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127:カブキ者(シガミー)、ギルド再建クエスト

 ギルド再建(さいけん)フェスタ開催(かいさい)決定(けってい)してから、はや一週間(いっしゅうかん)


 がぁんがぁん、ごごごぉん――――!

 『〝(めっ)せよ〝禁止(きんし)』の看板(かんばん)のとなりに、べつの看板(かんばん)が立てられた。


『ギルド支部屋内ならびに、建設予定地における戦闘行為は、全面的に禁止されています。

 ガムラン町冒険者ギルド支部長 レムゾー・クエーサー●』


「「それわぁ、そーだよなぁ」」

 実行犯(じっこうはん)二人組(ぐたりぐみ)……つまり、シガミー(ぼく)鬼娘(オルコトリア)が――率直(そっちょく)感想(かんそう)を述べた。


 (あら)くれ(もの)ぞろいの冒険者(ぼうけんしゃ)が、ひとつの目的(こくてき)に向かって行動(こうどう)(とも)にする。

 そう、〝ギルド再建(さいけん)フェスタ〟とは、はやい(はなし)が〝ギルド支部再建(しぶさいけん)クエスト〟だ。


 そして、クエスト(ちゅう)小競(こぜ)り合いは、〝日常(にちじょう)〟でしかないわけで。

 ぼくとオルコトリアに〝制圧(せいあつ)〟された、十数人(じゅうすうにん)冒険者(ぼうけんしゃ)たちが――

「「「「「「「「「「「「「「「で、ですよ、ねぇー」」」」」」」」」」」」」」」

 ――なんて愛想笑(あいそわら)いをしてる。


「まったく、毎日毎日(まいにちまいにち)よく飽きずに、乱闘騒(らんとうさわ)ぎができるもんだね」

「いや、それなんだがよう。ここ一週間(いっしゅうかん)、狩りどころか採取(さいしゅ)クエストも受けてねぇからさ――」

 冒険者(ぼうけんしゃ)1が言う。ギルドで見かけたことはあるけど、名前(なまえ)は知らない。


「――そう、そーなんだよ、なんかもう体力(たいりょく)を持てあましてるっつーかさー」

 冒険者(ぼうけんしゃ)2も言う。こっちは木さじ食堂(しょくどう)でいつも見かけるヤツだ。やっぱり名前(なまえ)は知らない。


「あんたたち、自重(じちょう)って言葉(ことば)しってる?」

「「「「「「「「「「「「「「「「オルコトリアだけには、言われたくねぇーーーー!」」」」」」」」」」」」」」」」

 コレは、冒険者(ぼうけんしゃ)たちとおなじ意見(いけん)だ。

 オルコトリアには言われたくない。


「ガムラン(ちょウ)に来タ当初(とウしょ)のシガミーよりハ、オルコトリアの(ほう)が、自重(ジちょう)してイると(オも)われマすが?」

「……うるさいよ迅雷(ジンライ)クン?」


「「「「「「「「「「「「「「「ガハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」」」」」」」」」」」」」」」

「アハハハハハッ――(ちが)いないわね、シガミー♪」

 おまえら全員(ぜんいん)(わら)いやがってっていうか、オルコトリアまで――うるさいよ?


 ――――ハハッハハハッ――――ぴたり。

 きゅうに(くち)をつぐんだ冒険者(あらくれもの)たちが、ちりぢりに持ち場(しごと)にもどっていく。


「ちょっと、オルコトリアさん。(わら)ってる場合(ばあい)では……ないのではないですか?」

 白い給仕服(リオレイニア)収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)鉄板(てっぱん))付きの革紐(ベルト)を、何本(なんぼん)(かか)えてやってきた。


 その(こえ)に、嘲笑(ちょうしょう)(いろ)はない。

 リオレイニアは、やはり純粋(じゅんすい)にオルコトリアの〝()(すえ)〟を(あん)じているのだ。


 けど、百戦錬磨(ひゃくせんれんま)鬼の娘(オルコトリア)にイヤミを言う、(もと)聖剣切りの閃光(ヴォルトカッター)〟のリオレイニア。

 冒険者(ぼうけんしゃ)たちから彼女(リオ)は、〝(しろ)(あね)さん〟……なんなら〝白悪魔(しろあくま)〟として(おそ)れられている。


   §


「ギルドが倒壊(とうかい)したのが、変異体(バリアント)討伐後(とうばつご)で、ほんとうによかったですね。そうでなかったら、アナタはいまごろ、どうなっていたことやら」

 鬼娘(オルコ)から目を伏せ、ため(いき)()く、白い姉さん(リオレイニア)


