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滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~  作者: スサノワ
2:カブキーフェスタへの道

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231/744

231:天狗(シガミー)という名の神さま、酒処シガミー

「なんだよ、シガミーはこんなうまい(さけ)でも足りないのか?」

 がつがつ……ぐびり。

 揚げ(いも)をかじり、()いでやったみりんで(なが)しこむ。

 そんな、(おに)の良い飲みっぷりを見てたら……。


 がつがつ……もぐもぐ……ぐびり。

 あれ? (から)みがなくても――

「――ソコソコ飲めるような?」

 なんか、揚げ(いも)を食ったあとに飲むと――ぐびり♪

 けっこう、いける気がしないでもない。


 ヴ――チョキチョキッ。

 それでも(から)みの足し(・・)になればと、黒鋏(はさみ)をとりだした。


「じゃあ、手持(ても)ちの薬草(やくそう)調味料(ちょうみりょう)で……」

 (いも)(はこ)のフタの(うら)にヴ――ぽとぽとぽと。

 山盛(やまも)りの、木の葉や木の実を(きざ)んでいく。


 生薬(しょうやく)由来(ゆらい)使(つか)(かた)なんかは、僧侶(ぼうず)としての(たしな)みだ。

 もっとも、ガムランに生えてる草木(くさき)には通用(つうよう)しない。


 だがスキルという叡知(えいち)は――ソレを(おぎな)ってあまりある。

 (あじ)想像(そうぞう)して、(にが)薬草(やくそう)(から)い木の葉なんかを混ぜていく。

 小皿(こざら)にできた薬味(やくみ)をつまんで、猪口(ちょく)に入れてみた。


「んー、どうだろ――?」

 では一口(ひとくち)

「なにそれ、コッチにもくれ!」

 まずはおれが、(あじ)を見てからにして欲しかったが。

 薬味(やくみ)をつまんで、オルコの茶器(うつわ)にもぱらぱら――

 ぐびり――ごくりっ。

 ぐびり――ごくりっ。


「「なんだこりゃ――――すっげーうめぇー♪」」


 ドッズズズズゥゥゥゥンッ――――おっとあぶない!

 あまりのうまさに、跳ねあがるおれたち。

 (おに)酒瓶(さかびん)を――

 おれが長机(てーぶる)をつかんで――

 (さけ)(せき)死守(ししゅ)した。


「「あぶないなっ、うまい(さけ)がこぼれちまうじゃんか!」」

 地響(じひび)きの(もと)へ、文句(もんく)を言ったら――

 そこにいたのは、巨大(きょだい)鉄塊(てっかい)みたいなハンマーを下ろした、小柄(こがら)な毛むくじゃら。


「いま、うまい(さけ)っつったか!?」

 あー、みつかった。


   §


「「「「「「「(いも)にこれほど合う(さけ)は、生まれて(はじ)めてだっ!」」」」」」」

 工房長(こうぼうちょう)と、一字一句(いちじいっく)おなじセリフ。

 (ノヴァド)が、一緒(いっしょ)に居た部下(ぶか)に呼びにいかせて、全員(ぜんいん)(あつ)まったのだ。

 工房長ノヴァドに負けず(おと)らず、みんなうまい(さけ)にめがない。


 工房(こうぼう)のみんなも、いろんな建物(たてもの)仕上(しあげ)げにかり出されていた。

 連日連夜(れんじつれんや)五百乃大角(いおのはら)やぼくたちの(おも)いつきに、つきあわされた(かれ)らをねぎらわないわけにはいかない。

 今回(こんかい)のお(まつ)りで、いちばんの功労者(こうろうしゃ)はノヴァド(ひき)いる鍛冶工房(かじこうぼう)じゃなかろうか。


「いやぁ、功労者(こうろうしゃ)ってんなら、アイツだろう」

「そうだぜ、アイツ以外(いがい)にない」

 アイツって(だれ)だろ?

 工房一同(こうぼういちどう)じゃないなら、(だれ)だ?


「アイツって(だれ)よ? シガミーじゃないの?」

 良くぞ聞いてくれた、(オルコ)さん。

 シガミー(おれ)(すさ)まじい(かず)建物(たてもの)設備(せつび)を建てた。

 烏天狗(からすてんぐ)天狗(てんぐ)よりも、(おお)いだろう。


「ガムランの(まち)からすりゃ、シガミーだがなー」

「そーそー。(まつ)りの最大(さいだい)功労者(こうろうしゃ)となると、また(べつ)だ」

 (だれ)だ? 気になる、(おし)えろ。


「おりゃ? (いも)に合う(あけ)がなくなっちまったぜ――ガハハッ♪」

 酒瓶(さかびん)をひっくりかえして、(なか)をのぞき込む工房長(ノヴァド)

