・)を貸してくれ」って(たの)んだら――この縞々(しましま)のヤツを、出してくれたんだぜ」

 ぽぎゅりとボーダー(がら)(こし)(たた)くが、たたき(かえ)したりはせず――


「へぇーっ、このおにぎりは大人(おとな)しいのね? テェーング……テング殿(どの)使役獣(しえきじゅう)女神(イオノファラー)さまからの(たまわ)(もの)……たくさん居るなら、(わたし)にも一匹(いっぴき)くれないかしら?」

 メキッ――!

 一本角(つの)を伸ばし、不敵(ふてき)(わら)いを浮かべる――名物(めいぶつ)受付嬢(うけつけじょう)(つの)が生えてる(ほう)


「さぁな、そいつぁ迅雷(ジンライ)に聞いてくれ。よぅし野郎(やろう)どもぉ、取りかかるぞぉー!」

 (もと)から有った、構造上(こうぞうじょう)空洞(すきま)

 ソコへ、シガミー発案(はつあん)のパーツ一式(いっしき)を取り付け――

 (ひと)(はい)れそうな、(おお)きな(たま)設置(せっち)


「「「「「「「工房長(こうぼうちょう)ー、出来(でき)ましたぜぇーっ!」」」」」」」

 鍛冶工房(かじこうぼう)総出(そうで)仕事(しごと)は、手際(てぎわ)がよく。

 組み立てに(よう)した時間(じかん)は、ものの30(ぷん)

「ぃよぉしっ! オマエらぁ、良い出来(でき)だぁ!」

 ガハハハハッと上機嫌(じょうきげん)大玉(おおだま)(たた)くノヴァド工房長(こうぼうちょう)


「それで? こんな(たま)に乗って、どうやって(うえ)まであがろうってのよ?」

 縦長(たてなが)空洞(くうどう)補強(ほきょう)して、密閉(みっぺい)しただけの(もの)だ。


「わからんがぁ、図面(こいつ)に寄りゃぁ調整次第(ちょうせいしだい)で――魔王城(まおうじょう)まで(とど)くくらいの、(いきお)いが出るらしぃぜ?」

 パシンと図面(ずめん)(たた)工房長(こうぼうちょう)は、心底(しんそこ)たのしげで。


「ちょっと面白(おもしろ)そうじゃないの? (わたし)にやらせてよ、手伝(てつだ)ってあげたんだしさぁー♪」

「どうせテストは、しなきゃならねぇから(かま)わねぇが……おまえさんなぁ、こう、建てたばっかりで……(げん)(わる)ぃーっつうかぁ――?」

 ガシガシと(あたま)をかく、(かれ)歯切(はぎ)れが(わる)い。


「なによっ、もう壊したりしない(・・・・・・・)わよ!」

 (おに)(つの)が――パリパリィッ!

 かすかに(ひか)程度(ていど)の、パルス放電(ほうでん)

 昇圧(しょうあつ)されない雷撃(らいげき)に、実効的(じっこうてき)制圧力(せいあつりょく)はない。

 鍛冶工房(かじこうぼう)総員(そういん)(めい)を――威圧(・・)しているのだ。


工房長(こうぼうちょう)、ココはひとまずオルコトリアの旦那(だんな)(まか)せて、(はじ)めましょうぜ」

 などと言った鍛冶方(かじかた)が、張り(たお)される。


「そうするかぁ。じゃあオルコトリア、使(つか)(かた)だが――――」


「――えっ!? この使役獣(おにぎり)に乗るの? どういうコト!?」

「ソイツに抱えられて(・・・・・)足下(あしもと)(あな)に〝ひのたま〟を投げ入れて(・・・・・)くれやぁ」


 引き戸が開いた、(まる)(たま)

 ソコに〝屈強(くっきょう)なオルコトリアの旦那(だんな)〟が(あし)を踏み入れると――――


「にゃみゃにゃみゃぁー、ごぉー♪」

 陽気(ようき)猫族(ねこぞく)(こえ)――ぽきゅむぎゅり♪

 (かか)えられる(おとこ)(なか)(おとこ)


「ちょっとまってっ!? この格好(かっこう)、恥ずかしっ――!」

 (ぞく)に言う、お暇様抱(ひめさまだ)っこである。


総員退避(そういんたいひ)ぃぃ――――っ!」

「えっ――!?」

(なに)っ――!? また(・・)オルコトリアかっ!?」

「やべぇ――!」

「にげろぉ――!」

「「「「「わっ、オルコ先輩(せんぱい)がぁ、なんかやってる!? きゃぁぁぁぁっ――!」」」」」

 名物(めいぶつ)ではない受付嬢(うけつけじょう)たちが、我先(われさき)にと(そと)へ逃げていく。


「アンタらまで、あとで(おぼ)えてなさいよぉー。けどいいわ、ソッチがその気なら、コッチも気兼(きが)ねなく――ひのたまぁっ!」

 火種(ひのたま)(あな)に落ちると同時(どうじ)――プッシュゥゥン♪

 (たま)の引き戸が勝手(かって)に閉じられ――ヴォヴォヴォヴォォォ♪

 その表面(ひょうめん)光の盾の文様(マジック・シールド)で、埋め尽くされる。


 (たて)(なが)い、すきま構造(こうぞう)出入(でい)(ぐち)

 閉じられた分厚(ぶあつ)外扉(そととびら)にも、(ひかり)文様(もんよう)が浮かんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