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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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285/744

285:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、解析指南と岩陰のつどい

「あらシガミー、変わった(かお)りですこと?」

 (おお)きなテーブルに陣取(じんど)って、(なに)かを(なが)めてたリカルルたちまでやってきた。


 がたん、ちいさな(つくえ)を、もう一個出(いっこだ)して――こと、ことん。

 追加(ついか)卵酒(たまござけ)二級(にきゅう))をだしてやる。


「いやぁ、これはとても(あたた)まりますねー♪」

 大柄(エクレア)(からだ)をちぢめて、湯飲(ゆのみ)みをすする。


「ふはわぁ♪ ほんとう、レーニア……いえ、リオレイニア。これ我が家でも(つく)れないかしら?」

 そんなリカルルの言葉(ことば)に、(くび)を振るリオレイニア。

「まえにレシピを聞きました(ところ)(れい)のシガミーの酒瓶(さかびん)からしか入手(にゅうしゅ)できない〝澄み切ったお(さけ)〟を使(つか)っているようですので――」


「そーね、あのお(さけ)近いの(・・・)わぁつくれるけどぉ――」

 ずぞぞぞぞぉー。

「おいそりゃ、おれんだぞ。病みあがりの信徒(しんと)を、すこしは(いたわ)れってんだぜ」

 (ひめ)さんの長髪(ながかみ)をつたって、テーブルに降りた御神体(いおのはら)は……どっちが湯飲(ゆの)みだかわからん。


「――天狗(テェーング)かシガミーの手が空いてるときじゃないと――戦争(せんそう)になるわね……鍛冶工房(かじこうぼう)のおじさんたちとぉ――――ウケケッケケッ♪」

「ウヌゥ――!?」

 五百乃大角(いおのはら)(わら)(ごえ)(おどろ)いたゲール少年(しょうねん)が、椅子(いす)ごとうしろにひっくり(かえ)る。


 ヴッ――――ぱしん、ごどん。

 小太刀(こだち)を出して、椅子(いす)の背につっかえ(ぼう)をしてやる。


「す、すまぬ、店主(テンシュ)よ」

 ジタバタともがくゲールを、レイダが起こしてやる。

「す、すまぬ、レイダよ」

 このパーティー最弱(さいじゃく)間違(まちが)いなく、コイツだ。

 (まも)りながらの行軍(こうぐん)だと、いつ魔王城(まおうじょう)にたどり着くのか見当(けんとう)も付かない。


「ふぅぅぅぅうっ――♪」

 白いの(リオレイニア)湯飲(ゆの)みをかかえ、(くち)から(つめ)てぇ魔法(まほう)を吐いて冷ましてる。

 ああいう芸当(げいとう)出来(でき)ると、この世界(せかい)での生活(せいかつ)がとても(たの)しそうだ。

 もっともソコにたどり着くまでに、なみなみならぬ修練(しゅうれん)が要るが。


「ふぅぅぅゥウッ――ぼわっ♪」

 真似(まね)をしたリカルルの(くち)から――狐火(きつねび)(あお)(ほのお)が漏れた。

 きゃぁ――あわてて、湯飲(ゆのみ)みから立ちのぼる〝仄暗い炎(きつねび)〟を散らす。


「それで、これからどうするんだぁ?」

 狐火(あれ)使(つか)えるんなら――あの妖狐(ようこ)ルリーロ並みに(・・・・・・・)使(つか)えるんなら、この(さき)道行(みちゆき)きでも――(らく)出来(でき)たんだがなぁ。


「ことここに(いた)っては、(いた)(かた)ありませんでしてよ。Cルートとやらを(えら)ぶだけですわ」

 さっきテーブルに(ひろ)げてたのは、五百乃大角(いおのはら)がだした地図(ちず)だったか。


「それしかねぇか……ってなると、おいゲール」

「ごくごくん、フウ。なんだ、店主(テンシュ)よ」

 子供()姿(すがた)でも〝(あつ)さ〟には(つよ)いのか、がぶがぶと卵酒(たまござけ)を飲む少年(しょうねん)


「〝かりゅうのねどこ〟は本当(ほんとう)に「(こわ)る」されちまうかもしれねぇ……すまんなぁ」

 どれだけ(いそ)いでも、一日二日(いちにちふつか)魔物(まもの)勢力(せいりょく)本丸(ほんまる)を落とせるたぁ――(おも)えん。


「そうでしたわ。ソレに(かん)しましては、(あやま)ることしか出来(でき)ませんわ……ごめんなさい」

 ぺこり。

 彼女(ひめさん)のこういう(すじ)(とお)った(ところ)は、尊敬(そんけい)できる。

 ()(もと)大名(だいみょう)どもは清廉(せいれん)ではあるが、こうして(あたま)を下げることはしないからな。


「気にすることはない。半身(ハンシン)は、この(サキ)魔王城(マオウジョウ)にも一体(イッタイ)あるから、ソチラを回収(カイシュウ)すれば良いだけのことだ」


「はいじゃぁ、決まりねっ♪ キミたちにわぁ――ズヴァバァーン! 魔王城(まおうじょう)再攻略(・・・)していただきまぁすぅ!」

 かちゃっ――卵酒(たまござけ)を飲み干し、ひっくり(かえ)った湯飲(ゆのみ)みを(あたま)に乗せたままの――美の女神(いおのはら)

 戸棚(とだな)急須(きゅうす)湯飲(ゆの)みと一緒(いっしょ)にしまわれてても、まるで気づかないその――御神体(すがた)


「ん? (みょう)にまじめに仕事(しごと)をしてやがるな、お(まえ)さまよ?」

 (なに)(かく)してる?