「「「「「「「ガハハハッ――♪」」」」」」」

 陽気(ようき)にわらう、むつくけき(おっさん)たち。

 その(くび)一斉(いっせい)に、コッチを向いた。


「あー、はいはい。みりんなら(さけ)よかよっぽど出やすいから、まだまだあるよ」

 料理用(りょうりよう)に持ち(ある)いてる調味料(ちょうみりょう)微々(びび)たるものだが――

 迅雷(ジンライ)に溜め込んである分量(ぶん)は、相当(そうとう)ある。


「(おーぅい迅雷(ジンライ)~、(さけ)――はねぇから、みりん出してくれやぁ!)」

 ちょっと取ってくると言って、(せき)を立つ――ひっくっ。


「――シガミー、前世(ぜンせ)体躯(たいク)年齢(ねんれイ)とハ、(ちガ)うコとを自覚(じかク)してくダさい――」

 たしかに、なんでこんなに酔っ(ぱら)ってんだと(おも)ったら、そういうことかぁ。


 ふぉん♪

『>〝状態異常無効〟では、ほろ酔い状態を解消できない様です。

 >酒成分を分解消化するためのスキルを、習得しますか?』

 よせやい、そんなことをしたら、酒に酔うことも出来(でき)なくなっちまうってこったろう?

 だめだだめだ、絶対(ぜったい)そんなスキルを取るなよ?


 (ひか)室兼揚(しつけんあ)芋屋(いもや)は、すぐソコだ、

 みりん大樽(おおだる)をふたつ――迅雷(ジンライ)収納魔法(ストレージ)から勝手(かって)に取りだす。

「ついでに、揚げ(いも)補充(ほじゅう)して、減らすのに貢献(こうけん)してやるかな?」

 ぐぅへふゅひ♪

「それはそれは、お気遣(きづか)いありがとうございます――シガミー?」


   §


 ぎゃぁーっはははははははははははっ――――――――♪

 くそう、わらわれた。

 リオレイニアに小脇(こわき)(かか)えられたおれは、大樽(おおだる)ひとつを(かか)えている。


「とっつかまってやがるぜ!」

 そういうなよ工房長(ノヴァド)相手(あいて)白い悪魔(リオレイニア)だぜ。

 人数分用意(にんずうぶんようい)した椅子(いす)が、あちこち(ころ)がってて、どこかからもってきたゴザみたいなのに、みんな(すわ)り込んでた。


「まったく、カブキーフェスタの功労者(こうろうしゃ)である、皆様(みなさま)をねぎらわないわけにもいきませんので――」

 彼女(リオ)靴先(くつさき)でかるく蹴ると、ひっくり(かえ)っていた長机(テーブル)が――ゴザの真ん中に、くるる、すとん。

 そのうえに、(なら)べられたのは――


 おれが持ってるみりんとは(べつ)大樽(おおだる)と、(やま)のような揚げ(いも)の折り詰め。

 そして、どんぶりにやまもりの、うす芥子色(からしいろ)もドカリと置かれる。

「コイツを付けて、くっとくれっ♪」

 おかみさんが(もど)ってきた。


「ああー、あれはうまいやつだ。あれで、もう一杯(いっぱい)きゅーっとみりんを……」

子供(こども)にお(さけ)は、飲ませられません」


「あ、そういや、シガミーは成人前(せいじんまえ)だったっけ?」

 赤鬼(あかおに)まで、そんなことを言い出した。

「かたいことを言うなってんだ。こちとら故郷(くに)じゃ毎晩飲(まいばんの)んでたんだぜ」


「へーっ、(おお)らかなもんだぁねぇー♪」

 どすん!

 女将(おかみ)さんが持ってきた巨大(きょだい)(たる)には、また(べつ)(さけ)が詰まってる。

 じたばたじたばた――「なぁーっ、おれだって功労者(こうろうしゃ)だろーが!」


「じゃぁアタシも――とっておきを出しちゃおうかな」

 いつのまにか、(ひめ)さんまで混じってる。

 「レーニア……リオレイニア、アレだしてくれないかしら? お父様(とうさま)が、いつだか王様(おうさま)から(いただ)いた――」

 お、悪魔(リオ)仕事(しごと)(めい)じられたぞ?

 じゃあ、(もど)ってくるまでの(あいだ)(おも)いっきり飲み食いしてやる!


 ふぉん♪

『ヒント>悪魔/仏道に立ち塞がる惡神。非道や残酷なたとえ』


「ではタタ、あとをお(ねが)いいたしますね」

 そぉーれと、(ほう)り投げられるおれ。

「はぁーい、よいしょっ♪ 侍女長(じじょちょう)さま、行ってらっしゃいませ」

 がしり、まるで赤子(あかご)病人(びょうにん)のように(ひざ)まで(かか)えられるおれ。

 いまの侍女長とやらは、リオじゃねぇーだろ。


 じたばたしてたら――

「パパパパッパパパパッパパパパパァァ――――♪」

 なんだこの御囃子(おはやし)はっ!?


