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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
3:ダンジョンクローラーになろう

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275/744

275:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、史上最美味クッキング

「したごしらえは、終わりましたかしらぁー?」

 パタパタパタ、鼻緒(はなお)のねぇ草履(ぞうり)


「おう、この(やま)最後(さいご)だぜ」

 石突(いしづ)きを切った(しろ)っぽい(きのこ)を、半分(はんぶん)にして鉄鉢(てつばち)へ入れた。


「こうしてると、シガミーが(はじ)めて食堂(しょくどう)に来たときを(おも)い出すよ」

 (かわ)を剥いた(いも)を、かるく(ほう)って鉄籠(てつかご)に投げ入れる。


「あらん? お二人(ふたり)とも見事(みごと)手際(てぎわ)ですわね♪」

 しゃらあしゃらした格好(かっこう)に、リオレイニアのと(おな)前掛(まえか)け。


 青年(ニゲル)の手つきは、(どう)に入ったものだったが――

 (ひめ)さんが身を(かが)めて、手元(てもと)をのぞき込んだ途端(とたん)


 グサリッ――――「(いて)っ!?」

「うっぎゃっ!? (なに)してるのっ、ニゲルってばっ! シガミー、傷薬(きずぐすり)は有る?」

 パタパタパタ。

「おうよ! おれぁ、薬草師(やくそうし)だからな!」

 蘇生薬(エリクサー)回復薬(ポーション)に、多種多様(たしゅたよう)治療系新薬(ちりょうけいしんやく)

 久々(ひさびさ)本職(・・)としての、ご用命(ようめい)だ。

 ひっくり(かえ)した鉄籠(てつかご)(うえ)に、ごっちゃりと(なら)べてやった。


「あーもぉー、レーニアー?」

 おれとレイダが三人(さんにん)ずつ(はい)りそうな特大(とくだい)鉄鍋(てつなべ)を、ゴロンゴロンと(ころ)がしてた給仕服(レーニア)が――こちらを向いた。


 鉄鍋(てつなべ)をエクレアに(まか)せて、駆けよる白仮面の女(リオレーニア)


「……(なに)をしているのですか?」

 自分(じぶん)(こし)のベルトからポーションを出そうとして、(ゆび)から血を垂らしている青年(せいねん)

 事態(じたい)をちゃんと把握(はあく)した、(もと)ヴォルトカッター兼給仕長(けんきゅうじちょう)は――

 おれが(なら)べた(なか)から、ふたつの小瓶(こびん)を手に取った。


「シガミー、この回復薬(ポーション)(しょう))と栄養薬(えいようやく)黄色(きいろ))を(いただ)いてもよろしいですか?」

勿論(もちろん)だぜ♪」

 やや心配(しんぱい)様子(ようす)姫さん(リカルル)を、(しり)退()かした給仕服(リオ)が――

「どうぞ飲んでください。それと、お(つか)れのようですのでコチラも」

 (あご)をつかまれ、(なが)し込まれる。


「むぐ――ごくん。甘苦(あまにが)っ――!?」

 シュワワ――(ゆび)の血が、(ひかり)(きり)になって消える。

「さ、これでもう安心(あんしん)です――お(じょう)さま、お下がりください♪」

 さいごにペチリとニゲルの(ひたい)をひっぱたく――家事並(かじなら)びに生活魔法(せいかつまほう)達人(たつじん)


()った!? リオレイニアさん、(いま)のなんだい? 必要(ひつよう)ないでしょ!」

 (した)に落ちた血は当然(とうぜん)そのままなので、リオが雑巾(ぞうきん)(ぬぐ)った。

気付(きつ)けがわりです。なんでしたらもう一回(いっかい)、して差しあげましょうか?」

 持ちあげた平手(ひらて)で、追い(はら)われる青年(せいねん)


 ニゲルに、かける言葉(ことば)もねぇ。

 おい、こりゃ無理(むり)じゃねぇーのか?

