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199:龍脈の棟梁(シガミー)、ガムラン近郊の龍脈を修復する

ニゲル(にゃぁ)コレ使って(にゃみゃん)♪」

 コッチを向いたニゲル青年(せいねん)に、テーブルの(うえ)御神体(いおのはら)をひっつかんで放り投げだ。

 (かれ)がここへ来たのは、五百乃大角(こいつ)(さが)していたからで――

 (はなし)を切り出せずに居たのは、(くだん)のお相手(あいて)探し物(ソレ)(かた)に乗せていたからにほかならない。


「ぅわったったった!? (あぶ)ないっ!」

 必死(ひっし)につかむ、ニゲル青年(せいねん)

「なんてことするんだい!?」

 大丈夫(だいじょうぶ)。落としたくらいじゃ、キズひとつ付かないから。

 ニゲルの聖剣(せいけん)安物(やすもの))で切られたら、ダメかもだけど。


「――――シガミーに――――? ――一日(いちにち)――――――発行(はっこう)して――――。ギルド会館(かいかん)――、――――♪」

 悪鬼(あっき)(ごと)きささやきが、かすかに聞こえてくる。


 そそのかされた好青年(こうせいねん)が、(かお)をあげた。

 その(かお)は、なにかを決意(けつい)したような――それでいてなにかを観念(かんねん)したようにもみえる。


「シガミー、ごちそうさま。味噌汁(みそしる)とお刺身(さしみ)、とっても美味(おい)しかったよ♪」

 そういって御神体(ごしんたい)を手わたす、勇者(ゆうしゃ)ニゲル。

 (かれ)はチラリと、ご歓談中(かんだんちゅう)のご令嬢(れいじょう)一行様(いっこうさま)を見るやいなや――

 疾風(かぜ)のように走り去ってしまった。


「もぐもぐもぎゅ――――はぁ、おいひぃ♪」

 刺身(さしみ)小皿(こざら)を持ったまま、伯爵(はくしゃく)令嬢(れいじょう)リカルルが、こっちへ来た。

 お貴族(きぞく)さまとしては、非常(ひじょう)行儀(ぎょうぎ)(わる)いことこの(うえ)ない。

 けど、魔物境界線(まものきょうかいせん)位置(いち)するガムラン(ちょう)冒険者筆頭(ぼうけんしゃひっとう)としては、らしいと言えなくもない。

 リオレイニアが居たら、(かみなり)が落ちていただろうけど。


「んふふ、あいかわらず(あし)(はや)いですこと。さすがはガムランが(ほこ)(もと)スーパールーキー♪」

 スーパーァルゥーキィーってのは、麒麟児(きりんじ)のことだったか?

 ちなみに(げん)スーパーァルゥーキィーは、シガミーつまりおれ……ぼくだ。


 きゅほん♪

『>ニゲルさんは食堂の店員さんって聞いたけど、ひょっとして強いのかい?』

 文字板(いた)で聞いてみる。


「そうですわねぇ……もぐもぐ……もともと〝聖剣切りの閃光(ヴォルトカッター)〟の一員(いちいん)となるために央都(おうと)から来て(いただ)いたのですけれど、残念(ざんねん)ながら規定(きていの)入団試験(にゅうだんしけん)に落ちてしまいましたのよ」

 試験(しけん)に落ちた?


 きゅふぉん♪

『>試験って、模擬試合でもしたのかい?』


「ええ、わたくし(みずか)らお相手(あいて)しましたわ――初撃(しょげき)でコチラの甲冑(かっちゅう)破壊(はかい)したまでは良かったのですけれど……ぱくぱく、もぐもぐ♪」

 甲冑(かっちゅう)破壊(はかい)――そのときニゲルが使(つか)った武器(ぶき)(なに)かは分からないけど。

 あの、神速の打ち込みで、剣を防ぐはずの甲冑をなます切りにしたんだろう。

「――光景(こうけイ)が目ニ浮かびます()――」


「ただ、そのあとは半裸(はんら)(もの)ともせず打ち(かえ)した、わたくしの気迫(きはく)防戦一方(ぼうせんいっぽう)で、残念(ざんねん)ながら……ずぞぞぞぞぉ、ぷはぁ♪」

