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189:龍脈の棟梁(シガミー)、もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ

 積みあがる荷物(にもつ)のほとんどが、(さら)食材(しょくざい)備蓄(びちく)が詰めこまれた木箱(きばこ)だ。

 きゅふぉん♪

『>収納魔法はシガミーちゃんが、

  使えるんじゃなかった?』


おい一号(にゃー)どうしたの(みゃにゃ)?」

 こき使(つか)われすぎて、(こわ)れたか?

 室内(へや)様子(ようす)をうかがってた、シシガニャン一号(いちごう)(あたま)をなでた。


「にゃぁー」

 すかさず手が伸びてきて、二号(ぼく)(あたま)をなでかえす一号(シガミー(?))

「――正常(せいじょウ)作動(さドう)しているようでス――」


「カラテェーが、二匹(にひき)になったニャ?」

「ほんとだ、どっちがどっちかわからないコォン♪」

 それ、言いたいだけだろ。

 二号(ぼく)一号(おにぎり)は、(いろ)がちがう。


羽根芋(はねいも)みたいな、うす緑色(みどりいろ)がシガミーだよ」


「これで、(きゅう)シガミー(てい)荷物(にもつ)全部(ぜんぶ)ですか?」

 シガミー(ぼく)荷物(にもつ)山車(くるま)から出して、(ゆか)やテーブルに積みあげるリオ。


「そっれっがっさぁー、聞いてよぉ! この自律型(じりつがた)……じゃなくてシガミーがさぁー、(きゅう)収納魔法(しゅうのうまほう)使(つか)えなく、なっちゃったんだよねぇーん?」

 荷物(にもつ)といっしょにテーブルに置かれた御神体(いおのはら)が、そんなことを言いだした。


 一号(シガミー)背中(せなか)には、ギルド再建用(さいけんよう)(つく)った、とんでもなく沢山(たくさん)(もの)を入れられる収納魔法箱(しゅうのうまほうばこ)が付いてる。そうかんたんに一杯(いっぱい)になる(わけ)はない。


「そうですわ、ベッドは(あたら)しいのがあるので、置いてきましたけれど……あら、ルコラコル。大変(たいへん)(ひさ)しぶりですわね。大叔父様(おおおじさま)は、お元気(げんき)かしら?」

「コォン! リ、リリリリリリ、リカカッルウルコォォン!」

 〝リ〟が(おお)いよ?


「あいかわらずルコルは、リカルルさま相手(あいて)だと、タジタジニャン♪」

 たしかにタジタジだな。

 狐耳(きつねみみ)がヘタリと垂れちゃってるし、目もずっとは合わせない。

 けどなんだか、暴君(ぼうくん)(おそ)れおののいている様子(ようす)ではなくて――


「――照れているようにも見えまス――」

 (ひめ)さんは、見てくれだけは(・・・・・・・)完璧(かんぺき)だからなあ。

 ひょっとしたら、自分(じぶん)よりも(つよ)(おさ)なじみに(たい)する(あこがれ)れみたいな(もの)かもしれない。

 なんせ強さ(・・)にかけては、いまココに居るなかで二番目(・・・)だからな。


 一番目(いちばんめ)がボクで、二番目(にばんめ)が……まてよ、下手(へた)すると次点(つぎ)一号(おにぎり)にならないか?

