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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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321/744

321:惑星ヒース神(シガミー)、化け猫ジュークボックス

「まったく、シガミーがあんな調子(ちょうし)なのに……今度(こんど)(なに)(はじ)めたんだい?」

 仁王立(におうだ)ちのコッヘル夫人(ふじん)

 通称木(つうしょうき)さじ食堂(しょくどう)の、女将(おかみ)である。

 いつもの前掛(まえか)けはなく、落ちついた(よそお)い。

 (こし)に下げた大量(たいりょう)の、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)

 その(かず)を見るなら、食材(しょくざい)の買い付けの(かえ)りなのかも知れない。


「待ってたのよぉう、女将(おかみ)さぁん♪ ソレなぁんだけぇどぉさぁ()

 いつもと変わらぬ、丸茸(まるきのこ)のような姿(すがたかたち)形。

 美を体現(たいげん)はしないが、れっきとした美の女神(めがみ)である。

 本来(ほんらい)姿(すがた)(うつ)し身は、女神像(めがみぞう)瓜二(うりふた)つではあるのだが。


「コッヘル夫人(ふジん)、こンにちわ。昨日(さくジつ)(はナ)しシた(モの)完成(かンせい)しタので、取り付ケさせて(いタだ)いてオりま()

 女神(めがみ)眷属(けんぞく)である空飛ぶ棒(アーティファクト)が、木さじ食堂(しょくどう)一角(いっかく)陣取(じんど)っている。

 細腕(ほそうで)を伸ばし焼窯(やきがま)暖炉(だんろ)のような(もの)を、(かべ)に取り付けているようだ。


「あら女将(おかみ)さぁん、お邪魔(じゃま)させてぇいただぁいてぇまぁすぅわぁあぁ。ご機嫌(きげん)わぁいかがぁ?」

 辺境最大(へんきょうさいだい)伯爵領(はくしゃくりょう)名代(みょうだい)

 巨大(きょだい)魔法杖(まほうつえ)(たずさ)えている以外(いがい)は――

 まるで町娘(まちむすめ)にしか見えない、外見(がいけん)かつ軽装(けいそう)

 そばに護衛(ごえい)や、お付きの(もの)姿(すがた)は見えない。


「あのう、リカルルお(じょう)さまは、コチラにいらしていませんかぁー?」

 仕立(した)ての良い給仕服(きゅうじふく)利発(りはつ)そうな顔立(かおだ)ち。

 開いたドアから店内を、のぞき込んでいる。

「リカルルちゃぁん、お(はなし)がぁ有るのらぁーん?」

 仕立(したて)ての良いドレス、眼鏡(めがね)(かお)に張りつけている。

 (こし)のベルトには、子馬(こうま)のような人形(にんぎょう)五匹(ごひき)ほど、ぶら下げられていた。


「なんだいなんだい、アンタたち。ルリーロさまだけじゃなくて、王女(おうじょ)さままでいらしてるってのに、お(ちゃ)のひとつもお出ししないで! ――ニゲルッ!」

 大柄(おおがら)女将(おかみ)が、ツカツカと店内(てんない)横切(よこぎ)る。

 収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)炊事台(すいじだい)(ほう)り出し、(かべ)に掛かっていた前掛(まえか)けを手に取った。


「はぁーい、なんですかー?」

 と(みせ)裏手(うらて)から(かお)を出した、(たよ)りなさそうな青年(せいねん)に向かって――

人数分(にんずうぶん)、お(ちゃ)をお出ししなっ! 茶葉(ちゃば)はソッ(そう)一番良(いちばんい)いのを使(つか)うんだよっ!」


「えぇー、(ぼく)もう仕込(しこ)みが終わったから、饅頭屋(まんじゅうや)のほうに行かなきゃなんないんだけどぉー?」

 カッ――いつもの前掛(まえか)けをした、女将(おかみ)眼光(がんこう)はするどく。

 (にら)みつけられた青年(せいねん)は、飛んできた木さじをうしろ(あたま)で受けながら――

 良い茶葉(ちゃば)で、お(ちゃ)を入れ(はじ)めた。


「どうぞ、ソッ(ちゃ)ですが」

 カウンターに(なら)べられた、人数分(にんずうぶんの)のカップ。


「あ、ありがとうございますら――――」

 我先(われさき)にと湯気(ゆげ)の立つカップに、飛びつく第一王女(だいいちおうじょ)