 あの城壁(リオレイニア)を乗りこえて、ニゲルが(ひめ)さんにたどり着くのは――至難(しなん)(わざ)だろ。


 ふぉん♪

『イオノ>前途多難にも程が、まさに岩壁ね』

 ふぉん♪

『>トッカータ大陸における恋愛観や結婚観の、

  さらなる調査が必要かも知れません』


「お(ひめ)ちゃぁん! 陣頭指揮(じんとうしき)(ちか)くで見たいから、(かた)に乗・せ・てぇー♡」

 テーブルの(うえ)(にく)様子(ようす)を見てた、御神体(いおのはら)がリカルルを呼びつけた。


   §


 あとは料理(りょうり)するだけになった、(きのこ)野菜(やさい)(やま)

 それは、木さじ食堂(しょくどう)の1日分(にちぶん)仕込(しこみ)みくらいに積みあがっている。


 そういや〝おにぎり〟の野郎(やろう)は、女将(おかみ)さんの迷惑(めいわく)になってねぇだろな。

 ふぉん♪

『>ガムラン町から出かける前、

  口頭による品質評価をいたしましたが、

  八歳児程度の受け答えが出来ていました』


「(八歳児(はっさいじ)か――なら大丈夫(だいじょうぶ)だと……良いな)」

 (いま)から(つく)るうまいらしい(めし)を、女将(おかみ)さんの(ぶん)も持って(かえ)ってやろう。


 さて、大机(おおづくえ)(むっ)(ぶん)にもなった食材(しょくざい)(やま)

 かまどが(いつ)つに、鍛冶工房(かじこうぼう)にあるような大竈(おおかまど)がひとつ。


「イオノファラーさま、ほんとうに(わたくし)が取り仕切(しき)ってよろしいんですの? こんなおとぎ(ばなし)……にすら出て来ない(・・・・・)……貴重(きちょう)食材(しょくざい)ですのに?」

「いーのいーの♪ あたくしさまも天狗(てんぐ)も、お(ひめ)ちゃんのお料理(りょうり)にわぁー、一目置(いちもくお)いてるのよょぉん♪」


 ココは〝かりゅうのねどこ〟地下三階(ちかさんかい)

 (かり)根城(ねじろ)にしちゃ、かなり立派(りっぱ)部屋(へや)

 (ひろ)いし(あか)るいし、土間(どま)(はし)(まわ)れるくらいあるから、こうして全員で(・・・)(めし)支度(したく)出来(でき)る。


「そうですねー、とても良い花嫁修業(はなよめしゅぎょう)になると(おも)いますよ――お(じょう)さま? うふふ?」

 (しろ)仮面(かめん)黒板(レシピ)(なが)め、冷ややかな(こえ)(はっ)した。

 お(じょう)さまの口元(くちもと)が、かすかに引きつる。

 料理(りょうり)家事(かじ)一切合切(いっさいがっさい)を、叩き込んだ者(・・・・・・)としての矜持(きょうじ)か、それ以上(いじょう)口出(くちだ)しはなかった。


「は、はははははははははははぁーなぁーよぉめぇー!?」

 どうにもリオレイニアとニゲルは、ウマが合わない。

「ニゲル、〝は〟が(おお)いよ?」

 天狗(ワシ)鬼娘(オルコトリア)みたいな関係(かんけい)なのかもなー。


 ちなみにひとりで洞窟(ダンジョン)を抜け出したのがバレて、リオレイニアにえらく怒られた。

 折檻(せっかん)こそされなかったが超怖(ちょうこわ)くて――死を覚悟(かくご)したほどだ。


 そして、2号店(ごうてん)(まか)されていたニゲル店長(てんちょう)も、おなじく(おこ)られた。

 (ちい)せぇ魔法杖(まほうつえ)で、チクチクと突き刺されてなー。


 店番(みせばん)を代わってくれたらしい、ルコルとニャミカにも――(いま)から(つく)(めし)を持って(かえ)って食わせてやろう。

 もちろん本店(ほんてん)の、猫頭青年(ネコアタマ)にもだ。


「よぉっし! 気合(きあ)いを入れて、うまい(めし)(つく)らねぇとなっ♪」

 立ちあがると――


「にゃみゃが、にゃがにゃ?」

 (わたし)(なに)をすれば、イーの?

