表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

334/744

334:龍脈の回廊、にゃみゃごぉ♪

「なんかさあ……もぐもぐ……あ、それおいしいからぁ、もう一皿(ひとさら)ぁもらえるぅ……もぐもぐ(・・)

 付け合わせだか御神体(ごしんたい)だかわからない、(さら)(うえ)


「なんでしょうか、イオノファラー()

 食事(しょくじ)邪魔(じゃま)にならないよう、(みじか)くなった空飛(そらと)(ぼう)


「えっとさぁ……もぐもぐ……あたくしさまってさぁ(あさ)から(ばん)までぇ、ご(はん)ばっかり食べてなぁい(・・)

 御神体(めがみ)につられ、(かる)食事(しょくじ)(はじ)めたまわりが――ピタリ。


 (なが)テーブル(せき)陣取(じんど)っていた面々(めんめん)は、(はなし)をするのに場所(ばしょ)を借りていただけだったが――

 いつまでも(はら)を鳴らす御神体(めがみ)を見かねた受付令嬢(リカルルじょう)が、人数分(にんずうぶん)軽食(けいしょく)とオススメコースを一人前(いちにんまえ)注文(ちゅうもん)したのだ。


朝昼晩(あさひルばん)食事(しょクじ)(クわ)えテ、おヤつに夜食(やシょく)――だケでは満チ足ラず、朝飯前(あさメしまえ)昨夜(さクや)(のコ)(モの)マで(たイ)らげてイるのですから……当然(トうぜん)でハ()

 まわりの(おと)が止んだのは――カチャカチャ、コトン、カチャッ♪

 一瞬(いっしゅん)だった。


「うんまぁ、そうなんだけどさぁー……もぐもぐ……ほらほらぁ、王女(おうじょ)さまも元気出(げんきだ)してぇー♪ (ひと)はねぇ、どんなに(かな)しくて(つら)くてもさぁ、食べれば(しあわ)せ、絶対(ぜったい)に死なないんだからさぁ……もぐもぐ……あーそれじゃぁ、とっておきのぉおー、出しちゃおっかなぁー♪ 迅雷(ジンライ)(くん)アレ(・・)お出しして差しあげてぇー(・・)


 食事(しょくじ)をしに(なが)テーブル(せき)へご案内(きたく)されたのは、伯爵夫人(ルリーロ)第一王女(ラプトル)二人(ふたり)だ。

 そのうちの一人(ひとり)、ラプトル王女(おうじょ)意気銷沈(いきしょうちん)している。

 スプーンにもフォークにも、手が伸びない。

 焦げて(やぶ)けてしまった馬の人形(ぬいぐるみ)

 その(あたま)をやさしく、なで(つづ)けている。


「アレとイうのは、アレ(・・)のこトでしょうか()

 直立(ちょくりつ)してると燭台(しょくだい)に見えなくもない(ぼう)が、おうかがいを立てる。

「そうわよ、決まってるじゃぁない(・・)

 「出せ」とフォークを向ける、付け合わせ。


「デ()――」

 ヴッ――ことん。

 それは(ふか)めの(うつわ)

 (かお)り立つ芳醇(ほうじゅん)(かお)り。


「あらぁ? コレはなんですらぁん? 嗅いだことのない(かお)りですらぁん♪」

 落ちていた(かた)が、持ち上がる。


(まぼろし)のミノタ……(まぼろし)の〝野菜(やさい)ゴロゴロシチュー〟よ。普段(ふだん)わぁ出ませんがぁ、今日(きょう)わぁ特別(とくべつ)でぇす、えへん(・・)


   §


「さっきまで居た、(きり)(なか)とは(べつ)だなぁ……おらぁ!」

 ぽきゅ――ゴゴォォン!


 ビギッ――ズッガァァァンッ!