 ふぉん♪

『イオノ>隠してなどいません』

「なぁんかねぇ、魔王城(まおうじょう)のどこかにー、見たことも聞いたこともないよぉな(めず)しい(きのこ)ガァー生えてるんだってさぁー?」

 小首(こくび)をかしげるじゃねぇやい。


「まったく、見たことも聞いたこともねーもんを、どーして知ったんだお(まえ)さまわぁ?」

 ことん、ことん、こととん。

 (から)になった湯飲(ゆの)みを(あつ)めて――五百乃大角(いおのはら)(かこ)む。


「なんかねぇー、温泉客(おんせんきゃく)のおじさんがねぇ――

 「ソレを食べると、無病息災(むびょうそくさい)体質改善(たいしつかいぜん)家内安全(かないあんぜん)学業成就(がくぎょうじょうじゅ)商売繁盛(しょうばいはんじょう)したあげく黒雲(こくうん)から(あらわ)れた異形(いぎょう)(かみ)によって――たちどころに恋愛成就(れんあいじょうじゅ)までするらしい!」

 ――なんて自慢(じまん)してきたのよねぇ」


 寄せ(あつ)まる湯飲(ゆの)みの(なか)から、ぽちゃぽちゃと。

 なんかがたれる(おと)――よだれか。


「フェスタの(きゃく)かぁー! 余計(よけい)なことを余計(よけい)(やつ)に、吹き込みやがって……その(きのこ)わぁ、よりにもよって(・・・・・・・)――うまいってんだな?」

「なぁんかねぇー、そうらしーのよねぇー……ぐひひひへへへっ♪」

 またでたな。ドコで(おぼ)えて来やがった、その下卑(げび)(わら)い。


「――秘蔵(ひぞう)蘇生薬(エリクサー)もすべて、吐きだすことになりそうで……すね」

 精悍(せいかん)護衛騎士(ごえいきし)(かお)(かげ)りが。

 (かれ)新婚(しんこん)物入(ものい)りらしいのに。


「その損失(そんしつ)補填(ほてん)するためにも、この攻城戦勝(こうじょうせんか)ちに行きますわよ、エクレア!」

 落ち込む従者(じゅうしゃ)にしてパーティーメンバーを、元気(げんき)づけるリーダー。

「はい、リカルル!」

 元気(げんき)づけられたS級冒険者(きゅうぼうけんしゃ)(かお)が、凜々(りり)しく引きしまる。


「そーだなー、祝儀(しゅうぎ)がてら魔王城(しろ)を、落としてやるかぁ! めぼしいもんのひとつくらい、(のこ)ってんだろっ」

 いくさで(しろ)を落としたことは、一度(いちど)もない。

 ありゃぁ、用意周到(よういしゅうとう)兵糧攻(ひょうろうぜ)めでもしねぇと、そうそう出来(でき)ねえもんだ――が。


「――はイ。現在(げんザい)のシガミーでシたら、単身乗(たんしんの)り込んデも可能(かのウ)(おモ)わレま()――」


「けど、気がかりはあるぞ? 魔王城(まおうじょう)てのは、(あぶ)なくねぇのか? おれぁともかく、レイダやゲールも居るだろう?」

 本来(ほんらい)子供(ガキ)三人(さんにん)もつれて出歩(である)場所(ばしょ)じゃねぇのは、おれにだってわかる。


(あぶ)ないですわよ? ヴォルトカッターが使(つか)えない(わたくし)では、足手(あしで)まといなくらいには――――」

 (とが)った狐耳(みみ)が、へなへなと(たお)れる。


「けれど、活路(かつろ)はあります。リオレイニアが迅雷(ジンライ)殿(どの)使(つか)って極大魔法(きょくだいまほう)(はな)てば、魔物(まもの)など(もの)(かず)ではありません」

 良い(つら)白仮面(リオ)に、信頼(しんらい)眼差(まなざし)しを向けた。

 それなー。

 いっそのこと、〝白い悪魔一式(そいつ)〟で全部(ぜんぶ)ぶっ(こわ)しちまえば、って(おも)わなくもねぇ。


 ふぉん♪

『イオノ>不許可。生態系への過度な選択圧は、

     あたくしさまへの供物に、支障が生じる可能性があり、

     看過できません』

 なんだと?


