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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
2:カブキーフェスタへの道

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245/744

245:天狗(シガミー)という名の神さま、最終戦はあまいやつ

饅頭(まんじゅう)……(猪蟹屋(ししがにや)二号店(にごうてん)の〝ガムラン饅頭(まんじゅう)〟ではいかんのか?)」

 不肖(ふしょう)弟子(でし)であるところの、美の女神(めがみ)眷属(けんぞく)をみやる。


 じぃぃぃぃ――眼があった。

 むこうも(おな)じことを、(かんが)えていたらしい。


 兵糧(ひょうろう)がわりに魔法具板(まほうぐいた)に詰めておいた(ぶん)

 舞台上(ぶたいじょう)全員(ぜんいん)に出せるくらいの、持ち合わせはある。

 (はこ)から出して、(さら)にのせりゃ――完成(かんせい)簡単(かんたん)

 そんなワケにいくか。


 ――どさどさどさささっ!


「どうぞ、〝銘菓(めいか)おにぎり饅頭(まんじゅう)〟です。召しあがりください」

 あれ、(なに)してんだオマエ。しかも、()のまま出しやがった。


「あらコレ……」

 (ひめ)さんが、(さら)(うえ)(はこ)に手を掛けた。

「はい知ってのとおり、こちらはフェスタ開催(かいさい)記念(きねん)して作られた、〝銘菓(めいか)〟にございます」

 銘菓(めいか)おにぎり饅頭(まんじゅう)だぁ?

 ソレだと、おにぎりなのか饅頭(まんじゅう)なのかどっちつかずじゃね?

 そもそも、〝ガムラン饅頭(まんじゅう)〟じゃなかったのか?


「ござる⤴︎ござる⤴︎♪」

 子供(レイダ)、ちょっと(しず)かにしててくれ。

 つられた観客(きゃく)が、また大合唱(だいがっしょう)し出すから。


「かわいい。おにぎりちゃんの(かたち)なのね」

 空飛(そらと)(ほのお)魔術師(まじゅつし)、フッカが目を(かがや)かせている。


「うん、うまいうまい。これウチでも、お土産用(みやげ)に出したいんだけど――?」

 もぐもぐもぐ♪

「だぁかぁーらー、そういうのはシガミーに直接(ちょくせつ)――いや、饅頭製造販売所(シシガニヤにごうてん)(はなし)店長(ぼく)あてでいいのか」

 伝票(でんぴょう)を取りだす青年店長(ニゲルてんちょう)。そうだな、適正価格(いいあんばい)でお(ねが)いします。


司会(しかい)さまも解説(かいせつ)さまも、どうぞ♪」

 おいソレ、(そで)(した)だろ。


「それでは、いただきます……もぐもぐもぐ、これは(あま)い! しつこいほどの(あま)さだ! もぐもぐ……しかし(まめ)(つつ)んだモチモチとした……もぐもぐ……(やわ)らかな舌触(したざわ)りが|別次元《》rの甘味へと押し上げている♪」

 甘い方(うすももいろ)を食べたか、よし評判(ひょうばん)(わる)くない――烏天狗(ジンライ)評価(ひょうか)になるのは、いまいましいが。


非常(ひじょう)においしいですね。ここガムラン(ちょう)への物資(ぶっし)はギルド関連(かんれん)優先(ゆうせん)されますので、こういった菓子(かし)使(つか)える材料(ざいりょう)はどうしても(かぎ)られてしまいます。そのなかでコレだけのものを(つく)るのは、並大抵(なみたいてい)努力(どりょく)ではありません」

 おおおおぉぉおぉぉ――――――――♪

 (なが)れるような解説(かいせつ)に、感嘆(かんたん)(こえ)があがる。


「みなさま、おかえりの(さい)にはぜひ猪蟹屋(ししがにや)ならびに(しん)ギルド会館地下(かいかんちか)(かい)猪蟹屋(ししがにや)二号店(にごうてん)へ、(あし)をお(はこ)びくださいませ、うふふ♪」


