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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

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25/744

25:見習い冒険者(幼女)、ムシュル貝のドラゴーラ焼き

「(やい、迅雷(ジンライ)!)」

「(なんでしょうか、シガミー)」

 えさは、女将(おかみ)が持たせてくれた弁当(べんとう)

 あまい野菜(やさい)のひと(つぶ)を、ちぎって()に付ける。


「イカサマ……してねえだろうな?」

「ふふーん、してないよう。じーっとしてるのは得意(とくい)かもだけど♪」

 いけねえ。ふたりしてじっとしてると、迅雷(ジンライ)との密談(はなし)と、声に出す話(ふつうのはなし)がまざっちまうぜ。


「おれぁ、じっとしてんのは苦手(にがて)なんだよ」

 釣り竿(ジンライ)を放り投げた。


根術(ぼう)練習(れんしゅう)とかで、そーいうの、ありそうだけど?」

だぁから(・・・・)(きれ)ぇになったんだよ!」


 (こん)を構えたまま、三日(みっか)三晩(みばん)微動(びどう)だにしねえ修行(ぎょう)がある。

 ()あなの空いた板に、(こん)をとおし、ちょっとでも触れれば鳥威(とりおど)しがガラガラ鳴ってやりなおし。


「なるほどね。あ、またつれた♪」

 女将(おかみ)のくれた弁当(べんとう)の野菜じゃねえ方、子供(がき)の手にはおおきすぎる大きな(むす)び。

 それより一回(ひとまわ)り大きな、ひっくり返った独楽(こま)のかたち。

 ムシュル貝……無酒流(ムシュル)貝(?)は巻き貝で、いがいと動きがはやかった。


 スススス。音もなく、じわりとした(ある)き。

 網ぶくろから逃げだした貝のひとつが、結構(けっこう)とおくまで行ってる。

 追いかけて、ひょいと持ち上げる。


「じゃあ、おれは別のことをやらぁ」

 捕まえた貝を袋に入れて、袋の口をきつくしばる。


「何をスるのでスか?」

 迅雷(ジンライ)がよってきた。


「ここまでの横穴(よこあな)をひろくして、レイダのしりが――はさまらねえようにすんだよ」


 ヒュンッ――――ゴガッ!

 ムシュル貝が石壁(いしかべ)に突きささった。

「(おい、この貝殻(かいがら)武器(ぶき)になりそうだぜ?)」

「(はい。この地域(ちいき)標準的(ひょうじゅんてき)岩石(がんせき)組成(そせい)よりも硬度(こうど)が高いので、削岩(さくがん)道具(どうぐ)としても利用(りよう)できます)」


