表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/743

17:食いつめ幼女、アーティファクトに名前をつけよう

「じゃあ留守(るす)をたのむよ」

「シガミー君さえよかったら、今夜(こんや)()()()まってくれてかまわないからね」

「そしてぜひ、スダレ殿(どの)(はなし)のつづきがしたい」

 父上殿(どの)は、あさはやくから出かけていった。


「スダレ――」

「なンでしょうか、マスター」

 マスターってのは、〝(あるじ)〟のことだ。

 じゃあ――


「おまえ、名前(なまえ)は付いてねえのか?」

「(私はインテリジェンス・タレット。形式(けいシき)ナンバーINT(アイエヌティー)TRTTティーアールティーティー01(ゼロワン)でス。おわすレですか、マスター?)」


「(それじゃねえ。そりゃ、おれが僧兵(そうへい)とか虎鶫(とらつぐみ)(たい)弐番(にばん)(たい)隊頭(たいがしら)なんて()ばれてたのと一緒(いっしょ)だろう?)」


「(そのフォーマット……区分(くわけ)けだと、僧侶(そうりょ)がアーティファクト。兵士(へいし)がインテリジェンス・タレット。虎鶫(とらつぐみ)(たい)隊頭(たいがしら)形式(けいシき)ナンバーになりますね)」


「(やっぱり、すっげーややこしいな。だから、おれが〝猪蟹(ししがに)〟って名だったように)――おまえに、ちゃんとした名前(なまえ)はねえのかって聞いてんだ」


「え? 〝スダレ〟じゃないの?」


「〝(いん)(てり)(げん)(すだれ)〟の(りゃく)で、〝スダレ〟って呼んでただけだぜ。ほかには〝棒〟とか、〝短い棒〟とか――」


「(インテリジェンス・タレットでス。個体名(こたいめい)未設定(みせってい)ですが、動作(どうさ)支障(ししょう)ありません)」

 〝名前〟に当たる物はないってことか。

 なんとなくだが、こいつの言い回しがわかるようになってきた。


「あーもう。シガミーには女の子っぽさが足りない! しかも圧倒的(あっとうてきに)に!」

「そ、そんなに、おこるなって」

 女の子っぽさと言われてもなあ。おれぁ、まだいくらもこの姿(なり)で生きちゃあいねえからなあ。


自分(じぶん)分身(ぶんしん)のようなアーティファクトに、名前(なまえ)も付けてあげてないなんて!」


「レイダさマ、(わタくし)(べつ)(ぼう)デも(みジか)(ぼう)でも――」

「さまはいらないわ。レイダってよんで」

「はイ。レイダ」

 なんでい、すっかりなかよしだな。


   §


 ――――ぼがぁん!

 やっぱり、この兵糧(ひょうろう)(がん)は、おもしれえ。

 火種(ひだね)になる魔法(まほう)の使い方も教わった。

上手(じょうず)にできたわね。……わたしなんて三ヶ月もかかったのに」

 ぐぬぬ。くやしいって顔に書いてある。


日常的(にちじょうてき)使用(しよう)スる簡単(かんたん)魔法(まほう)は、マスターにも使(つか)エるようですね」

「あなたも、〝マスター〟なんて言って他人行儀(たにんぎょうぎ)でしょ。シガミーってよびなさい!」


「レイダの提案(ていあん)には必要性(ひつようせい)を感じませんが、いかがいたしましょうか、マスター?」

「んぁー。どうでもいいが、このしゃらあしゃらした感じもそんなに悪くねえ。好きに呼んで良いぞ」


「ではマスターを以後(いご)、〝シガミー〟と呼称(こしょう)します」

「おう。それで、おまえ……レイダは今日はヒマなのか? F級の仕事(しごと)はおれがぜんぶ取っちまったから、やることもねえのかもしれんが……」


「そうよ。ヒマだから、アナタの名前を考えるのを手伝ってあげる!」

 テーブルの上を転がっていたスダレを、ひっつかむレイダ。


「イオノファラーさまの眷属(けんざく)って言うなら、なにか美にまつわる名前の方が良いかしら?」


「いや、だからよう。ありゃあ、そんな大層(たいそう)なもんじゃねーと思うんだよなー。狐耳(ひめさん)とかあの鬼娘(オルコ)の方がよっぽど女らしいっつーか」


「それは、イオノファラー様の使(つか)いできた、お客さんでしょ?」

「(おい、この誤解(ごかい)()いたほうが良いのか? 食べ過ぎてしたっ腹が出たことをよろこぶ〝美の女神〟はいねえたあおもうが)」

「(上位権限(じょういけんげん)により非公開(ひこうかい)です)」


「じゃあ、シガミーのスキルにちなんだ名前なんてどう?」


(すき)る? どっかで聞いた……か?」

冒険者(ぼうけんしゃ)カードに刻印(こくいん)さレているはずです」

 おれは首からさげた、板っぺら(カード)をみた。


薬草師(やくそうし)★★★★★ /状態異常無効/生産数最大/女神に加護/――』

 その最後。


『――七天抜刀(しちてんばっとう)根術免許(こんじゅつめんきょ)皆伝(かいでん)


「んむぅ――――?」

 なんでか、〝(すき)る〟がひとつ増えてた。


 たしかにおれぁ、武芸(ぶげい)百般(ひゃっぱん)につうじ、七天抜刀(しちてんばっとう)根術免許(こんじゅつめんきょ)皆伝(かいでん)腕前(うでまえ)だが、そりゃ、まえの世界の話だ。

兵糧丸/戦国時代の携行食。忍者も愛用。

武芸百般/あらゆる武芸。

武芸/剣術、弓術、槍術、柔術、馬術など、戦うために身につける技術のこと。

免許皆伝/師匠が弟子に武芸や技術の奥義をすべて伝えること。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