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133:龍脈の棟梁(シガミー)、コントゥル母娘ふたたび

 すぅぅぅぅ――――ニタァリ。

 つややかな口元(くちもと)が、(かす)かにゆがむ。

 やめて、その(わら)い。

 ふかい呼吸(いき)ひとつで、聖剣切(ぶったぎ)りの〝弾込(たまこ)め〟はおわる。


「また、ふりだし(・・・・)(もど)っちまったじゃねーか……(もど)っちゃったね」

「――はイ、シガみー。どうしマしょうか?――」

 〝猪蟹屋(ししがにや)ん〟の間合い(・・・)は、この建設予定地(ちのそこ)のだいたい……半分の半分の半分(やつぎり)くらいか。

 自在(じざい)にうごく子供(シガミー)のカラダと、この自然(しぜん)にうごく(ふく)があれば――戦闘狂(ひめさん)ですら、たやすく押さえこめる。


 けど、真っ(こう)からやり合うのは、避けたい。

 最近(さいきん)ようやく、まえに(たたか)ったときの遺恨(いこん)が晴れてきたところだしな――


 ――ォンヴォン♪

 ソレ(・・)は、突然(とつぜん)あらわれた。

 木さじ食堂(しょくどう)女将(おかみ)が、木さじを振りまわすときの剣筋(けんすじ)

 目で追えない速度(そくど)を持つ、いくさ場ではあまり会いたくない(たぐい)いの。


 むぎゅりっ――――「リカルルちゃぁん♪ ひぃさぁしぃーぶぅーりぃーねぇー♪」

 現場監督(リカルル)を踏みつぶしたのは、空飛(そらと)ぶ……(ひつじ)(つの)山菜(ぜんまい)みたいな――ルードホルドの魔法杖(きょだいなまほうつえ)


『▼』――――ピピピッ――――♪

 とつぜん(あら)れた彼女(・・)を、おくれて〝動く物を見(モーション)える化する(なんたら)〟が(とら)えた。


 見た目は狐耳(きつねみみ)が生えた、(わか)女性(じょせい)

 (リカルル)(なら)んでも、その(はな)やかさに甲乙(こうおつ)はなく、薄暗(うすぐら)い地の(そこ)(はな)が咲いたようだ。

 事実上の(リオレイニア)美の女神(・サキラテ)と、名目上(いお)美の女神(はら)本来(ほんらい)姿(すがた))より、(ちち)(しり)が……(なん)て言やぁいーんだ?


「――肉感的(グラマラス)……〝絢爛豪華(けんらんごうか)〟と(ひょう)しては?――」

 うん、やっぱり、そんな(かん)じだよね。

 リオの胸元(むなもと)とかは、(すこ)しさみしいからな。

 おれ……ぼくも(もと)(おとこ)だから、ニゲルの(はな)(した)が伸びるのも――わかる。


 ――けどだ。

 あの見た目にまどわされると――狐火(きつねび)()を焼かれる。

「――そノ攻撃(こうげキ)ヲ、(わたシ)は受けていませン――」

 そりゃそーだ。化か(バカ)されたのは――おれだけだからな。


 夫人(おくがた)()本生(もとう)まれの――妖狐(ようこ)でまちがいねぇ。


「――でスが、イオノファラーが知らナい転生者(てんせイしゃ)ハ、コの世界(せかイ)存在(そんざイ)しませン――」

 しませんったって、居るから居るって言ってるだけだ……よぜ?

「――少々(しょうしょう)お待ちください――」


「うっぎゃぁぁぁぁっ――――!? お、お(かあ)さまっ!? 一体(いったい)どこからお()きになられましたのーっ!?」

 まるでコレから、合戦(かっせん)(いど)女武者(おんなむしゃ)のような――姫さん(リカルル)が、ぼくとか魔物(まもの)とかを討伐(とうばつ)するときと、(おな)じような格好(かっこう)


「うふふふーのぉーふぅー♪」

「ひさしぶりって、このあいだお会いしたばかりじゃありませんのっ! お(はな)しになって――」

 このやり取りは、一週間前(いっしゅうかんまえ)にも見た。


 けど今日(きょう)はなんで、あんな(いさ)ましい格好(かっこう)してるんだろ?

 ちかくで合戦(かっせん)でも、あるのかな?