「おおーっとぉ、ここで解説(かいせつ)のリオレイニア(じょう)による、露骨(ろこつ)なプロモーションが炸裂(さくれつ)ぅ――――!!!」

 だよなぁ、ほどほどにしてよ。

 (きゃく)が増えて猫頭青年(ネコアタマせいねん)苦労(くろう)()いることになるのは、目に見えてるから。


「こちらのお(ちゃ)もどうぞ」

 だからそれ、(そで)(した)だろ。


 (ただ)ってくる(かお)りは、リオがときどき入れてくれる(すご)く良いお(ちゃ)のだ。

「あら、この(かお)り――?」

 ひとくち(くち)に入れた解説嬢(リオレイニア)が、目を(まる)くしている。


「わかりますか? それは隣町(となりまち)喫茶店(きっさてん)から分けて(いただ)いたものです」

 ははぁ、なるほどと納得(なっとく)する解説(かいせつ)

 ルコルに、そんなの分けてもらったっけか?

 (わす)れたが、分けてもらったんだろうなぁ。


 一礼(いちれい)してスススともどる、裏烏天狗(ジンライ)

 覆面(ずきん)に描かれた一つ目(ひとつめ)と眼が合った。


「(やい迅雷(ジンライ)喧伝(プロモーション)ごくろうさま!)」

「――はイ。シガミー……オ師匠(しシょう)さマも、ゴ武運(ぶウん)()――」


 もういちど、画面(がめん)を見た。

『デザート』

 字の(よこ)(えが)かれているのは――(かたち)としちゃ、いつだかレイダが大喜(おおよろこ)びでもらってきた、(かた)くて(あま)いのに似てる。

 ただ、画面(がめん)(なか)のやつは(かた)そうには見えない。

 (ちゃ)(うつわ)も見えてる。


 饅頭(まんじゅう)にお(ちゃ)

 これはあながち間違(まちが)ってねぇらしい。

 迅雷(ジンライ)(ちゃ)を出してたし。


 (ちゃ)なぁ。

 前世(ぜんせ)では時期(じき)によっちゃ、お(たか)茶葉(ちゃば)だか粉茶(こなちゃ)が手に(はい)ったとかで――(たか)くねえやつが虎鶫隊(とらつぐみたい)にまで、まわってくることがあった。

 (ちゃ)(あじ)なんざサッパリわからねぇおれたちでも、その複雑(ふくざつ)(にが)みや(しぶ)みには(かん)じ入る(ところ)があった。


 ヴッ――じゃりぃぃぃん♪

 ズドゴゴォン!

 食材(しょくざい)(やま)錫杖(ぼう)横薙(よこな)ぎにする。

 ばらばらと、こぼれる葉野菜(はやさい)(さかな)


 乾燥(かんそう)させるとチリチリになるひど柔らかくて、〝(みどり)(いろ)が濃い(くさ)〟をいちおう(さが)したが――無ぇやな。

 この食材(しょく)を取ってきたのはおれと迅雷(ジンライ)で、(くさ)っぽい()には見向(もむ)きもしなかったから――当然(とうぜん)だ。


 詰んだ。

 さすがに、ここまでか。

 迅雷(ジンライ)五百乃大角(いおのはら)の、神々(かみがみ)知恵(ちから)を借りずに二勝三敗(にしょうさんぱい)

 ここまでよくぞ頑張(がんば)った。


 それに折角(せっかく)のガムラン饅頭(まんじゅう)のお披露目(ひろめ)に、敗北を喫する(つちをつける)のも縁起(えんぎ)がわるい。


「(なんどか大僧正(だいそうじょう)に呼ばれたときにみた(かぎ)りで――とても本式(ほんしき)には(とど)かねぇだろうが)」

 さっき使(つか)ったばかりの超特大(ちょうとくだい)大鍋(おおなべ)を――ドゴズゥン♪

 こんどは(すみ)じゃねぇ。

 (つち)をこねる時間(ひま)もねぇから――〝絵で板(えでぃたぁ)〟っていう(ひかり)格子(こうし)をつかう。


 大鍋(おおなべ)にあたまを突っこんで――ヴォフォォォォォォン♪

 さっそく(つく)りたい(かたち)想像(そうぞう)する。

 ソレを(たて)に割った切り口(・・・)を、さらに(たて)に割って……このねじった手ぬぐいの意匠(マーク)をおせばいいのか?

 グルルルッ――うっわ!

