表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/743

194:龍脈の棟梁(シガミー)、聖剣ヴォルト(安物)

(いさ)ましい(もの)? ニゲルがぁ?」

 たしかに豹変(ひょうへん)した(いま)のニゲルなら、魔王(まおう)生物(せいぶつ))とだって(わた)りあえそうだけど。


「(リカルルの不可視の斬撃(ヴォルトカッター)匹敵(ひってき)する、危険度(きけんど)です。降参(こうさん)します)」

 おう、できるもんならやってくれ。


 きゅふぉん♪

『>【ニゲル。この文字がよめますか?

   参った。降参します

   ――シシガニャン二号】』

 画面(がめん)にも表示(ひょうじ)されている文字(もじ)は、ときどき読めない字が混ざってるけど、たいていは五百乃大角(いおのはら)たちが使(つか)文字(もじ)だ。


「ありゃ、日本語(にほんご)じゃん? (なつ)かしいなー。本当(ほんとう)に「(まい)った」してくれるんだね?」


漢に(にゃあ)二言はねぇ(みゃにゃーご)♪」

 二号(ぼく)諸手(もろて)をあげて、錫杖(ぶき)を落とす。


「ふう、よっこいせ――ふわぁー()っかれたぁ♪ もうやらない。こんな本気(ほんき)(たたか)いは、一生死(いっしょうし)ぬまでしない――この工房長(こうぼうちょう)が打ってくれた(けん)(ちか)うよ――安物(やすもの)だけどね♪」

 やっぱり、あんまり(いさ)ましくはない。

 まあ、ニゲルだしな。


「その字がでる木の(いた)って、ひょっとしてタブレットPC(ピーシー)? あ、いや、そんなわけないよね。迅雷(ジンライ)が動かしてる……のかな?」


「(判明(はんめい)している事柄(ことがら)から、(ニゲル)はルリーロやシガミーひいては天狗(テェーング)烏天狗(カラテェー)故郷(こきょう)である〝ヒーノモトー(こく)〟が自分(じぶん)の生まれた(くに)(おな)じだとは、認識(にんしき)していなかったようです)」

 それは女将(おかみ)やコントゥル母娘(おやこ)(まち)のみんなの様子(ようす)からも間違(まちが)いない。


 きゅふぉん♪

『>まさかニゲルが同じ国、

  いや同じ世界の生まれとは、

  思わなかったよ』


「まあ、そういうことも有るし、いろいろ納得(なっとく)したよ。くわしい(はなし)を聞きたい(ところ)だけど、そろそろボクは行くよ――」

 がやがやがや。


「シガミーの呪文(じゅもん)爆発(ばくはつ)(ひと)(あつ)まって来ちゃったから、一刻(いっこく)もはやくココを(はな)れたい」

 コッチもだった。いそいで一号(いちごう)をとっ(つか)まえなきゃ。


 折角(せっかく)さびが落ちた聖剣(せいけん)を――ギャギジャギギギィガキン!

 (さや)にむりやり押しこむ。内側(うちがわ)相当(そうとう)、錆びてるんだと(おも)う。


 ふぉん♪

『┤▒▼――――<シシガニャン一号>』

「(シガミー。一号(いちごウ)城壁(じょうへキ)からうごく気配(けはい)はありません)」

 なら、ちょっと時間(じかん)があるか。


こっち来て(にゃみゃご)!」

 青年(ニゲル)の手をとり裏路地(うらろじ)へ。


 きゅふぉん♪

『>【刀身は打ち合ってるウチに、さびが落ちたけど。

  さびた鞘に入れたら、また錆びちゃうでしょ?】』

 (けん)(つか)にも、すこしさびが浮いてるし。


 文字板を見せ(みじかく)くされた(うで)を、ぽきゅりと差しだす。

「ひょっとして、さびを落としてくれるの?」

 ぽきゅりと(うなづ)く。


「――じゃあ、お(ねが)いしようかな?」

 ひょいと手渡(てわた)された〝聖剣(せいけん)ヴォルト〟が――

 (すさ)まじい(いきお)いで――ドズズン!!!

 地に落ちた小剣(けん)に、押しつぶされる二号(ぼく)


「んっぎゅぅぅぅ!? どっせぇーい!」

 ニゲルの聖剣(さびたけん)は、金剛力(こんごうりき)使(つか)っても持ちあげるのがやっとだった。

 な、なるほど? あの踏みこみの異様(いよう)速さ(・・)は、この重さ(・・)か。


(なに)してるんだい? あたらしい(げい)?」

 ひょいと指先(ゆびさき)で、摘まむように持ち上げられる安物の(さびた)聖剣けん

 ニゲルが持てば、羽根(はね)のように(かる)い。


 きゅふぉん♪

『>そのまま、持っててよ

  すぐ綺麗に出来るから』


 ヴッヴヴヴヴヴヴァァッツッ――――すぽん♪

 聖剣(せいけん)仕舞(しま)った迅雷(ジンライ)――二号(ぼく)後頭部(うしろあたま)地面(じめん)に突き刺さる!


