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125:カブキ者(シガミー)、カブキーフェスタ前哨戦その2

 (かべ)を蹴り――天井(てんじょう)着地(ちゃくち)――できたっ!

 (かべ)(つた)って階段(かいだん)に降りたのの――上下逆(じょうげぎゃく)

 やっぱり、この子供(シガミー)体現(たいげん)するチカラは、異常(いじょう)なまでに研ぎ澄まされてる。


「――止まルと落ちマす。注意(ちゅうイ)してくダさい――」

 わかったよ。重心(じゅうしん)(てんじょう)に張りつかせる。

 〝草履(ぞうり)〟の(あし)(うら)で、〝地〟をつかむ感覚(かんかく)

 〝下駄(げた)〟だし〝天井(てんじょう)〟だけど――なんでかできる。

 これは、ひょっとしたら……LV(レベル)100の恩恵(おんけい)かもしれない。


 ――――――――ッシャァァァァァァァァァァァァァッ!

 まるで蝙蝠(こうもり)のようにぶら下がり、(おおき)きく一回転(いっかいてん)

 天井(てんじょう)には(なに)もないから、好きにすべれる。


「クカカカカッ――――!」

 (さかしま)にぶら下がり、天井(てんじょう)(はし)(くろ)ずくめの子供(こども)――まるで妖怪(ようかい)だ。

 狐耳帽子(きつねみみぼうし)(いろ)(くろ)くした)の(くろ)づくめだから、さしずめ蝙蝠(こうもり)か。

 蝙蝠妖怪(ぼく)鬼娘(オルコトリア)が、追ってくる。


 下駄(げた)正面(しょうめん)で受けられる〝ゲタスベール〟は一回(いっかい)使(つか)っちまったから――(のこ)しておきたい。

 なら、小太刀(かたな)でも一回(いっかい)、受けてみても良っか。


「(今度(こんど)(かたな)で)――受ける!」

 仕組(しく)みはややこしいが、〝ビッシリと栴檀草の実(ひっつきむし)がくっついてる〟そして、その〝向きを切り替えられる〟のさえ――わかれば使(つか)える。


 小太刀(こだち)からパァンという、(ちい)さな感触(おと)

 何重(いくえ)にも(かさ)ねられた〝ゲタスベール〟の一枚(いちまい)が剥がされ、すべる向きが(ぎゃく)になった。

 これで小太刀(こだち)は、一切(いっさい)すべる事なく――鬼娘(オルコ)長剣(ちょうけん)に食いつくはず。


「――んぁ? なんの(はなし)してたんだっけ?」

 むくり――長机(ながつくえ)(うえ)で、(わら)いころげていた御神体さま(いおのはら)が、起きた気配(けはい)

 〝動くものを(モーション)見える化する(なんたら)〟が五百乃大角(いおのはら)輪郭(りんかく)を、浮かび上がらせる。


 最悪(さいあく)、アイツに場を強引(ごういん)に、(おさ)めてもらうしか無くなるかもなー。

 まがりなりにも(かみ)だからか、ああ見えて(あたま)相当良(そうとうよ)くて(くち)もうまい。

 見返(みかえ)りの(めし)豪華(ごうか)になるから、あんまり(たよ)りたくはないが。

 ここの連中(れんちゅう)美の女神(こいつ)の言うことなら、すんなり受け入れてくれるからなあ。


 ――ッシャッ……ズザザァ――ッ!

「あ、いけね。(いきおい)いが止まる」

 最初(さいしょ)の〝階段(かいだん)をすべり降りた(いきお)い〟が切れた。

 もう行かないと――――ドォン!

 (かべ)、いや天井(てんじょう)を蹴り、直下の鬼(オルコトリア)へとびこむ!


 ごきり――ばきり――(からだ)をひねり――直上(ちょくじょう)から(せま)烏天狗(ぼく)を、(むか)え撃つ(おに)――――コォォォォォォッォッ!

 その目と(つの)から、(あや)しい(ひかり)がほとばしった!


「あはははははっはははっ――――!」

 (わら)ってやがる。この(まち)には、戦闘狂(せんとうきょう)しか居ねぇのかっ。


 (せま)長剣(ちょうけん)――――ゴォォォォォォォォォォォウッ――――小太刀を放つ(うおっりゃぁ)


「――あ、そうそう烏天狗(からすてんぐ)……って天狗(てんぐ)の――(かく)し子じゃなかったっけ?」

 そんな御神体さま(いおのはら)の、言葉(こえ)を聞いた鬼娘(オルコ)(ひざ)が――ガクンと落ちた。


 やっべぇっ!

 うなりを上げる(おに)長剣(つるぎ)と――もう(はな)っちまった、おれの小太刀(いあい)が〝(だん)だら(平行(へいこう))〟になる。


 (なん)てことしてくれんだ、あの御神体さま(いおのはら)はよぉー!