 それどころか、本気(ほんき)本気(ほんき)でやりあったら、一号(アイツ)最強(さいきょう)なんて(こと)になるかもしれない。

「――ソの危険(きけン)はありマす――」

 あまり(つよ)く押したり(たた)いたり、しないように気をつけよう。


「(じゃあ、まずは――おい、五百乃大角(いおのはら))」

 テーブルの(うえ)御神体(めがみ)を、キッと(にら)みつけた。

 顔布(かおぬの)はしたままだから、(そと)からは見えない。


「なぁに? いま、一号(いちごう)食べさせてあげる(・・・・・・・・)メニューの絞りこみに、余念(よねん)がなっぁーいのですが。それが……なにか?」

 ひろげた冊子(パンフレット)に乗って、棍棒(こんぼう)魔法杖(つえ)のような(おお)きさの、()が書ける鉄筆(てっぴつ)をゴリゴリとすべらせている。


「(一号(いちごう)に食べさせる?)」

 たしかにさっき、レイダが〝一号(シガミー)上手に食べる(・・・・・・)〟とか言ってた。

 そりゃ中身(なか)シガミー(ぼく)だと(おも)われてるなら、(めし)くらい食わないといけないけど。


 きゅふぉん♪

『>シガミーちゃんは、

  そんなにたくさん食べて、

  お腹壊さないのかい?』

 聞いてやる。


「え? ウケケケッ、平気(へーき)よぅ♪ だって、背中(せなか)拡張用物理(かくちょうようぶつり)ストレージ……収納魔法箱(しゅうのうまほうばこ)背負(せお)っているんですものん♪」


 きゅふぉん♪

『>食べ残しを収納魔法箱に、押し込めてるってこと?

  なら、それが一杯でシシガニャン一号に、

  荷物が、入らなくなったんじゃないのかい?』


 ギルド1個分(・・・)大穴(おおあな)が埋まるほどの食べ(もの)は、(まち)にはない。

 なら、なんか〝悪いもん(・・・・)でも食わせた〟んじゃないのか?


「――はイ。一度(いちド)多種多様(たしゅたヨう)(モの)収納(しゅうノう)しタり、なニか特殊(とくシゅ)(もノ)ヲ取りこんだ場合(バあい)にハ……――」


 ぽこん♪

「――ジャムる……詰まる可能性(かのうせい)がぁー、ないと言い切る自信(じしん)わぁないわぁ(かっこ)キッパ()(かっことじ)――」

 画面(がめん)(なか)にも姿(すがた)を見せる、五百乃大角(いおのはら)分け身(マルチカーソル)

 ほれみろ、やっぱり詰まってんじゃねーか。

 一体(いったい)、なに食わせた?


「カラテェー、ソレ(・・)……とても便利(べんり)ですわね?」

 ルコルの(あたま)をなでたり(えり)(なお)してやったりと、いたいけな少年を威圧(・・)していた、見てくれだけは完璧(けんぺき)伯爵(はくしゃく)令嬢(れいじょう)が。

 めざとく、文字板(もじいた)に目をつけた。


修行中(みゃん)話が出来ないと(にゃみゃにゃぁ)不便だから(やにゃぁ)自分で作ったんだよ(みゃみゃなーご)

 きゅふぉん♪

『>話せなくて不便だから、

  自分で作ったんだよ』


「ね、やっぱり便利(べんり)でしょー? その(いた)♪」

「そうですねぇー。けど、ご自分(じぶん)(つく)ったというのは、本当(ほんとう)ですか?」

 片付(かたづ)けを手伝(てつだ)ってくれてた、子供(こども)給仕服(メイドさん)が寄ってきた。


「ミュふふん、きいて(おどろ)くミャ! このカラテェーは、ウチの専属(せんぞく)鍛冶職人(かじしょくにん)ニャン♪」

「「「鍛冶職人(かじしょくにん)?」」」


「あーあーあー、お(かあ)さ……名代(みょうだい)が、隣町(となりまち)職人(しょくにん)魔法杖(つえ)を見てもらったら、すこぶる調子(ちょうし)が良くなったと言ってましたわ、たしか」


「そ、そうだ、コォン。シガミーにも、この〝(はな)せる(いた)〟を(つく)ってあげたらどうコォォン?」

 リカルルに良い(ところ)を、見せたかったのかもしれない。


 きゅふぉん♪

『>作るのは、簡単だよ』


 けど気がかりが、ひとつ。

「(一号(おにぎり)は、ふだん(なに)(しゃべ)ってるんだ?)」

 いままで気にもしなかったけど、なにか余計(よけい)なことを(しゃべ)られでもしたら、一号(あれ)がシガミーじゃないって一発(いっぱつ)でバレちまうだろ。


「――ソレにつイては、心配(しんパい)アりまセ()――」

 ないのか?


