表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/743

158:龍脈の棟梁(シガミー)、ギ術開発部からのご提案

 こんな大金(たいきん)は、あっても(ろく)なことにはならねえ。

 かといって捨てるのも、(しの)びない。

 どうしたもんかな。


猪蟹屋(ししがにヤ)(おオ)きくすルための資金(しきン)としてナら、いくラあっても(コま)らないノでは?」

 ずっとうしろ(あたま)に張りついてた便利棒(ジンライ)が、空中(ちゅう)におどりでた。


 切りはなされた細腕(かいな)が、巻いた(かみ)を留めてくれてるから、もう(かみ)(ばら)けることは無い。

 迅雷(ジンライ)から(はな)れた細腕(かいな)は、酢蛸(すだぁーこ)……「――SDK(エスディーケー)……ソフトウェア開発キットです――」……がないから(うご)かせないけど、(かんざし)にはなる。


「おや、(きみ)がウワサの迅雷(ジンライ)さまにゃ?」

 レイダの父上(ちちうえ)……ガムラン(ちょう)のギルド(ちょう)みたいに、宛鋳符悪党(アーティファクト)をまえにしたら、(ひと)が変わりかねない橙色(だいだい)連中(ども)

 ミャッドはそんな(やつ)らの親玉(おやだま)だか、お目付役(めつけやく)だ。


 (ねん)のために、迅雷(ジンライ)大人(おとな)しくさせておいたんだけど――

「――ひとり相手(あいて)なら、どれほどのスキルや魔術(まじゅつ)やーティファクトを(かく)し持っていたとしても制圧(せいあつ)可能(かのう)です。収得(しゅうとく)したばかりの〝捕縛術(ほばくじゅつ)〟も、有効(ゆうこう)であることが証明(しょうめい)されましたし――」

 かまわねぇけど、あんまり余計(よけい)なことは言うなよ?

「――了解(りょうかい)です、シガミー――」


(はジ)めまシて、ミャニラスてッド・グリごリー。(わたし)INT(インテリジェンス)タレット、形式(けいシき)ナンバーINT(アイエヌティー)TRTTティーアールティーティー01(ゼロワン)迅雷(ジンライ)でス。以後(イご)、オ見知(みシり)りおキを」

「ミャッドで良いにゃ、よろしくにゃ♪」

 また、(ねむ)るように(わら)う目、ほころぶ口元(くちもと)


 肉球(にくきゅう)の付いたフサフサの手が、ぺたり。

 金貨(パケタ)がつまった(おお)きな(ふくろ)に、乗せられた。


「ひとつ提案(ていあん)が有るのにゃが、このお(かね)をしまうのは、その(はなし)を聞いてからでも良いかにゃ?」

 ギルド再建(さいけん)仕事(しごと)をまるまるすっぽかして来てるから、(いそ)いでガムラン(ちょう)(もど)りたいけど――


(ひめ)さん……いや、リカルルさまはどうしたい? おれ……ぼくは、ギルドの工事(こうじ)をスグにでも(はじ)めたいんだけど」

「そうねぇー……ガムラン(ちょう)(もど)るのは大女神像(だいめがみぞう)一瞬(いっしゅん)だから、(すこ)しくらい(はなし)を聞いてあげても良いんじゃなくて?」

 基本的(きほんてき)に、このお(ひめ)さまは、(やさ)しいし(はなし)が分かる。

 切った張ったの戦闘狂(けんかずき)が……出なければの(はなし)だけど。


   §


 つい立てや本棚(ほんだな)をはさんだ反対側(はんたいがわ)には、ひろい待合所(まちあいじょ)みたいなのがあった。

 背もたれまでフカフカの長椅子(ながいす)に、(あし)(ふち)彫刻(ちょうこく)(ほどこ)された平机(つくえ)