 と(レイダ)が寄ってきた。

 ココは(つめ)てぇ魔法(まほう)が効いてるから、とても快適(かいてき)だけど。


 それでも――A級冒険者(きゅうぼうけんしゃ)決死(けっし)覚悟(かくご)(いど)む、難関(なんかん)クエストの最中(さいちゅう)だ。

 しかも――未知(みち)魔物(まもの)ミノタウロースが出没(しゅつぼつ)した、危険(きけん)なダンジョンの最奥(さいおく)(おく)

 これ以上(いじょう)(あた)しい魔物(まもの)は出ねぇが、隠れてたやつ(・・・・・・)が出てこないわけじゃねぇらしくて。


「その猫手(ねこて)じゃ、(いも)ひとつうまくつかめねぇんじゃ?」

 〝極所作業用きょくしょさぎょうよう汎用強化服(はんようきょうかふく)シシガニャン〟。

 コレさえ着ていてくれたら、レイダは(なに)があっても無事(ぶじ)だ。

「(迅雷(ジンライ)、コッチは飯作(めしづく)りに本腰(ほんごし)を入れるから、レイダのことを(たの)むぞ)」


「――はイ。お(まか)(くダ)サい。ですが一応(いちおウ)(つタ)えしておきまスと、(たタし)が付いテいれば生身以上(なまみイじょう)のマニピュレートが可能(かノう)……器用(きヨう)さヲ発揮(はッき)できマ()――」


「にゃがにゃが、にゃやーん♪」

 ううん。なんか迅雷(ジンライ)がうまく持たせてくれる(・・・・・・・)らしいから、(なん)でも出来(でき)る――にゃぁぁご♪


 (めし)支度(したく)でうるせえ(なか)でも、耳栓越(みみせんご)しの(こえ)ならちゃんと聞き取れる。

 けどなんか――「ウケウケウケケケケッ――ぐひひひへへへっ♪」

 美の女神(いおのはら)のいつもの奇声(きせい)とか、最近覚(さいきんおぼ)えた下卑(げび)(わら)いとか。

 しまいには――


「〽(おお)きな角持(つのも)つミノタウロースにー、あーぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」

 炎の魔術師(フォカチャ)が――とつぜん(うた)(くち)ずさんだりしてな。

 うるせえったらねぇ。


「〽(たに)から(とどろ)くその咆哮(こえ)はー、あなたの(こころ)(ふる)わせるーぅ♪」

 どっぽどっぱと巨大鍋(きょだいなべ)(そそ)ぎこまれる――おれの澄み(ざけ)

 酒瓶(さかびん)(さか)さにする料理番(リカルル)――どぽぽぽぱ!

 もったいねぇ――!


「〽三歩(さんぽ)八歩(はちほ)十歩(じゅっぽ)ごと、地が揺れ空割(そらわ)り追ってくるーぅ♪」

 薬味(やくみ)と、(かお)りがする葉っぱを入れていく――フッカ。


「よし、コッチも(はじ)めるか!」

 ミノタウの(にく)を切って(しお)を振り、(あぶら)(いた)める。

「〽(つの)は突き刺さる、(つの)は突き刺さるーぅ♪」

 なんて(くち)ずさみながら、甲冑(かっちゅう)を脱いで身軽(みがる)になったエクレアが、饂飩粉(うどんこ)をまぶしてくれる。


「〽(はし)って、(はし)って、できるだけ(はーや)くーぅ♪」

 (うし)(ちち)(つく)った……(かた)まった油豆腐(あぶらどうふ)とか言うのを入れて。

「〽でないと、ミノタウロースに突かれますーぅ♪」

 (ひめ)さんがうたいながら、(いた)め終わった手鍋(てなべ)(のく)巨大鍋(きょだいなべ)に入れろという――手振(てぶ)り。

 だから、このミノタウの(うた)(なん)なんだぜ?


