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162:龍脈の棟梁(シガミー)、ガムラン町へ転移開始

「それでは、お(とう)さ……コントゥル伯爵(はんしゃく)、そしてみなさまごきげんよう」

 ヒラヒラ、しゃらあしゃらした(ふく)のまま。

 (すそ)をつまみ上げ、かるく(こし)を落とす伯爵令嬢(はくしゃくれいじょう)


「ご、ごきげんよぅわ」

 おなじく、ひらひらしゃらあしゃらした(ふく)シガミー(おれ)

 (こし)を落として、片足(かたあし)を引く。

 伯爵令嬢(リカルル)みたいにはいかないが、リオレイニアの(きび)しい〝作法(さほう)稽古(けいこ)〟のおかげで、すこしは出来(でき)た。


「――上々(じょうじょウ)でス、シガミ()――」

 ここは、大女神像(だいめがみぞう)のまえ。

 ようやく腹一杯(はらいっぱい)になった五百乃大角(いおのはら)さまが、「(かえ)る」ってんで大勢(おおぜい)で押しかけた。


「(こんどは猪蟹屋ん(つよいふく)、着てなくて平気(へいき)なのかっ?)」


 ふぉん♪

「――大丈夫(だいじょうぶ)です。ガムラン(ちょう)女神像端末(めがみぞうたんまつ)#778の〝位置(いち)〟に変更(へんこう)はないので、再認証(さいにんしょう)再設定(さいせってい)必要(ひつよう)がありませ()――」

 わからんが――ようやく、ガムラン(ちょう)(かえ)れるんだな?

 差しこむ陽光()が、(かげ)ってきた。

 大雨(おおあめ)にならなけりゃ、仕事(しごと)出来(でき)る。

 そして、仕事(しごと)山積(やまづ)みだ。


 ふぉん♪

『イオノ>ふふふ、帰ったら驚くわよ?』

 姫さん(リカルル)(かた)に乗った五百乃大角(いおのはら)が、そんな余計(よけい)なことを言う。


 どういうこった? 不吉(ふきつ)なことを言うな。

 ひっ掴んで問い詰めようとしたら――すささっ!

 (なが)(かみ)(なか)(かく)れる御神体(ごしんたい)


 ちっ、まあいいや、ん?

 …………ぉーぃ…………。

 なんか、(とお)くから呼ばれたような?


 そっちを見たら、とおくの壁際(かべぎわ)から手を振る(やつ)らに気づいた。

 神官服(しんかんふく)(だいだい)(ぬの)を垂らす集団(しゅうだん)

 その手前(てまえ)に、猫耳族(ねこみみぞく)猫頭(ねこあたま)

 となりに、制服女性(せいふくじょせい)が控えてる。


 ギ術開発部(じゅつかいはつぶ)連中(れんちゅう)だ。

 モサモサ神官(しんかん)身代わり札(モサモサ)を脱ぐと、ああなるのかもしれない。

 いつまでも手を振ってるから、かるく振りかえしてやった。


「じゃあこれ。人数分(にんずうぶん)転移陣(てんいじん)使用料(しようりょう)ですわよ♪」

 ソコソコな(おお)きさの革袋(かわぶくろ)

 大女神像(だいめがみぞう)足下(あしもと)設置(せっち)された(だい)に、乗せられる。

「けっこうな大所帯(おおじょたい)に、なっちまったけど――女神像(めがみぞう)移動(いどう)するのに、(かね)がかかんのか?」

 しかも、人数分(にんずうぶん)


「そんなの当たり(まえ)でしてよ?」

 (まわり)りには(ひめ)さんのお付きが、数十人(すうじゅうにん)ほど(あつ)まっていた。

 どうも、ちょうど人手(ひとで)の入れ替え時期(じき)とかで、給仕服(きゅうじふく)甲冑(かっちゅう)十人(じゅうにん)ずつくらい付いてくるらしい。

 そのなかに一人(ひとり)甲冑(かっちゅう)給仕服(きゅうじふく)も着てない、しゃらあしゃらしたのが混じってるけど。

 あれも、(なん)かのついでなんだろう。


「そっか、そういうもんか。そういやギルドの登録(とうろく)にも(かね)がかかったっけな」

 やい、飯の神(いおのはら)

 あんまりがめつくすんな、(めし)ならおれとジンライが食わせてやるから。

 ふぉん♪

『イオノ>なにいってんの? あたくしさまは1キーヌももらえないわよ』

 そうなのか?

