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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
2:カブキーフェスタへの道

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234/744

234:天狗(シガミー)という名の神さま、極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型/試作個体名おにぎり一号

「ぐっ――――!?」

 ボッファッ、バッサァァァァッ――――(かく)(みの)をひろげて、(かぜ)をうける!

 隠れ蓑(これ)がなかったら天井(てんじょう)がわりの(はしら)に、ぶつかってたところだ。


 ボフボフッ――!

 (はし)をつかんで(はた)(おうぎ)のように、(かく)(みの)をつかう。

 (かえ)を逃がさない(ぬの)(かたち)(たも)つのには、シシガニャンを着てたときの感覚(かんかく)(やく)に立った。

 シシガニャンの猫耳(ねこみみ)(うご)かして、聞きたい(おと)だけを(みみ)でとらえる要領(ようりょう)だ。


 ふぉん♪

『>姿勢制御関連スキルを26個収得しました。

  使用したSPは78です』

 なんだ、上手(うま)くできたと(おも)ったのは……スキルのおかげか。

 でもまあ、スススィー。

 ()をつかめるようになった。


 ボフボフッ――スゥゥゥー。

 いちど水平(すいへい)を取ったら、あとは左右(さゆう)(かたむ)きだけを気にしてりゃ良い。


「――錫杖(しゃくシょう)とシシガニャンのアいだの反発係数(はんぱつけいスう)が1ヲ越えていマす。おそラく、汎用強化服(はんようきょウかふく)耐久設計(たいキゅうせっけい)音響工学(おんきょうコうがく)……物性物理学(ぶっせいぶつりがク)使用(しヨう)されていマす――」

 なんだと、わからんけど似たようなのをスキルで見なかったか。


「――シガミーが収得(しゅうとく)したのは、その基礎(きそ)となるスキルだけでス――」

「よし、わからん。しかもさっき五百乃大角(いおのはら)が言ってた「1を越えたから気をつけろ」って言ってた(やつ)ともまた(べつ)なんだな?」

 わからん、わけわからん。


「――はい。イオノファラーが言及(げんきゅう)したのは頓知(とんち)規模(きぼ)のことで、使用(しよう)したのはそれらを総合的(そうごうてき)運用(うんよう)できる――」


『▼▼▼――ピピピッ♪』

 ブゥォォォォォォォン――――――――!?

 目のまえに木さじが!


 ボフボフッ――くるくるくるっ、スィィー。

 (かぜ)を起こして停止(とまる)。落ちてまた(かぜ)掴みなおす(・・・・・)

 この(たか)さなら、(じか)に喰らうことはない。

 けどこのままいけば、地に落ちて――

 第一戦(だいいっせん)から第五戦(だいごせん)までのようにされて、終わりかねない。

 悠長(ゆうちょう)(かんが)えてる余裕(よゆう)はなさそうだ。


「(で、ようするになんだって!?)」

「――シシガニャンの〝弾む音(・・・)〟は攻撃(こうゲき)()らすだケでなく、(タくわ)えタ運動(うンどう)エネルギー……受ケた攻撃(こウげき)上乗せ(・・・)して打チ(かエ)すこトにも利用(りヨう)されているよウで()――」


 ふぉん♪

『イオノ>そんなのは旧典や古典物理を持ちだすまでもなくて、

     リアルタイム物性物理学の基本なんですけど?』


 ――で、ようするになんだって?


 ふぉん♪

『>そこまで強力な音声変換モジュールを内包した、

  服内圧チェンバーを設計したのはなぜですか?』


 ふぉん♪

『イオノ>そんなの強い方が良いに決まってるでしょ?

     それにそれを実際に組み込んだのは、

     アンタたちでしょう?』


 ふぉん♪

『>そうでした。まさか自分たちが着るための強化服を、敵に回すことになるとは思い至りませんでしたので』

「(うむ、そうだな。神々(かみがみ)にも(はか)り知れないこともあるってこったな)」


 ふぉん♪

「イオノ>いま私ひとりのせいにしようとしたでしょう?

