表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/743

126:カブキ者(シガミー)、カブキーフェスタ中止のおしらせ

『ヒーノモトー国からの来訪者はガムラン町内において、

 戦闘特化型呪文の使用を全面的に禁止する。

 コントゥル領領主代理 リカルル・リ・コントゥル■

 コントゥル家名代 ルリーロ・イナリィ・コントゥル■』


 がぁんがぁん、ごごごぉん――――!

 (まち)の入り(ぐち)とギルド支部跡地(しぶあとち)に、早速(さっそく)そんな看板(かんばん)が立てられてる。


 良く滑る下駄(ゲタスベール)と、オルコトリアの豪腕(ごうわん)

 そして、気やすめ程度(ていど)のはずの〝(めっ)せよ!〟。

 この(みっ)つを混ぜると――ギルドの建物(たてもの)(ほろ)ぶ。

 ココまでの威力(いりょく)になった理由(りゆう)は、わからないけど――町中(まちなか)使(つか)ったら駄目(だめ)なのは、わかった。


「だ、大丈夫(だいじょうぶ)……コン?」

 狐耳(ルコル)が、物陰(ものかげ)(かく)れてる。

 コントゥル家の(ひと)たち(とくに狐耳母娘(リカルルおやこ))には、あんまり会いたくないらしい。


相当(そうとう)(おこ)られそうだけど……が、頑張(がんば)るよ」

 巻き込まれた人々(ひとびと)治療(ちりょう)のために、手持(ても)ちの蘇生薬(エリクサー)だけでなく(まち)に有った在庫(ざいこ)の、ほぼすべてを使(つか)った。

 いろんな意味(いみ)頑張(がんば)らないと――猪蟹屋(ししがにや)(つづ)けられなくなる。


「ルコル……ココもそろそろ(あぶ)ないニャ? とっととずらかるのが、(きち)ミャ!」

 そうだね。今回(こんかい)のことに君ら(・・)も、一枚(いちまい)二枚(にまい)もかんじゃったからね。


 この世界(せかい)にも、吉凶(きっきょう)(かんが)(かた)がある。

「――はイ。世界(せかイ)のベースとなるノは、イオノファラーや神々(かミがみ)(くニ)言葉(ことバ)様式(ようシき)ですノで――」

 ならば、この場は――〝逃げるが勝ち〟だ。

 彼等(かれら)には隣町(となりまち)で、ほとぼりが冷めるのを待ってもらおう。


「ごめんね、まさかこんなことになるとは……」

 (まち)のほぼ中央(まんなか)、かなり大きな存在感(たたずまい)だった冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドが、(いま)はもうない。


 〝烏天狗(からすてんぐ)〟――(VS)――〝(おに)(むすめ)〟。

 その(かる)手合(てあ)わせ――が厄災(やくさい)をもたらしてから、(やく)30(ふん)

 ギルド(ちょう)妖狐(ようこ)ルリーロの、的確(てきかく)判断(はんだん)(こう)(そう)し――巻き込まれた人々(ひとびと)は、即座(そくざ)救出(きゅうしゅつ)された。

 けが(にん)は、すでに蘇生薬(エリクサー)僧侶(そうりょ)により治療(ちりょう)されている。


「死んだ(ひと)が、居なければ上出来(じょうでき)ニャ。落ちついたら、またお(みせ)にくるミャ?」

 どすん――すとん――ルコルが取りだした椅子(まほうつえ)に飛びのる、猫耳娘(ニャミカ)


「また、会おうコォォォン――!」

 (ひざ)(うえ)(かか)えられた、狐耳の(ルコル)少年(しょうねん)

 その姿(すがた)が見えなくなったころ――ぼくは行動(こうどう)開始(かいし)した。


   §


 試合の舞台(ぼうけんしゃギルド)は、ぽっかりと更地(さらち)になっている。

「いやぁ、(なん)にもなくなっちゃったねー」


 迅雷(ジンライ)収納魔法(しゅうのうまほう)大活躍(だいかつやく)したのは、言うまでもない。

 それでもあの(おお)きさの建物(もの)を、まるごと収納(しゅうのう)してもう一回取(いっかいと)り出す――つまり〝(なお)すこと〟は残念(ざんねん)ながら出来(でき)ないみたいだった。