「――はい。あくまで女神像維持(めがみぞういじ)のためのリソース保全(ほぜん)……大地(だいち)……天地(あめつち)維持(いじ)に充てられていると、お(かんが)えください――」


 ふぉん♪

『イオノ>ぶっちゃけ、あたくしさまですら、この世界(せかい)から見たら、〝お(きゃく)さん〟でしか無いわけよ。わかる?』

 わかるわけがねぇだろう。

 けど、おまえががめて、飯代(めしだい)にしてるワケじゃねえのは、わかった。


「いくらかかんだ? 自分(じぶん)(ぶん)くらいは、おれが出す」

「かまいませんわよ。持ちあわせはないのでしょう?」

 ギルドの土台(どだい)(つく)るのに収納魔法(しゅうのうまほう)(ばこ)をつかうから、なんかの手違(てちがい)いで(つち)(なか)に埋めたりしてもいけねぇってんで。

 ちょうど全財産(ぜんざいさん)を、シガミーと天狗(てんぐ)烏天狗(からすてんぐ)冒険者(ぼうけんしゃ)カードに、分けて入れちまったあとだ。間がわるい。


 さっきの(かね)全部(ぜんぶ)酢蛸(すだぁーこ)がわりの〝おにぎり(・・・・)〟に消えちまったし。

 ギルドに行きゃ、いくらでもあるけど――

 余計(よけい)なことをしてると、またなんかに邪魔(じゃま)されそうでな。


「そもそもは、お(かあ)さ……コントル家名代(けみょうだい)不始末(ふしまつ)から(はじ)まったことですもの、遠慮(えんりょ)なんて要りませんわ。それに大人数(おおにんずう)だから、割引(わりびき)がききますわ」

 割引(わりびき)……?

 融通(ゆうずう)がきいてんのか、きいてねぇのかどっちなんだ?

 女神像(めがみぞう)は……ほんとわからん。


「じゃあ、わるい。たのむ」

 こんどは(ひめ)さんに向かって、(こし)をおとして片足(かたあし)を引く。


「それでは女神(めがみ)さま、(わたくし)がボタンを押してもよろしいのかしら?」

「はぁい、だいじょぉぉぶでぇぇす♪」

 では、と組んだ手を(はな)に押し当てると、(ひかり)(いた)があらわれる。


 ズザッズザザッ――――ガムラン(ちょう)に行く全員(せんいん)が、寄せ(あつ)まってきた――――むぎゅり!

「――シガみーモ、手ヲ組ンで、(はナ)ニ押し当ててくださ()――」

 おれぁ、五百乃大角(いおのはら)(きょう)信者(しんじゃ)じゃねぇぞ?


 ふぉん♪

『イオノ>やらないと置いてかれるわよ?』

 組んだ手を、いそいで(はな)に押し当てた。


 ぽぽぽぽぽぉぉぉぉぉぉん♪

「それでわぁ~、央都大聖堂(おうとだいせいどう)大女神像(だいめがみぞう)まえからぁ~ガムラン(ちょう)ギルドまでぇ~、出発いたぁしまぁすぅ~♪」

 (ひざ)をかかえた大女神像(だいめがみぞう)(こえ)は……五百乃大角(いおのはら)(こえ)じゃなかった。


白線(はくせん)のぉ~内側(うちがわ)にさがってぇ~、お待ぁちぃ~くだぁ――――――」

 白線(はくせん)てなんだと(おも)ってたら――足下(あしもと)をなにか(しろ)(もの)(はし)り抜けた。

 あと、なんかイラッとするな、この(ふし)がついたしゃべり(かた)


 ふぉん♪

 ビードロ(すみ)地図(ちず)(とも)る、おれたち数十人(すうじゅうにん)の『(さんかく)』。

 ソレを取り(かこむ)む輪が、あらわれた。

 なるほど。

 さっきの(かね)で、〝この輪の(なか)に居る人間(にんげん)全員(ぜんいん)〟が、ガムラン(ちょう)まで飛べるんだな。


 ぎゅむぎゅむ――(すこ)しキツいけど、なんとか(はな)に手を押し当てた姿勢(しせい)(たも)つ。


「それでわ、いきますわよ!」

 ふぉん♪

『FATS>女神像端末#1から女神像案末#778へのファストトラベルを開始します

     実行しますか? Y/N』

 ひかった牡丹(ボタン)が押され――『Y』てのが(えら)ばれる。


 キラキラキラキラキラキラ――――(ひかり)奔流(ほんりゅう)

「うわぉわひゃ?」

 魔法(まほう)神髄(しんずい)が、カラダを幾重(いくえ)にも縁取(ふちど)っていく。

 大女神像(大女神像が)が――――消えた。


 シュゴォォォォォォォ――――――――ン♪

 央都(ここ)に来るときに見た、(なに)もない場所(ばしょ)

 ひかりが差しこむ、(みずうみ)(そこ)みたいな。

 白線(はくせん)(ひろ)がりソコソコの(ひろ)さになったから、みんな(はな)れた。

 ふう、窮屈(きゅうくつ)だったカラダを、ぐーんと伸ばす。


 ふぉん♪

『>ファストトラベル中

 >転送完了まで 07:59』

 おい、随分時間(ずいぶんじかん)がかかるんだな?


「――そうね、目標地点(もくひょうちてん)……ガムラン(ちょう)女神像(めがみぞう)につながる、神域(しんいき)のイオノファラー(ぞう)がまだ安定(あんてい)しないから、ファストトラベル……転移時間(てんいじかん)が伸びちゃってるけど、なんの問題(もんだい)もないわよ――」

 じゃあ、それみんなに言っとけよ。

 おれじゃ、なんて説明(せつめい)したら良いのか、さっぱり――わからん。

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