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173/743

173:龍脈の棟梁(シガミー)、ルリーロ(妖怪狐)があらわれた

 おれは、いまLV(レベル)100だし。

 おまけに、天狗装束(てんぐしょうぞく)着込(きこ)んでる。

 地面(じめん)に埋もれたくらいで、死にはしない。


 しないが、金剛力(こんごうりき)をつかうには、手足(てあし)をうごかす隙間(すきま)()る。

 ここまで完全(かんぜん)に、亀裂(きれつ)にはまった状態(じょうたい)から抜けだすのは――(ほね)が折れる。

「おぉーい、小娘(こむすめ)やぁーぃ。いーきーとーるーかぁー?」

 返事(へんじ)はなく、かわりに――――


「ぅお゛ぉぉぉ――!」

 (いさ)ましいというか、猛々(おお)しいというか。

 おおよそ女性(おんな)(はっ)したとは(おも)えない――うなり(ごえ)


 どっごおぉぉぉん!!!

 (いて)(いて)(いて)ぇ――!

 (いし)(いわ)土塊(つちくれ)が、(あたま)にぶち当たった。


 土壁(つちかべ)粉砕(ふんさい)し、あらわれたのは――


天狗殿(てんぐどの)! いま(たす)け――――」

 伸ばされた手が、ピタリと止まった。


「スマヌな――どうしたのじゃ?」

 なぜ止まる?


「しめしめ、うごけない天狗殿(てんぐどの)に切りつければ、否応(いやおう)なく(けん)(まじ)えられるぜぇ――ヘッヘッヘっへっ、ウケケケケッ♪」

 鬼の娘(オルコトリア)は良くも(わる)くも、武人(ぶじん)だ。

 うごけない獲物(わし)相手(あいて)に、魔物(まもの)みたいな(わら)(ごえ)をあげたりしない。


「やめんかぁ! 美の女神(めがみ)よ、(たわむ)れが過ぎるわぃっ!」

 怒鳴(どな)りつけてやったら――「あれ? (なんで)でバレたのさっ?」

 オルコトリアの(あたま)(うえ)に、(さか)鏡餅(かがみもち)姿(すgふぁた)をあらわした。


 ぽこん♪

「(てへへ、失敗失敗(しっぱいしっぱい)())」

 迅雷(ジンライ)収納魔法(しゅうのうまほう)(なか)を、目のまえに(うつ)しだす透明な(・・・)画面(がめん)

 画面(ソレ)は、周囲(まわり)様子(ようす)同時(どうじ)に見せてくれる。

 どういう仕掛(しか)けかわからんけど、天狗(おれ)(かお)にまかれた(ぬの)ごしでも外が見える(・・・・・)のは、(へん)(かん)じだ。


 〝立ち並ぶ収納魔法(ファイリング)の引き出し(システム)〟の(なか)にあらわれた――梅干(うめぼ)(だい)逆さ鏡餅(マルチカーソル)が、(した)を出す。

「(五百乃大角(おまえさま)は、オルコトリアの(かみ)(かく)れてたのか?)」

 いつからだ?


「(ついさっきからよん♪ ルリーロちゃんに連れてきてもらったのぉさ、ウケケケケッ♪)」

 その(わら)いやめろ、魔物(まもの)め。

「(伯爵夫人(おくがた)さままで、来てんのか)」

 ならおまえ等、念話(ねんわ)は無しだ。

 コントゥル家ゆかりの御貴族(おきぞく)さまは、念話(ねんわ)をつかうと過剰に(えらく)身構(みがま)えるからな。


 理由(りゆう)はアーティファクトの迅雷(ジンライ)や、アーティファクトもどきの御神体(いおのはら)が、暗殺(あんさつ)のためのアーティファクトと誤解(ごかい)されるためだ。


「よいしょぉ♪」

 鬼娘(オルコトリア)(かた)に降りた五百乃大角(いおのはら)が、器用に(・・・)真上(まうえ)へ手を振った。

 よくその図体(ずうたい)で、ひっくり(かえ)らねぇな。


 ヴォォォン――――♪

 迅雷(ジンライ)が浮かぶときの(おと)がした。

 見れば、ルリーロの魔法杖(まほうつえ)が降りてくる。


(あたま)(うえ)からぁ、失礼(しつれい)いたぁしまぁすぅーわぁー♪」

 (リカルル)同年代(どうねんだい)鬼娘(オルコトリア)より、(わか)風貌(ふうぼう)

 外見(そとみ)は、狐耳族(きつねみみぞく)若作(わかづく)り。

 中身(なかみ)正真正銘(しょうしんしょうめい)()(もと)に居た妖怪狐(ようかいぎつね)だ。


 仄暗(ほのぐら)く、(いのち)を喰らう――狐火(きつねび)使(つか)うし、

 なにより、稲荷(イナリィ)(あざな)()(はい)ってる。


「――(ぞク)に言ウ、ミドルネームでス()――」

「(霊門寧無(みどねぃむ)ぅ?)」


 ふぉん♪

『ヒント>ミドルネーム/姓と名の間につく名前』

「――用法(ようほウ)とシては仮名(かめイ)(ちか)いデすが、太郎二郎左衛門(たろうじろうざえモん)ノように延々(えんえン)(つヅ)いたりはしないで()――」


 猪蟹(おれ)(おな)じく()(もと)から、この来世(らいせ)輪廻転生(りんねてんせい)した人間(にんげん)……(ひと)じゃねぇけど。

 五穀豊穣(ごこくほうじょう)(かみ)眷属(けんぞく)だから、(わり)(もん)ではねえと……(おも)いたい。


「あーなーたぁーがぁー、天狗(でんぐ)ぅー? ひっさしぃーぶりねっえぇー?」

 ひさしぶり?