 青々(あおあお)(しげ)鉢植(はちう)えに、(そと)に向かって突きでた(おお)きな(まど)(かべ)には美の女神(めがみ)絵画(かいが)まで掛けられていて――

五百乃大角(いおのはら)の絵はいらないけど、この過ごしやすさは、猪蟹屋(みせ)づくりの参考(さんこう)になるな」

「はイ、シガミー。調度品(ちょうどヒん)だケでなく、建具(たテぐ)のすべテに(いタ)るまでもが洗練(せんれン)されていマす」


「ほんとうに、さすがは央都(おうと)ですわねぇー♪」

 リカルルの(いえ)も、十分立派(じゅうぶんりっぱ)だったけどな。


「ニャフフフ、気に入ってもらえて(なに)よりにゃ♪」

 フサフサの手が、(ちい)さな鉢金(かね)(たた)いた――チィーン♪

 ギルドの受付(うけつけ)にも、あった(やつ)だ。

 あれは猪蟹屋(ウチ)にも欲しいな、たいてい(だれ)かがいるから、必要(ひつよう)は無いけど。


 さっきの女性(じょせい)が、(ぬの)(つつ)まれた(もの)をおいて――ぱたん。

 部屋(へや)から出て行った。


「まずは、コレを見てもらいたいにゃ」

 コトリ。

 (つつみ)みから取りだされた(もの)は――なんだろう?

 (ちい)さめの〝(おにぎり)〟みたいな(かたち)


「こりゃ、なんだろ?」

 (となり)にすわる、高貴(こうき)戦闘狂(せんとうきょう)を見る。

 (かた)をすくめる戦闘狂(せんとうきょう)

 こじゃれた置物(おきもの)……では無いらしい。

迅雷(ジンライ)はわかるか?」


「アる(シゅ)のアーティファクトであルことは、間違(まチが)いありませンが……経年劣化(けいねんレっか)がみらレます。神代(しンだい)ヨり発掘(はっクつ)さレた遺物(いブつ)、まサにオーパーツと呼ぶべキ(もノ)でス」

 ブブブブ、ヴヴヴヴヴッ――やめろ、そのルガ(ばち)のうごき。

 ギルド(ちょう)眼鏡(めがね)が、脳裏(あたま)にちらつくから。


迅雷(ジンライ)クン。キミは本当(ほんとう)に、女神(めがみ)さまの眷属(けんぞく)なんだにゃあ♪」

 半開(はんびら)きの目が、迅雷(ジンライ)のするどい(うご)きをみつめ――

「ふぎゃぅるるぅ~~♪」

 両手(りょうて)でつかみかかる、ミャッド開発部顧問(かいはつぶこもん)


 あー! (かじ)られてる、(かじ)られてる。

 迅雷(ジンライ)はどれだけ切りつけても、(けず)れないから平気(へいき)だけど――一瞬(いっしゅん)あせった。

「カジカジカジ――ゴロゴロ♪」

 (のぞ)が鳴ってる……血か。

 猫耳族(ねこみみぞく)の血が、濃い(・・)のかもしれない。


「ミャッド、失礼(しつれい)しました」

 止まる迅雷(ジンライ)

「(だいじょうぶか?)」

「――問題(もんだい)ありませんが、はじめて目にした、特殊(とくしゅ)遺物(いぶつ)(こころ)(うば)われ――物理(ぶつり)コンピューティングを(こころ)みてしまいました――」

 わからんが、無事(ぶじ)ならいいや。


「にゃ、にゃふっ!? こ、こちらこそ眷属(けんぞく)さまに大変(たいへん)にゃ無礼(ぶれい)を――」

「気にしなくて良いよ。普段(ふだん)から、物干(ものほ)しとか棍棒(こんぼう)がわりに使(つか)ってるから」

「そ、それは気にした方が……いい気もするけど、(はなし)をすすめるにゃん♪」

 フサフサの手が、(ちい)さな鉢金(かね)をまた――チィーン♪


 きゅらきゅらきゅら♪

 三度(みたび)やってきた女性(じょせい)

