２９８：仙果到達ルートＣ、シシガニャン二号復旧
ピチチチチッ――、ケケケケェーッ♪
鳥が鳴いてる。
ふぉん♪
『＞さっきの所と違って、
＞天気の良い場所だね』
転移はスグ終わり――
ぽきゅむっ――んぁ？
若草色に肩をつかまれたから、そっちを見た。
それは――森？
ひょっとしたら、とんでもなく大きな木かもしれない。
そっちへ一歩、近寄ったら――
ヴユパパパパパパパパッ――――突然、目のまえが図案や読めない文字で埋めつくされた！
「ぎゃわっ、画面が一斉に点いた！」
グヴピュフォフォフォッ――――こんどは一斉に表示されてた物が消える！
何しやがった、おにぎり!?
猫の魔物一号が、首をかしげた。
んんんんっ？ オマエがやったんじゃねーのか？
どーなってる!?
こりゃ、誰の仕業だぁ――!?
ぽこふぉん♪
『イオノ＞こら、シガミーッ！ 今までどこ行ってたのっ!?』
五百乃大角が、収納魔法の立ち並ぶ和菓子――ファイリングシステムの向こうから、現れた。
「こっちはもう、大変なんだからねぇーっ!?」
やかましいけど、安心した。
子細滞りなく、やっぱり――五百乃大角の、仕業だった。
ふぉん♪
『＞シガミー、ご無事ですか？』
迅雷の文字も復活した。
「（迅雷、おまえこそ無事か！）」
ふぉん♪
『＞問題ありません。現在位置、照会します。
＞同期まで、１秒』
ふぉん♪
小さな地図も表示され――
『 ⑩⑨⑧
②① ⑦
③④⑤⑥』
シシガニャンを示す○で、ひしめき合ってる。
「（おまえら、どこに居る？ そして、ここはどこだ？）」
ふぉん♪
つぎに大きな地図が表示されると――おれたちが居るのは――
ふぉん♪
『仙果到達ルートＣ
到達予定時刻 ０８：００』
８分だぁ？
なんと目的地だった、巨木の近くらしい。
「じゃぁ、アレ……マジで、ご神木かっ！」
ふぉん♪
『＞そうすると、あの森みたいに見えるのは、
＞ご神木でまちがいないみたいだね』
「ご神木……いえ、あれはラスクトール家の庭木ですけれどららぁーん？」
腰に手。ここは、魔物境界線を越えた先――
まちがいなく、ガムラン町より魔王城側に有る。
一体どうなってんだ？
あたりに魔物の気配はないけど。
もう一度、大きな地図をよーく見た。
魔王城のあたりに、『迅』とか『尽』とかの文字が見えた。
みんなは魔王城に居るらしい。
ココに迅雷が居ねぇのに、ここまで色んな物が使えるようになってるってことは――
すぐちかくに、女神像でもあんのか？
神々の仕組みはよくわからん。
ぷぴぽぽーん♪
『＞〝頭部防具：シシガニャン・へっど〟を装備から外しました。』
「ハッチ開放します、ハッチ開放します」
五百乃大角の声。
ぶっつん――ビードロが消えて真っ暗になった。
ひゅぅぅぅぅっ！
そとの風が、顎のしたから入り込んでくる。
ぷっしゅしゅしゅぅぅぅぅっ――――ごっぱぁ♪
おおきな頭防具が、もちあがる。
目のまえが開け、風音がきこえてき――
「きゃぁぁぁぁっ――――魔物ッ!? 女の子が丸かじりらぁーん!?」
そんな王女の声。
やっぱりその小芝居は、要るのか。
ぽっきゅり――♪
「みゃみゃぎゃにゃ――じゃねぇーや、なんでおれの前に、立ちふさがりやがる？」
おにぎりが、まるで護衛気取りで――
第一王女とおれの間に、立ちふさがった。
ぽきゅり――♪
ぽきゅぽきゅり――♪
ぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅり――♪
おれが着てる『②』以外のすべての強化服が――
二号に向かって、拳を構えやがる。
「（おい、迅雷助けてくれ）」
ふぉん♪
『＞央都自治領の全面的な協力により、
魔王城ならびに魔物勢力圏への侵入ルートを、
確保しました』
そうなの？
自治領って、このゴーレム姫の家のことだろう？
ふぉん♪
『＞若干の障害が発生しておりますが、
まもなく解消されると思われます。』
そうなのぅ？ まぁ、できるだけ早くしてくれや。
五百乃大角はともかく、迅雷が居ねぇと始まらねぇからな。
ふぉん♪
『＞障害の排除が済み次第、迅速な合流を試みますので、
今しばらくお待ちください』
そいつぁ、どれくらいだ？
ぽきゅぽきゅ――カカカーン♪
ガタガタゴトゴトッ――――みゃぎゃにゃぎゃ、くすくすくすくすららぁーん♪
散らばった椅子を仕舞えと指図したり、指図されたとおりに仕舞ったりしてる。
おにぎりは――女の尻に敷かれたがる……きらいがあるぜ。
神域惑星じゃ、タタにもなついてたしな。
ふぉん♪
『＞障害の排除が済み次第、迅速な合流を試みますので、
今しばらくお待ちください』
んなぁ？
なーんか歯切れが、悪くね？
央都自治領ってのが、第一王女の家なら――
「（王様の中の王様のお膝元で、面倒ごとが起きてるってことだろぅ？）」
王様の中の王様に、楯突くヤツが居るってことならぁ――
そりゃぁ――大事じゃねぇのか？
「（まさかソイツぁ――人が邪魔してるってことか？）」
ふぉん♪
『＞そうなります』
王様に楯突くって言ってもなぁ。
ココのお偉方は、みんな話が分かる御仁ばかりだと聞いている。
なぁーんか、話がかみ合ってねぇような？
「迅雷……いや、イオノ腹ぁ――さっき大変だって言ってたが……いったい何を、隠してやがんだぁ!!??」
梅干し大の和菓子姿が、「ぴゃやっ!?」と飛び跳ねた。
