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138:龍脈の棟梁(シガミー)、きぐるみと食卓

 姫さん(リカルル)が、しきりに(しり)を向けてくる。

「なんでぇい、邪魔(じゃま)だな?」

 尻尾(しっぽ)が生えてない、(ねこ)毛皮(けがわ)をぺちりと(たた)いてやった。


「ふっぎゃっゝ@☆ん∮※#――――!!!!!!!!!!」

 うるせえ。

 仕返(しかえ)しとばかりに飛んできた手刀(しゅとう)が、(つくえ)(かど)に当たる。

 ――――ごばぎゃ!

 朽ちた倒木(とうぼく)のように、粉々(こなごな)(くだ)け散る(つくえ)

 安物(やすもの)(つくえ)だ。そりゃ(もろ)い。


 けど――――やべぇ、〝猪蟹屋(ししがにや)ん〟は金剛力(こんごうりき)使(つか)えるんだった。

 しかも――ただ着るだけで(・・・・・)


 ふっとぶ(なが)(はこ)に、必死(ひっし)に飛びつく。

 ぱしっ――――ずざざざざぁー!

()てててっ!」

 (ひめ)さんのおさがり――ツナギとかいう仕事着(しごとぎ)(つち)(ほこり)(はい)らないけど、ぶつけりゃ怪我(けが)をする。

 鑑定結果(びーどろ)は見てもらえただろうから、〝猪蟹屋ん(ふく)〟を(かえ)してもらおう――あ。


「みゃにゃ、ふにゃにゃ!」

 立ちあがると、(こし)を落とした〝猪蟹屋ん(ひめさん)〟がまた(しり)……いや、背中(せなか)を向けてきた。

「そういうことか――(わる)い、わからなかった」

 背中(せなか)金具(かなぐ)をつかんで――ジッジジジジジィーーーーーーッ!

 と引き下ろすと、すぽんと姫さん(リカルル)が飛び出してきた!


「っきゃっ――!?」

 むっぎゅっ♪

 どたりっ!

「痛ってぇ、ど、どいてくれ、つぶれちまうぅ~」

 (なが)(はこ)はあたまの(うえ)にかかげて、どうにか死守(ししゅ)した。

 (こわ)れてもスキルでなおせるけどコイツ(・・・)ぁ、霧の場所(ここ)とガムラン(ちょう)をつなぐ命綱(いのちづな)だ。

 大事(だいじ)にしておくに、越したことはない。


「し、失礼(しつれい)なっ! わ、(わたくし)はソコまで(おも)くは、有りませんでしてよっ!」

 いいから、この豪華絢爛な尻(ごりっぱさま)をどけてくれ――!


「――もうっ!」

 (しり)を押さえた姫さん(リカルル)が、飛びのく。

 そっか、おれが脱がせてもらったときも――(ひめ)さんの豪華(ごうか)胸元(むなもと)に、ぶち当たったっけ。


「ほら、手をかして差しあげますわっ」

 その恥じらいの表情(ひょうじょう)

 ニゲルなら、よろこびそうだ。


「よいしょっと――また(つくえ)を出さないとな」

 ヴッ――――ごとん。


 (つくえ)を出して、〝(なが)(はこ)〟をその(うえ)に置いた。

 おのおの(たお)れた椅子(いす)を持ってきて、正面(しょうめん)腰掛(こしか)けた。

「はぁぁぁぁーっ」

 (なが)(いき)をはく、伯爵令嬢(はくしゃくれいじょう)

「ふぅぅぅぃーっ」

 おなじく(なが)(いき)をはく、一般市民(いっぱんしみん)子供(こども))。


 すぅ――はぁ――すぅ――――はぁ――――すぅぅぅぅぅぅ――――――――


「――――それで、(はな)した相手(あいて)は、どなた(・・・)だったんですの?」

「――――鑑定結果(かんていけっか)はみれたか? あと、なんで長い箱(コイツ)のつかい(かた)がわかった?」

 からみあう視線(しせん)