 これじゃ茶器(ゆのみ)じゃなくて、暗器(あんき)撒き菱(まきびし)だ。

 やりなおす――スススッ♪

 クルンッ――おー、良いかんじに出来(でき)た。


 あとはコイツを、人数分焼(にんずうぶん)いていく。

「(基礎化学(つちのことわり)分析術(つちをえらぶ))」

 材料(つち)なら、ギルド屋舎(おくしゃ)土台(どだい)を掘りかえしたときのが、売るほどあまってる。

「(コイツにかくはん王(みずをまぜ)、〝絵で板(えでぃたぁ)〟へ(なが)しこんで初級造形(ととのえる))」

 木の(いた)鍋底(なべぞこ)において、できた(うつわ)作業量倍化(ならべていく)


「(試薬調合(けぶれ)超抽出(けぶれ))」

 おおかたは(すみ)(おな)じで良さそうだ――

キリキ()リバサ()ラウン()ハッタ()!」

 ごうぅわぁ――!!

 ばこん――すかさず超特大(でかい)フタをする。


 さてあとは、ほんとうにコレで(・・・)出来るのか――解析指南(かいせきしなん)

 中鍋(ちゅうなべ)山盛(やまも)りのソレ(・・)を見つめた。


   §


「あら、やさしい(かお)り」

「これも、ヒーノモトー(こく)のものかい?」

日本(にほん)のお(ちゃ)は、おちつくよねー」

「あら、なかなか良いお(あじ)ですわ♪」

「かすかな(しぶ)み? (にが)み? (からだ)には、すごく良さそうだけど――ずずずっ」


「ぐぬぬぬ……まさか薬草(やくそう)からこんな、玉露(ぎょくろ)のような茶葉(ちゃば)(つく)れるなんて――ぼほぅー♪」

 吐く(いき)狐火(きつねび)が混じる。

「ずずずずぅー。ふはぁ、やっぱりおまんじゅうには緑茶(りょくちゃ)よねぇー♪」


「どうぞ、司会殿(しかいどの)解説殿(かいせつどの)

 ことことり。

 素焼(すや)きの湯飲(ゆの)みを、饅頭(まんじゅう)(はこ)に添えてやった。

 これは(そで)(した)ではない。


 ドルゴロ--ドドン!

『天』『天』『天』『天』『烏』『天』

 よーし、これで三勝三敗(ひきわけ)だ!


一週間(いっしゅうかん)にわたり繰り(ひろ)げられたカブキーフェスタも、本日(ほんじつ)最終日(さいしゅうび)! 第一回(だいいっかい)おにぎり(はい)栄冠(えいかん)を勝ち取ったのはっ――――なんとテェーングさまとカラテェー(くん)のお二人(ふたり)となりましたぁ! みなさま盛大な拍手を――」

 司会(ギデなんとか)により唐突(とうとつ)終了(しゅうりょう)する、催し物(イベント)


「えーなお、料理対決(りょうりたいけつ)配当(はいとう)(かん)するご案内(あんない)は、後日新(ごじつしん)ギルド会館(かいかん)啓示(けいじ)されますので、それまで半券(はんけん)紛失(ふんしつ)なさらないよう、お(ねが)いいたしま――」

 リオレイニアの注意(ちゅうい)に、会場中(かいじょうじゅう)がゴソゴソと(ふところ)半券(はんけん)をしまい込む。


「クツクツクツクツ――――では、また日を(あらた)めてお(はなし)をしましょぉう天狗(テェーング)さまぁ?」

 月影(つきかげ)のにたぁりとした微笑(ほほえみ)みも、あまんじて受ける。

 勝てなかったが、負けたわけではない。

 五百乃大角(いおのはら)にうまいこと、取りなしてもらう(あし)がかりにはなる――といいなぁ。


 ふう――それでだ。

 舞台上(ぶたいじょう)、かたづけが(はじ)まる(なか)

 ただひとり、呆然(ぼうぜん)とたたずむ青年(ニゲル)姿(すがた)が、目にはいった。


 その手には半券(はんけん)

 ふぉふぉん♪

『リカルル・リ・コントゥル様との一日デート券

 有効期限/カブキーフェスタ開催中のみ有効

 【※恋の相談も下記の場所にて、別途受け付けます(但しニゲルに限る)