 いまだに近寄(ちかよ)られただけで、(みみ)まで真っ赤にしてた(かれ)のことだ。

 その様子(ようす)はみなくても、わかる。


「――()ークス♪ 十中八九(じゅっちゅうはっく)、その(とき)にハートまで(つらぬ)かれちゃったと、ふぅ。ニゲル(くん)(おとこ)の子なのねぇ……(わる)ぅい意味(いみ)()――」

「――光景(こウけい)ガ目に、浮かびまス()――」


   §


さぁ(にゃ)やるかぁー(にゃみゃー)♪」

「にゃ、にゃみゃー♪」


 まずはシシガニャンの(うで)が、すっぽり(はい)るくらいの(てつ)(くだ)用意(ようい)する。

 迅雷(ジンライ)綱製(こうせい)の錆びなくて(すこ)(かる)くて、迅雷(ジンライ)ならどんな(かたち)にも変えることが出来(でき)る――(なが)さは1シシガニャンの配管(はいかん)


ほい(にゃ)たのむね(にゃぁぁん)♪」

 ヴッ――ぽこん♪

 グワララララァン♪

 すこしやかましいけど、とっととやっちゃわないと――


「――()ムラン町近郊(ちょうきんこう)龍脈(りゅうみゃく)(なが)れが(とどこお)ればぁ、また変異種(バリアント)が出るかもよぉ()――」

 だそうだからな。


魔方陣はコレで(みゃみゃにゃぁ)大丈夫(みゃん)?」

 きゅふぉん♪

『>魔方陣の模様は、

  これで間違いないかい?』


「……ええと、はい。これで大丈夫ですわ、うふふ❤」

 白い給仕服(メイドさん)のひとりに、(あたま)を撫でられた。

 リオレイニアの元部下(もとぶか)のひとに、確認(かくにん)してもらう。

 彼女(かのじょ)聖剣切りの閃光(ヴォルトカッター)でこそないけど、リオの(おし)えをうけた(うで)の良い魔術師(まじゅつし)だ。

 生活(せいかつ)魔法全般(まほうぜんぱん)にも精通(せいつう)しているというので、手伝(てつだ)ってもらってる。


 よし、じゃあ――ぽいっと一号(いちごう)へ投げる。


「にゃ、にゃぁぁん♪」

 ぽきゅ――だだだっだ――――トトォン――――ガガゴゴォン♪

 受け取った配管(くだ)を、元狩(もとか)り場の源泉(げんせん)へ打ち込んでいく一号(シガミー(?))


 ヴュパパパパパパパパパパパ――ッ♪

 画面(がめん)表示(ひょうじ)される、ガムランの地図(ちず)

 それが(ちい)さくなって左端(ひだりはじ)城塞都市(じょうさいとし)上端(うえはじ)魔物境界線(まものきょうかいせん)があらわれた。

 境界線(きょうかいせん)の向こうにある山脈(さんみゃく)からつらなる無数(むすう)の、活力(マナ)(なが)れ。

 その一番太(いちばんふと)(なが)れが、(しん)ギルド屋舎(おくしゃ)の有る(まち)中央(ちゅうおう)をつらぬいている。


 この(なが)れの一部(いちぶ)は、超女神像(ちょうめがみぞう)金庫(きんこ)につながれ――ボクの部屋(へや)、レイダの(いえ)、リカルルの天守閣(ペントハウス)なんかにも配膳(はいぜん)……配線(はいせん)(?)されている。


「(このお湯は、どうするんだ?)」

 ふぉん♪

『イオノ>収納魔法具箱に貯める手はずになってるけど、

     大型の収納魔法具の運用には迅雷か一号のアーティファクトが、

     必要になるからスグには使えないでしょ。

     だからいまは真上に噴き出させておいて、構わないわ』

 これは画面(がめん)に出る迅雷(ジンライ)一行文字(ティッカー)と、おなじもの。

 ただ、五百乃大角(いおのはら)使(つか)うと、『イオノ』っていう名前(なまえ)があたまに付く。

 まあ、わかりやすくて良い。


「――(はか)らズもアーティファクト発掘(はっクつ)が、急務(きゅうム)になってしまいましタ()――」

 まったくだな。

 ルコルたちのアーティファクト仲介所(ちゅうかいじょ)が、スグにでも欲しい。

 どういう(こと)になるのか、まださっぱりわからないけど、そっちも手を付けていかないと。


「おおーい、きたよー♪ シガミーの(あたら)しいメニューが食べられるってのわぁ、ココかぁい?」

 なにこの豪快(ごうかい)(こえ)