「お(はつ)御目(おめ)に掛かるが、どちらさまかのう?」

 ひょっとして、(くろ)づくめの似た格好(かっこう)だから――烏天狗(からすてんぐ)間違(まちが)えてるのか?

 伯爵夫人(はくしゃくふじん)とは、ギルド倒壊(とうかい)のときに(かお)を合わせている。


「(お(わす)れですのぉ? 江戸(えど)(きた)(つら)なる(やま)二番目(ふたつめ)山中(さんちゅう)五重(いつえ)(とう)で、何度(なんど)かお会いした(はず)でぇすぅがぁー?)」


「(ね、念話(ねんわ)じゃと!? 使(つか)えるのかっ!?)」

「(はぁい♪ わたくしもぉ、(かり)にも眷属(けんぞく)名乗(なの)っておりましたゆえ――くすくすくす、ここぉぉん♪)」

 よくわからんが、やべぇ――オマエ等は、念話(ねんわ)使(つか)うな。

 どこまで聞かれるか、わからん。


「(それでぇ? あなぁたわぁ、天狗(てんぐ)なのでしょぉ? 転生(てんせい)してもぉー、ご自分(じぶん)何者か(・・・)をお(わす)れになることわぁ、無いはずですがぁ?)」

 (なん)(はなし)をしてる?

 目のまえの鬼娘(オルコトリア)に、この会話(はなし)は聞かれてない。


 ふぉん♪

『イオノ>ルリーロちゃんからは、何も聞いてないわよう?』

 画面(この)文字(もじ)は、ルリーロに見えてない。


「((はじ)めてお会いするわい、奥方殿(おくがたどの)天狗(てんぐ)と言っても、色々(いろいろ)居るじゃろうて。御前(おまえ)さまが()うたのは、(べつ)天狗(てんぐ)なのじゃろうて――)」

 実際(じっさい)に会ったのは、(かぞ)えるくらいだが――〝天狗(てんぐ)〟の種類(しゅるい)多岐(たき)にわたり、(おな)姿(すがた)をしたヤツが、二人(ふたり)と居ねえのは(たし)かだ。


「(それわぁ、あり得ませんわぁ。だって、天狗(てんぐ)と呼ばれる生き(もの)名乗(なの)るのでしたら、あなたさまは――――猿田彦命(さるたひこ)さんにぃー、相違(そうい)ないはずでぇすぅものぉぉ?」

 くるりと(つえ)にぶら下がり、手を(はな)す。

 (つえ)(から)まる(あし)。伸びたからだが、(いき)が掛かるほど(ちか)くまで降りてきた。


 ギィン――――昼日中(ひるひなか)に見えたらおかしい、(つき)(ひかり)

 双眸(そうぼう)(そそ)ぎ込まれていく、静かな活力(つきかげ)

「くすくすくすくす、ケッタケェタケェタケタッ!!!」

 その(わら)い、止めろ。止めてください。

 (いま)にも、斬りかかってきそうだ。


「ル、ルリーロさま――――!?」

 威圧(いあつ)されたオルコトリアが、背中(せなか)(けん)に手を掛ける。


「(申咫孫(さるたひこ)さんてのは、だれだ!? 迅雷(ジンライ)(なに)かわからねぇーか!?)」


 ふぉん♪

『イオノ>ちょっと待って、その名前、どっかで見た~」

 ぱらら、ぺらぺらり。

 また、(とら)(まき)をめくってやがる。


 ふぉふぉぉん♪

『イオノ>有名なNPCとかのゲームの話じゃなくて、

    >現実の世界で見た気がするのよね。なんだったかしらー?』

 そんな悠長(ゆうちょう)なこと、言ってんな!

 コッチは(うご)けねぇし、ギッラギラした〝ルリーロ〟の目がやべぇ!


「――類推検索(るいすいケんさく)ニ、該当(がイとう)がありマし()――」

 なんかあったっぽいな。

「((だれ)なんでぇいっ!)」

 ふぉん♪

『イオノ>誰なのさ?』


「――イオノふァラーの個人(こじン)ライブラリに、〝猿田彦命(さるたひコ)〟ニ(かン)すル記述きジゅつ一件(いっけん)デす。閲覧中(えつラんちゅう)攻略本(こウりゃくぼん)最終頁(さいシゅうぺージ)ヲご(ラん)くだサ()――」

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