「〽(かく)れて、(かく)れて、(おと)を立てないでーぇ♪」

 弱火(よわび)でじっくり。

「〽折れない(つの)(するど)く、その目はアナタを見逃(みのが)さなーぃ♪」


 今度(こんど)は、(した)ごしらえした具材(ぐざい)を、手鍋(てなべ)(いた)めていく。

 (やき)(いろ)が付いたら、みずのたま――からの(あか)(じゅく)した野菜(やさい)の実を――


「〽みんな灰色(はいいろ)(つの)に、きをつけてーぇ♪」

 ぐちゃ、びちゃ、べちょっ!

 (つぶ)して手鍋(てなべ)に入れる。


「〽(もり)木陰(こかげ)(たに)(そこ)、お(しろ)中庭(なかにわ)(みずうみ)(そこ)ーぉ♪」

 ぐちゃ、びちゃ、べちょっ!

 もうひとつ、入れる。


「〽ギルドの鉄塔(てっとう)魔城(まじょう)(いただ)きーぃ♪」

 ぐちゃ、びちゃ、べちょっ!

 まだ足りねぇのか?


「〽ドコまでも(とど)くぞ追ってくるぞ、灰色(はいいろ)(つの)が追ってくるーぅ」

 (かた)五百乃大角(いおのはら)を乗せた料理番(リカルル)が、(いぶか)しむような目で(あた)りをうかがっている。

 なんだ?


「〽(おお)きな角持(つのも)つミノタウロースにー、あーぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」

 今は黒くないエクレアが、背中(せなか)から取り出したのは、見たことがある(おお)きな木さじ。

 それ、女将(おかみ)さんのだろ?

 借りてきたのか?


「「〽(おお)きな角持(つのも)つミノタウロースにー、あーぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」」

 気配(けはい)(かん)じて振りむいたら、やっぱり木さじを(かま)えた給仕服(リオレイニア)が。


「「「〽(おお)きな角持(つのも)つミノタウロースにー、あーぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」」」

 魔術師(フッカ)魔法杖(つえ)を木さじに、持ちかえた。


「「「「〽(おお)きな角持(つのも)つミノタウロースにー、あーぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」」」――みゃぁ♪」

 最後(さいご)猫の魔物(シシガニャン)すがたのレイダまでが、木さじを天高(てんたか)く振りあげた。


 大鍋(おおなべ)を取りかこむ、みんな。

 突き込まれた、四本(よんほん)の木さじ。


 グルグルグルグルと、(なべ)(まわ)りを(まわ)り出した。

 どーなってる?

 ついて行けねぇ。


 ガムラン(ちょう)冒険者(ぼうけんしゃ)風習(ふうしゅう)なんだろう。

 ニゲルも(くち)をパカリと開けて、途方(とほう)に暮れてた。

 それでも、(ひめ)さんが振る(けん)に合わせて――「〽ミノタウロースに……♪」

 (うた)い出したときには、本当(ほんとう)に掛け値無(ねな)しに――惚れ込んでる(・・・・・・)のがわかった。


 そんなわけで料理(りょうり)仕上(しあ)げは、兎に(かく)やかましくてなぁ――――「ぁぁーぁーぁあー気をつけてぇえぇー♪」


 ふぉん♪

『イオノ>気をつけてー♪』

 ふぉん♪

『>気をつけてー♪』


 ギョロリッ――――!?

 火龍(かりゅう)()から、巨大(きょだい)な眼がコッチを見ていたけど。

 さすがに(うた)に混ざっては、来なかった。

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