 (あせ)気持(きも)ちが、会話(かいわ)をさまたげる。


 すぅ――はぁ――すぅ――――はぁ――――すぅぅぅぅぅぅ――――――――ふた呼吸待(こきゅうま)つ。


「――――妖狐(ようこ)……ルリーロさまと、ウチの(めし)(かみ)だった」

「――――鑑定結果(かんていけっか)(とお)り、コレは〝通信機(つうしんき)〟ですわ」

 からみあう会話(かいわ)

「――――だからココがドコだとしても、たぶんなんとかなる――と(おも)うぜ……だよ」

「――――央都(おうと)のお(とう)さまと話をするのに、似た(もの)使(つか)っていますのよ」


「「おちついて――」」

 …………。…………。

 (ひめ)さんが手のひらをさしだす。

 (さき)にしゃべれと言うことらしい。

「そ、そうだなー。(めし)でも食いながら――ゆっくり(はな)そう」

「そ、そうしましょう。さしあたって、危険(きけん)もないようですし」


 ひとまず〝猪蟹屋(ししがにや)ん〟は、着ないでおく。

 (めし)(さき)だ。


 ギューッ――ばくん♪

 あたまを閉じたら、(なか)(ひと)が居るみたいに〝(あつ)みのある(ひと)のかたち〟になった。


「シガミー、もう一脚(いっきゃく)椅子(いす)を出せるかしら?」

「売るほどあるから、出せるけど」

 ヴッ――――ことん。


「よいしょっと――これでいーわねっ♪」

 あたらしく出した椅子(いす)に、姫さん(リカルル)が〝猪蟹屋(ししがにや)ん〟を(すわ)らせた。


「うふふふふふふふっ」

 猫耳頭(ねこみみあたま)のひたいを執拗(しつよう)になでる、その(かお)はやさしげに見える。

 根は(わる)(やつ)ではないのだ。ただ、()戦闘狂(せんとうきょう)なだけで。


 ぼくも、そっと猫耳頭(ねこみみあたま)をなでた。


   §


 献立(こんだて)は、収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)に入れて置いた〝寿司一式(すしいっしき)〟で(つく)れる(もの)になる。

 〝魔法粥(まほうがゆ)〟と〝串揚(くしあ)げ〟の材料(ざいりょう)もあるけど、さすがに飽きた。


「それで、イオノファラーさま(たち)からの連絡(れんらく)は、いつ(ごろ)になるんですの?」

 (さかな)短剣(ナイフ)でさばいていく、伯爵令嬢(リカルル)

 その手際(てぎわ)立派(りっぱ)なもので、料理指南役(リオレイニア)人知(ひとし)れぬ苦労(くろう)がしのばれる。


「わからないって言ってたよ」

 五百乃大角(いおのはら)(よう)にしまって置いた〝ムシュル(がい)〟を取りだし、貝殻(から)()以外(いがい)収納魔法(しゅうのうまほう)で分けた。

 かまどの(あみ)(うえ)に乗せ――「生活魔法(ひのたま)」――火をつけた(ボウヮ!)


「じゃあ念のため、この子をシガミーに着ておいてもらった(ほう)が、安心(あんしん)かしら?」

 わざわざ手を――「生活魔法(みずのたま)」――で(あら)って綺麗(きれい)にしてまで、猫耳頭(シシガニヤン)(したい)をなでる。

 そこまで気に入ったのか。わからん。

 もっと綺麗(きれい)()の張るものが、(ひら)たい(しろ)にはゴロゴロしてたけどなー。


「ソレは大丈夫(だいじょうぶ)らしいよ。この場所(ばしょ)には――たぶん(・・・)(ほか)(なに)もいないから、安心(あんしん)してって言ってた」

 いろいろな調味料(ちょうみりょう)がでる酒瓶(さかびん)から、あつめておいた――〝しょうゆ〟。

 ソイツを――たらぁり――じゅわわわわっ♪


「あら、とても良い(かお)り♪」

 川魚(さかな)(あぶら)で焼いてるから、ソッチからも良いにおいがしてくる。


「よーし、できたぁ!」

「こちらも、できましたわぁ!」

 こう見えて、彼女(かのじょ)はうまい(めし)(つく)れる。

 (もり)(おく)五百乃大角(いおのはら)生身(なまみ))が出たときや、猪蟹屋(ししがにや)行列(ぎょうれつ)人手(ひとで)が足りなかったときにも(たす)けてもらった。