 そんなのが出来(でき)るのは、せいぜい物置小屋(うちのいえ)サイズまでなんだそう。


 それは仕方(しかた)がない。迅雷(ジンライ)収納魔法(しゅうのうまほう)本来(ほんらい)、いろんな種類(しゅるい)(もの)を詰め込めるようにはなっていなかったのだし。


 けど問題(もんだい)は、ココからだ(・・・・・)

 (しん)じられないことに、どういうわけか御神体(いおのはら)までもが、とても(やく)に立ったのだ。

 神々(かみがみ)世界(くに)知恵(ちえ)は、ぼくにも(まち)連中(れんちゅう)にもサッパリだったけど、その指示(しじ)どおりに(うご)いた迅雷(ジンライ)は、まるで神々(かみがみ)使(つか)(ゆめ)道具(どうぐ)で――ちょっとびっくりした。


 一瞬(いっしゅん)で、(くす)れ落ちた瓦礫(がれき)撤去(てっきょ)し、必要(ひつよう)なものと要らないものを分類(ぶんるい)

 こまかい備品(びひん)調度品(ちょうどひん)や、すべての家具(かぐ)を〝和菓子の箱(フォルダ)〟ごとに、わけて収納(しゅうのう)

 しかも、個人(こじん)の持ち(もの)なんかは、迅雷(ジンライ)(せい)(ふくろ)に入れて、もう返却済(へんきゃくず)み。


 ギルドの仕事(しごと)関連(かんれん)書類(しょるい)(たば)書籍(しょせき)(いた)っては、数百個(すうひゃっこ)迅雷(ジンライ)製の軽箱(かるばこ)整頓(せいとん)され――(かり)移転先(いてんさき)である〝リカルル(てい)〟に、(はこ)びこまれた。

 なんと受付業務(うけつけぎょうむ)一部(いちぶ)は、明日(あす)にも再開(さいかい)されるそうだ。


 ()(もと)にも仕事(しごと)ができるヤツはいたが、あんなのは見たことがない。

 五百乃大角(いおのはら)手際の良さ(しごと)には、とてもおどろいた。

 それと同時(どうじ)に、すこし恥ずかしくもなった。

 ぼくに、あの采配(さいはい)がとれるなら――いつでもあのチカラを、使(つか)えたってことだからだ。


五百乃大角(いおのはら)のマネは……とてもできない」

「――まア、そう落ちコまずに――」

 むぅ? 迅雷(ジンライ)のその物言(ものい)いには、なんか引っかかった。


 迅雷(ジンライ)正真正銘(しょうしんしょうめい)神々(かみがみ)使(つか)道具(どうぐ)だけど――〝(かみ)による采配(さいはい)〟がなければ――迅雷(ジンライ)だけでは、あのチカラは使(つか)えないってことでもある。


「……実際(じっさい)迅雷(おまえ)は、どこか抜けた(ところ)があるしな」

 言ってやった。

「――ハはハ。ご挨拶(あいさツ)でスね、シガみー? そろソろ休憩(キゅうけい)は……おわりにしましょウか――」

 そーだなー、よっこらせっと。


 ガムラン(ちょう)中央(ちゅうおう)巨大(きょだい)更地横(さらちよこ)

 ぼくたちは、五百乃大角(いおのはら)に言われた作業(さぎょう)を、すすめていく。


 置かれた女神像(めがみぞう)と、その背中側(せなかがわ)から伸びる(ふと)導線(どうせん)

 その行き(さき)を目でたどると、なんだかよくわからない(はこ)が、たくさん積みあがっていた。


「――あノ(ハこ)たチは、女神像(めがミぞう)構成(こうせイ)スる、システム筐体(きょうタい)でス――」

 女神像(めがみぞう)背中(せなか)に付いてた(はこ)が、解体(ばら)されてるのはわかるけど――説明(せつめー)


「――基本的(きほんてき)には、イオノファラー本人(ほんにん)背中(せなか)搭載(とうさい)されていた(もの)と、(おな)じです――」

 説明(せつめー)