     おすし一回分ツケとくからね」

 ちっ、めざとい美の女神(めがみ)め。


「(じゃあ一号(アイツ)、どうすりゃいい?)」

 負けても良いが、それじゃ(まつ)りが締まらんことになる。


「――上空(じょうくウ)かラの攻撃(ごウげき)ハ、強化服(きょウかふく)頭部形状(とうブけいじょう)(かンが)えルと、とテも有効(ゆうコう)()――」

 ふぉん♪

『イオノ>そうわね。あたま重そうだもんね』

「(やり(かえ)されるとヤバイなら、そのまえに(たお)し切れってことか――」

 そんな一撃必殺(いちげきひっさつ)の――それでいて町全部(まちぜんぶ)壊さずにすむ(・・・・・・)都合(つごう)の良い剣技(けんぎ)根術(こんじゅつ)の持ち合わせはねぇ。


「――シガミー、あノ名の無い(わザ)()……――」

 だめだ。ありゃダメだ。

 〝(めつ)太刀(たち)〟だろう、ありゃダメだ。


 ギルドの土台(どだい)を掘った地の(そこ)で――

 シシガニャンを着て(はな)った――

 無我(むが)境地(きょうち)


 あんときは、とおくの岩肌(いわはだ)壊滅(かいめつ)させただけで済んだけど。

 いまはまわりにコレだけの(ひと)が居る、あれだけはダメだ。


 ふぉん♪

『イオノ>なにそれ、面白そうね♪』

 ……ルリーロがそばに居ないだろうな?

 言いふらすなよ――問答無用(もんどうむよう)で「やってみせて♪」って命令(めいれい)されるに決まってる。


 だめだ、あれだけは死んでもやらん。

「――でスが、あのトきはシシガニャンを着ていタから、あれダけの攻撃力(こうげキりょく)実現(じつゲん)できたのではナいですか()――」


 まあ生前(せいぜん)、あれをやったのは一度(いちど)きりで。

 うまくいったのも、一度(いちど)だけで。

 それで切ったのは、鳥一匹(とりいっぴき)だけ。


 いやでもLV(レベル)100の――

 スキルをやたらと取った――

 いまのおれが――あれを(はな)つわけにはいかない。

 なんせ、見わたす(かぎ)りまですっ飛んでくかも知れないのだ。


「(よし決めた――このままおちて、その威力(いりょく)(かたな)を振るう)」

 それで決まれば、おわり。


 おにぎりが切れて、振り出しに(もど)っちまったら――

 また迅雷(ジンライ)一緒(いっしょ)に、(ある)(かた)から(おし)えてやる。


 切れなくても、(うご)きを止められたら――

 猫語(ねこご)でいいから、「(まい)った」してもらう。


 おれが切られたら――

 迅雷(ジンライ)蘇生薬(エリクサー)使(つか)ってもらう。


 コレで良い――いくぞ!


 (かく)(みの)(あやつ)り――地へ向かう(おちていく)

 ――――ヒュォォォォォォォォォッ!!!


「カカカカッ――――二の太刀はない(・・・・・・・)! コレで決着(けっちゃく)をつけるっ!」

「やんみゃぁ、にゃんなみゃー!」

 迅雷(ジンライ)に聞かなくてもわかる。

 せまる黄緑色(きみどりいろ)(かお)

 すこし眉毛(まゆげ)が吊りあがってる――本気(ほんき)だ。


 ヴッ――ぱしん♪

 小太刀(こだち)を取りだす。

 白鞘(しろさや)(こしら)えから刀身(とうしん)まで、まるで(つき)(うつ)さない漆黒(しっこく)に染めた。

 緩急(かんきゅう)が付いた抜刀(ばっとう)は、つかみづらいはず。


 シュッッカァァァァァァァンッ――――――ガッキュギョギ――――ィィンッ!?