 恋愛受付相談所:お気軽に超女神像転移陣の間まで、お越しください】』


「――ま、まずったわね。食べるのと(あそ)ぶのに忙しくて、すっっっっかり(わす)れてたわっ!――」

 おう(いさぎよ)いな、ニゲル専用恋愛(せんようれんあい)相談所所長そうだんじょしょちょう


「こわぁ――ん♪」

 かたづけられていく司会席(しかいせき)から、(あな)()いたしゃもじのような魔法具(まほうぐ)をうばう姫さま(リカルル)


会場(かいじょう)へお越しの(みな)さま、リカルル・リ・コントゥルです。いまココに第一回(だいいっかい)カブキーフェスタの大成功(だいせいこう)ならびに終了(しゅうりょう)を、宣言(せんげん)いたしますわぁ――――♪」

 (ひざ)から(くず)れ落ちる、勇者(ゆうしゃ)ニゲル。

 それを彼女(ひめさん)が見たのかはわからないが、拡声(おおきく)された(こえ)はまだつづく。


「なお、第二回(だいにかい)カブキーフェスタの開催(かいさい)も、たった(いま)決定(けってい)しましたわぁ♪ 開催時期(かいさいじき)から(なに)から(なに)まで一切未定(いっさいみてい)だけれど……くわしいことわぁー、後日お知らせいたします――――――――猪蟹屋のリオレイニアさんが――ブッツッ♪」

 脱兎(だっと)のごとく逃げる姫さん(リカルル)を、追う元侍女長(リオレイニア)


 そして青年(せいねん)は、(しず)かに立ちあがる。

 勇者(ゆうしゃ)になりそこねた、猪蟹屋(うちのみせ)二号店店長(にごうてんてんちょう)

 その(こぶし)がなぜか力強(ちからづよ)く、突き上げられた。


「(ニゲルの(やつ)は、どうしたんだ?)」

 ふぉふぉん♪

『有効期限/カブキーフェスタ開催中のみ有効』

 (あれ)の持つ半券(はんけん)とおなじ文面(ぶんめん)一部(いちぶ)大写(おおうつ)しになった。


半券(はんけん)の、この部分(ぶぶん)をよく見て」

 リカルルとの一日(いちにち)デート(けん)に、期日指定(きじつしてい)はない。


「(はぁ!? なんだその頓知(とんち)みてな(はなし)わぁ。それに(つぎ)はいつになるか、まるで決まってねぇだろぅが!)」

 青年(せいねん)(こぶし)空高(てんたか)く、(かか)げつづける――いつまでもいつまでも。


 ふぉふぉん♪

『【※恋の相談も下記の場所にて、別途受け付けます(但しニゲルに限る)

 恋愛受付相談所:お気軽に超女神像転移陣の間まで、お越しください】』

 また半券(はんけん)文面(ぶんめん)が、大写(おおうつ)しになり――


 カシャ――『(Θ_<(ばちーん♪))』

 〝浮かぶ玉(なんたら)〟があらわれたと(おも)ったら、また片目(かため)を閉じやがった。

 どうやらアレは、(むし)(はら)ってるわけじゃねぇ。


 ひょっとしておれのうしろに居る(だれ)かを、射貫こう(・・・・)とでも言うのか――

 ばっ――背後(うしろ)を振りかえるが。


 舞台上(ぶたい)にのこってるのは、天狗(わし)浮かぶ玉(いおのはら)青年(ニゲル)だけになった。

 裏烏天狗(ジンライ)はかたづけの手伝(てつだ)いをしているし――

 おにぎりは女将(トゥナ)さんにくっ付いて、どっか行っちまった。


 ヴォヴォォォォ――――ン。

 片目(かため)を閉じた人の形(いおのはら)が、姿(すがた)をあらわしていく。


「また、恋愛相談所(れんあいそうだんじょ)をやらないと……ダメかしらねぇー」

 その(した)(ぱら)が、のっぴきならないほどに(ふく)れているのは。

 (まつ)りのあいだ(じゅう)(あさ)から夜中(ばん)までずーっと(めし)を食いつづけていたからに(ほか)ならない。


 どんどん(とお)くなる片付(かたづ)けの(おと)

 フェスタ最終日(さいしゅうび)(しず)かに(まく)を、閉じていくのであった。

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