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155/743

155:龍脈の棟梁(シガミー)、肉球と謝罪と兄神

2022/12/10 15:56

サブタイトル変更と、兄神への言及を追加しました。すみません。

 すべるように自在(じざい)にうごく(はこ)が、大女神像(おれたち)の目のまえに止まる。

 降り立った狐耳族(リカルル)と、猫頭(ねこあたま)獣人族(じゅうじんぞく)


「こほん♪ えーあー、まーそのー、なんと言ったらよいのかしら?」

 なんだか、歯切(はぎ)れが(わる)い。口元(くちもと)目頭(めがしら)が、波打ってる(ぐぬぬぬぅ)

 こんな(ひめ)さんは――ガムラン(ちょう)草原(そうげん)で〝殺りあった〟直後(ちょくご)にも見たぞ。

「――リオレイニアヲ〝パーティー:シガミー御一行様(ごいっこうさマ)〟へ勧誘(かんゆウ)したトきにも見まし()――」

 そうだった。けっこう、確執(かくしつ)があるっちゃある。

 (きら)いじゃねーし、(きら)われては居ねぇと思うけど。

 仁王立(におうだ)ちの(ひめ)さんの(かお)を見てたら、貸してた耳栓(みみせん)が目に入った。


「どうした――にゃ? そういえば耳栓(みみせん)片方(かたほう)を、そろそろ(かえ)してくれ――にゃ」

 猪蟹屋ん(シシガニヤン)毛皮(けがわ)の手を、さしだした。


 ふぉふぉん♪

『>そうですね、〝カナル(がた)イヤホン〟はアーティファクトにはあまり見られない構造(こうぞう)をしてるので、人目(ひとめ)にはさらさない(ほう)が良いでしょう」

 ビードロの(はじ)に、迅雷(ジンライ)言葉(ことば)(うつ)しだされた。

 彼女(かのじょ)のまえでは、迅雷(ジンライ)――つまり宛鋳符悪党(アーティファクト)からの念話(ないしょばなし)は、しないようにしてる。

 狐耳族(きつねみみぞく)やコントゥル家の習慣(しゅうかん)か――〝宛鋳符悪党(アーティファクト)〟をつかった暗殺(あんさつ)警戒(けいかい)するからだ。


 ぽふん。

 猪蟹屋ん(おれ)の手に乗せられたのは、耳栓(みみせん)ではなく――フサフサの手。

 (ひめ)さんたちが乗ってた(はこ)

 ソレが、いつのまにか目のまえにあった。

 段差(だんさ)(もの)ともせずに駆けあがった――(ひら)たくて(しろ)猫車(ねこぐるま)


 (ちい)さな(くるま)が付いた四つ(あし)が、まるで椅子(いす)(うま)のごとく……生えていた。

 ルコルの〝ギルド椅子(まほうつえ)〟にも似てるけど、コッチには〝魔法の神髄(ひかり)〟がまるで無い。


 ふぉふぉん♪

『>おそらく、最新の神々の技術が投入されています』

 そんなことが出来(でき)るのは、ひとりしか居まい。

 やい、五百乃大角(いおのはら)――おまえ(かく)れて(なに)やってやがんだ!?

 ビードロの(なか)に、梅干し(ヤツ)姿(すがた)はなかった。


にゃにゃにゃ(やあやあやあ)にゃみゃ(ぼくは)みゃみゃにゃ(ミャニラステッド)にゃにゃみゃぁ(グリゴリーだ)にゃ。リカルルとは(にゃにゃぁにゃ)旧知の仲だ(みゃみゃにゃ)にゃ」

 あたたかい、ふさふさの毛皮(けがわ)

 毛色(けいろ)(あか)るい緑色(みどり)

 ちなみに猪蟹屋(ウチ)猫頭青年(ねこあたませいねん)は、(あか)みがかった黄色(きいろ)だ。

 猫顔(ねこあたま)のちがいはわからないから、毛色(いろ)区別(くべつ)できるのはありがたい。


おれ(にゃ)いや(みゃ)ぼくはシガミーだよ(みゃーごにゃみゃ)

 (しろい)椅子(いす)だか(うま)にすわり、(はり)みたいな猫目(ねこめ)でコッチを見おろす――(かれ)だか彼女(かのじょ)だかに、こちらも名乗(なの)った。

 リカルルの知り合いってこたぁ、それなりの地位(ちい)に居るってことで。

 無礼(ぶれい)があっては、ご令嬢(れいじょう)面子(かお)をつぶしかねない。


 つかんだ手を上下(じょうげ)に振る――〝ニャミカ〟みたいな〝名前(なまえ)の出だし〟の猫耳族(ねこみみぞく)

『>ミャニラステッド・グリゴリーです』


「(んぅ? なんか手に持ってるぞ?)」

 手のひらに(つた)わる、ペトリとした感触(かんしょく)があった。

 手の真ん(なか)に、しっとりとした(まる)いのが乗せられてて――


 ふぉん♪

「>肉球です」

 なんだそりゃ?