 それはそうだなー。

 ここガムラン(ちょう)は、魔物境界線(まものきょうかいせん)同義(どうぎ)の、冒険者(ぼうけんしゃ)のための(まち)だ。


 魔物迎撃(まものげいげき)(かなめ)となる〝ギルド施設(しせつ)〟を、まるごと壊滅(かいめつ)させた(つみ)は――(おも)い。


「そ、そうよね。がんばって、ギルド支部(しぶ)を建てなおさなきゃね」

「か、かたじけない」

 実行犯(じっこうはん)二人組(ぐたりぐjみ)は、休憩(きゅうけい)もソコソコに立ち上がる。


「シガミーが、気にやむことはないでしょ? いくら(おな)故郷(こきょう)のテェーング(くん)がやらかしたからって」

 こんどはレイダが来た。

 (ちい)さな木箱(きばこ)(かか)えている。


 (なか)を見ると、(うす)鉄板(てっぱん)が詰めこまれてた。

 革紐(ベルト)は付いてないけど、これもウチの売り(もの)魔法具(まほうぐ)だ。

 薄板(うすいた)(なか)に、〝生活魔法(せいかつまほう)ふたつでスグに食べられる魔法粥(まほうがゆ)〟が六個(ろっこ)ずつ(はい)ってる。


 収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)便利(べんり)だが、これまではほとんど使(つか)われていなかった。


 ギルド壊滅(かいめつ)からの一週間(いっしゅうかん)で、いろいろなことが変わったけど、一番変(いちばんか)わったのは収納魔法具(しゅうのうまほうぐ)価値(かち)だとおもう。

 その便利(べんり)さが見直(みなお)され、レイダ考案(こうあん)兵糧丸(ひょうろうがん)セットが、よく売れるようになった。


「そ、それは、そうなんだけど、()(もと)(じゅつ)が起こしたことだから――とても(ひと)ごとではいられないよ」

 人ごとでは無い。立派な自分ごとだ。


「それに、(ほか)ならぬ天狗(てんぐ)家族(かぞく)みたいだしね」

 テェーングとカラテェーには、日替わりで夜間作業をさせている。

 させていると言っても、結局(けっきょく)ぼくが全部(ぜんぶ)やってるわけだけど。


 ちなみに金剛力(こんごうりき)がまた使(つか)えるようになったので、30人分(にんぶん)仕事(しごと)をひと(ばん)出来(でき)る。

 なんなら、一時間(いちじかん)もかからない。

 だから一人三役(ひとりさんやく)でも、睡眠時間(ねるじかん)は、どうにか確保(かくほ)できてる。

 さすがに、ルコルの店(となりまち)(かお)をだす余裕(よゆう)はないけど。


「ふーん。そんなの気にしないで良いと(おも)うけど? カタテェー(くん)のこともテェーングさまのことも、オルコトリアさんのことだって、(だれ)も責めてないでしょう?」

 そこが、すこし引っかかるんだけど――あ、まさか、コレもか?


「――はイ。確認(かくにン)しましタ。事象(じしょウ)ライぶラリにも、明記(めいキ)さレています。『女神の食事を妨げることなカレーは中辛で』と――」


 酔っぱらったときにも言ってたな。

(ごはん)がいちばぁーん大事(だいじ)。あとわぁ、みんな仲良(なか)くそれなりにぃ~♪」

 とかなんとか――

「――はイ。ソの認識(にんしキ)が、〝この世界(せかい)のすべて〟でス――」


「――下手(へタ)なことヲすると、イオノファラーの食事(しょくジ)(さまタ)げとみなさレ……不測(ふそク)事態(じタい)ヲまねく(おソ)れモあります――」


 烏天狗(カラステング)正体(しょうたい)は、まだ――〝美の女神(めがみ)イオノファラー((さか)鏡餅(かがみもち))〟と〝アーティファクト迅雷(ジンライ)空飛(そらと)便利棒(べんりぼう))〟しか知らない。


 うわさをしたら――ぽこん♪

 計算(けいさん)(もの)仕分(しわ)けなんかに、便利(べんり)だってんで引っ張りだこの梅干(うめぼ)しさまが、視界の隅(ビードロ)にあらわれた。


 いま使ってる〝ビードロ((しょう))〟は迅雷(ジンライ)が居なくても使(つか)えるように、耳栓(みみせん)改造(かいぞう)して(つく)ってもらった。

 〝動くものを(モーション)見える化する(なんたら)〟もないし、あまり(はな)れたら収納魔法(しゅうのうまほう)もつかえないけど――こうして迅雷(ジンライ)の中にあらわれた――分け身(カーソル)(はな)すことができる。


「(どうしたぁ?)」

「――ふっふっふぅぅぅぅぅん♪ 知りたぁい? ひょっとしてぇ、知・り・たぁ・いー?――」

 やかましい――と(おも)ったけど、やっぱり五百乃大角(コイツさま)子供(ガキ)なので、素直(すなお)に聞いてやる。

「うん、知りたいな。おしえてよ」

 この(ほう)がはやい。


「――じゃぁ、おしえてあげまぁす♪ じつはねぇー、あたらしく建てるギルドの建物(たてもの)だけどさーっ、〝(つの)ウサギ変異種(バリアント)大角(おおつの)〟を避雷針(ひらいしん)がわりに使(つか)うことがぁ、正式(せいしき)決定(けってい)しましたぁ! イェーイ、拍手(はくしゅ)ー♪――」

 ふぅん、そうなの?

 ひとまずココは――ぱちぱちぺちり――おとなしく手を(たた)いておく。

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