 押してきた(だい)には、山積(やまづ)みの(はこ)

「あらそれっ!?」

 立ち上がる高貴(こうき)な。


「はい。名店(めいてん)〝ロットリンテール〟の各種詰(かくしゅつ)めあわせを、ご用意(ようい)させていただきました」

 かるく(こうべ)を垂れる、女性(じょせい)


「お時間(じかん)を取らせてしまった、せめてものお(れい)ですにゃ♪」

 女性(じょせい)から手渡(てわた)された、一枚(いちまい)(かみ)

 それを、そのまま(つくえ)に置いて――つつつと、コッチへ差しだす(ねこ)の手。


「なんだろ?」

「なにかしら?」

 ぺらり。

『品代として――1,500パケタ』


「はぁー!? お金取(かねと)るのかよっ!」

「あらすごい? 大金(たいきん)ですこと」

 ぼくたちの、ジットリとした視線(しせん)にひるむ開発局顧問(ミャッド)


「ち、ちがうにゃっ、内訳(うちわけ)をよく見るにゃっ!」


『廃棄された古代の女神像から回収した謎の遺物』

 って書いてある。

 (ひめ)さんは、「興味(きょうみ)ありませんわ」ていう(かお)


「シガみー、コレ買ってくだサい!」

 迅雷(ジンライ)がまた(ふる)えだした。

 どーした?


 ふぉん♪

『>AOSの反応はありませんが、クリーンインストールすれば再利用できると思われます』

 再利用(さいりよう)……またあとで使(つか)えるって――(なに)にだ?

「――SDK(エスディーケー)無き(いま)最優先(さいゆうせん)必要(ひつよう)なのは、それに変わる(もの)です――」

 酢蛸(すだぁーこ)!? これがありゃ裏天狗(うらてんぐ)を、また使(つか)えるようになるってのか!


「よし、買った!」

 その(こえ)を聞くなり、女性(じょせい)長机(ながつくえ)から、金貨(きんか)(ふくろ)を持ってきた。

 100ペケタを一瞬(いっしゅん)(かぞ)える木箱(きばこ)使(つか)って、キッチリ15回分(かいぶん)

 アレも便利(べんり)だな。寸法(すんぽう)とか、こっそり(はか)っとけ。了解(りょうかい)です。


 ごがちゃり♪

 革袋(かわぶくろ)中身(なかみ)半分(はんぶん)になった。

 けど酢蛸(すだぁーこ)の手がかりにしちゃ、(やす)いもんだ。


 ぺらり――あれ? 受けとった(かみ)がもう一枚重(いちまいかさ)なってた。

『品代として――1,500パケタ徴収しました。

 <内訳>廃棄された古代の女神像から回収した謎の遺物』

 まるっきり(おな)じだ。


 コトリ。

 女性(じょせい)が置いたのは、(ちい)さめの〝(おにぎり)〟みたいな(かたち)

「シガミー、コレも買ってください!」

 迅雷(ジンライ)がまた(ふる)えだした。

 やめろ(ふる)えるな、また(かじ)られるぞ。

 言われなくても、買ってやるから――


「お買い上げありがとうにゃっ♪」

 きゅらきゅらと(おと)を立てて去っていく、台車(だいしゃ)女性(じょせい)


「ぜんぶ無くなってしまいましたわよ? 本当(ほんとう)によろしいんですの?」

「かまわね……ないよ。みんなへの土産(みやげ)は、もらった(やま)のような菓子(かし)を分けりゃ十分(じゅうぶん)だし」


「にゃっふふふふっ♪」

 (ねむ)るように(わら)う目、ほころぶ口元(くちもと)

 いろいろ見透(みす)かされてる気もする。

 けど迅雷(ジンライ)大喜(おおよろこ)びしてるし、まあ良いだろ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