「あら、この〝ショーユウ〟っておいしいわっ♪」

 口元(くちもと)を押さえ、そんなことを言う。


「コッチの〝(さかな)を揚げたヤツ〟も、すげぇうめぇ♪」

 こうして、うまい(めし)さえ食えてりゃ、(ひめ)さんとも(たの)しくやっていけそうだ。


   §


「っぶっふぉ、けほけほっ――――い、〝居る(いる)〟じゃねぇーかっ! 大嘘(おおうそ)つきやがって、あの惡神(わるがんみ)めっ!」

 そろそろ食べおわりそうな(ころ)に、ソレは起きた(・・・)

「っきゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――た、〝たぶん〟って副詞ふくしがついてたから、(うそ)ではありませんわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 (きり)(なか)からのっそりと、降りてきた(・・・・・)のは――――〝地を揺らすことなく〟(ある)く、巨大(きょだい)なんか(・・・)(あし)だった。

 その(はば)物置小屋シガミーてい三倍(さんばい)はありそうで、踏まれたら蘇生(そせい)――――できないと(おも)う。


 最初(さいしょ)は、とおくの(ほう)巨大(きょだい)(はしら)が立っているのを、(ひめ)さんがみつけた。

 食べ終わったら、行ってみようと言うことになって――(きりが)食卓(しょくたく)(なが)れこんできて――(うえ)を見あげたら一面(いちめん)天井(てんじょう)で――いまに(いた)る。


(つよ)(ふく)を着てるひまがねぇ――――いそいで(あし)(した)から出ねぇとぉーーーー!」

 通信機(ながいはこ)だけ持って、食卓(つくえ)をとびだす

「け、結構(けっこう)(おも)いでぇすぅわぁーーーー!」

 (ひめ)さんが、自分(じぶん)より(おお)きな猫耳頭人間(シシガニヤン)を、大事(だいじ)そうに(かか)えた。


迅雷(ジンライ)は、(なに)があっても(こわ)れねえから放っといて良い! 〝猪蟹屋ん(そいつ)〟は捨ててけっ!」

「だぁーめぇーでぇーすぅーわぁー、そーんなかわいそーうなことが出来(でき)るわけがぁーありませぇーんでしてぇーよぉーぅ!?」

 迅雷(ジンライ)がっていうんじゃねーな。

 その猫耳頭(ふく)のなにが、そこまで気に入ったんだよ。


 しかたねぇ――引きかえす。

 本当(ほんとう)金剛力(こんごうりき)がないと、まだまだ非力(ひりき)だ。

 (みす)(なか)(ある)いてるみたいに、からだが(おも)い。


 がしり――ようやく、〝強い服(シシガニヤン)〟にとりついた。

 (ひめ)さんが、なんでか(こし)を落とした。


 ――――ズゥォォォォォォォォッ!

 (ひめ)さんの(あたま)に、巨大(きょだい)(ひら)たい(あし)(うら)が――(さわ)ってる。

 やべぇ、あまりにも巨大(きょだい)なせいか〝(あし)〟の(はや)さが、つかみづれぇ!


「はぁ、ひぃ……じ、迅雷(ジンライ)、おまえ――自分の足で(・・・・・)(はし)れよ!」

 兜頭(あたま)(ひら)いたり、猫頭語(ねこご)をしゃべったりは出来(でき)るんだから、ソレくらいしろ!


「ふにゃぁァぁごっ()

 猫耳頭(シシガニヤン)が、ケンカしてるときの(ねこ)みたいに鳴いた。

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