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174:龍脈の棟梁(シガミー)、おくづけ

「(五百乃大角(いおのはら)(とら)(まき)……攻略本(こうりゃくぼん)には、(なに)が書いてあるんだ?)」

 おれは宛鋳符悪党(アーティファクト)じゃねぇから、念話(ねんわ)をつかっても(さと)られねぇ。

 けど――


 ヴォヴォォン――――ギッラギラギラギラァリン♪

 (つえ)にぶら下がり、獲物(おれ)嘲笑(わら)う――白昼(はくちゅう)月影(つきかげ)

 その(まなこ)に、すべてを見透(みす)かされてる……ような気がしてくる。

 それでなくてもここまで(・・・・)近寄(ちかよ)られたら、念話(ねん)をひそめても(ぬす)み聞きされそうだし。


 ふふぉん♪

『シンシナティック・ニューロネイション (ちょう)攻略絵巻(こうりゃくえまき)読本(どくほん)

 二二二二年二月二日

 ふわふわおむれつすたじお

 (C)Fuwafuwa Omuretsu Studio 2222』


 五百乃大角(いおのはら)が、(くだん)攻略本(こうりゃくぼん)表示(ひょうじ)した。

 わからんが、『二』が(おお)い。


 そして、ギラギラギラギラララァン!

 表示(ひょうじ)の向こうに、透けて見える(ふた)つの眼光(つき)


「――――ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタッ♪」

 伯爵夫人(ルリーロ)は、普段(ふだん)五百乃大角(いおのはら)みたいな、のらりくらりとした(かん)じだが。

 ひとたび、〝ルードホルドの魔法杖(まほうつえ)〟を(かま)えると、姫さん(むすめ)みたいな戦闘狂(せんとうきょう)早変(はやが)わりだ。


「えーっとぉ、オルコトリアちゃんだっけぇ? 大人(おとな)しーくーしぃーてぇーてぇーねぇぇぇぇー?」

 おれから()れた双眸(そうぼう)から――ぼぉぉぉぉぅ。

 ――――ほそい人魂(ひとだま)が立ち(のぼ)った。


 あの月影(つきかげ)眼光(がんこう)は、聖剣切(ぶったぎ)れはしないが――(ひと)活力(マナ)(うば)人魂(ひとだま)(はな)つ。

 (ぞく)に言う狐火(きつねび)だ。()(もと)じゃ幽霊火(ゆうれいび)とか鬼火(おにび)とか、呼び名も色々(いろいろ)あって知られた存在(そんざい)だが。

 この世界(せかい)には――

「――はイ。生命力(いのチ)ヲ、(かス)かナ灯火(ともしビ)(たト)えル概念(がいネん)はありませ()――」

 武人(ぶじん)オルコトリアとて、そうそう耐えられる(もの)じゃあるまい。


「――――コォォーーン♪」

 ぼぉうぼぉうぼぉう――――(ちい)さな狐火(ともしび)

 (あた)りが、うす(ぐら)くなる。

 フッサフサの尻尾(しっぽ)が揺れ、鬼娘(オルコ)鼻先(はなさき)まで狐火(きつねび)(なが)れていく。

「ひぃぃぃぃっ――――!?」

 長剣(ちょうけん)に掛けていた手が(はな)れ、全身(ぜんしん)(ちじ)こまらせた。


「そのくらいに、してやってくれんかのぅ? 〝死合(しあ)う〟順番(ばん)は、鬼娘(そやつ)のほうが(さき)じゃて」

 ぐりん――――(くび)だけが、ふたたびコッチを向いた。

「けたけた、コツクツ、コォォン――――♪」


「――攻略本(こうりゃくぼん)著者(ちょしゃ)は、猿なんとか(さるなんとか)さんじゃないわよ()――」

「(ソの(シた)())」


 ふぉふぉん♪

『発行人:猿田太郎光藏坊命綱切彦左衛門

 発行所:神式会社鷹禍祓社

     凹京都左右区スタインベルグ新町11-寅辻3

     綱疋ビルB44F』


猿田太郎(さるたたろう)光藏坊命(こうぞうぼうのみこと)綱切彦左衛門(つなきりひこざえもん)――――なげぇっ!?」

 あまりの(なが)さに、つい大声(おおごえ)で、読んじまった。


「ココォン♪ 光藏坊綱切(こうぞうぼうつなきり)――――ほおらぁ、やっぱりご自分(じぶん)生前(せいぜん)のお名前(なまえ)を、(おぼ)えていらっしゃるじゃありませんのーぉ……すこし(なが)すぎる気もぉぉ、しぃまぁすぅけぇどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ?」

 グリグリとめまぐるしく(くび)(うご)かす、妖狐(ようこ)ルリーロ。


「やめい! ギラギラした(まなこ)が、まぶしくてかなわんわぃ!」

 (なん)じゃぁ、その(とり)みたいな(うご)きわぁ!