「――食堂(しょくドう)女将(おかミ)、コッヘル婦人(ふジん)のようデ()――」


   §


 ヴュザザッ――――ヴゥン♪

「――()映像来(えいぞうき)た! (うつ)ったわぁ()――」

「お? (うつ)ったな」

(うツ)りましタね」

 画面(がめん)(なか)小窓(こまど)に、(うつ)し出されたのは――たぶん。

 ギルド会館一階(かいかんいっかい)掲示板横(けいじばんよこ)自動発券(じどうはっけん)魔法具(まほうぐ)にならぶ、人々(ひとびと)だ。


「――龍脈(・りゅうみゃく)整備(せいび)とおなじくらい、ニゲル(くん)確保(かくほ)急務(きゅうむ)です()――」

 女神像(めがみぞう)ほどではないけど、ギルド一階(いっかい)に作り付けた魔法具(まほうぐ)はいろんな(こと)出来(でき)る。


 こうして(とお)くから周囲(しゅうい)様子(ようす)確認(かくにん)したり、ボクが(ひたい)に押してやった手形(てがた)を見せると――『リカルル・リ・コントゥルさまとの一日(いちにち)デート(けん)』を発行(はっこう)したりも出来(でき)る。

 まあ、(いざな)うのは天国(てんごく)というよりは地獄(じごく)への(とびら)かも知れないけど。


 臨時(りんじ)味噌汁(みそしる)とお(つく)販売所(はんばいじょ)は、女将(おかみ)さんにまかせてきた。

 (はなし)を聞きつけた人々(ひとびと)がどんどん(なが)れて行ってたから、全部売切(ぜんぶうりき)るまでさほど時間(じかん)は掛からないと(おも)う。


 お(れい)がわりに、(つく)(かた)……レシピを(おし)える約束(やくそく)もした。

 もっとも、味噌(みそ)の代わりになる調味料(ちょうみりょう)がない場合(ばあい)は、味噌汁(みそしる)はそうそう簡単(かんたん)(つく)れないけど。

 場合(ばあい)によっては、味噌(みそ)(もと)になる(まめ)から(さが)さないといけなくなるかもなぁ。


 本当(ほんとう)(つぎ)から(つぎ)へと、やることが増えていく。


「――()ー、そこ(もど)って断脈(だんみゃく)してる……もぐもぐ()――」

 おまえ。さっきの一皿(ひとさら)で終わりにしとけって言っただろ。

 御神体(ほんたい)はまだ、味噌汁(みそしる)(つく)直売所(ちょくばいじょ)に居る。


「あー? こいつか?」

 ぼごっ――地中(ちちゅう)(あな)(なか)

 ヴュッ――ぼぉぉぉぅ。

 画面全体(がめんぜんたい)が、緑色(みどりいろ)でおおわれている。

 その緑色(いろ)が濃くなっている土肌(ところ)(つち)を盛り、(くだ)いたゴーブリン(いし)を混ぜ込んでいく。


 しばらく見ていると、緑色(みどりいろ)(ながれ)れが(つな)がって、青白(あおじろ)(ひか)りだした。


「これで、全部(ぜんぶ)かぁ?」

 はぁ、ひぃ。

 温泉(おんせん)が出た場所(ばしょ)のちかくから掘りすすんでは、背後(はいご)を埋め(もど)しつづけて……もう二時間(にじかん)くらいか。

 ようやく温泉(おんせん)(こわ)れた活力(マナ)(みだ)れを、元通(もとどお)りにつないで(ただ)すことが出来(でき)た。


 源泉(げんせん)噴出口(ふんしゅつこう)にぶつかっていた水路(すいろ)は、一号(いちごう)侍女の人(メイドさん)(まか)せてきたし。


「これで、ニゲルの(けん)を――」

「(これデ、ルコルたちの仲介所(ちゅうかイじょ)ノお世話(せワ)()――)」

「――()れで、当初予定(とうしょよてい)していた(しん)メニューの開発(かいはつ)()――」

 あれ? 思惑(おもわく)交錯(こうさく)している?


「はぁ? お(まえ)何言(なにい)ってんの!?」

「(シガミー、イオノファラー、優先順位(ゆうせんジゅんい)策定(さくテい)重大(じゅうダい)()――)」

「――()ンタたちはほんとにもう、いま何時(なんじ)だと(おも)ってんの? (いそ)がないとおやつ(どき)に間に合わないでしょ!?()――」

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