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176:龍脈の棟梁(シガミー)、シシガニャンVSルリーロ

草原一帯(そうげんいったい)が、地獄(じごく)と化したわい」

 (もり)(つう)じる(みち)(よこ)

 看板隣(かんばんとなり)の木の(うえ)

 黒装束(くろしょうぞく)木陰(こかげ)にまぎらせ、

 高下駄(たかげた)をブラつかせる。


 天狗(わし)いくさ場(せんじょう)から引いた。


 草原(そうげん)様子(ようす)が、画面(めのまえ)(うつ)し出されている。

 画面(がめん)(うつ)し出された(もの)(おと)まで、ちゃんと聞こえるから――――


「このぉっ――――まとわり付くんじゃぁぁぁぁ、ありまっせんわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉおっぉぉおぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ――――――――ふっしゅるるるるるるるうっるぅぅぅぅぅっ!!!」


 ――――(こえ)えぇ!

 もうなんか、(くち)から(じか)狐火(きつねび)がでてるし。


五百乃大角(いおのはら)は、どこ行った?」

「(現在(げんざい)物理(ぶつり)ストレージにイオノファラーは、格納(かくのう)されていません。おそらく、オルコトリアと一緒(いっしょ)避難(ひなん)したと(おも)われます)」

 念話(ねんわ)は、どんどん使(つか)わせとく。


 この距離(きょり)でも、時々(ときどき)反応するから(・・・・・・)――――援護がわりだ(・・・・・・)


「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」

 覇気(はき)のない、(ねこ)(こえ)

 命の灯火(きつねび)が、吹き荒れる渦中(かちゅう)

 若草色(わかくさいろ)が、見え(かく)れしている。


 最初(さいしょ)こそ鬼娘(オルコ)にも、(もり)(さき)まで吹っ飛ばされてたけど。

「にゃんやにゃぁぁぁ~~♪」

 両手(りょうて)をあげて、果敢(かかん)にも火中(かちゅう)へ飛びこむ。


「(どうやら、自律型(じりつがた)シシガニャンは、シガミーが最初(さいしょ)に置いた場所(ばしょ)自軍陣地(じぐんじんち)として、防衛(ぼうえい)しているようです)」

 うん、猫耳頭のおにぎり野郎(なんたらシシガニャン)は、すっげー頑張(がんば)ってるな。


「うぉのれっ――(まも)(おに)めぇぇぇえぇぇえぇっ――――!」

 ぼっごぉうわっぼごごうわぼごごぼごごぉぉごぉぉん♪

 爆発(ばくはつ)する、化け(ぎつね)怨念(おんねん)

 ひとまず天狗(わし)(はな)った〝シシガニャン〟を、尖兵(てき)と見なしてくれて(たす)かった。


 ぽっきゅむぽきゅぽきゅぽぽきゅきゅきゅむむんっつ♪

 なかに(からだ)(はい)っていないにもかかわらず、〝(つよ)(ふく)〟は次第(しだい)狐火(こうげき)をかわし(はじ)めている。


 ふぉん♪

『ヒント>極所作業用汎用強化服:シシガニャン』

 そうだ、身を(まも)(ふく)だ。

 その(うご)きがまるで(ひと)が着ているように、上手(じょうず)になってきている。

「まだ(ある)(かた)しか、(おし)えてなかったんだが――やるもんだぜ、おい♪」


「(はい。強化学習(きょうかがくしゅう)のための、データセット……頓知(とんち)のための座学(ざがく)が無いにもかかわらず、入出力(にゅうしゅつりょく)レシオを(たか)(はも)っています)」

 わからん。

「(ルリーロが異常(いじょう)(つよ)さと(はや)さで(たた)くから、反発(はんぱつ)(つよ)くなりその分だけ、急速(きゅうそく)(かしこ)くなっていると(おも)われ)」