 ふぉん♪

『>全ファイル検索:インデックス作成『妖狐』xor『転生者』

 >検索を開始します

 >検索が終了しました

 >該当項目は15736件

 >創作物や伝承、ならびに『転生者/シガミー』に関する項目を除外

 >事象ライブラリに該当する項目は存在しませんでした』

 なんか出たけど、すぐに止まって消えた。


「――イオノふァラーの持ツ(スべ)てノ情報(じょウほう)にアクセスしましタが、シガミー以外(いがイ)転生者(てンせいしゃ)妖狐(ようコ)(かン)すル情報(じょうウ)は、一切(いっさイ)ありませんでしタ――」


「(なら、ちょっと聞いてみてよ。御神体(あいつ)はいま、どこに居るんだ?)」


 ふぉんふぉふぉん♪

『>FATSシステム内線#10286を呼び出しています

 >呼び出しています

 >呼び出しています

 >通話が出来ませんでした』


「――おかしイですね。ガムラン(ちょウ)(ナか)ニ居るナら、御神体(からダ)(こワ)レでもしない(かギ)りハ、通話(つウわ)(さまタげ)げられるコとは無いはずでスが――」

 (たな)隙間(すきま)にでもはさまって、(こわ)れたりしてないだろうなぁー?

 もし、そうなら一大事(いちだいじ)だ。


「――御神体(ごしンたい)(わたシ)(ツぎ)くらいニは頑丈(がんジょう)でスので、(コわ)レた可能性(かのうせイ)(ひク)いカと。イオノファラー(がワ)デ、通信(つウしん)ヲブロックしてイる確率(かくりツ)74(パーセンと)……七割(ななワり)以上(いじょウ)でス――」

 そりゃ、サボりってことか?

 このいそがしいときに。


「――あらっ、シガミーちゃんも居――――うぎゃ!? 」

 姫さん(リカルル)、そっくりな(かお)が――こっちを見つけるなり、ひきつった。


「ぅきゃあっ――シガミーちゃんがぁー、召しあがられて(・・・・・・・)ますわぁ!?」

 ソレ、さっき姫さん(リカルル)がやったし。


「いますぐぅーたすけぇだぁしぃーまぁすぅーわぁぁぁぁっ!」

 三度(みたび)(けん)をかまえる、ご令嬢(れいじょう)――

 え、だから、さっきやったでしょ?

 なんで姫さんまで、またおどろいてんのさ?


「まてまてまってー、食われてない食われてない! 召しあがられてもないよ、こりゃ(つく)(もん)だぁー!」

 (こえ)を張り上げ、ジリジリと近寄(ちかよ)る。

「(おい、いまのリカルル、おかしくなかったか?)」


「――ふざけている(わけ)では、ないようです。シガミーの〝べらんめえ調(ちょう)〟に(たい)して「魔物(まもの)が出たぞー!」と大騒(おおさわ)ぎになる事例(じれい)酷似(こくじ)しています――」


「えーっと、そう、これ毛皮(けがわ)っ! 手作(てづく)りの毛皮(けがわ)を着てるだけぇでぇすぅよぉー!」

 おれの(かお)を、よーくみせてやると、コントゥル母娘(おやこ)が――しぶしぶ(けん)(つえ)をおさめた。

 ――コレは、ふざけてるだろ。


「まあいいや。そういえば今日(きょう)(くろ)っぽい護衛(ごえい)筆頭(ひっとう)の……すっごい(いかつ)くて(つら)の良い……素敵(すてき)(ひと)はいないんですか?」

 (かれ)が居てくれるなら、この母娘(ふたり)滅多(めった)なことはしないと思うし。


「エクレアのことかしら?」

「じつわねぇー、いま央都(おうと)にお(よめ)ちゃんさんぉー、お(むか)えに行ってるのよぉねぇーん♪」

 やべぇ、(こえ)もどことなく似てるし、五百乃大角(いおのはら)性格(なかみ)が似てる気がしてきた。

 ちょっと(こえ)ぇー。


「ところで、きょうは基礎工事中(きそこうじちゅう)だって聞いたんだけど……こんな有様(ありさま)でわぁ、四日後(よっかごの)結婚式(けっこんしき)にわぁ、まにあわないんじゃなぁいのぉかしらぁー?」

 (かげ)亀裂(・・)(つえ)で指す、伯爵夫人(おくがたさま)


「お(かあ)さまそれは、シガミーが面白(おもしろ)(わ・ざ)とやらの一撃(い・ち・げ・き)でぇ――ー(きざ)みつけたみたいなんですのよ?」

 じりじりじり、あれなんで近寄(ちかよ)る?


「くすくすくすくすくすくす、あのねぇー。きょうわぁ、どうしてぇ、こぉんなフル装備(そうび)であそぉびにきたんだぁとぉおもうぅぅ? クツクツクツクツッケタケタケタケタケタケタケタケタッ♪」

 なんだろ、その(こえ)

 それに、武者ぶるいするのも、やめよう?

武者震い/大事な場面や戦いに際して、興奮に打ち震えること。

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