「――箱群(はコ)最終的(さいしゅうテき)に、いチばん(おオ)きナ(ハこ)でアる〝ブラックボックス〟へと(つナ)がっていマす――――」


 積みあがった(ちい)さい(はこ)や、それを(たば)ねる(ちゅう)くらいの(はこ)

 ぜんぶまとめて、女神像一式(ひとそろえ)てのは、わかった。


 空中(ちゅう)に浮いた迅雷(ジンライ)が、ルガ蜂の動き(ふるえた)

 ヴヴヴヴヴルルルッ――――――――ドッズズズズズゥゥゥゥンッ!

 地中(ちちゅう)から掘り出したのは――――たぶんだけど、ギルドの金庫(きんこ)だ。


 シガミー邸(ものおきごや)なら6(けん)(はい)るほどの、巨大(きょだい)大箱(おおばこ)

 ぐらぐらぐららっ――――まだ揺れてる。

 (れい)収納魔法(しゅうのうまほう)応用(おうよう)で、(どろ)ひとつ付いてない。

 ピカピカと、ひかり(かがや)金属製(きんぞくせい)


「いやぁー、綺麗(きれいな)なものねー♪」

 今回(こんかい)大騒動(おおそうどう)実行犯(じっこうはん)のひとりが、呑気(のんき)(かお)でやってきた。


呑気(のんき)なことを言ってる場合(ばあい)では……ないのではありませんか?」

 実行犯(オルコトリア)のあとからあらわれたのは、白い給仕服(リオレイニア)

 その(こえ)に、嘲笑(ちょうしょう)(いろ)はない。

 リオレイニアは、純粋(じゅんすい)にオルコトリアの〝()(すえ)〟を(あん)じていた。


「まったく、シガミーがトイレに行ってる(あいだ)に、と、とんでもない(こと)になっちゃったじゃないの!」

 小さいの(レイダ)が、ぶつかってきた!

 たしかに、ギルド支部(しぶ)建物(たてもの)は――レイダと父上(めがね)住み処(いえ)でもあり、それがなくなってしまったことは、どう(つぐな)っても(つぐな)いきれるものではない。


 なんて(こえ)を掛けたら良いかわからなくて、レイダを見つめてたら――――大きなカバンを、ひとつ(わた)された。


「レイダ……大荷物(これ)(なん)だい?」

(なに)って、わたしの荷物(にもつ)に決まってるでしょ?」

 レイダの手には、(べつ)のカバンがもうひとつ。


「どういうコトだい?」

 (おな)じく大荷物(おおにもつ)(たず)えた、リオにたずねる。


「ギルド建物(たてもの)再建(さいけん)されるまでレイダと(わたくし)は、シガミー(てい)にご厄介(やっかい)になります。うふふ」

「な、なんだとぉうっ――!?」

「そうっ♪ お(とう)さんは、ギルドの(りょう)に泊めてもらうって言ってた♪」

 なんで二人(ふたり)とも、(たのし)しそうなんだ?


 まったく、折角(せっかく)リオが監視役(かんしやく)でウチに来るのを、(まぬが)れられたのに。

「――ハはハ……危惧(きグ)しテいたのと、(おナじ)結果(ケっか)になってしまいましタね――」

 なに(わら)ってんだ、ちきしょー!


 けど、もうひとりの実行犯(じっこうはん)である、烏天狗(からすてんぐ)正体(しょうたい)は――ぼく《シガミー》だ。

 無下(むげ)にはできない。


「あ、そうそう、お嬢様(じょうさま)からお手紙(てがみ)(あず)かってきました」

 かるく折られた、簡素(かんそ)手紙(てがみ)をひらく。


『カブキーフェスタ中止のお知らせ』

 そりゃそーだなー……あれ? いちばん(した)にも、なんか書いてあるぞ?

 ぺらり。

『カブキーフェスタ改め、ギルド再建フェスタ開催決定!』

 ぼくは、リオの(かお)をみる。


「ふぅ。開催規模(かいさいきぼ)当初(とうしょ)の……30(ばい)になりました」

 口元(くちもと)に、あきらめの(いろ)が浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