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172:龍脈の棟梁(シガミー)、オルコトリアVSシシガニャン

コイツ(・・・)を――切ってみろ。(きず)のひとつでもつけられたら、わしが手ずから相手(あいて)をしてやる――わい」

 ここは、ガムラン(まち)の目のまえ。

 いつもの草原(そうげん)


 はぁはぁ。もう、(かた)(いき)をするほど(つか)れきっていた。

 たぶん明日(あした)は、五百乃大角(いおのはら)に〝卵酒(たまござけ)〟を(つく)ってもらわなきゃならん。

 つまり、金剛力(こんごうりき)使(つかい)いまくったあとの……あの凄まじい筋肉痛(・・・・・・・・・)が待っている。


 岩場(いわば)から草原(そうげん)まで普通(ふつう)(ある)いたら、15分程度(ふんていど)

 たったそれだけの(みち)すがらで――天狗(おれ)迅雷(ジンライ)疲れはてた(・・・・・)

「(おい、死ぬっほど大変(てーへん)だったじゃぁねーかっ!)」

 一時間(いちじかん)はかかってねーと(おも)うけど。

 「日が暮れるから」ってんで、鬼娘(てき)(かた)まで借りる羽目(はめ)になった。


「(はい、まさかこれまでの金剛力(パワーアシスト)使用(しよう)(つちか)われた、既存(きぞん)のデータセットが使(つか)えないとは(おも)いませんでしたので――)」

 わからん。シシガニャンを抱えて(・・・)一歩(いっぽ)あるくたびに、いろんな表示(ひょうじ)が出て、うるさかったから――一切合切(いっさいがっさい)表示(ひょうじ)を切った。

 案内表示(ヒントひょうじ)も出ないから、本当(ほんとう)にわけわからんまま。


「(まさか、迅雷(おまえ)なしで〝イチから(ある)(かた)を、(おぼ)えさせなきゃならねぇ〟とわ――やってくれるぜ――はぁはぁ)」


 ペチペチと……猫耳頭(ねこみみあたま)後頭部(うしろあたま)を、(にく)しみをこめて(はた)く。

「カカカッ――まったく此奴(こやつ)めっ! 手間(てま)を掛けさせおって……ふぅ」

 はぁはぁ、天狗(おれ)(よわ)ってるのを知られると、面倒(めんどう)なことになりそうだから――せいぜい虚勢(きょせい)を張って、鬼娘(おにむすめ)に気づかれないようにしないと。


「にゃっ、にゃにゃにゅにゃっ?」

 (だれ)にも着られていない(・・・・・・・)――(つよ)(ふく)

「(正式名称(せいしきめいしょう)は――極所作業用きょくしょさぎょうよう汎用強化服(はんようきょうかふく):シシガニャン〟です)」

 (はた)かれた猫耳頭(シシガニャン)が、たたらを踏んで後頭部(うしろあたま)をさすってる。


 まあ、とにかく。いろいろあって、どうにかこうにか、シシガニャンを草原(そうげん)に立たせた。


 ヴッ――椅子代(いすがわ)わりの丸太(まるた)輪切(わぎ)り)を出して、腰掛(こしか)けた。

「(くっはぁー、つ、つかれたぜ……わよぜぇーっ!)」

 はぁはぁはぁはぁ。


「でも、いいのか? コレは天狗殿(てんぐどの)の〝使(つか)い魔〟なのだろう?」

 なんだか、猫耳頭(シシガニャン)をなでたそうなしぐさ。

 背負(せお)った大量(たいりょう)(けん)が、カチャカチャ(おと)を立てる。


「カカカッ――かまわぬ。切れる(もの)なら切ってみせい。なんなら小太刀(わしの)も貸してやるわぃ」

 ヴヴヴッっ――――ガチャガチャガチャッ!