 なんかきこえなぁい?

 んぁあ? 気のせいだろ?

 ガヤガヤガヤ。

 舞台(ぶたい)(ほう)からきこえる。


 ぼぉぉぉぉぉぉぉっ――――ごぉぉうわぁっ♪

 舞台上空(ほとんどまうえ)突如(とつぜん)あらわれたのは、巨大(きょだい)画面(がめん)だった。


「アナタの世界(せかい)のよりどころっ、美の女神(めがみ)ちゃんがぁ――――おしらせしますぅー♪」

 でた、五百乃大角(いおのはら)が。

 その巨大(きょだい)画面(かお)(おそ)れおののく――阿鼻叫喚(あびきょうかん)半分(はんぶん)になった。

 (そと)からの(きゃく)たちですらお祭り(フェスタ)(ちゅう)(こし)を抜かしつづけ、一度見(いちどみ)たものにはそれほど(おどろ)かなくなってきている。


 ジタバタするのを(あきら)めて、どでかい画面(つら)をながめる。

 一体(いったい)なんだってんだ?


「カブキーフェスタのマスコット、〝おにぎりちゃん〟。みんなしってるぅーよぉーねぇー♪ その廉価版(れんかばん)、えーっと――――」

 黄緑色(おにぎり)大写(おおうつ)しに。なんか、(わら)える。


「お、でたぞ♪」

 ノヴァドがバチバチバチバチと、手拍(てばた)きした。

 どうした?

 おにぎりは、やっぱり魔物(まもの)みたいに見えるから、(おお)きな(おと)を立てて、追っ(ぱら)ってるつもりなのか?


「「「「「「「いよぉー、立役者(たてやくしゃ)ぁ!」「まってましたぁー!」」」」」」」

 わーバチバチバチバチ、バチバチバチバチ♪

 なにこの大歓声(だいかんせい)

 立役者(たてやくしゃ)ぁだぁー!?

 さっき言ってた功労者(こうろうしゃ)って――おにぎりなのか!?


「フェスタの間中(あいだじゅう)、ずーっと仕事(しごと)しつづけて、観光客(かんこうきゃく)(ちい)せぇ子の(あたま)撫でかえす芸(・・・・・・)一度(いちど)もサボらずにやり遂げた――ありゃぁ、(おとこ)(なか)(おとこ)だぜっ!」

 男泣(おとこな)きのノヴァド。おっさんどもの(さかづき)が止まる。


「(そういうことか。おれとカラテェーとテェーングの三人分(さんにんぶん)全部(ぜんぶ)について(まわ)ってた、黄緑色(アイツ)がどうしたって(はたら)きづめに見える)」

 くそう、本当(ほんとう)はおれこそが立役者(やてやくしゃ)なんだが――

 まぁ、いいや。ガキ(ども)にウケてたのは、本当(ほんとう)にお手柄(てがら)だったしな。


「それでねーぇ、こっちの(しろ)いシシガニャン。使(つか)い捨ての子のぉお名前(なまえ)がぁ、決・ま・り・ましたー♪」

 名前(なまえ)だぁ? 〝使い捨て(・・・・)〟で良いだろうが。

 (やぶ)けるまで使(つか)って、駄目(だめ)になったら、(まる)めて(まき)にでも……こう言うとなんか、かわいそうだけど。

 (まき)名前(なまえ)を付けても――わびしいだけだと(おも)うがなあ。

 ずっと使(つか)(つづ)ける、おにぎりならいざ知らず。


 ヴォヴォ――ゥン♪

『おもち』

 画面(がめん)大写(おおうつ)しにされる、筆書(ふでがき)きの文字(もじ)

 (すみ)に『西計 三十六』なんて書いてある。

 えらい、達筆(たっぴつ)だな。


「あ、(ぼく)がさっき書かされた習字(しゅうじ)だ」

 ニゲルの(こえ)がする。

 どこかそのへんで、姫さん(リカルル)(しり)にでも敷かれてるんだろう。


「タタさんやぁー」

「なんでしょう、シガミーちゃん」


「そこの(ひか)(しつ)……揚げ芋屋(いもや)(おく)にちょい寝できる(とこ)があっから、つれてってくれやぁ」

「ふぅ、〝仮眠(かみん)できる場所(ばしょ)がありますので、つれていってくださいませんか?〟ですよ――さん、はい♪」

 やさしく(だき)きかかえられ、三歩(さんぽ)も揺られり――すやぁ♪

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