 ひび割れ(くず)れる、ちかくの(かべ)


「さて、ドコに良きゃぁ良いんだ?」

 おれには、(かえ)場所(ばしょ)があったはずだ。


 そう(かんが)えたら、目のまえに(ひか)(いた)(あらわ)れ――

 ふぉん♪

『▼――――ガムラン大平原/主軸龍脈第一階層

      Q:1 D:278 P:73667』

 どこかの場所(ばしょ)(あらわ)した――地図(ちず)か?

 (くび)をかしげて見ていると――


 ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉぉん♪

 (いた)(たお)れたと(おも)ったら、大雨(おおあめ)(いけ)(みず)が増すように――

 積み(かさ)なっていく、(ひか)(いた)


 その最後(さいご)一番上(いちばんうえ)の真ん(なか)に――

 ふぉん♪

『蟹』

 なんて文字(もじ)がでた。


「なんだかしらねぇけど――この『(かに)』が、おれだってことはわかるぞ?」

 よくよく見れば(いま)いる(ほそ)(みち)(かたち)が、『蟹』の(ところ)にも描かれている。

「するってぇと、なにか? おれはこの(みち)を……ひのふのみの……(やっ)つも(とお)り抜けねえと、たどりつかねぇってぇのかぁ!?」

 おれがいるのは一番上(いちばんうえ)(いた)で、行き先らしい場所(・・・・・・・・)一番下(いちばんした)(いた)にある。


 一枚一枚(いちまいいちまい)が、そこそこ(ひろ)くて入り組んでいる。

 そんな(ひか)(いた)にして、八枚分(はちまいぶん)だ。

 相当(そうとう)時間(じかん)が、掛かりそうなことだけはわかった。


「ううむ? ちいとも(はら)(いた)くはならねぇから、(かわや)心配(しんぱい)はなさそうだが……そのうち(はら)は減るだろうなぁ?」

 目のまえの地面(じめん)に、食べられそうな(くさ)(きのこ)も生えていない。

 というより(こけ)のひとつも、生えちゃぁいねぇ。

 途中(とちゅう)で食えそうな獲物(えもの)でも、(つか)まえられりゃ良いんだがなぁ。


「えええっと、こう行ってこう行くと行き止まりか、じゃぁこう行ってこっちに行っても……行き止まりじゃねぇか!」

 おれがいる一枚目(いちまいめ)手に取って(・・・・・)みたが、わからん。

 仕方(しかた)がないからまずは――ちかい(ほう)の行き止まりを目指(めざ)すことにする。


   §


「えっ、みんなも食べたぁいぃですってぇぇぇぇっ――――!?(・・)

 テーブルに置かれた〝(まぼろし)野菜(やさい)ゴロゴロシチュー〟は、ひと(さら)しかない。


「だ、駄目(だめ)だもんねっ! もう中鍋(ちゅうなべ)三個分(さんこぶん)しか、(のこ)ってないんだぁからねっ(・・)

 ラプトル姫用(ひめよう)に出した、ひと(さら)(まも)るように――立ちふさがる御神体(ごしんたい)


「それデはせメて食べタことがない人だケにでも、振ル舞ってはいかガですか()

 (みじか)(からだ)をコツンと、丸茸(まるきのこ)当てる(・・・)飛ぶ燭台(アーティファクト)


「ルリーロさまと、カヤノヒメちゃんかぁ……じゃあ、もう二人分(ふたりぶん)だけ出してあげますぅ……ノヴァド工房長(こうぼうちょう)わぁ、残念(ざんねん)だったわねぇん。もちろん、ほかのみんなは我慢(がまん)してくだーさいっ! なんせこの、あたくしさまが我慢(がまん)しているのですからぁっ(・・)

 ふたたびフォークを、(ぼう)に向ける丸茸(まるきのこ)


「「「「えっ、イオノファラーさまが、食べもの我慢(がまん)っ!?」」」」

 チラチラとシチューの(うつわ)を、物欲(ものほ)しそうに見ていた全員(ぜんいん)驚愕(きょうがく)した!