 このままだと――(かたな)がぶつからず、おたがいを斬りあう。


 鬼娘(おまえ)も、御神体さま(いおのはら)与太話(よたばなし)くらいで、気を(みだ)すなってんだよー!


 死中(しちゅう)(かつ)

 そんなものは、前世(ぜんせ)散々(さんざん)やってきた。

 〝決死けっし覚悟(かくご)〟が無かったら、来世(こっち)に来てからの人生(じんせい)も、どこかでお陀仏(だぶつ)だったはず。

 姫さん(リカルル)、ゴーブリンの群れ、化けウサギ、ふた(くび)大鷲(おおわし)なんかもいたな。


 蘇生薬(エリクサー)は、補充(ほじゅう)して、指輪(ゆびわ)にしまってある。

 最悪(さいあく)(ふた)つにされても、ひと呼吸(いき)さえ出来(でき)りゃ――死なずに済む(なんとかなる)


 小太刀(こだち)を投げ捨て――――籠手(こて)(おお)きく伸ばす。

 姿勢(しせい)安定(あんてい)させ――――あとは、この子供(シガミー)の〝体現(たいげん)するチカラ〟に賭ける!


「(やっぱ下駄(げた)で)――受ける!」

 その長剣(つるぎ)――へし折ってやる!


 鬼娘(オルコトリア)の、ふぬけた(つら)を、踏みつけるように――――下駄(げた)(かかと)をガチンと打合(うちあわ)せた!

 ゴォウ――鬼の瞳に(われにかえる)生気が宿る(オルコトリア)


「クカカカアッ――――――――!!!」

「ぅぉォッォぉオおオぉお――――――――!!!」

 ばきり――ごきり――――フォフォフォォォォオォンッ!

 振った(つるぎ)剣筋(けんすじ)を変える――――鬼娘の膂力(こんごうりき)


 なんだそりゃ――両目(りょうめ)見開(みひら)き、ねじ曲げられた切っ(さき)を見つめる。

 (まばた)きしたら、下駄(げた)(あいだ)を抜かれて、縦に(・・)真っ(ぷた)つだ。


 燕返(つばめがえ)しの比ではない――(おに)変幻自在(へんげんじざい)(けん)


 その切っ(さき)を、死に物狂(ものぐる)いで――――ギャキィンッ――――はさんだ(下駄(げた)の歯で)!


 ッシャァァァァァァッ――――ぐぎぎぎっ!?

 (なが)(つるぎ)(やいば)(うえ)を、すべり降りる(・・・・・・)――妖怪(ようかい)烏天狗(からすてんぐ)


「「「「「「「「「「「「「「(けん)(うえ)を、すべったっ!?」」」」」」」」」」」」」」

 蟹股(がにまた)で、まるで小猿(こざる)みたいな格好(かっこう)

 目の(まえ)を、工房長(ノヴァド)自慢(じまん)のジンライ鋼製(こうせい)剣身(けんしん)(のぼ)っていく!


 (あぶ)ねえ――切れる切れちまう――――(あし)(ちから)をちょっとでも(ゆる)めたら、一刀両断(いっとうりょうだん)だ。


 踏ん張れぇ――――――――ッシャシャァァァッ――――ガッゴン!!!

 すぐ長剣(ちょうけん)(つば)に、ぶち当たった!


「くっ――!?」

 衝撃(しょうげき)によろめく(おに)

 (ひら)いた(あし)(あいだ)に――――降り立つ、妖怪(ようかい)烏天狗(からすてんぐ)


 ゴゴッゴガァ――――ッ!!!

 (かた)石床(ゆか)に突き刺さる――妖怪(くさび)


 ビキバキゴキバキャァッ――――――――下駄(げた)の歯が石床(ゆか)(しず)んでいく。

 割れる石床(ゆか)に這いつくばる――妖怪(おれ)


 ▲――――ピピピピピピピピッ♪

 〝動くものを(モーション)見える化する(なんたら)〟が、危険(きけん)を知らせてくる!

「がぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!!」

 オルコトリア(おにむすめ)(こえ)

 振りおろされる、豪腕(ごうわん)気配(けはい)


「(やべぇぇぇっ――――(あたま)が無くなったら、蘇生薬(エリクサー)使(つか)えねぇ)――――!」

 真言(マントラ)発火(はっか)してないし。

 (いん)もむすんでない。

 けど――――なんでか、あとから(とな)えると威力が変わる(・・・・・・)


 そんな(ゆめ)みたいなチカラが、この世界(せかい)にはある。

 ()(じゅつ)だ。

 そしてコレは(・・・)、ソレともちがう――まさに――邪法(じゃほう)

 その呪文(じゅもん)を――(とな)えてやった!


「――――――(めっ)せよ!」


 冒険者(ぼうけんしゃ)ギルト(レイダとギルド(ちょう)(いえ)でもある)が壊滅(かいめつ)した。

 (さいわ)い……死者(ししゃ)は出なかった。

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