「(――かたくて、ツルハシ代わりに使えるって事であってるか?)」

「(はい、シガミー)」

 コイツの言葉は口調は違うが、どうも女神(おおぐらい)と同じ道理(どうり)らしい。

 はじめは何を言ってるのかわからず、まるで手に負えなかったが。

 ようやく、なんとなくだが、こいつらの話す道理が――

 ()に適っていることだけは、わかってきた。


 壁から貝を引っこ抜いて、袋に入れる。

 そうか、おれたちみたいな子供(がき)の手に合う道具(どうぐ)が、あってもいいな。

 それに石壁(いしかべ)(けず)れるなら――


「(この(かべ)にきざみを入れて、ハシゴ代わりにのぼれそうな――)」

「(いいえ、縦穴(たてあな)の上部に、十字(じゅうじ)鉄棒(てつぼう)がはめられていて、よじ登っても外には出られません)」

 だめか。じゃあ、やっぱり横穴(よこあな)ひろげる(・・・・)しかねえな――。

「(そうですね。帰り道でまた、つっかえて(・・・・・)しまいますので――)」


 ふとレイダを見たら、袋から貝を取り出そうとしてた。

 あぶねえ、たまたま迅雷(ジンライ)内緒(ないしょ)(はなし)してなかったら、不意(ふい)()ちを食らってたかもしれん。


 おれたちは大いそぎで横穴(よこあな)に飛びこんだ。


   §


「こりゃあ、たまげたね!」

 つみあがった袋をみた女将(おかみ)が、しりもちをついた。


「……水路(すいろ)(さき)って……どのあたりだい?」

 わけえのが、にやけた顔で聞いてくる。


「そりゃあ、ないしょだぜ」

 ひろくした横穴(よこあな)は、簡単(かんたん)に見つからねえように、入り口をふさいでおいた。


「どれも、まるまる太った一級品(いっきゅうひん)だよ!」

 検分(けんぶん)のすんだ(あみ)ぶくろを、女将(おかみ)がかかえてみせた。


「これ全部、買わせてもらうよ! ニゲル、倉庫(そうこ)に運んどくれ!」

 ニゲル(わけえの)が、両手(りょうて)に袋をかかえて、店の奥に運びこんでいく。


 レイダとかおを見あわせた。

 大根(マンドラゴーラ)とあわせて、そこそこの金額(きんがく)になるはずだ。


   §


「はい、おまち。あついから気をつけとくれよ♪」

 ジュジュジュゥゥゥゥッ!

 すり下ろした紫色の野菜(やさい)が、焼いた貝にたっぷりと、のせられている。


 おれたちは、くだもの(すい)がはいった木の(さかづき)を、コツンとうちあわせた。

「じゃ、さっそく――ぱくり♪」

「私も――ぱくり♪」


「――――――――うめえっ!」

「――――――――おいしいっ!」

 がつがつがつがつ、もぐもぐもぐもぐ、ごくごくごくごく――くだもの(すい)おかわり!

 へーい。わかくねえ方の店員(てんいん)(みず)さしから、(そそ)いでくれる。

 コッチの店員(てんいん)(かね)勘定(かんじょう)仕方(しかた)を教えてくれたっけ。

 おれぁ木の棒(・・・)を使った算術(さんじゅつ)はわからねえから、頭の中で計算しちまったけどよ。


 焼いた貝の香ばしさに引けを取らない紫色(むらさきいろ)たれ(・・)

 酸味(さんみ)と甘みとあとなんだ? ……わからん、うまい!


「おいしい、おいしい、おいしい……もぎゅもぎゅもぎゅ――ごくん!」

 コレだけうまけりゃ、顔もほころぶ。


「さすがに、三日分の路銀(ろぎん)……もぐもぐ……生活費(せいかつひ)と同じなのも……ごきゅごきゅ、ぷはぁ――うなづけらぁ♪」


「どうだい、お味は? おかわりいるかい?」

「うめぇ、おかわり!」

「おいしい、わたしも!」


「はいよ――おかわりおまち♪」

 おかわりはスグに出てきた。

 用意しておいてくれたのだろう。


「あんたたちが、これだけ立派(りっぱ)食材(しょくざい)(あつ)めてこれるなら、常駐(じょうちゅう)のE(きゅう)クエストを、ギルドに発注(はっちゅう)しても良いかもしれないねえ――」


 常駐(じょうちゅう)っていう、ことばの意味(いみ)はわかる。

 〝大根(マンドラゴーラ)〟と〝ムシュル貝〟を、こんごも定期(ていき)(てき)に買い取ってくれると言っているのだ。


大根(だいこん)……マンドラゴーラは偶然(ぐうぜん)見つけただけだけど、ムシュル貝ならいつでもとれるぜ、なっ?」


水量(すいりょう)が増える雨の季節(きせつ)じゃなければ、とれるとおもいます」


「よーし、決まりだ。数日(すうじつ)おきに持っておいで。ギルドからも成功(せいこう)報酬(ほうしゅう)がでるから、ちゃんと受注(じゅちゅう)してからくるんだよ」

 おれたちはさらに、もう一回おかわりして、(はら)一杯(いっぱい)になった。


「あらぁー? わたしに内緒(ないしょ)で、おいしそうなもの食べてるのねえー、シガミィーちゃぁぁん? 私の分わぁ~? あれぇー、私の分わぁー?」


 一瞬、狐耳(ひめさん)かとおもったが――違う!

 仮にも良いとこのお嬢さんが、料理(めし)催促(さいそく)なんぞしねえ!


 でた、でやがった!

結び/おむすび、おにぎり。

検分/手に取って詳しく調べること。

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