 威圧(いあつ)か? 威圧(いあつ)しとるのかっ?

 こんにゃろうめ、

 なんか、イラッとしてきたぞ。


 ふぉん♪

『イオノ>どういうことよ?

「――類推(るいすイ)すルに、ルリーロ・イナリィ・コントゥルと(えン)ノあった天狗(てんグ)につらナる(モの)(オも)われマ()――」


 ふぉふぉん♪

『イオノ>天狗の子孫が、この世界のゲーム攻略本を出した会社の〝お偉いさん〟ってこと?』

「――は()――」

「(まっさか、天狗(てんぐ)神々(かみさん)(くに)移住(いじゅう)してるたぁなぁ)」

 するってぇと、このまま天狗(てんぐ)名乗(なの)りつづけると、いらぬ面倒(めんどう)に巻きこまれかねねぇってことか――?


 奥方(おくがた)さまの、この()とのつながりが、まだよくわからねぇけど――たぶん、そういうこったろ?


「ふぅ、つもるお(はな)しもございますぅがぁ――――ふしゅるるぅ♪」

 おれたちを散々脅(さんざんおど)かして、気がすんだのか――

 狐火(きつねび)が消え、(ふく)れていた尻尾(しっぽ)がしゅるると、(もと)にもどった。

 それでも(やわ)らかで(ふと)尻尾(しっぽ)が、天狗(わし)をさわりとなでる。


 ガラララッ――――まわりの(いわ)(くず)れ、自由(じゆう)を取りもどした。

 助かったけど。

 いまのは天狗(おまえ)ごとき、〝ひと撫でで粉々(こなごな)だ〟という、(おど)しだろうか?


「よっと♪ ひとまずは、お(つか)まりくださいませぇ♪」

 (つえ)にくるんと、はい上がる伯爵夫人(ルリーロ)


「……まったくもう、本当(ほんとう)(わたくし)のことを、お(わす)れになっていたなら……〝(ほし)を落とす〟(ところ)でしたわっ……まったくもう……ぶつぶつ」

 ぶつぶつ言いながら、(つえ)が降りてきた。

 引き上げてくれるつもりらしい。

 では、遠慮無(えんりょな)く――がしり。


天狗(わし)(なん)(よう)かわからんが、この老体(ろうたい)じゃ、すこしは(ねぎら)ってくれんかの?」

 持ちあがりはじめた(つえ)が、ピタリと止まった。

 天狗(わし)(あし)につかまり、埋まった(からだ)を引きぬいてた鬼娘(オルコトリア)も、埋まったまま止まる。


 ぶっっわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ――――――――――――――――――――!!!

 ふたたび(ふく)れあがる尻尾(しっぽ)


 ぼごぅごぉぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ―――――――――――――――――――!!!

 青白(あおしろ)(ほのお)が、どこまでも(たか)(のぼ)っていく。

「ど、どうなさったのじゃ! 奥方(おくがた)よ!?」


「――――、っ――!?」

 天狗(わし)(あし)(はな)し、必死(ひっし)に逃げていくオルコトリア。


「あなたわぁ――――だぁれぇ?」

 ゆーっくりと旋回(せんかい)する魔法杖(まほうつえ)

 その先端(さき)(おお)きく(ひら)いていく。

 ひとまず、(はなし)でもするんじゃ無かったのか!?

 おれわしぼくわたし――――なんかまずいことでも言ったかぁ――――!?


 ニコリとした、微笑(ほほえ)み。

 (なな)めしたを見さだめ、静止(ピタリ)


 ピピピプ――――ッ♪

『<ロックオンされました。回避してください>』

 画面(がめん)に出た(あか)文字(もじ)

 意味(いみ)はわからんが――


 やべぇ、()られる。

 いくさ場で、何度(なんど)(かん)じたことがある。


 ひたり――――(つめ)たい手を、首筋(くびすじ)脇腹(わきばら)に添えられたような。


 その静寂(せいじゃく)を――――ぽっきゅむぽきゅぅむーんっ♪

 面白(おもしろ)(おと)が――――打ち(くだ)いた。


 ルリーロを杖ごと(・・・)吹っとばしたのは――――若草色(わかくさいろ)鏡餅(かがみもち)みたいな姿形(すがた)

「いまのうちだ!」

 隙間(すきま)がありゃ、金剛力(パワーアシスト)で跳びあがれる。

 バキャッ――――トトォン、すたん!

 距離(きょり)を取って、振りかえった。


 ルリーロに蹴り(・・)を入れた、魔物(まもの)みたいなヤツが――青白い炎(きつねび)に、まとわりつかれてる。

 それは巨大(きょだい)猫耳頭(シシガニャンへっど)を、ぐらつかせながら、〝構え(・・)〟のような、姿勢(しせい)を取った。

 ぽっきゅむぅんっ――――♪

 まとわりついていた仄暗(ほのぐら)(ほのお)が、陽光(ようこう)に溶けてかき消えた。

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