 (わる)くない(かたち)(はな)った居合(いあ)いの――――残心(のこり)

 ぽきゅぽきゅした……いつもの(おと)じゃない?


 意識(いしき)をシシガニャンの(はら)毛皮(けがわ)から――(もど)す。


 視界(しかい)(うつ)るのは、抜刀(ばっとう)したおにぎり。

 (こし)を折り曲げ(おお)きな(へっど)は地につき、到底(とうてい)抜刀直後(ばっとうちょくご)姿勢(しせい)には見えない。

 しかしこいつは、やり(かえ)すための得物(ぶき)を、攻撃(こうげき)してきた相手(あいて)から調達(ちょうたつ)するんだな。

 おにぎりが抜いているのは、さっきおれが突き込んだ錫杖(しこみガタナ)だ。

 女将(おかみ)さんの木さじも、かっさらってたし。


 それをコッチの攻撃(こうげき)にあわせて取りだし――あまつさえ(おな)居合(いあい)いで打ち(かえ)してきた。


 くるくるくるるるっ――すたん!

 さてどうする?

 舞台(ぶたい)(うえ)間合(まあ)いは6シガミーくらい(はな)れた。


 すぽん――ヴッ――ぱしん♪

 刃こぼれした小太刀(こだち)(なお)す。


 おれは、おにぎりの(まえ)で〝居合(いあ)い〟はしていないはず。

 おれが繰りだした(わざ)を、その場で真似(まね)してる?

 めのまえでぽきゅぽん♪ と起き上がる魔物(まもの)みたいな(やつ)が――まるで山中(さんちゅう)出会(であ)った狐狸妖怪(こりようかい)

 いや、生前に(ぜんせで)出会(であ)うことのなかった――修験者(テング)のように(おも)えてきた。


 じりじりじりじり。

 ぽきゅぷりん、ぽきゅぷりぃん♪


 決着(けっちゃく)は付かなかった!

 もう一度(いちど)、切りつけるしかない。

 ぽきゅぷりん、ぽきゅぷりぃん♪

 やめろ、(こし)を落として(しり)を振るな。


 うわははははははははははっはっ――――――――♪

 ウケる観客(かんきゃく)。なにやってんニャー、カラテェーコォン!

 うるせえ。


 こっちは――切結(きりむす)んで刃こぼれした小太刀(かたな)(なお)したけど)。

 あっちは――仕込み刀(しゃくじょう)をコトリの尾羽(おばね)みたく(うご)かしてんな!

 いらつく!


 一号(むこう)仕込(しこ)(がたな)を持ってるってのは、うまくねぇぞ。

 (なが)さで負ける。


 大道芸(みせもん)にしかならなかった、手習(てなら)いの(けん)

 それを見るそばからまねして合わせてきたのは、目のまえの夏毛(なつげ)魔物(まもの)みたいな(やつ)だ。

 おれが修行(ぎょう)のさなか鳥を切った(・・・・・)のは――一度(いちど)きり。

 その一度(いちど)一号(こいつ)は、つぎの一撃(いちげき)引き当てる(・・・・・)――(こわ)さがあった。


 おにぎりの剣をとめないと、おれのうしろにいる――「ニャー、コォン」うるさいやつらが、切られないとも(かぎ)らない。


 すぽん――じゃりぃん――こっちも錫杖(しゃくじょう)を取りだした。


 ぽっきゅ――――!

 その(すき)をつくように、黄緑色(きみどりいろ)が踏み込んできた!


 ストォォン――――!

 ぶぉん――くるくるるるっ――錫杖(しゃくじょうの)(さき)をつかむと――ぎゃりりりぃぃぃぃぃん♪

 鉄輪(てつわ)が鳴った。


 ぽっきゅっ――ザッシュ!