 わかった。

(なら)うより慣れろ、見て(ぬす)めってこったな」


「こぉんこぉぉぉん、こぉぉん、こぉぉっぉん、こぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん♪」

 とうとう(つえ)(うえ)に、(よつ)(あし)でふんばり――――吠えだした。


 伯爵夫人(ルリーロ)色々(いろいろ)アレだが、名君(めいくん)と呼ばれる領主(りょうしゅ)奥方(おくがた)だ。

 基本的(きほんてき)にはやさしく、下々(しもじも)(もの)にも分け(へだ)てがない。

 魔物(まもの)(たたか)うガムラン(ちょう)(まつりごと)にも、こうして参画(さんかく)しているし。

 なかなか出来(でき)御仁(ごじん)だ。


「さっき、天狗(てんぐ)(かたき)みたいなこと言ってたけど、どう(おも)う?」


 ふぉふぉん♪

『発行人:猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門』


「そう、そいつ。猿田太郎(さるたたろう)光藏坊命(こうぞうぼうのみこと)綱切彦左衛門(つなきりひこざえもん)たぁ、本当(ほんとう)名前(なまえ)かコレ?」

「(はい、幼少期(ようしょうき)につけられる仮名(かめい)を、そのままのこし(つづ)けた結果(けっか)、このような(なが)さになってしまったと(おも)われま――――!?)」


『▲――ぴぴぴっ♪』

 不意(ふい)赤文字(あかもじ)

「(正面(しょうめん)より、狐火来(きつねびき)ます)」

「(んをっ!?)」

 あわてて、(あし)(えだ)に掛けたまま、うしろに(たお)れる。


 チチュィィィン――――――――バキバキッ!

 切られた(えだ)が、(うえ)から落ちてきた――――「うぅわっ!?」

「(いまの、見えなかったぞ!?)」

 迅雷(ジンライ)念話(ねんわ)(たい)する牽制(けんせい)なのは、わかるが。


「(収束(しゅうそく)させた、細い(・・)狐火(きつねび)を――――尻尾(しっぽ)(あやつる)ることで、一種(いっしゅ)重ねがけ(コヒーレンス)(おこな)ったようです)」

 わからんけど、念話止(ねんわ)めろ。

「――了解(りょうかイ)しまシた。魔法(まホう)でハなく、()(モと)(こトわり)だけデもない、(あラ)たナ様式(ようシき)

編みだしたと(おモ)われマす――」

 (あら)たな……それは、リオレイニアの生活魔法(せいかつまほう)大化(おおば)けさせるアレ(・・)みたいなヤツか?


「――ハい、言イ得て(ミょう)でスが、まサにそのアレ(・・)でス――」

 (おに)金棒(かなぼう)じゃねーか。

 いま(オルコ)は、ココにはいねぇが。


「にゃにゃみゃみゃぁっ――――ポッキュムムンッ♪」

 いや、一匹居(いっぴきい)るか。

「ここぉぉん、ここぉん、ぉぉぉおおおおぉおおっこっつこつここっ――――――チチュィィィン!」

 鳴き(ごえ)が……(とり)かな?

「――命名(めイめい)すルなら、ウィルオウィスプ・レーザー……鬼火怪光線(おにびかイこうせん)でしョうか――」

 コッチに撃った、まるで姫さん(リカルル)聖剣切り(ぶったぎり)みたいな、不可視の(みえねえ)狐火(ぶったぎり)

 その、リオレイニアの様式(やりかた)なみに、研ぎ澄まされたソレも、シシガニャンには効かなかった。


「(おれが着てる隠れ蓑(これ)も、あれに耐えられるか?)」

「――はイ。でスが、至近距離(しきんキょり)長時間(ちょウじかん)照射(しょうシゃ)ニは耐熱性能(たいネつせいのう)ノ差で、耐えラれません――」

 おれたちは、場所(ばしょ)を変えて岩場側(いわばがわ)陣取(じんど)った。


「にゃにゃぉ――――――――ん♪」

 木々(きぎ)貫通(かんつう)しなぎ(たお)す、見えない狐火(きつねび)

 それを喰らっても、何処吹(どこふ)(かぜ)(まも)(がみ)

 しびれを切らした、妖狐(ルリーロ)が――

「ええええええぃぃいっ!」

 怒声(どせい)(はっ)し、巫女服(みこふく)(たもと)から、取り出したのは。


 それは朱色(しゅいろ)(たすき)

 しゅるっ、きゅきゅっ♪

 たすき掛けされた姿(すがた)が、大写(おおうつ)しになる。


「――シガミー……あノ細布(ほソぬの)画面越(がめンご)シで良いノで、上級鑑定(じょうきゅウかんてい)してくだサい――」

 ん?