 彼女(かのじょが)(かお)を上げたときには――


 青年(せいねん)姿(すがた)厨房(ちゅうぼう)にはなく、(しろ)いエプロンだけが――ぱさりと(のこ)された。


「それぇじゃぁぁー、おつぅかぁれぇーさぁまぁでぇしぃたぁぁぁー!」

 覇気(はき)のない(なさ)けない(こえ)が、店内(てんない)木霊(こだま)する。


「ぴゃっ、ぴゃららぁあぁん!」

 涙目(なみだめ)のラプトル王女殿下(おうじょでんか)


「ファ、ファイトですよっ! 王女(おうじょ)さまっ!」

 (はげ)ましのメイド。

「ぐすん……ありがとう、タター」

 (はげ)まされの第一王女(ゴーレムつかい)

 彼女(かのじょ)がぶら下げているのは、一般的(いっぱんてき)(きら)われているゴーレムで。

 店員(てんいん)青年(かれ)は、ことさら(ひど)くソレを、忌み(きら)っているのだ。


「ふぅ、まったく逃げ(あし)だけは、ガムラン(いち)なんだからまったくっ!」

 (かみ)をくくり、火掻(ひか)(ぼう)を手にする女将(おかみ)


「あのーぅ、女将(おかみ)さぁーん。それでぇー、この機械(きかい)なんだけどさぁー()

「いいよいいよ、(なん)だか知らないけど勝手(かって)に置いとっとくれ。使(つか)(かた)はあとでニゲルにでも聞くからさ」

 火掻(ひか)(ぼう)(まき)器用(きよう)に、(かまど)(ほう)り込んでいく。

 「ひのたま」――ぼごぉうわ♪


「デは、そのヨうにいたしましょう、イオノファラ()

「そーねぇん。それじゃ、場所(ばしょ)おぉーお借ぁりぃしますねぇー()

 空飛(そらと)(ぼう)がちいさな(ぼう)を、設置(せっち)したばかりの焼窯(やきがま)のような機械(もの)に、差し込む。


 ガッチャリッ――――ピピピチィー♪

 (とり)(さえず)り――ガッシャン!

 焼窯(やきがま)から(たい)らな(ねこ)(かお)が――


 がちゃがちゃがちゃ!

 (まる)(あたま)左右(さゆう)に着いた(ちい)さな(ねこ)の手が――


 がっしゃん――ピロロロロッ♪

 最後(さいご)(ねこ)(みみ)が、飛びだした。


「まるで……信楽焼(しがらきやき)(たぬき)みたいねぇ――()

 取り付けが完了(かんりょう)した、(ねこ)のような置物(おきもの)


「シガラキヤキのタヌキってぇ、なんですかぁ? イオノファラーさま?」

 タターと呼ばれた、給仕服(メイド)がたずねる。

「えっとねー、(みみ)がまぁるくてぇ目のまわりが(くろ)(どう)……種族(しゅぞく)真似(まね)(つく)った……ええとぉ()


「ギルド一階(いっかイ)設置(せっチ)シた自動発券(じどうはっケん)魔法具(まほうぐ)のヨうな(モの)とオ(かんガ)(くダ)()


「コォン!? 甲賀(こうが)の焼き(もの)って言うのわぁ(なん)だかぁ、わぁかぁらぁなぁいぃけぇどぉ――――化け狸(むじな)ぁてぇ言わはれましたらぁ、なにやらぁ――いけすかん気ぃもぉーしてきますなぁ――ケッタケタケタケタケタケタタァァッ!?」

 ヴヴォン――♪

 巨大(きょだい)魔法杖(まほうつえ)が、(うな)りをあげた。


「待って待ってぇん! いまのわぁー、言葉(ことば)(あや)ですぅーっ! (たぬき)もぉー(むじな)ぁもぉー、ココにわぁ居ませぇん! これはネコチャン! \ネコチャーン♪/」

 (つき)(ひかり)双眸(そうぼう)にたたえ、(きば)をむき出しにする――伯爵夫人(ルリーロ)

 必死(ひっし)になだめる、美の女神(イオノファラー)御神体(ごしんたい)


 にゃみゃぁぁぁぁごぉ♪

 店内(てんない)(とどろ)く、年老(としお)いた(ねこ)のようなダミ(ごえ)