「そんなことをしたらぁー、お(めず)しい(きのこ)さままで消しの(ずみ)です! ダメだからねっ!」

 お(まえ)さまよ、本音(ほんね)がさっきから前面(ぜんめん)に出すぎだ。


 ふぉん♪

『>一部地域の魔物を殲滅した場合、なにがどう影響するか類推できません。

  場合によってはポグバード一匹、採れない世界になるかも知れません』

 そういうことか。それには納得(なっとく)だ。


 おれがガムラン(しょう)草原(そうげん)で、薬草(やくそう)全部採(ぜんぶと)っちまって。

 レイダの仕事(しごと)まで取っちまったみたいなことが――

 魔物(まもの)の生き死にでも、起こりかねないってコトだろ。


「まあ、お聞きなさい。どっちにしろ魔王城(まおうじょう)経由(けいゆ)してルートCでご神木(しんぼく)ちゃんに行くわけでしょお? ならあたくしさまへの供物(くもつ)、そして(あめ)あられの御利益(ごりやく)まで降り(そそ)ぐなら、そっちの(ほう)が良いでしょう?」

 それしかあるめぇ。


「言い(ぶん)はわかりました。けれど――」

 大筒扱(おおづつあつか)いされるがままの(しろ)悪魔(あくま)が――テーブルのうえに(なら)べられた黒板(いた)を、一枚取(いちまいと)った。

「この魔王城(しろ)からご神木(しんぼく)までの、点線(てんせん)意味(いみ)はおわかりになったのでしょうか?」


「いいえ、ひょっとしたら魔王討伐後(まおうとうばつご)なにか(・・・)変化(へんか)があったのかもしれないわねぇー、ウケケッケケケケケッ♪」


討伐後(とうばつご)――?」

 細顎(ほそあご)(ゆび)をそえる、白い悪魔(もときゅうじちょう)


転移陣(てんいじん)作動(さどう)して――(とりで)火山(かざん)(あいだ)くらいの地点(ちてん)に飛ばされましたよね?」

 地図(ちず)一カ所(いっかしょ)(ゆび)さす護衛(ごえい)

 ちょうどおれが、五百乃大角(いおのはら)青年(せいねん)に会ったあたりだ。


転移陣(てんいじん)? ふーん、二週目だと(・・・・・)行き(さき)が変わるのかも、知れないわねぇー♪」

 ふぉん♪

『イオノ>突然出てきた3ルートの選択画面といい、

     本当にゲームみたい』


 わからんのにも、飽きたぞおれぁ。

 そうだ、聞いてみるか――解析指南(かいせきしなん)に。

「(この地図(ちず)点線(てんせん)(なん)だ?)」


 ヴォォォォン♪

『解析指南>ウリアッ上』

 は? なんかでたが読めん。

 おかしいな――解析指南(かいせきしなん)

『解析指南>ジャンニーキックプ』


 おい迅雷(ジンライ)説明(せつめー)

 ふぉん♪

『>地図上の点線については、イオノファラーの考えに賛同します』

 魔王(まおう)(たお)すと、飛ばされる(さき)が変わるって(はなし)はわかった。

 それで、この解析指南(かいせきしなん)のは(なん)だ?


「――わかりません。類推(るいすい)閾値(いき)を超えています。データセットの欠損(けっそん)誤植(ごしょく)による表記(ひょうき)バグの可能性(かのうせい)がありマ()――」

 ずずずずずー♪

 ほほぉぅ、わーかーらーんー。


 ふぉん♪

『イオノ>攻略本(初版)には載ってないし、

     行ってみるしかないわね』


 まぁーなぁー、(ふか)(もり)を抜け、(いま)いる洞窟(ダンジョン)(とお)って――

 魔王城(まおうじょう)到達(とうたつ)したほどのヤツが――

 ココには、三人(さんにん)も居る。

「――ニゲルノ存在(そんざイ)(かんガ)えレば、コれ以上(いじょウ)布陣(ふジん)もないノでは()――」


「はくしょんっ――――!」

 まだ本調子(ほんちょうし)じゃ、なさそうだけどなー。


「なんにしてもさっ、安心(あんしん)して良いんわぁよよぉぉぉぉん♪ いざとなったら、うちのシガミーがすべての(てき)をなぎ(たお)しますので、えへんっ!」

 勝手(かって)なことを、言いやがって。


「しゃぁねぇ、おれに(まか)せとけ。おれぁ(べつ)にイオノフ(きょう)信徒(しんと)じゃねぇけど――(かみ)さんの不始末(ふしまつ)は、おれがとるぜ!」

 ヴッ――――じゃりぃぃぃん♪


 あ、そうだぜ。見得(みえ)をきるときにゃぁ、片目(かため)を閉じるんだったか?

 ばちぃぃぃぃぃんっ!

 片目(かため)を閉じてやったぜ!


「――ぅにゅ!? リオレイニアさん……」

「――ええ、フォチャカさん……」

「ああ、なるほど――ああいう(ところ)ですかぁ……」

 また三人(さんにん)がかしましく、岩陰(いわかげ)(つど)った。

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