 とおくを(ちかく)くにする画面(コレ)便利(べんり)だが、(うごき)きが(はや)妖怪狐(アイツ)真ん中で捉える(・・・・・・・)のは(むずか)しい。

 ぐ、ぐ、ぐぅぅん――――よし、捕らえたぞ♪


 ふぉぉん♪

『追憶の結び紐【消費アイテム】

 身につけた者の命を一度だけ保護する』

 そんな表示(ひょうじ)が出た。


 ――――無数(むすう)に。

「おい、あの(たすき)――だけじゃねぇ!?」


 ふぉふぉん♪

『神巫女シリーズ一式【白昼夢の紬】

 身につけた者が受けた攻撃を半減する』


「――ハい、アの(ヌの)のスべてが〝追憶の(ノットおブ)結び紐(リメンブらンス)〟で出来(デき)ていマすね。巫女装束(みこシょうぞく)(イた)っテは、効果(こウか)永久(エいきゅう)のようデす――」

 おいおい。

 なんだか、とんでもねぇのを持ち出してきたぞ?

 おれは(くび)にかかってる(ひも)を、取りだす。

 せいぜい60センチ――で一回分(ひとりぶん)として。


(ろく)(たたか)(かた)を知らないシシガニャン相手(あいて)に、大人(おとな)げねぇなあ」

 あの巫女装束(みこしょうぞく)は、殺しても死なねえわけだろ。

 こっちの服(シシガニャン)も……頑張(がんば)っちゃ居るが、


「ルリーロ・イナリィ・コントゥル――――(まい)りますコォォン♪」

 ゴッツン!

 巫女(みこ)さんの神速(しんそく)の踏み込みからの、正拳(せいけん)

 青白(あおじろ)(ひか)ってたりするから、たぶん本気(ほんき)全力(ぜんりょく)


 それを、どでかい(あたま)で受ける猫耳頭(シシガニャン)


 シシガニャンは、頑張(がんば)った。

 (こわ)れても、ちゃんと(なお)してやろう。

 伝説(でんせつ)職人(しょくにん)スキルで、こんどは負けねぇくらいに。


「にゃぁーみゃっ!」

 くるるん――ぽっきゅむぅぅん♪

 ありゃ?

 (だい)の字になった黄緑色(きみどりいろ)裏拳(うらこぶし)が――――妖怪(ようかい)キツネのこめかみに、ぶち当たる。


「くっふっふっふぅ、中々(なかなか)やりますわねぇ、(まも)(おに)ふぜいがぁぁ――――コォォォォン♪」

 ふたたびの神速(しんそく)

 シシガニャンの背後(はいご)に、あらわれた巫女さん(ルリーロ)

 地に伏せたと(おも)ったら、とんぼを切って、シシガニャン・へっどに(かかと)を振りおろした!

 ――――ガッゴンッ!

 神速(しんそく)下駄(げた)からの、強力(きょうりょく)一撃(いちげき)


「ふっぎゃぁぁっ――――!」

 ぐるんぐるぐるるん――――――――ぼっぎゅむぅん♪

 やっぱり、(だい)の字になった黄緑色(きみどりいろ)が――――(すさ)まじい(いきお)いで回転(かいてん)する。

 ぎゅぎゅりりっ――――どっごぉぉぉんっ♪


 回転力(かいてんりょく)は、地を駆ける推進力(すいしんりょく)となり――――

 妖怪巫女狐ルリーロ・イナリィ・コントゥルの、背中(せなか)強打(きょうだ)した。


 朱色の襷ノットオブリメンブランスがハラリと落ち(・・)巫女(ルリーロ)が地に(たお)れた。


「ありゃ? まさか、勝負(しょうぶ)がついちまったのか?」

 ぽきゅぽきゅぽきゅむん♪

 (たお)れたままの妖怪狐巫女(コントゥルめいだい)へ、ちかよる黄緑色(きみどりいろ)魔物(まもの)


 魔物(まもの)みたいなヤツは、(あた)りを見わたしてから、巫女(それ)腰掛(こしか)けた。

「にゃにゃにゃにゃぁー♪」

 覇気(はき)の無い勝ちどきをあげる、猫耳頭(ねこみみがしら)シシガニャン。


 10分くらい様子(ようす)を見たけど、巫女装束(みこしょうぞく)魔物装束(まものしょうぞく)も、どっちも微動(びどう)だにしなかった。

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