 ふぉん♪

『>猫や狼などに見られる、手足のすべり止めです』

 あー知ってる。押すと(・・・)(つめ)が出るよな。

 獣人族(じゅうじんぞく)は〝混じり具合(ぐあい)〟によって、(あたま)手足(てあし)(さき)違い(・・)が出る。

 ウチの猫頭青年(ねこあたま)に、肉球(にくきゅう)てのは無かった。


みゃにゃ(よろしくね)にゃーご(シガミー)♪」

 (ねむ)るように、(わら)う目。

 そして、ほころぶ口元(くちもと)から(ちい)さな(きば)(のぞ)いている。

 やっぱり、〝猫頭(ねこあたま)〟は見ていて(こころ)がなごむ。

 モサモサ神官相手(しんかんあいて)に、(たか)ぶっていた気持(きもち)ちが、おちついていく。


「リカルル――時間(じかん)を掛けると、ますます言い出しづらくなるにゃぁ?」

 馬椅子(ねこぐるま)をクルリと(まわ)し、(ひめ)さんをみつめる――ミャーなんとか(ミャンとか)

 〝ミャンとか〟は、まだ手を(はな)してくれない。

 振り(はら)うわけにも、いかねえよなー。


「わ、わかっていますわっ……シガミィー!」

 猫頭(ねこあたま)魔物(まもの)みたいなおれと、猫頭(ねこあたま)猫耳族(ミャンとか)のあいだに、割り込むご令嬢(リカルル)

 やっと手を(はな)してくれる、〝ミャンとか〟。


「な、なんだぁ――にゃ?」

 あとずさろうにも、尻尾(しっぽ)が抜けたら女神(めがみ)(おこ)られる。


「こ、今回(こんかい)のことは全面的(ぜんめんてき)に、コントゥル家の落ち度です。まずは(いえ)代表(だいひょう)して謝罪(しゃざい)いたしますわぁー」

 心臓(しんぞう)を押さえる手。

 垂れる(こうべ)

 これは、この世界(せかい)での正式(せいしき)謝罪(しゃざい)仕草(しぐさ)で、下世話(げせわ)(はなし)をすりゃ――コントゥル家にひとつ、貸しが出来た(・・・・・・)ってことでもある。


「にゃっ? 領主(りょうしゅ)令嬢(むすめ)(あたま)を下げられるなんて、どんな冗談(じょうだん)だ――にゃ!? やめてくれっ心臓(しんぞう)(わり)ぃ――にゃっ!?」

 (なん)(はなし)をしてるのかわからんけど、たぶんきっと――〝全面的(ぜんめんてき)〟ではねぇと(おも)う。

 そもそもは〝烏天狗(からすてんぐ)のおれ〟と〝オルコトリア〟が、ギルドの建物(たてもの)を、ぶっ(こわ)したことが発端(ほったん)だし。


「ところが、そうはまいりませんのよ。(わたくし)(はは)――コントゥル家名代(けめいだい)による、領民(りょうみん)シガミーへの、〝攻撃並(こうげきなら)びに神域(しんいき)への強制転移(きょうせいてんい)〟は到底(とうてい)――言い(のが)れることなど、出来(でき)ませんっわっ!」

 攻撃(こうげき)わぁわかる。けど強制転移(きょうせいてんい)ってなぁ、なんでぇい?

 たしかに、あの(きり)のよくわからん場所(ばしょ)に、吹っ飛ばされはしたが……。


 ふぉふぉん♪

『>神域のことです。正式には〝オープンβ期間中に作成されたDEMOワールド〟で、前プレイヤーである〝オノハラレン〟が作成した世界です』

 わからん。けど――輪或弩(わあるど)ってのは、たしか天地(あめつち)のことで。

 己腹錬(おのはられん)てぇのはぁ……(はじ)めて聞いたぞ?


 ふぉふぉん♪

『>どうやらイオノファラーの兄が設定した、プレイヤー名のようです』

 かんがえた(ところ)神々(かみがみ)の〝全部(ぜんぶ)〟がわかるわけじゃねぇから、放っといたけど――神域(しんいき)兄神(あにがみ)がどうとか言ってた(やつ)だな。


 美の女神(めしのかみ)五百乃大角(いおのはら)兄神(あにがみ)

 己腹錬(おのはられん)……(おのれ)(はら)(きた)える?

 なんだか、ものすごく食うことに積極的(せっきょくてき)名前(やつ)だな……イヤな予感(よかん)しかしねぇ。

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