 ネコチャンなる道具(・・・・・・・・・)は、その準備(じゅんび)を終えたようだ。


「ネコチャーン!? かわいいっ!」

 ごどん――――正気(しょうき)(もど)った妖狐(ばけぎつね)が、魔法杖(つえ)(かべ)に立てかける。


「ふぅー、あっぶねぇー! そういえばさ……ひそひそ……この世界(せかい)にわさ、猫っているの(・・・・・・)? えっと、こんな(やつ)

 給仕(きゅうじ)少女(しょうじょ)に、黒板(くろいた)をみせる御神体(ごしんたい)


「あら、かわいらしいですねぇー♡ 居ますよぉう、(かず)はものすごく(すく)なくて、聖獣(せいじゅう)とか神獣(しんじゅう)とか呼ばれてます」

 黒板(くろいた)釘付(くぎづ)けの、少女(しょうじょ)タター。


「そりゃぁ、居るか。一度(いちど)ぉー、見てみたいわねぇーん()

 黒板(くろいた)を取りかえす御神体(めがみ)

 (うつ)し出されているのは、灰色(はいいろ)ベースの黒縞模様(くろしまもよう)

 (ぞく)に言うサバトラ柄(・・・・・)(ねこ)だ。その(くび)には、(あお)首輪(くびわ)が巻かれている。


   §


「お(かね)を入れて……カッシャン♪ ここの(いろ)(あか)くなったら、このボタンを押せば良いのですらぁん?」

「そぅわよ、簡単(かんたん)でしょ()

 (ねこ)置物(おきもの)のような機械(きかい)

 その(うえ)に乗せられた御神体(イオノファラー)は、プレイヤーであるラプトル王女(おうじょ)操作方法(うごかしかた)指図し(おしえ)ている。


緑色(みどりいろ)のままですらぁん?」

 (ねこ)置物(おきもの)(かお)黒板(くろいた)のように(うつ)し出された画面(がめん)

「そしてケットーシィが、ずーっと(はし)っていますらん――(よこ)に」


「ソの(とキ)ハ、しバらく待つ()――」

 ヴォォン――♪


 ふぉふぉふぉん♪

『PLAYING――――01/こねこのラプソディ』


「ヴォーンォ♪ ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォッ――――――――!!!」

 食堂(しょくどう)突如鳴(とつじょな)(ひび)く、魔物(まもの)咆哮(ほうこう)


「ヴォヴォーゥン♪ こねこがいっぴき、キャッツ、ニュー、ワールドぉ、ヘェイ♪」

「「「「イオノファラーさまの(こえ)!?」」」」


「こりゃぁ、やかましくて食堂(ウチ)には……置けないねぇー!」

 と(こえ)を張り上げる女将(おかみ)

「えぇー? (ひと)がぁーたくさぁん居てぇーくれるからぁ、食堂(ココ)ならうってつけなのよぉねぇぇーん!?()

 落胆(らくたん)女神(めがみ)


 だがこの美の女神(めがみ)の、どこか調子外(ちょうしはず)れな歌声(こえ)は――――小柄(こがら)屈強(くっきょう)(おとこ)たちを呼びよせた(・・・・・)


「「「「「「「「「――ぅにゃんにゃん爪研つめとぎ、ぅにゃにゃん――――っ切りさけぇ~~♪」」」」」」」」

 ドカドカとなだれ込む、鍛冶工房(かじこうぼう)総員(そういん)


「なんだいアンタたち、まだ(みせ)は開けてないよ!?」

「ガハハハハハッ、そういうな女将(おかみ)よぅ――――(おれ)たちは、またこの(うた)が聴けて(うれ)しいんだぜっ♪」

 ドカリとテーブルに着く、鍛冶工房(かじこうぼう)総員(そういん)


「「「「「「「工房長(こうぼうちょう)――ここは、シガミーの透明(とうめい)(さけ)と、オスーシ(・・・・)をひとつ♪」」」」」」」

「そぅだな、女将(おかみ)シガミーの酒(・・・・・・)と、オスーシをじゃんじゃん持ってきてくれっ♪」


「イオノファラーさま……このうるさい置物(おきもの)――――なかなか良いじゃぁないかぃ♪」

 難色(なんしょく)(しめ)していた食堂店主(おかみさん)意見(いけん)が、180度かわった。

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