 ぽこん♪

「――ないわよ。(つく)ってあげなさいよ。さっき念話(ねんわ)(おど)かしちゃった、お詫びにもなるでしょ()――」

 うっかり(おど)かしたのは、五百乃大角(おまえさま)だけどなー。

 まあ、そういうことなら。

 じゃ、(つく)ってくれ。


 ふぉん♪

『>電子インク木製ボードを一件作成しました

 >運搬中

 >1秒後に〝シシガニャン・へっど〟搬出口より、お届けします』


 ぽぽぉん♪

 あたまの後ろ(ジンライ)から天辺(うえ)(とお)って、画面(がめん)のむこうに『(はこ)』の絵があらわれた。

 (おお)きく(くち)を開けると――

「ぅんぐわぁにゃぁぁぁっ――――すっぽこん♪」

 シシガニャン二号(にごう)(くち)から、文字板(いた)か出た。


「ぎゃっ――(こわ)いっ!」

「ひゃわっ――お、おどかさないでくださいませ!」

「うっわっ――気持(きも)(わる)いですわぁー!」

 やっぱり、評判悪(ひょうばんわる)いぞ、この(くち)から出すヤツ。


何回見(なんかいみ)ても、その大口(おおぐち)面白(おもしろ)いミャっ♪」

「もう一回(いっかい)、もう一回(いっかい)やってコォン♪」

 不思議な物(アーティファクト)に慣れしたしんだ、喫茶店組(コイツら)には受けが良いな。

 ――ギルド(ちょう)(まえ)では、見せないようにしよう。


コレで良いかな(にゃみゃにゃー)?」

 さっそく取りだした平板(いた)を、一号(シガミー(?))(くび)に掛けてやった。


 (いた)(くび)に掛けられた黄緑色(いちごう)に、(とく)変化(へんか)はない。

 二号(にごう)(いた)に手をそえて、〝やり(かえ)した〟だけだ。


「シガミー! ほら、なんか言ってみてよ♪」

 子供(レイダ)が、(うなが)す。


「にゃみゃ? にゃみゃみゃやーにゃ♪」

 きゅふぉぽこん♪

『>レイダ! ほら、

  なんか言ってみてよ♪』


「そうじゃなくて、普通に(・・・)しゃべってってばっ!」


「にゃにゃ、みゃみゃやーにゃふっにゃ!」

 きゅふぉぽこん♪

『>そうじゃなくて、

  普通にしゃべってってばっ!』


「あら、おもしろい♪ レーニアっ……リオレイニア、シガミーがとても(たの)しげな(こと)になってますわよ!?」

「これは、たしかに面白(おもしろ)いですけれど……?」

「コォン……?」「ミャッ……♪」


 いっせいに二号(コッチ)を向かれても、(なん)(こた)えりゃ良いんだ迅雷(ジンライ)

「そぉれぇにぃわぁー、わたぁくぅしぃーさぁまぁがぁあー、お(こた)ぁえぇーいたしぃますぅー♪」

 テーブルからぼくの(かた)に、飛び乗ろうとする御神体(いおのはら)

 まて御前(おまえ)さま、自分(じぶん)(あし)(なが)さを(かんが)えてくれ!


「あっぶなっ――(御神体(カラダ)は、大事(だいじ)(あつか)ってよ)!?」

 すんでの(ところ)で、文字板(いた)で受けとめた。

 いくら頑丈(がんじょう)だって言っても、(まん)(いち)って(こと)もあるからな。


 ふぉん♪

『イオノ>だいじょぶだいじょぶ

    >けど、ありがと♪』

 返事(それ)が、画面(がめん)(すみ)にあらわれ――


「それわぁー、仕様(しよう)……じゃなかった、シガミーたちの故郷(こきょう)(つた)わるぅー修行(しゅぎょう)のお作法(さほう)でぇすぅー♪」

「「「「修行(しゅぎょう)の、お作法(さほう)?」」」」


 真似(まね)をする……修行(ぎょう)作法(さほう)

 作法(さほう)なんて言われても……手習(てなら)いの(けん)に、仏門(ぶつもん)(はい)ってからの(ぜん)座学(ざがく)くらいしかわからん。

 真似(まね)をして(まな)ぶ……(まな)真似(まね)


あー(にゃ)、〝門前の小僧(みゃみゃにゃ)習わぬ経を読む(にゃんやーみゃや)ってやつか(にゃみゃん)

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