「シガミーが(もど)るマでは手ヲ付けないと、願掛(がんか)けヲしたので()

 ヴォン♪

 クルと半回転(はんかいてん)する棒。

 上下(じょうげ)はなく、どちらの(さき)(おな)じように(とが)っている。


「か、(かみ)であらせられるイオノファラーさまが、願掛け(・・・)というのもおかしな気がしますが――わかりました」

 メイドが(いき)を吐いた。

「そうですわね。それにあのお(あじ)をもう一度味(いちどあじ)わったら、一杯程度(いっぱいていど)我慢(がまん)できるとは(おも)えませんものっ」

 お(じょう)さまも、(ふか)(いき)を吐く。


「シガミー……行儀(ぎょうギ)(わル)(ホう)のシガミーが帰還(キかん)すレば、確保(かクほ)してアるミノタ……(まぼロし)食材(しょクざい)調理(チょうり)シて、まタ大鍋(おオなべ)にたくサん(ツく)るこトが可能(かノう)()


「たくさん(つく)る? あっ――薬草師(やくそうし)生産数倍化(せいさんすうばいか)スキル!」

 (やわ)らかそうな(ねこ)魔物(まもの)(かお)菓子(かし)

 ソレを手にしたレイダが、シガミーの初期(しょき)スキルに(おも)い当たった。


「はいそウです。レイダは(こま)かなこトに、気づク才能(さいのう)がありまス()

 ヴヴヴヴッ、(はち)(うご)き。

「あのギルド(ちょう)の血を継いでしまっ……継いだのですね。ゆくゆくはギルドの事務方(じむかた)にスカウトしたいですわ」

 名物(めいぶつ)受付令嬢(うけつけれいじょう)が、サボりがちな仕事(しごと)(おも)いを馳せる。


「あぁらぁぁん、すっごくおいしぃですららぁぁん! なんですの、このお(あじ)! お(とう)さ……いえ国王陛下(こくおうへいか)にも召しあがって(いただ)きたい、逸品(いっぴん)ですらん!」

 目を(かがや)かせるラプトル王女殿下(おうじょでんか)


「うふふ、気に入ってもらえたぁみたいねぇん♪ そこまでおいしそうな(かお)をされるとぉ、振る舞ったぁ甲斐(かい)がぁ有るわぁねぇぇん…………しょうがぁなぁいわぁねぇぇー。今日(きょう)二号店(にごうてん)貸し切ります(・・・・・・)(・・)

 ちいさな手足(てあし)(ひろ)げ、そりかえる丸茸(まるきのこ)


「どうされルのですか()

「この、ミノタ……(まぼろし)食材(しょくざい)おぉー使(つか)ったぁー〝野菜(やさい)ゴロゴロシチュー〟おぉー、みぃーんなぁにー振るぅ舞ぁいまぁーすっ(・・)


「ということわぁ、イオノファラーちゃぁん? ミノタ……(まぼろし)のぉ食材(しょくざい)のぉ、お披露目おぉする(・・・・・・・・)ってことぉー?」

 なりゆきを見守(みまも)りつつ、ひたすら〝シェフのお(かせ)せコース〟を(しょく)していた伯爵夫人(ルリーロ)が――とうとう(こえ)を上げた。


   §


 (はち)の巣を(つつ)いたような有様(ありさま)の、(しん)ギルド会館(かいかん)

 ギルド職員(しょくいん)と、町中(まちなか)料理人(りょうりにん)と、大道芸人(だいどうげいにん)右往左往(うおうさおう)する(なか)


「にゃみゃごぉ♪」

 人知(ひとし)れず雄叫(おたけ)ぶ、(ねこ)魔物(まもの)

 魔物(まもの)はダンスをやめて、猛然(もうぜん)超女神像(ちょうめがみぞうのま)()から飛び出していく。


 ふぉん♪

『おにぎり>みつけたものっ!』

 (くび)に提げた木板(きいた)には、そんな文字(もじ)が書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