 (あか)(あお)()(だいだい)(みどり)(そら)(むらさき)(にじ)

 (おさ)まる刀身(とうしん)まで、白鞘(しろさや)(おな)(いろ)

 (もの)(ため)しと塗り分けた、色とりどりの居合刀(・・・・・・・・・)だ。


 すべてノヴァドが打ち、迅雷(ジンライ)が研いだ(もの)で。

 たぶん、この世界(せかい)に、これ以上(いじょう)の切れ(あじ)を持つ刃物(はもの)は無い。

 スキルや魔法(まほう)やアーティファクトを(かい)さない斬り合いなら、負けることは無い業物(わざもの)


「えぇー? 草原(ここ)に来るまでに、なんだか(すこ)(なつ)かれた気もするのよねー」

 やっぱり、シシガニャンの(あたま)(はら)を、なでたそうにしている。


「まぁ、好きにせい。わしが勝負(しょうぶ)を受ける条件(じょうけん)は、びた一文(いちキーヌ)まからぬぞ」

 ふぅぅぅー。やっと、(いき)(ととの)ってきた。


「もちろん、()るけど……一方的(いっぽうてき)ってのもなぁ」

 ガチャガチャ(いそいそ)と、居合刀(こだち)(ひろ)(あつ)める(おに)


「やい(おに)。それ、貸してやるだけじゃからな? 勘違(かんち)いするでないぞ?」

「わかってる♪ わかってるわよ?」

 なんだよその、ほくほく(がお)


「言っとくがその魔物なぁ(・・・・・・)、たぶんわしの渾身(こんしん)一撃(いちげき)でも……切れるかどうかあやしいぞぃ?」

 そう。神々(かみがみ)(なんだか)を秘めた、異質(いしつ)(もの)

 姫さん(リカルル)シガミー(おれ)にくれた、〝死んでも生きかえる(ひも)〟ほどじゃねぇけど。


「(「〝追憶の(ノットオブ)結び紐(リメンブランス)〟です」 )」

 そうそれ、反魂(はんごん)(じゅつ)使(つか)える(ひも)

 いまも、おれの(くび)冒険者(ぼうけんしゃ)カードを吊り下げてる、(ひと)の世に有っちゃいけねぇLV(レベル)代物(しろもの)


 死者(ししゃ)(よみがえ)らせるほど、道理(どうり)を曲げはしないけど。

 絶対(ぜったい)に切れない(よろい)も、ソレだけでじゅうぶんヤバイ。


 シガミー(おれ)LV(れべる)は100。

 変異種(バリアント)の化け角兎(つのうさぎ)を狩ったら、これ以上(いじょう)あがらない(ところ)まであがった。

 それでも、いまだに五百乃大角(いおのはら)迅雷(ジンライ)には、(かな)う気がしない。

 

 筋肉痛(きんにくつう)(たい)する手だてが、いまだに五百乃大角(いおのはら)(じるし)卵酒(たまござけ)しか無かったりもするし。

 中々(なかなか)どうして、この来世(らいせ)も極めるには、わからねぇことだらけで――


「それを(はや)く言って欲しかったわ、天狗殿(てんぐどの)――――」

 ――――ごきり、ばきり♪

 小気味(こきみ)よく(ふく)れあがる――鬼娘(オルコトリア)

「――――遠慮(えんりょ)は、いらないってワケねっ!」


 ザギィィッィン♪

 長剣(ちょうけん)が抜き放たれ――――ドスドス――――うぅおぉおぉおぉおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!


 ただの突進(とっしん)から、繰り出された横薙(よこな)ぎ。

 (なが)れるような(けん)に、目を(うば)われた。


「ふっ――ぎゃぁご♪」

 くの字に折れまがる――猫耳頭シシガニャン

 鬼娘(オルコトリア)長剣(ちょうけん)を、振り抜く――――!!!


 フッォォォォン!?

 あれ、猫耳頭(アイツ)どこ行った?

 まさか、あまりの剣圧(けんあつ)に、粉々(こなごな)に引き裂かれた!?


 ゴッ、バガゴパァッ――――!

 地を割る、オルコの差足(あし)

 おれの高下駄(たかげた)より、化け(もの)じみてた。

 陥没(かんぼつ)する――草原(そうげん)一帯(いったい)


「――――ふっぎゃにゃっゝ@ぴょぴょ☆ん∮※#!!!???」

 (ねこ)だか(とり)だが、なんだかよくわからない鳴き(ごえ)と、木々(きぎ)がなぎ(たお)される(おと)(おく)れて聞こえてきた。


 天狗(おれ)鬼娘(オルコ)が、割れた地面(じめん)に飲み込まれていく。

 あーもー、どうすんだよ。

 おれとレイダの狩り場を、荒らしやがって。

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