痛ってぇぇぇぇぇっにゃみゃぁぁぁごぉぉぉ――――――――!?」

 衝撃(しょうげき)は地に落ちた(たか)(ぶん)――せいぜい1シガミーだから屁でもないけど、(おも)みで反らされた(からだ)は――とうぜん(いた)い。


「(まったく、この聖剣(せいけん)ってなぁ一体(いったい)なんだっ!?)」

 コレを(つく)ったヤツは、ふざけてるのか!?


 ヴッ――――仕舞(しま)うときには時間(じかん)が掛かったけど、出すのは一瞬(いっしゅん)で出――!?

にゃごっ(にゃごっ)!?」


 寝そべり(てん)(あお)いでいた、(あたま)(うえ)

 あらわれた聖剣(せいけん)のさびは落ちていて、きらめいてい――――ぎゅぷりゅるん♪


 (からだ)回転(かいてん)させ、すんでの(ところ)で落ちてきた――――ごどんっ!

 ビキバキャッ――――聖剣(せいけん)(かわ)し、ごろごろドガッぷぎゅるりゅ♪

 (ころ)がりすすんで(かべ)にぶつかったけど、コッチは全然痛(ぜんぜんいた)くも(かゆ)くもない。

 強化服(シシガニャン)二号(にごう)はちゃんと、ボクの(からだ)(まも)ってくれている――はぁはぁはぁ。


「だ、だいじょうぶかい?」

 さっきまで二号(ぼく)を、なます切りにしようとしていたヤツの言う台詞(せりふ)ではない。

 差しだされた手をとる――ぽぎゅむ♪


「これ、ありがとう。研ぎに出すのもお(かね)が掛かるからさ、ずっとほったらかしてたんだぁ、ははは」

 (あたま)をかく勇者(ゆうしゃ)ニゲル。


 きゅふぉん♪

『>【喜んでくれて良かった。

  じゃ本当に急いでるから、もう行くね。

  一号を追っかけてる途中なんだ】」


 一号(いちごう)には(だれ)(はい)ってるの?

 なんて、ややこしいことを聞きそうな、子供(こども)鬼娘(おにむすめ)猫耳娘(ねこみみむすめ)もココに居なくて(たす)かった。


「そっか、(わる)いことしたね……そんな(いそ)いでるときに、(かさ)(かさ)(わる)いんだけどさ――」


   §


 さっき迅雷(ジンライ)のバチバチをされたばかりだ。

 ニゲルが、おびえるのも無理(むり)はない。


 きゅっぽぉん♪

 面白(おもしろ)(おと)

 鏡代(かがみがわ)わりにしようとしたのか、ニゲルが小剣(せいけん)をちょっとだけ抜いたけど――刀身(とうしん)はまだ光ってて(もの)(うつ)さない。

 シュカッ――小太刀(こだち)を抜いて、青年(じぶん)(かお)を見せてやる。

 

「これ、ちゃんと落ちるのかい?」

 〝(まい)った〟の証拠(しょうこ)に――肉球(にくきゅう)(ひたい)に押し当ててやったのだ。

 きゅふぉん♪

『>【大丈夫、風呂で洗えば消えるから】』


 シシガニャンの足形(あしがた)……手形(てがた)は、まるで六つ星紋(むつぼしもん)みたいで、なんだかかわいらしかった。


   §


「(なあ、身分(みぶん)ちがいは重々(じゅうじゅう)わかっちゃいるけど、ニゲルのことを応援(おうえん)してやりてぇなあ)」

 ぽっきゅ――――トトォォン――――♪

 こんどこそ、(さき)をいそぐ。


「(そうですね。おそらく、聖剣(せいけん)がらみで色々(いろいろ)あったと類推(るいすい)できますし)」

 おれにはこうして(かみ)(かっこわらい))が使(つか)わした迅雷(ジンライ)が居てくれたけど――ニゲルのまわりにそんなのが居た様子(ようす)はない。


「(うん、(ひま)出来(でき)たらニゲルと(はなし)をして、(なん)でもいいから(たす)けてやろう。フェスタ(ちゅう)にやることが又増(またふ)えちゃうけど、(ほか)ならぬニゲルのためだし、同郷(どうきょう)という、(おも)……面白(おもしろ)そうな事実(じじつ)を知った五百乃大角(いおのはら)がほっとくとは(おも)えない)」


 さあ、一号(いちごう)はどこだ!?

 ふぉん♪

『┤▒▼――――<シシガニャン一号>』

「(まだ、城壁(じょうへき)の突きあたりを、うろついています)」

 地図(ちず)をよく見れば、(ソコ)は、レイダとボクの狩り場でも有る、あの貝釣(かいつ)(あな)がある(あた)りだった。


 ぽっきゅ――――トトォォン――とっとっとぉん――――くるくるくるるん、すたり♪

 たかく飛んで屋根(やね)を蹴りすすむこと、わずか五歩(ごほ)


居たっ(みゃっ)!」

 (かべ)(まえ)

 (なに)かを(さが)して、ペタペタペタと(かべ)をまさぐっている一号(シシガニャン)を見て――

 気が抜けた。


「(ありゃ、(なに)してんだ?)」

「(わかりません)」

 どうやら、ぼくとレイダが(つく)った(かく)通路(つうろ)(さが)してるっぽい?

六つ星/日本の家紋のひとつ。大きな黒丸を小さな黒丸五つで囲んだかたち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