 (かた)が触れあわんばかりの、間合(まあ)い。

 もう、こいつは魔物(まもの)じゃねぇ――――いっぱしの武人(ぶじん)だ。


 (わざ)の名は無ぇ――さしずめ〝(めつ)〟の太刀(たち)


「――シガみー、バイタルにギルド倒壊時(とうかいジ)(おナ)波形(はけイ)()――」

 しゅっかぁ――――ん♪

 しずかな剣筋(けんすじ)


 ――ぁ――――ん♪

 ――ぁ――――ん♪

 固唾(かたず)を呑んで、(しず)まりかえる会場(かいじょう)

 残響(ざんきょう)が――ふたつ?


 黄緑色(きみどりいろ)が振り抜いた錫杖(しこみガタナ)を、見よう見まねで錫杖(さや)(もど)していく。

 その境地(きょうち)二人分(・・・)――――――――かちかちん!


 ガッギャンッ――――錫杖(しゃくじょう)が鳴った!

 なかの(かたな)が折れたような感触(かんしょく)


 剣速(けんそく)達人(たつじん)(いき)をとうに超え、前世(ぜんせ)のおれより速えぇ。

 そんな黄緑色(おにぎり)が――ぷぱぁぁぁんっ♪

 熟れすぎた木の実のように――はじけた。


   §


 ふぉん♪

『>極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型

  個体名おにぎり一号。

  機能を完全に停止しました』


「カカッ――!?」 

 いくら余裕(よゆう)がなかったとは言え、やっちまった。


 最後(さいご)一撃(いちげき)はおれの滅の太刀(むがのきょうち)を、黄緑色(おにぎり)がきっちりと真似(まね)してきた。

 それを(おも)い出せはするが、(はな)った瞬間(しゅんかん)はなにも見えてないから――

 おれに(かたな)を止める方法(ほうほう)はなかった。


 (しず)まりかえる会場(かいじょう)


 カシャ――『(Θ_Θ)』

 ヴォォォン――♪

 (まる)(たま)がどこからか飛んできた。


「――だ、だいじょうぶよ。ちょっと(やぶ)けたくらい、三秒(さんびょう)ルール三秒(さんびょう)ルール。またおにぎり(SDK)を組み立ててあげるか()――」

 組み立てるってのは、いろいろなことができる迅雷(ジンライ)のための道具(どうぐ)みたいなSDK(やつ)のことで。


「――オ言葉(ことバ)でスがイオノファラー。アーティファクトでもアるSDK(エスディーケー)()み立テ(なオ)せてモ、〝おにぎり一号(いチごう)〟とイう個性(こセい)二度(にド)復元(ふくゲん)できまセ()――」

 復元(ふくげん)できない?

 個性(こせい)ってのは(なん)だ?


「――(ひト)とナりや(たマしい)そのモのと、オ(かンが)えくだサ()――」

 (ある)(かた)からやり(なお)しても、あの〝おにぎり〟は二度(にど)(かえ)ってこないってのか!?

 それは、わるいことをした。

 まだうまれて三週間(さんしゅうかん)しか経っていないのに。


 ――すっころりぃーん♪

 しぼんだ気持(きも)ちで強化服(いちごう)をみてたら、足下(あしもと)になんか(ころ)がってきた――


「なーんだこれ? (たまご)か?」

 強化服一号(シシガニャン)修理(しゅうり)して、(ため)しにその(たまご)を食わせてみた。

 それは気の(まよ)いでしかなくて、なんでそんなことをしたのかはわからない。


「にゃみゃにゃぁーんご♪」

 どたばたどたばたと、せわしない(うご)き。

 この小躍(こおど)り――まちがいない!


 こいつは、おにぎりだ!

「ふぅへぇー、お、おどかすなよぉー……いま(なん)て鳴いたんだ?」


「――〝セーブデータを読み込みました〟で()――」

 どういう意味(いみ)だ?


「――〝反魂(はンごん)(じゅツ)使(ツか)いまシた〟デ()――」

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